渚とアーマックが主従を交わした翌日の朝。
最愛の兄が眠る部屋に入った渚は起こす為にカーテンの窓を開く。
太陽の眩い光が差し込み、部屋を明るく照らす。

渚「お兄ちゃん、起きてー!」

肩を優しく揺らして、兄を起こす。

渚「あ、起きた」

寝ぼけた目つきで渚を見る兄。

渚「おはよう、お兄ちゃん!」

そんな兄に精一杯の笑顔を向ける渚。
たとえ悪夢に苛まれ、渚の心をどす黒い檻の中に捕えて放さないとしても。
兄を少しでも心配させる事など、渚にとって、絶対にあってはならない事だからだ。


学校帰りの夕陽、兄の所へと向かう渚。
誰もいない通り道を歩いていると強い風が吹き、渚の赤のマフラーが棚引く。

アーマック「──我々の主よ」

気配を絶っていた渚のサーヴァント──アーマックが渚に声を掛ける。

渚「……どうしたの?」

アーマック「近くに“いる”、用心せよ」

渚「……!」

能力によって“2つの魂”が近づいている事を感知したアーマックは渚に警戒を促す。

「ここに俺以外のマスターがいたのか……」

そして二つ人影──相手が渚の前に立ち塞がる。
片や灰色のジャケットを着た男性。
片や黒いドレスを身に纏うツノが生えた女性。

東山「ここにいるのは、俺だけだと思ってた……」

クッパ姫「おい、ワガハイを忘れるな!」

東山「今夜は謝りたい……」

寸劇を繰り広げる男性と女性、もとい東山とクッパ姫。

渚「……お兄ちゃんを心配させたくないから、そこを通してくれませんか?」

そんな寸劇をスルーし、警戒しながら二人にそう頼む渚。

クッパ姫「む?ここを通りたいだと?」

渚の頼みを聞いたクッパ姫は笑う。

クッパ姫「ガハハハハ!ならば、ワガハイに勝つのだー!」

その言葉と共に、お互い臨戦態勢を取る。

東山「今夜は、逃したくない……」

クッパ姫「ガーーーーー!」

そしてクッパ姫が先陣を切った。

渚「……お兄ちゃんとわたしの日々を邪魔するなら──消えて」

アーマック「無礼者め」

飛び掛かろうとするクッパ姫にアーマックは緑色の気を纏った片手を差し出す。

クッパ姫「おわっ!な、なんだ…!?」

すると、クッパ姫が緑色の魂の様なものに包まれ、宙に浮く。

アーマック「──堕ちるが良い」

そして差し出した片手を地に向ける。
次の瞬間、クッパ姫は勢い良く地面に叩きつけられる。

クッパ姫「がはっ!……お、おのれ、小癪な技を使いおって……!」

クッパ姫が起き上がる瞬間を狙い、アーマックは追撃をしようと接近する。

クッパ姫「そうはさせんぞ!」

クッパ姫は攻撃を受け止め、弾いた。

アーマック「……!」

アーマックは咄嗟に距離を取り、拳を構える。
そしてお互い接近し、激突する。

アーマック「消えるがいい、傲慢な者よ」

クッパ姫「オマエこそ消えるがいい!!!」

お互いの攻撃を受け止め、押し合う。
そしてこの激突に勝ったのは──クッパ姫だ。

アーマック「なっ……!」

アーマックの攻撃を弾いたクッパ姫はその隙を逃さず、口から灼熱の炎を放射する。

クッパ姫「ガッハハハ!これを喰らうがいい!!」

そして炎に包まれたアーマックにドロップキックを炸裂する。

アーマック「ぐおっ……!」

攻撃を喰らい後ろへと吹き飛ばされる。

渚「ムーンキャンサー!」

アーマック「……問題無い」

素早く立ち上がり、赤の隠密装束を手で払う。


激しい攻防が続き、何分程経った頃。

東山「今夜は、キリがない……」

クッパ姫「フンッ!仕方ないのだ!」

クッパ姫の周りに魔法陣が浮かぶ。

クッパ姫「それでは見よ!ワガハイの配下たちをー!!」

栗のような怪物や緑色の甲羅の亀等、様々な配下が召喚される。

クッパ姫「では、ワガハイの配下たちよ、頼んだぞー!」

クッパ姫に命令された配下達がアーマックに襲い掛かる。

アーマック「ならば、全て根絶しよう」

そう言うとアーマックの身体から緑色の魂が現れ、それが次々と奔出していく。

アーマック「我等の一部と為れ──『奔出する数多の魂』」

数多の魂が大きな嵐となり、配下達を巻き込んでいく。

クッパ姫「な、なんだアレは……!?」

東山「驚いたのは、俺だけだと思ってた……」

驚く二人を余所に配下達は次々と魂と化していく。

クッパ姫「ぐぬぬ……今日の所は見逃しておいてやる!」

東山「勝つのは、俺だと思ってた……」

クッパ姫「負けておらん!それにワガハイを忘れるなと言っておるだろうが!」

そんな寸劇を広げながら二人は退散する。

アーマック「……逃したか」

数多の魂がアーマックの身体に次々と戻っていく。

アーマック「我々の主よ、如何する?」

渚「……じゃあ、帰ろう? お兄ちゃんが待ってるかもしれないし」

アーマック「……承知した」

渚の言に頷き、霊体化して消え去るアーマック。

渚「急いでお兄ちゃんのところに行かないと……!」

最愛の兄の所へと急いで向かう渚。

静寂に包まれた通り道は何時しか人々が通り、活気が戻っていった。
最終更新:2020年10月24日 02:05