閃劇のリベリオン過去ログ Ⅲ.2

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氷冬「……(会場を後にし、踵を返してその闘技場を見上げる) 」

フーナ「――――氷冬~!(同じくして会場から出てきて彼女のもとへと向かう)はぁ…はぁ…!大丈夫…?怪我の方は… 」

スカーフィ「わああぁぁぁん!ちゅららぁ~~!!(ぶわっと号泣しながら氷冬に抱きつく)し、心配したんだからぁぁ~~!えっぐ…っ…! 」

氷冬「…!フーナ、スカーフィ―――ひゃっ!?(抱きつかれた衝撃で倒れ込む)え、えぇ…応急処置してもらったから、今は平気よ。…心配かけたわね…(ふぅと弱弱しい笑みを浮かべて、スカーフィの頭を撫でる) 」

フーナ「こ、こらっ、スカーフィったら…!氷冬怪我しているのに…(汗)そう… …でも、一番傷ついてるのは、氷冬かなと思ったから…さ…(本大会に向けて張り切っていた氷冬を思い出し、今の彼女の表情と比べて居たたまれない気持ちを抱く) 」

スカーフィ「かぅぅ…(デフォ目で泣きじゃくってる) 」

氷冬「(スカーフィと共に起き上がる)…平気よ。…それに、自分の実力が『世界』に通じるなんて、現実はそんなに甘くないってこと、分かってたから…(それでも、心の中では頂点に立つことへの自信と勝機に満ち溢れていた自分がいたことに気づいてから、悔しさや無念といった複雑な感情が入り混じっている。いつもの凛とした表情が陰っているのは、そのためかもしれない) 」

フーナ「……っ…(彼女の表情に、どういう言葉をかけたらいいのかと考えあぐねる)…っ、氷冬は本当に強いんだね。自分自身のことを知っているから、たとえ結果が上手くいかなかったとしても…次に活かすために前を向いていけるんだもの。…そ、それに!百刀剣武祭は年に三回行われるから、たとえ今回上手くいかなくても、まだチャンスがあるよ…! 」

氷冬「ううん…寧ろ逆だよ、フーナ。(空を仰ぐ)…私は『世界』を知る為にこの大会に挑んだ。『世界』を知れば知る程、自分の実力がどんなものなのかというのも分かってきた。だけど気付いたことがある…私は…――――― 」


―――― "柔なき剣に強さなどない" ――――(試合後に雛菊から告げられた言葉が、氷冬の中で反響する)


氷冬「…『世界』を知ろうとするあまり、『自分』のことなんか知ろうとしなかった。自分のことも分からないで、相手のことなんか分かるはずがない。分かり切っていたはずなのに、頂点を目指す最中で、私はそのことを忘れていた…(その時、試合が終わった後に微笑みかけてきた雛菊のあの表情を思い出す)…ようやくわかったわ…自分に何が足りないのか、これから何をすべきなのか、どうやって伸ばしていくのかを。今の私じゃ、きっと何もできない。次の大会でも同じ結果になる。 」

フーナ「氷冬……(しゅんとした表情で)」

氷冬「だから私、次の大会は棄権するわ。(二人の方へ振り返る)」

スカーフィ「かぅ!?で、でも…それじゃあ氷冬が出たがってた、あの大きな大会(十刀剣武祭)に出られなくなるんじゃ…」

フーナ「いや…すべての百刀剣武祭に参加しなくても、実力次第では逆転勝利を得られて、序列入りを狙える可能性はあるよ。…本当にギリギリのラインだけどね… …氷冬、それでも…」

氷冬「ええ。百刀剣武祭は四カ月ごとに開催される。つまり今から最後の第三百刀剣武祭まで八ヶ月間の余裕がある…その間、私は修行に励むわ。今の私に足りないものは、自分自身にしか補えないからね。」

フーナ「……わかった。氷冬がそう言うなら、私たちも全力で応援するから…!(氷冬はやっぱり、前を向き続けている…私たちが背中を押さなきゃ… 言葉でじゃなく、行動で…)(氷冬が決心を抱いたように、自らも心の中で小さな決意を抱く)」

スカーフィ「かぅ…!ボクも一緒に応援するからね!氷冬が強いことを一番知ってるのは、ボクたちだけなんだから!(ぱあっと明るい笑顔を浮かべて励まそうとする)」

氷冬「二人とも…(二人の表情に心を討たれ、ふいにまなかぶらから込み上げてくる感情を抑えようと目元に指を添える)……私には、私を支えてくれる人がいる。こんな素敵なことはないわ。…ありがとう、フーナ、スカーフィ。」

スカーフィ「かぅ~、なんだか照れちゃうな~(えへえへ) 」

フーナ「友達だもん、当然だよ。(ウインクして) 」

氷冬「ははは… …… ……―――――――――――― 」


――――― "…それでも…本当は…" ―――――




BGM♪


氷冬「(会場を後にして数時間後、黄昏が広がる某所の川のほとりで一人座り込んでいる)…… …… ……。(二人の前であんなことを言ったものの、本当は…正直な気持ち、自信が湧かない。あれだけの実力の差を見せつけられた試合の後で、果たして修行をしたからといって逆転勝利が狙えるのかなんて……)(友の前では見せなかった、全く覇気の無い顔が川の水面に映し出される)」

氷冬「……(こんなことじゃ…縊鬼との約束も果たせそうにない…あんなでかいことを言った手前、引けないことは分かっている。…それでも…)……!(自分の手が震えている事に気づく。今まで寒さで震えたことの無い身体に違和感を感じるが、やがてその震えが、寒さではなく"恐怖"から来たものであると気付き、一瞬だが、自分の目の前が真っ暗になりかける)」

氷冬「ッ…!やめろ…ッ…!やめろやめろ…!考えるな…こんな事…ッ…こんな……こんな………(何度も何度も自分の頭を拳で討ちつけ邪念を無理矢理振り払おうとする。やがて身を丸くし、両肘に顔を埋めた)」

氷冬「……(自分、こんなに弱かったのかしら…こんなに脆かったのかしら… 縊鬼の前ではこんな気持ち、全く感じなかったのに…自分よりもずっと強い縊鬼と戦っていたときでさえ、劣等感なんか感じなかったのに…どうして…っ……)…… …… ……(顔を少し上げて、傍らに置いた四刀を見つめる。夕日に照れされ赤く染まる愛刀たちを呆然と眺めていた)」

氷冬「……強くなりたいから、剣士になった…強くなるために、自分よりも強い人と刃を交えてきた…(至極単純な事を、そうしてずっと続けてきた……)」


―――――― "でも、本当にそうなのかしら…?" ――――――


氷冬「(そもそも…何のために強くなろうとして、刃を振い続けてきたのかしら…私が刀を握った理由は…今日まで生きてきた理由は……―――――――)」


ビ ュ ォ ァ … ッ … ! (一陣の夕風が吹きつける)


氷冬「…っ…(夕風に長い髪とマフラーが靡く)…… ……(その時、首元に巻いた藍色のマフラーに手を添える。大切な人物から貰ったお気に入りのマフラーを、ぎゅうと握りしめる)」


―――――― "今はまだ、自分が何者なのかわからないだろう。たとえわかったとしても、ふとした時に自分が何者なのか忘れてしまうこともある。" ――――――


氷冬「…… …… …… ……」


―――――― "でも大丈夫だ。キミはこれから、たくさんの人と出会い、たくさんのことを知るだろう。そうして、自分が何者なのか気付く日が必ずやってくる。忘れたのなら、それを思い出せる日もやってくる。" ――――――


氷冬「……『    』…っ…(ぽつりと、ある人物の名を呟くと、ずっと堪えていた感情が瞳よりぼろぼろと溢れ出す)…っ…私、は……―――――――」

××××「―――いいじゃないか。キミは「忘れていたキミ」を思い出せた。キミには大切な友達が、戦友が、そして夢があるだろう。やりたいこととやるべきことが一致した時、そこから何度でも立ち上がれる。―――」

氷冬「……!!(その言葉に、自らの脳裏にあらゆる人物の像が流れ出す。フーナ、スカーフィといった友を…縊鬼、AS、銀閣といった戦友を…そして、自らに「夢」をくれた人物を…)」


荒れ狂う様な猛吹雪が吹き付ける何処かの氷山――――白銀の大地の中心部で、やせ細った少女が蹲っている。覇気も希望もない真っ暗な瞳に映るのは数多の雪。そして、際限なく続く闇夜の空から降り注ぐその雪を見上げていた孤独な少女の前に、ひとつの人影が現れる――――――― 少女の目に、輝きが灯った。


氷冬「…やりたいこと…やるべきこと…それは…(ゆっくりと腰を上げる)――――――― 「弱かった自分」が強くなること。その為に誓った夢が、世界一強い剣豪になることだった。」

氷冬「戦えば戦うほど強くなる…そして生きている実感を強く感じられる…(ASや銀閣、そして縊鬼との戦いを思い出す中で、そこに戦いを愉しんでいた自分がいた事を知る)…でも、高みを目指せば目指すほど、生き急いで苦しさを感じる…(それに対し、先の試合で愉しむ余裕もないほどに切羽詰まった自分を思い出す)私の夢は世界の頂に立つことだった…でもそれは、"自分がしっかりと生きていることを実感したかった"だけだったんだ。死ぬことを望んでいた『あの頃』から抜け出す為に掲げた「夢」…その意味を、忘れていた。(胸元に手を添える)」

氷冬「…………ありがとう。やっと、"取り戻せた"。」




――― 新世界・恐寒山 ―――


氷冬「(荒れる吹雪の中を、悠然とした足取りで歩き進める)……旅立って以来の帰郷…ね。(山頂を仰いで、懐かしさの余りふふっと微笑んだ)」

氷冬「思えばここからすべてが始まったのよね。刀と出会い、夢を拾い、生きることを誓った、あの時から――――――」


――― "振り返らず、前だけを見つめるのはいいことだ。" ―――


氷冬「スゥ…ハァ……(深く冷たい空気を吸い上げ、白い息を吐く)」


――― "だけど高みを目指せば、いつかは困難にぶつかる時が来る。その時は、振り返ってもいいんだ。" ―――


氷冬「――――― " 原 点 で 頂 点 を 極 め る " ―――――」


――― "キミはキミであれ、『氷冬』。" ―――

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最終更新:2017年03月21日 12:24