--------ギャア、ギャアと鴉共がわめく
その鳴き声に呼び起されるように少女はそっと目を開き、意識を覚醒させる。
私は…。
ぼぅ、っとする意識のなかで少女は今の状況を整理してみる。
彼女は今、無数の亡骸(むくろ)が積み重なった山の中にいた
むせ返るような血肉の匂い、その肉から湧き出でる蛆虫ども、誰と判別がつかぬくらい崩れ落ちてしまったホトケ達の顔の数々。
とりあえず少女は死体をおしのけ屍の山の上に立った。周りに生きている者はおらず、あっちをみてもこっちをみても屍が転がっている有様であった。まさに地獄の光景
私は・・・死んだの・・・?
鼓動はある、脈も呼吸もしている、目立った外傷はない
生きている。
ならばなぜこの死体の山の中で眠っていたのか・・・・、どれくらい眠っていた?一体この地で何があった?
何一つ思い出せない・・・ただ一つ言えること、それは心が、精神が完全に壊れてしまっていることぐらいだ。死体を見ても血肉の匂いも
最早何も感じない。何とも思わない。
以前は笑っていた気がする、大切な家族がいたような気がする、毎日が平和で楽しかった気がする・・・・。
しかし、今となっては過去の話。あるいはこの地獄とは正反対、対称的なイメージをただ妄想しただけかもしれない。
血肉で赤く染まった着物の乱れを整え、少女は当てもなく歩き出す。
その先に何を見るか、何を望むか、それはまだわからず
最終更新:2012年07月05日 00:53