たーる「真夏の腹のパン祭り…?

たーる「何すかそれ」

バレル「まあ、何だ……うちには戦える女性が多いだろう、かなり。」

たーる「まあ、多いっすねぇ……結構人間離れしたのが、結構…」

バレル「そんな女性が腹を殴られて悶絶する姿、というのが好きな変態が居るようでな」ピラッ

たーる「あー、こうやってリストアップして、腹パンされる所を撮影すると賞金が、と…」

バレル「そうだ、一応賞金が出るのは私達だけだが……」

たーる「楽屋に乗り込んでくるみたいっすしねぇ、ニスラさんや難波さん、アレサさんが狙われるかも、と」

バレル「そうだ、だから…」

たーる「だから?」

バレル「見つけ次第遊んでやれ、何、連中は素手だ」

たーる「こっちも素手で泣かせてやれ、と、皆に伝えろと」

バレル「分かってるじゃないか」



俺の名はルーレバ・アキソウノフ。37歳。
アマチュアボクシング・ライトミドル級の期待の星(自称)だ。

ストリートファイトで培った腕力とパンチ力、それはこの前ボクシングを始めて更にレベルを上げている。
中学で鳴らしていたころからの趣味、それは道行く女子供を見つけては通り過ぎ様にボディブローを撃ち込む事。
何年も続けていた、その柔らかい肉に俺の拳が沈み込む……最近、その甘美な瞬間が更に芳醇な味わいを増しているのが分かるのだ。

これは単に俺のパンチ力が上がった事の証左に過ぎない。
デビュー戦でKO負けこそしたが、気にする事は無い。俺のボディブローは女の内臓を犯す為、ただそれだけの為に磨き上げられているのだから。

ミット打ちでも何でも、俺はひたすらボディブローの練習をしてきた。そんなある日。
女達の腹を堂々と殴り、更に金が貰える……そんな夢の様な話が舞い込んできたのだ。
傷物ばかりだが、顔も悪くない。
待ってろ、俺がその面を美しく歪ませてやる。その臓腑に俺の味を教え込んでやる。




俺は最新型ビデオカメラを手に、「会場」へと足を踏み入れた。
白い殺風景な廊下に、幾つもの「楽屋」と呼ばれる部屋の扉が有る。
照明の白い光は廊下の灰のマットの色に吸収され、光量程の明るさを感じさせない。
良くも悪くも、普通の室内、普通の廊下。

俺から3m程先、廊下の曲がり角から、「獲物」は現れた。
男にも見える端正な顔立ちをした、顔の半分が焼け爛れた女。

アグラヤ・ラストルグエフ。間違い無い、リストにあった顔だ。
顔立ちと肌の色からして、北方の生まれだろうか。
火傷さえ無ければ、とは思うが、あの傷跡に興奮するスキモノも居るのもまた事実だ。

眼前の彼女は傷跡を恥じることも無く、俺を恐れる事も無く、堂々と、凛とした表情で俺の前に立っている。
素晴らしい。俺に傷物好きの趣味は無いが、あの面がこれから苦悶の表情に変わると思うと堪らない。
既に俺の主砲は発射準備を始めている。

眼前の彼女も何かを察したのか、それともあの表情は強がり、ポーカーフェイスで、俺を恐れているのか。
逃げる事も無く、両腕を脱力させて一歩も動かない。

やった。
俺は、早速極上の餌を食らう事が出来るのだ。

地を蹴り、ステップで一気に距離を詰める。
このまま逃がさない。

俺の渾身のボディブローが臍上に向かう。
鳩尾や脇腹では無く、胃・肝臓を狙うストマック・ブローだ。
腹筋による防御が可能だが、女の腹筋で俺のパンチは止められない。

筋肉の壁を突き破り、柔らかい胃を蹂躙する為のパンチ。
内臓を直接押し潰し、凛とした顔が醜く歪み、蛙の様な悲鳴が俺の鼓膜を心地良く揺らす。


筈だった。


俺の右拳は宙を切り、同時に俺の右膝を激痛が襲う。
何が起こったか理解する間も無く真横から顎に衝撃を受け、挙句伸びた右腕を極められながら床に押し倒される。

決められた右腕を襲う激痛の中、俺は理解した。
システマだ。

脱力を構えとする、北方の武術。
打撃、投げ、関節、全てを高いレベルで備え、自然で素早い動きで敵を斃す、実戦格闘術。
俺が彼女と対峙した時、彼女は恐れているのだと俺は判断した、間違いだったのだ。

彼女は俺を待ち、既に狩る体制に入っていたのだ。
俺のボディブローを紙一重でかわしながら右膝にトーキック。膝関節を壊しながらガラ空きの顎へ、脱力した腕を最大限利用しての掌底。

俺の意識が一瞬飛んだ所で関節を極め、グラウンドポジションに持ち込む。
一連の動きを完全に、完璧にこなされたのだ。腹を殴らせる事無く。

「帰れ」

その冷たい声を聞きながら、俺の右腕は完全にへし折られた。
激痛に声を上げる間もなく、今度は左腕と左足を一度に極められる。

「ひゅ、ひゅるし」

当然俺の言葉は聞き入れられず、俺の視界は反転。
自分ごと体を回転させると、極められた左腕と左足はその勢いでリング上で聞く事のない音を立て、折れた。




あれから二週間が経った。
達磨状態であの建物から這って逃げ出した俺は、救急車に運ばれて治療を受けたのだ。

俺も知らなかった事だが、俺には超再生能力が有ったのだ。

一週間で俺の骨は完治し、今再び廊下に立つ俺は、二週間前と全く同じコンディションまで回復しているのだ。

前回は運が悪かった。
しかし、ターゲットは他にも居る、他の女の臓腑を犯せば良い。
そして俺は一歩、また一歩……廊下を歩み始めた。



(喧嘩商売立ち読みして勢いで書いた、多分続くかもしれない。)

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2013年07月06日 23:02