~East・C・Land どこかの廃墟地帯~
ザリ…ザリ…ッ……(硝子破片や金属板が散乱する無法地帯に、それらを踏み鳴らす様な足音が聞こえる)
××××「ザリ…ザ…ッ…(不安定な足場の上を、絶えず崩れない不気味なリズムで歩き続ける。そのゆくさきにある、大きな物体を見据えながら―――)」
ォ ォ ォ ォ ォ ォ … ッ … … ――――――(廃墟地帯に並び立つ林の路を潜り抜けると、そこには天を貫くほどの高さを誇る、黒い柱が立っていた。柱には黄金の鎖が何重にも巻きつけられ、その柱の表面には何らかの術式が施されていた。まるで、何かを封印しているのかのように…)
××××「ザ…(厳重に封印されたその黒柱の前に立ち、右腕をそっとかざす) オ ゥ ン … ッ … (その掌に刻まれた「 Z 」の紋章が赤く発光し始める)」
コ ゥ ン … … コ ゥ ン … … ――――――(謎の人物がかざした紋章に呼応するように、巨柱の表面に刻まれた術式が赤く不気味に発光する。すると、その時…)
ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ … ッ … ! ! ! ! (赤い光に包まれた巨柱が、まるで身奮いを起こすかのように徐々に強く振動し始める。柱から大地へとその振動は伝わり、今、世界が鳴動する)
ガ チ ャ ン ッ … ガ チ ャ ア ァ ン ッ … … ! ! ! (柱を巻き付けていた鎖が自然にほどけ、錆びれた銅色の地面に轟音と共に落下する)
ズ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ッ … ! ! ! (やがて光を失った巨柱は地面の中へと沈んでいった)
~Central・A・Land 世界政府本部『メビウス』~
緊急事態発生!緊急事態発生!E-45エリアにて突如震災が発生!!
場所は何処だ…!?
ここは……ッ…!?―――― …No.11の『エンドポイント』です!!
なんだと…ッ!!?それは確かか!?
指揮官!たった今…『楔』の解除が確認されました!!間違いなく、例の『禁断領域』に何者かが侵入し、意図的に『楔』の解除を行ったものかと…!!
馬鹿な…今の今まで、誰も予想だにしなかった最悪の事態が……
―――― 世界の均衡が…揺らぎ始めるぞ…ッ…!!!
ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ゥ ン … ッ … ! ! ! (廃墟地帯に衝撃と土煙が一斉に迸った頃には、そこにそびえ立っていたあの巨大な柱の姿はなかった)
××××「バサバサ…ッ… ! (衝撃に衣服が強く靡かれる)…賽はとうの昔に投げられた。さァ…―――― "約束"の時だ。」
――――― 『 ヴ ィ ナ ミ ス 』 ―――――
As the long years pass by…
(長い年月が過ぎ…)
the day approaches when the truth "from A to Z" will be revealed.
(ついに真実の"すべて"が明かされる日がやってくる)
―――――――――― 令和初 大長編カオスドラマ ――――――――――
―――――――――― カオスジャジメント ――――――――――
―――――――――― " AtoZ " ――――――――――
エルナ「(高層ビル内に併設された
マックリアにて、スマホを片手にその画面を流し読みしている)……『エンドポイント』の陥落… 最初の『楔』が落された、ねェ…(キウイスムージーのコップに刺さったストローに唇を近づけ、一口吸い出す)」
エルナ「世間には「ただの小規模地震」としか知らされていない。それもそっかぁ。この案件を知るのは私たち政府…それもごく一部の人間だけ。もしもこれが公にでもなれば厄介どころじゃ済まないよね。…ま、それも時間の問題…かな…(本部からの極秘任務の電子メールをざっと確認してタスクキルした後電源を切る)」
エルナ「ズズズ…(知る人ぞ知る極秘情報…『エンドポイント』の在処と『楔』の存在… 犯人が"こっち側"って可能性も否めない。そもそも何故封印が解けたのかしら…?目的とは?)……あぁぁ~…あったまいたい…(スムージーを吸い出しながら考え事をしていたが、謎が謎を呼ぶ案件に自分の頭をコツコツと小突く)」
エルナ「はぁ…(とりあえず、本部は昨夜の一件で急遽私たち(エージェント)をエンドポイントへの出動命令を下した訳だけど…いったいこれから先どうなるのかしらね…)(ちらっと窓の外を見やる)」
彼女の視線の先には、街外れにある森林地帯。そこには、天を貫くほどの巨大な黒い柱が一本立っているのが見えた。
エルナ「そろそろお仕事の時間です、かっ。(スマホを手に席を立ち、店から出ていく)」
~街外れの森林地帯~
エルナ「あらよっ…――― ス タ …(立ち入り禁止区域に指定されたとある森林地帯。覆われた厳重なバリケードを軽い身のこなしで乗り越えその領域に踏み込む。)うーん…こんな茂みの中を潜らなきゃあかんのか…はぁ…(当然ながら人の管理が行き届いていない緑の路。あたかも人間の侵入を拒む様に長く生い茂ったその草木を掻き分けながら奥へと進んでいく)」
白衣の少女「―――――(一方その頃、エルナが辿りつこうとするその先に、謎の少女ともう一人の影が巨柱の前に立っていた)――― みぃ~っけ。(口元を覆うマスクを顎下へとずらし、その柱へ向けて舌を突き出す) キ ュ ア ア ァ ァ ァ … … ! ! (その舌に「 A 」の赤い紋章が浮かび上がり、眩く不気味な光を放ち出した)」
ズ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ … ッ … ! ! ! ! (少女の紋章の光に呼応するように、柱もまた歪な光を放ちながら強く震え出す。やがて柱は轟音と共に地面の中へと潜り込む様に沈んでいった)
エルナ「ああんもうっ!うっとおしいなこの枝―――――ッ!!?(唐突に発生した地震に態勢を崩しかけるが、隣の木に両手をつくことで転倒を免れる)……ッ…!?…この揺れ…近い…っ…?まさッ―――!(はっと息をのみ全速力で緑の路を駆け抜ける)ガサッ――――!!(長い路を潜り抜けた先に広がる草原へと出る。そこで目にした巨大な穴と、その前に立つ二つの影に目を細める)」
白衣の少女「――― ゲームセット。(彼女の存在に気付いたのか、振り返ると同時に彼女を嘲るように舌を出しながら大胆不敵な笑みを見せつける)一足遅かったね、「せーふ」のおねーさん。もう先にいただいちゃったよ。ハハッ…♪(柱が沈んだ衝撃に伴う強風に白衣と桜色の髪が靡く中、微動だにせずエルナを見つめている)」
エルナ「はぁ…はぁ……そうでもないよ。(腕で口元を拭い、一歩一歩と彼女たちへ詰め寄っていく)ここであなたたちのお縄をちょうだいしていろいろ吐いてもらうから。(二丁拳銃「
シャウラ」を引き抜き…)――――アーユーレディ?(覚悟はよろし?)(その銃口を突きつける)」
白衣の少女→Dr.@「ずいぶん強気じゃない、モルモットの分際で。いいだろう、名前くらいなら教えてあげる。どうせ派遣社員だし。(首を一回りさせ)―――『 @ 』(アルファ)。それがコードネーム。(小柄な体に桜色のツインテールをした白衣の少女。この世の人間のすべて見下しているかのような嘲りの表情を浮かべている)」
エルナ「アルファ…?聞いた事ある… 最高峰の医療術を持つ『ゼウルス・イヴァ・フィード』と肩を並べるっていう、世界五大医師の一人だったはず…そんなお偉いさんが、なんでこんなことを?何を企んでるの…?」
Dr.@「こーんなところで『奴』の名が聞けるなんてな。まっ、そんなのはさしたることじゃないんだよ。私がここを訪れた意味も、いずれ、ぜんぶがパァ☆になるんだし。(両掌の付け根を合わせ左右へ開く様なジェスチャーをとる)」
エルナ「どういうこと…?(鋭い瞳で更に一歩詰めよる)」
Dr.@「あーあーあー!それ以上近づかないでよ!@ちゃんはこう見えてシャイなインテリなんだから。尋問はご勘弁。そんなにしたいのなら…(隣にいたもう一人の人物の方を無理矢理掴み前へ引っ張り出す)――私の可愛いモルモットが相手してあげるから。」
灯梨「………(@に引っ張り出され正体を露わにしたもう一人の人物。それはごく普通の女子高校生だった。しかし、生気を失った瞳の視線は定まっておらず、瞬き一つせずただ俯いたままの態勢で突っ立っている)」
エルナ「……!(あの娘の顔… あぁ…なるほど…あれは"やられ"ちゃってるな…)(灯梨の様子を窺い、瞬時にそれが「洗脳されている」と判断する)」
Dr.@「ちょうどいい実験体が揃ってるな。スチャ…(怪しい印が刻まれた仮面の様なものを懐から取り出す)―――― " 偽 装 " ――――(そう呟くと、その仮面を灯梨の顔面に押し付けた)」
灯梨「―――!あぁ…っ…ひやあぁ…っ…!!!あ゛あ゛あ゛ぁぁっ!!(仮面を押しつけられると同時に仮面から赤い電撃を伴う黒い靄が噴出し、彼女の身体を見るみると包み込んでいく)」
エルナ「なッ―――!?やめなさいッ!!(地面を強く蹴りあげ@に向かって駆け出した)」
灯梨→不確定者「バチッ…バチバチッ…――――― オ ゥ ン ッ ! ! (靄と電撃が消滅するとそこにいたのは…紫色の半透明な肌身に網目の黄色い線が刻み込まれた宇宙人の様な外見した存在。レインコートの様な服装を身に纏い、その顔面には赤い「×」印と口だけが現れていた)――― いや゛ぁ゛ッ!!(エルナの進行を阻むように移動し、彼女に殴りかかった)」
エルナ「ッ゛―――!?ズザザァー…ッ… ! ! (左頬に迸った痛みと共に殴り飛ばされるが、上手く着地した後態勢を整え直す)…姿形が変わった…っ…?!彼女に一体何を…!!?」
Dr.@「あ~…なぁんだ。偶然目に付けたモルモットだったから何になれるのか興味ありありだったけど…やっぱ不適合だったかぁ。彼女には『偽装者』(ネザリアン)としての素質はなかった。…おもんないね。(やれやれと両手を上げながら首を振る)…もはやここに留まる理由もなくなったわけだ。私は帰らせてもらうね。それじゃ(踵を返し)ばいびぃ~♪(振り返ることなく手を振りながら立ち去った)」
不確定者「ああぁッ!!(@が立ち去ると同時に再びエルナに殴りかかる)」
エルナ「なっ―――ふざけるな…!待ちなさいy―――!!(激昂を露わに@を追いかけようとするが不確定者の妨害に遭い、その拳から退く様に回避する)っ……!まずはこの娘を助けることが優先か…!(シャウラのトリガー…ではなく、グリップを握りしめる)」
不確定者「いや…いや……いやぁッ!!!(左右への薙ぎ払い繰り返しながらエルナを追い詰めていく)」
エルナ「フンッ―――フォンッ―――スァンッ―――(彼女のフックを何度も紙一重で、それでいて正確に避けきる)ちょっと痛いかもだけど…我慢してねッ!!!(乱暴に腕を振う不確定者の隙をつくかの如く、銃口部分を突き出し強力な打撃を叩き込む)」
不確定者「あぐぅッ…!!(強い一撃に思わず退くが…)はっ、はっ……あ゛あ゛あぁぁッ!!(助走をつけてとび蹴りをした後、腕による薙ぎ払いを乱暴に繰り出す)」
エルナ「よっ…ほっ…!(飛び蹴りを避け、薙ぎ払いを前屈みで受け流す様に回避)えいっ、やっ、ていっ!(グリップ底辺による殴打、チョップ、最後に肘打ちで反撃する)」
不確定者「いだい゛…ッ…!痛い…っ……よぉ…!(攻撃を受ける度に、全身に赤い電撃が迸る)」
エルナ「……今…助けてあげるからね。(痛みに悶える彼女に一瞬悲痛な顔を浮かべるが、彼女ではなく、彼女を取り巻く呪いへの敵意を示す様に表情が変わる。逆さ立ちから不確定者の顔面を両足で挟み込み)―――そいやっ!!(そのまま地面へ豪快に叩きつけた)」
不確定者→灯梨「 ズ ギ ャ ア ァ ン ッ ! ! ! (顔面から勢いよく地面に叩きつけられると、その顔に亀裂が生じ、彼女を覆いかぶさっていた仮面が砕け散り、元の姿へと戻った)はぁ……はぁ……(荒い呼吸と共に涙を流しながら、青い草原の上で仰向けになる)」
エルナ「……(彼女の頬に手を当て、外傷がないことを確認するとスマホを取り出す)もしもし
クラッド?知り合いに良い医者いたよね?急患診てくれるかしら?…うん……うん……お願いね。(スマホをしまい、横たわった彼女の身体を担ぎだす)いたぶってごめんね。後でちゃんと詫びるから………(彼女の足元にある粉々に砕け散った仮面の残骸、そして数分前までそびえ立っていたはずの柱があった巨大な穴に一瞥を与え、その場を後にした)」
~某病院~
灯梨「…… …… ……ん…っ…(病室のベッドに寝かされ、しばらくして目が覚める)……ここ、は……?……病院……?(意識朦朧としながらも上半身を起こし部屋中をゆっくりと見渡す)」
エルナ「わっとと…!!(灯梨が目覚めてからしばらくして、果物がたくさん詰め込まれた大きなバスケットを両手に抱えて慌ただしく入室してくる)…あっ!目が覚めたみたいだね。よかったよかった~♪(付近の机の上にそれを置き、満面の笑みで彼女と向き合う)あ、私怪しい者とかじゃなくてですね…!(懐から取り出した政府の手帳を見せつける)」
灯梨「あっ…ど、どうも…(政府側の人間だと知って恐縮し、頭を下げる)」
エルナ「あ~、そんなにかしこまらなくてもいいよ。寧ろ恐縮すべきなのは私の方だし…アハ、アハハ…(数時間前にボコボコにしたことを思い出しながら顔をひきつらせる)…ああそうだ、身体の方は大丈夫?」
灯梨「えっ…あ、はい…!でも、どうして私…いつの間に入院なんか……(首を傾げながら自分の両腕を摩り始める)」
エルナ「(やっぱり数時間前の記憶はない、か…)(彼女の様子を窺いながらパイプ椅子を座りこむ)寝起き直後で申し訳ないけど、事情を詳しく聞きたいの。協力してくれるかしら?……今日、何か変なことに巻き込まれなかった?」
灯梨「変なこと…ですか…?………あっ……(何かを思い出したように顔を上げる)そういえば、今朝…街のアーケードで変わった女性に声をかけられました。」
エルナ「その女性って…もしかして、白衣を着てた?」
灯梨「はい。女性と言うよりは女の子と言うのでしょうか…とても身長の低い女性でした。はじめは、「献血のご協力をお願いします」って言われたので…せっかくの機会だったから、了承したんです。すると建物の中へと誘導されて…その後のことは…全く思い出せないんです…(頭を片手で押えながら)」
エルナ「ふんふん…なるほどね……その献血団体の名前は覚えてる?」
灯梨「…確か…あの人の名札に…――――――『 秩序の箱庭 』…って、書いてありました。」
エルナ「…『秩序の箱庭』……(顎元に手を添え、おもむろにスマホを取り出しそのキーワードを検索にかける)…民間の慈善団体みたいだね…国境を越え、様々な国で慈善活動に勤しんでいるんだとか…ふーん…(画面をフリックさせながらその内容を確認している)」
灯梨「あの…いったい私、どうかしたんですか…?どうして、いつの間に入院なんか…」
エルナ「あ~…そうだね…(答えづらそうに神妙な顔つきをして)…お医者さんに君の容体を診てもらったの。そしたら、体内に妙な液体反応が検出されたみたいで、急いで確認したら…君の首筋に注射器の様なもので刺された痕が残っていることが分かったんだって。あ、でも液体のことは命に別状はないみたいだから安心してね。」
エルナ「…これは推測の話なんだけど… 君はあの慈善団体の女性に何か薬を射込まれ気を失い、一時的に洗脳されていたと思うの。私は、記憶の途切れたその後に君に出会っていたからね。」
灯梨「洗脳って…嘘…っ……(恐怖で表情が蒼ざめ、布団の裾をぎゅうと掴み出す)」
エルナ「彼女が何の目的で君に接触したのかは分からないけど…まあ、これからは変な人に声をかけられたら気をつけてね。」
コンコン…灯梨さーん。診察のお時間でーす。(病室の奥から看護師と思われる女性の声が聞こえる)
灯梨「わかりました…これから気をつけます…っ………!(不気味な話をした直後もあり、突然の看護師の声に恐怖を感じるほどに驚きを露わにする)あ…はい……!」
エルナ「……(そんな彼女の様子を見て、安堵を齎す様に背中を優しく摩り出す)協力してくれてありがとね。診察代は私が立て替えておいたから、あとは安静にしてて。それじゃ、なにかあったらこれに連絡してね。(自分の名刺をバスケットの隙間に差し込ませ、席を立つ)」
Dr.@「 ガ ラ ッ ――――― 診察のお時間でーす★ ―――――(何食わぬ表情で病室へ一歩踏み込む)」
エルナ「――――――ッ!!?(今まさに病室を後にしようとしたその時、開かれた扉の奥にいた人物の姿を視界に捉えた瞬間表情が強張る。その刹那の間に気が動転しそうになるがそれをぐっとこらえ、目の前に佇む現実を直視する。その後、「理解」と「疑問」が交錯する感情が、彼女に躊躇くなく襲いかかった)」
灯梨「ありがとうございます…!はい、また………?……ぇ……?(エルナを見送ろうとしたところ、彼女の行く手を遮るように現れた人物を凝視する)………っ……?!…あ…ぁ……ッ……(@の姿が目に入った時、記憶の中で悪夢の様な負の感情が濁流となって渦巻く。今朝出会った女性こそ、今目の前にいる@そのものだったから)」
Dr.@「どうかしましたか~?……おんや?あなたは…(エルナの顔をまじまじと見上げ、そして、悪魔の如き形相で歪な笑みを浮かべ出す)――― ああ、"さっき"の。(それは慈愛に充ち溢れた看護師の顔ではない。人命を玩具に捉える子どもの皮を被った悪魔の顔だ)」
エルナ「 ス チ ャ (刹那的に二丁拳銃を抜き出し、彼女に振り下ろした)」
――――― ズ ガ ア ア ア ア ァ ァ ン ッ ! ! ! ! (病院の6階にて凄まじい衝撃が迸り、その壁が瓦礫となって吹き飛ばされた)
Dr.@「――――― ボ フ ッ ! ! (煙や瓦礫と共に宙へ投げ出され、背中から落下し始める)」
エルナ「 タ ン ッ ―――(破壊された外壁の穴から自ら飛び降り、落下し行く彼女を追跡する) ス チ ャ ―――(瓦礫と共に落下する最中、照準を真下の彼女に合わせ) ダ ン ダ ン ダ ン ッ ! ! ! (怒りの感情を抑えつつも、容赦なく連射する)」
Dr.@「 ドッ ドッ ドッ … ッ … ! (全身に銃弾が全弾被弾し身体が僅かに仰け反る。しかしその表情は依然歪みを帯びたままで、真上にいる彼女を見上げては更に口角を上げ続ける)」
エルナ「――――!?(手応えがない…ッ…?“
アンビション”を纏った銃弾を、全部受けて…血も流さないなんて…)……ッ…!ダンッ、ダンダンダンッ、ダンッ ! ! ! (それでもなお発砲し続ける)」
Dr.@「クヒヒヒ……ッ…!(銃弾が肉の身体に次々とめり込む。風穴だらけの胸部を常にさらけ出しながら、彼女は顔色一つ変えず、エルナを嘲るようにただ嗤っている)」
ド ド ド ド シ ャ ア ア ア ァ ァ ァ ー ー ー ン … ッ … ! ! ! ! (瓦礫が駐車場に落下し、辺り一面に土煙が立ちこめる)
Dr.@「グルン―――― バサァ…ッ… ! (ふわりと宙で一回転し華麗に着地する)ク ル ル ン ッ ――― ス チ ャ ッ ! (腰元に携帯していた銃型注射器『シリンゲス』のトリガーを支点にクルクル回しながら、構える)フフン…♪さァて、悪い子の頭を治してあげないとね。―――― オペを始めちゃうゾ☆」
――― Vs. 《秩序の箱庭》 "A" Dr.@ ―――
エルナ「ス タ ン … ! (瓦礫の上に飛び乗り、落下寸前のところで地面へ受け身をとって転がるように着地する)悪い子はどっちだ…ッ…!何故あんたがここにいるのッ!?(二丁拳銃「シャウラ」による連続発砲。一発放つ度に時間の流れが緩やかになり、その一瞬の世界を掌握するかのごとく空間を駆け巡り、瞬く間に@の懐へ接近する)」
Dr.@「ドッ ドッ ドムッ … ッ … ! (銃弾が小柄な体に次々とめり込む。しかしその身体からは断末魔も鮮血も上がらなかった)―――― ニ ッ ―――― 何故って…知ってるはずでしょ?私は医者。ここは病院。私がここにいる理由なんてそれで十分すぎることじゃない?違う?あの娘(灯梨)の容体を見てあげようとわざわざ来てやったのに。手荒い歓迎だこと。(接近を許したにもかかわらず、その表情は余裕の枠を越えた嘲りを浮かべていた)」
エルナ「ッ……!(@の嘲笑が癪に障り、緩慢な世界の中で彼女の身体を真正面から蹴り飛ばし)あんたは医者なんかじゃない… 人の命を弄ぶ外道だッ!! ガッ――――ダンダンダンダンッ ! ! ! (蹴り倒した彼女の上に跨り、零距離で連射する)」
Dr.@「(撃ち込まれる度にびくんびくんと跳ね上がる身体。しかし、やはり彼女は顔色一つ変えることはなかったのだった―――)――― もーおしまい?芸の無い技だね。(エルナに舌を突きつける。「 A 」の紋章が刻まれたその舌が赤く発光し始める)」
エルナ「っ……!?(やっぱり効かない…どうなってるの…っ…?)(弾切れを起こすまで連射したものの、一切の手応えを感じないと悟り表情に焦燥が募る)んなっ――――!?(彼女の下に刻まれたアルファベットに目を見開くが、突如発光したそれに視界が眩い光に覆われ、思わず目を伏せる)」
Dr.@「カチャ―――― ズ ド ン ッ ! (片手に持っていたシリンゲスをエルナの右肩に密着させ、発射した)」
エルナ「がッ……!!?(右肩に激痛が走り、思わず彼女の身体の上から転がり倒れるが…)ゴロゴロ…ッ… ! (そのまま回転しながら地面を進んで距離を置く)はぁ…はぁ……(右肩を強く抑え込み、その手を恐る恐る見つめる)……っ…??(しかしその手に血が付着していないことに違和感を覚え、再び目前の@に視線を向ける)」
Dr.@「よいしょ。ポンポンッ…(ゆっくりと起き上がり白衣に着いた土埃を振り払う)まったく…酷いことしてくれるね、君は。ガ シ ョ ン ッ … パ リ ン ッ ! (シリンゲスを横へ強く突き出すとシリンダーに装填された空のアンプルが飛び出し地面に落下する) カ チ ャ … ガ チ ャ ン ッ ! (白衣の内側から薬品入りアンプルを取り出してシリンダーに装填し、シリンゲスを元に戻す)見てよこれ、穴ぼこだらけじゃん。(そう言い、被弾によって風穴だらけの全身を見せつける)」
エルナ「はぁ…はぁ……いっそ効かないなら…その土手っ腹におっきな穴を開けてあげる!(リロードを行い立ち上がる)」
Dr.@「むぅ…それは流石に不味いかもだねー。じゃ~…こういうのはどーでしょね?――― ズ ド ン ッ ! (そう言うとエルナに突きつけたシリンゲスを…突如自分の腹部に突きつけ、自らに発砲する)」
エルナ「……!?(一体何を…っ…?)(常に警戒を緩めず、いつでも発砲できるように狙いを定めている)」
Dr.@「―― ボコッ……ボコボコッ…ゴッ… ! ! (突如、彼女の全身の皮膚が膨張と収縮を繰り返し、みるみるとその姿形が変貌を遂げていく) シ ュ ゥ ゥ ゥ … (身体に起こった突然変異が収まったと思われた時、そこには…エルナの同僚にして相棒『クラッド』の姿があった)」
エルナ「……ッ…!!?(みるみると変わり果てる彼女の身体に、この世のものとはかけ離れた異物に対するそれと同じ感情を剥きだす。だが、その変化の先にあるものに、ついに言葉を失う。目の前に立つ見慣れた顔…紛れもなく『彼』と瓜二つの姿をしたそれを見つめ酷く動揺する)」
クラッド(Dr.@)「フ…フフ…ッ…♪ 君にはこの姿が相応しいかと思ってね。そうだろ?『クォエルナ』。(その肉声、口調、たち振る舞い…すべてが彼本人と見紛うほどにそっくりに演じられている)」
エルナ「…っ……(怒りを通り越した得体の知れない感情に身体が震え出す)その身体で……その顔で……―――― その名前を呼ぶなッ!!!(激昂と共に駆け出し、大気をも切断する勢いで強力な蹴り払いを繰り出す)――――――(そう思われた。しかし、その脚は彼の顔をした彼女の顔面に届く寸前でぴたりと静止する)」
クラッド(Dr.@)「――――!(顔面に感じる衝撃波に思わず目を見張るが、彼女が攻撃を"自ら制した"ことに愉悦そうに嗤う)――――恐いのだろう?(突きつけられたままの彼女の脚を右手で掴みそのままコンクリートの地面に叩きつける)」
エルナ「――――!!(恐怖を感じている自らの心境を悟られ、咄嗟に我に返るが…)―――― ぎゃぅ…ッ…!!!(その頃には既に地面に叩きつけられ、口内より勢いよく吐血する)」
クラッド(Dr.@)「(足元に横たわるエルナの胸倉を掴みあげる)…聞こえなかったのなら、もう一度聞こうか。…"恐いのだろう"?(もう片方の拳で掴んだままのエルナの腹部に想い一撃を炸裂させる)ほら…ほら、ほら、ほら。(続けて何度も拳をめり込ませ、完膚なきまで無抵抗な彼女をいたぶり続ける)」
エルナ「あがっ……(掴みあげられ、狭まる視界の中でその顔を見つめる)……ッ…!!(彼と酷似した顔。しかしその口から吐き出されたのは、彼の言葉ではなく…彼の皮を被った悪魔のそれだった)あ゛ぁ…ッ…!!(凄まじい一撃に全身に電撃が迸ったかのような痛みが走る)がッ…ひぐッ…!ぎゃ…ッ…あぎゅぅ…ッ……!!(何度も何度も殴られて意識朦朧とし、彼の手の中で浅い呼吸を繰り返す)」
クラッド(Dr.@)「人間は脆いものだよ。だが、"愛"は人を最も脆くする。(彼女の首を掴む手をぱっと離し)―――― そして砕け散る。(とどめの水平蹴りを炸裂させる)」
エルナ「ハァ…ハァ……ッ…(―――クラッ…ド……)(偽りの声を耳にする中、いつか彼に向けられた本物の笑顔が彼女の脳裏を過った)――― ガッ…! ! ゴロゴロッ… ド サ ァ … ッ … ! (声を上げる間もなく蹴り飛ばされ、コンクリートの上に横たわった)」
クラッド(Dr.@)「ああ…先程君に撃ち込んだのは、精神不安定剤みたいなものだ。政府のエージェントとともなればよほど不屈な精神を持ち合せているだろうからね。情緒不安定に陥ればこの通りなわけだが…(頭上に掲げたシリンゲスを見上げながら淡々と語り出す)まあ、今の君には聞こえていないだろうがね。ス チ ャ … (そしてその銃口を、もはや虫の息の彼女へと突きつける)―――― さようなら、クォエルナ。」
"愛"は人を最も脆くする、か…―――― 確かにそうかもしれないね。
―――― ザ キ ィ ィ ィ ン ッ ! ! (吹きつける突風と共に、@の手にしている銃が真っ二つに引き裂かれる)
クラッド(Dr.@)「――――!?(何者かの声を乗せた風によって、彼(彼女)の表情が硬直する)……!(引き裂かれたシリンゲスを手放し、エルナから退く様に引き下がる)」
ミシェル「(強風に靡かれながら二人のもとへと歩み寄っていく)…人は"愛"の前では無力だ。それだけに"愛"というものは計り知れない力が潜んでいるから。でもね、逆の捉え方もあるんだよ。"愛"が人を弱くするのなら―――― 人を強くするのもまた、"愛"だってね。(不敵な笑みを浮かべる道化師。だが、偽りの愛を演じる彼女に対するその瞳は、決して笑ってなどいなかった)」
クラッド(Dr.@)「貴方は…(道化師を睨みつけるように目を細め、強風が靡く中で静かに対峙する)……まあ、いいでしょう。口封じのためにモルモットを始末する予定でしたが…ここは一度身を引きます。では ―――― ズ シ ャ ア ア ァ ァ ッ ! ! ! (手にした双剣を地面へ叩きつけるように強く振い土煙を巻き起こす。煙が晴れた頃には、彼女の姿はもうそこには無かった…)」
ミシェル「……(彼女の姿が完全に消えたのを確認し、重症のエルナのもとへ駆け寄る)」
エルナ「ハァ……ハァ……―――――」
楔を落とされ… 敵を二度も逃がして… 民間を守れなくて… あいつと…あいつと同じ顔をしてるからって、何も出来なくて……
私は……
私は、無力だ…っ……
最終更新:2019年07月25日 10:55