有限体の位数は必ず素数の冪になる。



(補題1)
有限体の標数は >0 である。

(証明)
F := \{a_0, a_1, ..., a_n\} \ \ : finite \ field
とすると、F = F + 1 となる。
0≠1なので、F の任意の元 a は +1 の演算を施すことによって必ず他の元に写る。
もちろんこの演算(写像)は全単射である。
よって、任意の元は +1 を有限回(高々 n+1 回)施すことによって必ず元に戻る。
(b1→b2→...→bi→...→bm→bi等とならないことは全単射性より明らかなので)
したがって a + 1 + 1 + ... + 1 = a より 1 + 1 + ... + 1 = 0 となり、主張が正しいことがわかる。


(補題2)
体(整域)の標数は 0 または素数である。

(証明)
体 F の標数を n > 0 とし、n を素数でないとする。
n = pq とすると
0 = 1 + 1 + ... + 1 (n個)
= (1 + ... + 1)(1 + ... + 1) (p個×q個)
となる。体は整域なので
(1 + ... + 1) = 0 (p個) または (1 + ... + 1) = 0 (q個)
となる。これは n の最小性に矛盾。


(補題3)
F の標数が p > 0 ならば F の素体は Z/(p) と同型である。

(証明)
\sigma:\mathbb{Z} \ni a \mapsto a \bullet 1_F \in F
とすればσは準同型になる。
F が標数 p のとき、σ(Z) は Z/(p) に同型になり、これは F の部分体である。
また、σ(Z) よりも位数の小さい部分体は存在しないので、σ(Z) が F の素体になっている。


(有限次拡大について)
体の列 F ⊂ K があったとき、K は自然に F 上のベクトル空間となる。
たとえば
F = \{a + b \sqrt{2} | a,b \in \mathbb{Q}\}
は体であり、Q 上のベクトル空間としての F の基底の一つとして
\{1,\sqrt{2}\}
がとれる。したがって、Q ⊂ F は有限次拡大で[F:Q] = 2 である。


(命題)
有限体の位数は必ず素数の冪になる。

(証明)
有限体 K の素体を π とする。
K の標数を p > 0 とおくと、π は Z/(p) と同型。
また、K は π 上のベクトル空間になるので、
\pi = \{c_0, c_1, ..., c_{p-1}\}
とし、π 上のベクトル空間としての K の基底を
\{a_1, a_2, ..., a_m\}
とおけば、K の元は
c_{i_1} a_1, ..., c_{i_m} a_m \ \ \ \ \ (c_{i_j} \in \pi)
なる形に一意に表される。
よってこの数は p^m 個である。


例:GF(p^m)の代数拡大
多項式の世界で素数に当たるもの(より次数の低い多項式で割り切れないもの)を既約多項式(irreducible polynomial)という。
体 F 上の多項式 F[x]を既約多項式 f(x) = 0 で割ったあまりの集合を作ったり、
体 F の範囲では解けない代数方程式 f(x) = 0 の解を F に付加することによって位数が素数冪の有限体を構成できる。
(これらは同値である)
たとえば規約多項式
x^2 + 2x + 2 = 0
の条件のもとでは、
\{0,1,2,x,x+1,x+2,2x,2x+1,2x+2\}
はGF(3^2)となり、体をなす。

タグ:

代数学
最終更新:2012年08月09日 18:42