チェルシー「うーん……セイバー?」
悩む素振りをしながら先行しているGRAMに声をかける。
GRAM「……何だ?」
チェルシー「この戦いを勝ち抜くには協力者が必要だと思うんだよ」
GRAM「協力者だと?どういうことだ」
立ち止まり、チェルシーの方へ振り向く。
チェルシー「君が強いのは充分に分かってるよ。でも、孤軍のままで行こうとしたら──」
GRAM「負ける、そう言いたいんだな?」
チェルシーの言葉を遮り、答を出す。
チェルシー「うん、だから一時的でも協力者が必要なんだ」
GRAM「ならば今後の動きは仲間探し、ということか」
チェルシー「そうなるね」
そうして問と答を繰り返し、今後の動き方を決めながら、再び歩き始める。
GRAM「……待て」
数分後、先行していたGRAMは立ち止まり、チェルシーに声をかける。
チェルシー「……反応を検出したのかい?」
GRAM「ああ」
チェルシー「協力的だと良いんだけどね」
立ち止まる一人と一体の前には妙齢の男性と鞄を肩にかけた虚な目をした少女が立っている。
久秀「…どれ、啓は何を欲する……?」
妙齢の男性──久秀はチェルシーにそう語り掛ける。
チェルシー「ボクが欲しいもの?……うーん、特に無いね。……ごめんね?」
悩む素振りを見せた後、謝りながらも断る。
久秀「そうか…これで二度目だな……良いかね、マスター?」
言葉「はい、久秀様…」
少女──言葉が布で巻いた長物を取り出した瞬間、久秀はチェルシーに素早く接近する。
久秀「…啓の命を奪おう」
右手に持った宝剣でチェルシーに斬り掛かる──
GRAM「そうはさせん」
瞬間、GRAMが盾の様な左腕で宝剣を防ぎ、超高温の刃を持つ右腕で反撃する。
久秀「ほう…面白いものを持っているようだ……」
久秀は攻撃を躱し、距離を取る。
その隙を狙ったGRAMは胸部に生やした武装から追尾する大きな青い塊──電磁ボールを連続で射出し、久秀に追撃を仕掛ける。
久秀「……煩瑣、煩瑣」
久秀は篭手が装着された左手を払い、火薬を散布する。
宝剣を振り払う事で着火させ、炎の壁を放ち、電磁ボールを次々と防いでいく。
互いに一歩も譲らぬ攻防が続いていく。
近くで響く戦闘音や爆発音を聞きながらチェルシーは溜息を吐く。
チェルシー「協力者を探そうという時にこうなるのは……正直、困るんだよね」
布が解かれた長物──鋸を握り、此方へと歩き寄る言葉を見て、そう呟く。
言葉「…………」
そして言葉は素早く接近し、チェルシーに鋸を振り下ろす。
チェルシー「斬られ死ぬのはごめんだよ」
攻撃を躱し、チェルシーは袖に隠していた投具── チャクラムを取り出す。
チェルシー「それっ!」
そしてチャクラムを言葉に投擲する。
言葉「……!」
鋸でチャクラムを弾き、接近する。
チェルシー「やれやれ、人形と戦ってる気分だ」
呆れ気味に呟き、チャクラムを投げながら距離を取る。
その光景を久秀は宝剣でGRAMの攻撃を防ぎながら見ていた。
久秀「…くくっ、面白いな……いや実に面白い…」
超高温の刃を弾き、散布した火薬を宝剣で着火し、爆発を起こす。
GRAM「…………」
バックステップで爆発を回避し、頭部に生えたロングライフルから音速によりもはや空気の塊にしか見えないプラズマ弾を射出する。
久秀「なに…?」
咄嗟に宝剣の腹で受けるも、あまりの衝撃に耐えきれず、後ろへと吹き飛ばされる。
久秀「ハハハ…少しは喜んでもらえたかな?」
素早く起き上がり、笑みを浮かべながらGRAMにそう問う。
GRAM「…………」
久秀「…それは何よりだが、しかし…いささか目算を誤ったやもしれない……マスター!」
沈黙を肯定と捉えた後、久秀は言葉を呼びかける。
言葉「はい、久秀様…」
チェルシーとの戦闘から離脱し、言葉は久秀に近寄る。
久秀「今しばらくの、お預けだ……では失礼」
指を鳴らしたその瞬間、いつの間にか散布した火薬が着火し、GRAMの前方で爆発が起こる。
GRAM「…………」
盾が生えた左腕で爆風を防ぎ、久秀達がいた所を見る。
GRAM「……逃げられたか」
反応が検出されず、退散したと判断したGRAMは盾が生えた左腕を下ろす。
チェルシー「あれじゃあ、どっちかマスターかわからないね……」
やれやれと首を振りながら、GRAMと合流する。
チェルシー「流石に疲れたかな……休憩出来る場所を探そう」
GRAM「……ならば、俺は控えるとしよう」
チェルシーの言を聞き、霊体化して消え去るGRAM。
チェルシー「ボクとしてはそのままでも良かったんだけど……」
まあいいや、と呟いてチェルシーは通り道を歩き始めた。
最終更新:2020年11月13日 23:17