何処かでゴウンゴウンと機械の音が響き、また何処かでは人間が機械を操作する音が、せわしなく聞こえる。
その中でひっそりと渦巻くのは、実験台にされた者達の復讐の炎と、怒りの感情。
これは、ケイオスでASと名乗る男の、過去の話である・・・。
ここは何処とも知れない世界の、とある研究施設。
あまり表に出る事も無く、ただ時たま発表があるのみの施設。
表の顔は技術開発業者。
現在は世界中の優れた遺伝子を掻き集め、それを一つの人間に押し込み究極の生物を作ろうとしている。
しかし、そんな事をしてはキャパシティが足りずに人間の体は耐え切れずに死んでしまう。
故に体を一部のみ機械化し、耐えられるようにしている。
用途はガードマンや作業員に、などと表向きには発表している。
そう、表向きは・・・。
裏の顔は戦略兵器専門の開発施設、過去に様々な兵器や生物兵器を作っては、大国に売っていた。
そして今回も同じ目的で、開発が進められているとされている・・・。
研究施設の、とある階層。
そこでは、様々な処理を終えた上で最終処理となる『遺伝子の注入』を行う階層。
満タンになるまで入れられた液体に生物が入ったカプセル、大量の機械、そして中央の操作板を操作する研究員二人。
また一人、犠牲者が送られてきた。
処理を終えて、最終段階に入ろうとしている少女。
中央に捉えられ、巨大な機械の針を突き刺される。
研究員A「・・・しっかし、ヌルい仕事だよなぁ、俺等はこうやってよーわからん機械を操作して、遺伝子を注入するだけだし。」
研究員B「いいだろ別に、こんだけで月に500万ドルだぜ?」
研究員A「おっかしいよなぁ、どこからこんな資産出てるのやら・・・、そもそも後から遺伝子を注入してどうやって効果が出るのやら・・・。」
研究員B「あれだろ、そこら辺は『○○のみぞ知る』みたいなのだろ?俺等が知っても何にもならんだろ。」
研究員A「まあ、知った所で俺等に出来る事なんて、ねぇよなぁ・・・こんだけ技術があるんだから、暴れてもあっさりねじ伏せられるのがオチだ。」
研究員B「違いねえ・・・HAHAHA、・・・お、結果が出るぞ。」
総合遺伝率、30%です。
と、機械的な音声が響く。
研究員A「ぶほぉっ!な、なんだこれ・・・嘘だろ、30って・・・。」
研究員B「うっそォ・・・今まで、最低でも60はいってたって話なのに・・・。」
研究員A「こりゃ苗床がダメなのかもな、処理するように連絡しねぇと・・・。」
研究員B「・・・今じゃ疑問も抱かないが、俺等ってブラックな事やってるよなコレ。」
研究員A「バァカ、苗床とか言ってる時点でお察しだろ?もう気にするなよ今更。」
研究員B「おう、そうだな・・・っと。」
研究員Bが操作盤を操作し、少女を液体の入ったカプセルに詰め込み、同じ部屋のカプセルの並んだ位置に移動させる。
カチッ、と床にロックされた音が響く。
研究員A「しっかし、こんな出来損ないを保存しておいて何の意味があるのやら・・・ここに居ないの含めてこれで499体目だそうな?」
研究員B「そう・・・だな、この研究もただの運ゲーだしなぁ、終わりが見えない・・・。」
研究員A「いつになりゃあ、俺等って解放されるんだろうなァ?」
研究員B「そうさなぁ、いつだろうかなぁ・・・まあ、今はそんな事より、今と向き合おうぜ?」
ここでチーン、とエレベーターの到着する音が鳴り、扉が開く。
研究員C「うっす、お疲れ!交代の時間だぞ!」
研究員B「ああ・・・もうそんな時間か、連絡ご苦労っと・・・。」
研究員A「あーやっと終わった!飯でも食おうや!」
三人が乗り込み、代わりに別の二人が入れ替わって作業を開始する・・・。
研究員D「三人ともお仕事お疲れさん、っと・・・んじゃやるか!」
研究員E「そうやなぁ、やるか!」
また一人、犠牲者が送られてくる。
無駄の無い肉付きで、整った体顔つきのクールそうな男だ。
研究員E「おぉ、コイツなかなかいい素材になりそうじゃね?」
研究員D「ふうん・・・む、これ多分、こんな所に居なきゃガチにアスリートクラスか、それとも天才か・・・って感じだな。」
研究員E「それはさておき、お前は遺伝子注入をしろよッ!(ベシベシ)」
研究員D「あでっ・・・ったく、お前は気が早すぎんだよ・・・。」
ガコン、と巨大な機械の針が動き出し、男に針が突き刺さる。
突き刺さった針から、多くの遺伝子が注入されていく・・・。
研究員E「・・・しっかし、嫁は俺の事心配してねぇかなあ?」
研究員D「お前、嫁なんて居たのか・・・初耳だぞ。」
研究員E「そりゃあ初めて言ったからな!ハハハ!」
研究員D「ったく、お前って奴は・・・ハァ。」
遺伝子の注入が終わり、針が引き抜かれる、針が刺さった皮膚からは血が一滴も零れない。
研究員D「さて・・・と、これで後は測定を待つのみ・・・だな。」
研究員E「っと・・・もう結果が出たみたいだぞ・・・どれどれ。」
測定不能、総合100%を超えています。
と、機械的な音声が響く・・・。
研究員D「な・・・ん・・・」
研究員E「だ・・・!と・・・!?」
静寂に包まれる。
研究員E「や・・・や、や・・・やりやがったなテメェ!ッハハハハ!すげぇぞ!!」
バンバン、と肩を叩く。
研究員D「やめろ、若干痛い・・・と、ともあれ・・・予定の100%を超えてるようだな。」
研究員E「すげぇぜブラト!これで俺等、解放じゃねぇか!ヒャッホォォォーーーウ!!!」
研究員D「騒ぐなオリアン・・・耳が痛い、・・・ともかく、これでこの施設ともおさらば・・・か。」
研究員E「ったく、お前やっぱすげぇぜ!ハハハハハ!!」
試作品500を、カプセルに詰め込む。
そして笑い声と共に、エレベーターに乗り込んで行く・・・。
残された空間に、強い殺意が渦巻く・・・。
最終更新:2014年03月20日 22:13