平成17年12月10日、桶本和男
第28回日本分子生物学会(福岡) 「A potent adjuvant monophosphoryl lipid A triggers various immune responses, but not secretion of IL-1beta or activation of caspase-1」 (アジュバント活性として様々な免疫応答を誘導するmonophsphoryl lipid A は、 IL-1betaの産生やcaspase-1の活性化を引き起こさない)
<Monophosphoryl lipid A(MPL)はリポ多糖の部分分解産物である。 MPLはリポ多糖と同様にアジュバント活性を有するが、リポ多糖と異なり毒性が非常に低い。 リポ多糖の毒性と炎症反応とは密接な関係があり。MPLがinflammasomeと呼ばれる炎症反応に 必要な蛋白質複合体形成をマクロファージで誘導しない事がその低毒性の原因と思われる。>
LPSは上記に述べたシグナル伝達経路を介して種々の炎症性サイトカインの分泌を促進する作用を持つ。サイトカインの産生は細菌を除去するための生体防御反応として行われるが過剰になった場合に毒性が発現し、ショック状態に陥る(エンドトキシンショック)。また、LPSは抗原提示細胞である樹状細胞やマクロファージを活性化し、未分化なT細胞(ナイーブT細胞)を1型ヘルパーT細胞(Th1細胞)へと分化誘導する働きを持つ。このような作用を持つことからLPSは生物系の基礎研究においてin vivo及びin vitroの両方の系で炎症性刺激として多用されている。他にもLPSは発熱、多臓器不全、頻脈等の作用を有している。
すなわちアジュバントを活性化させる「リポ多糖」は過剰に摂取すると毒性が強いがその部分分解産物である「3-脱アシル化-4'-モノホスホリルリピッドA」はリポ多糖と同様にアジュバントを活性化させる作用はあるが、その毒性は非常に低いということです。
最終更新:2011年02月25日 01:24