木崎湖:第2期仁科三湖水質保全計画書(平成13年)
まずは、
木崎湖の1997年に長野県から発行された第2期仁科三湖水質保全計画書から、基本データを参照するところから始めたい。
湖の緒元
緒元 |
青木湖 |
中綱湖 |
木崎湖 |
湖面積 |
1.86 |
0.14 |
1.40 |
湖容積(万km2) |
5,394 |
79.8 |
2,506 |
最大水深(m) |
58.0 |
12.0 |
29.5 |
平均水深(m) |
29.0 |
5.7 |
17.9 |
滞留日数(日) |
193 |
25 |
186 |
湖面標高(m) |
822 |
815 |
764 |
流域面積
緒元 |
青木湖 |
中綱湖 |
木崎湖 |
合計 |
流域面積(km2) |
7.30 |
3.57 |
22.42 |
33.3 |
流域人口(人) |
187 |
217 |
927 |
1331 |
水利用の状況
農業 |
農具川を通じて、かんがいに利用 |
水産 |
主要魚種(ワカサギ、ヒメマス)漁獲量8,347kg (H11) |
観光 |
散策、キャンプ、ボート、釣り等 約100万人/年 (H11) |
発電 |
昭和電工(株) |
仁科三湖のデータ
仁科三湖は大町市の北部に位置する三つの湖の総称である。糸魚川静岡構造線上の構造湖(断層湖)で、北から順に、青木湖、中綱湖、木崎湖の順に存在する。また、三つの湖は小規模河川の農具川で繋がっている。いずれの湖も程度の差こそあれ、水の透明度は高く、冬の木崎湖などでは透明度9メートルとる。これらの湖とその周辺環境は夏の間は観光地、避暑地として利用され、夏はキャンプ、ボート、冬はワカサギ釣りやスキーなど多方向で利用されている。
仁科三湖の自然景観
仁科三湖という名称は、中世から戦国時代にかけておよそ500年間にわたり、この地を支配した豪族仁科氏に由来している。この地は日本海側から姫川つたいにさかのぼってきた「塩の道」として交易上重要な役割を果たしてきた。また、現在では北アルプスの姿を湖面に映し出すことから「北アルプスの鏡」とも呼ばれている。
木崎湖
三つの湖をデータを踏まえて見てみたが、ここからは仁科三湖のうちでも最も観光開発が進んでいる木崎湖を中心に考察を深めていきたい。
木崎湖は、冬のスキーで賑わう白馬村を北側に、そして軽井沢を南方に控える場所に位置し、湖周辺を山で囲まれた地形となっている。また、湖の東側には国道148号線が通っており、関東から日本海側の糸魚川河口へ抜けるルートとして利用されている。また、同じ東側にJR大糸線も通っており、稲尾駅、海ノ口駅もそれぞれ湖の南東、北東付近にあり、その為、湖の東側のおよそ二分の一は護岸処理を施された状態となっている。
四季の移り変わりでみてみると、一年間のうちのおよそ三分の一(中秋~晩冬)は湖面は氷でとざされてしまう。水際の植物は針葉樹のほかは春季から夏季にかけてブッシュを形成するものが多いが、春夏以外は湖面を覆う植物はなく、ほぼ平坦な水際となる
水質を考えてみると、早春と晩秋には水深10メートル以深の部分では水温サーモクラインが生じ、上層の水と下層の水との逆転現象(成層現象)がおこる。それ以外の季節は通年を通して透明度は高く、冬季の時点では木崎湖の透明度はおよそ10メートルにもなる。また、木崎湖の水の流れは、主としては湖の最北部の農具側から(
その他山側の各所に湧き水、入水が存在)から水が流入して、湖西側の20メートル以深ラインを通って、南側の高瀬川へ抜けている。
木崎湖周辺環境とそこに関わる人々
現在、流域人口は、仁科三湖で1,331人であり、主な産業は観光、農業、漁業等であり、仁科三湖の水は発電、農業用水等に広く利用されている。また、三湖周辺を訪れる観光客は年間約100万人に及んでいる。
観光業
スキー客で賑わう白馬村に近く、木崎湖の近くにもヤナバスキー場があり、冬季は多くの観光客が訪れる。また、立山黒部アルペンルートにも近く、黒部方面を利用する宿泊客も多い。夏の観光地、避暑地としても利用され、6月にはホタルが飛び交い、美しい自然に触れることができ、8月には木崎湖花火大会が催され、多くの人出がある。夏季の木崎湖は、一様にしてバス釣り(ラージマウスバスに加え、北米原産のスモールマウスバスも生息)、ヨット、水泳、キャンプを目的とした人々が多く訪れる。その多くは湖の西側に位置する木崎湖キャンプ場や、北東の海ノ口キャンプ場が利用されている。
秋以降は閑散とした雰囲気となるが、ワカサギ釣りがピークを迎えボートが湖面に浮かぶ。11月頃は周辺の山々も紅葉して、色づき、特に気温の下がった時期に早朝には霧がよく発生し、山上の乾燥した気候とあいまって、湖の深緑、紅葉の赤、と青空美しいコントラストができあがる。その他、湖畔にはスポーツ施設などもあり、夏休み期間などはスポーツ合宿の地としても利用されている。
漁業
コイ、ワカサギ、フナ類など。近年ではブラックバスの定着が問題となっている。また、この木崎湖にしか生息しないといわれている木崎マス(サツキキマスの陸封型であるアマゴと、サクラマスの陸封型であるヤマメが自交配したもの)も生息しており、漁業の対象としてだけでなく、釣りのターゲットとしても人気の魚種となっている。
その他}
農業、発電利用
木崎湖:第3次長野県水環境総合計画書(平成15年)
第2期仁科三湖水質保全計画書から5年後の水辺環境を想定して作成された、第3次長野県水環境総合計画書の一部分「大北地域水辺環境目標:仁科三湖」ならびに「多様な水生生物が生息する環境の保全」の項から一部抜粋して現状変化を把握してみたい。
大北地域水辺環境目標:仁科三湖
水辺の自然
- 地域固有のキザキマスやワカサギ、ホタル、イヌワシ等の保全の重要性
- キザキコミズシタダミなどの貝類、ヌマカイメンの保護に努める。
- ブラックバス等外来種の駆除を推進する。
- 木崎湖湖岸に沿岸対植生再生を計る。
- カモ類等の渡り鳥の生息環境の保全に努める。
親水性
- 青木湖周辺の自生しているオオヤマザクラの保全に努める。
- 水生生物の観察会及び湖周辺の美化フェスティバルを市民対象に開催中。
流域の保全
- 流入河川等の整備を行う場合は、生態系等の水辺環境の配慮を行う。
- 民有林の約7割を占める広葉樹を中心とする森林の整備を図るとともに、保全林の指定を推進して、森林の水源かん養機能を高めます。
- 下水道等の整備を促進して、生活排水対策を推進する。
多様な水生生物が生息する環境の保全
いずれも多くの項目にわたって、環境保全が謳われている。多自然型水辺づくり、身近なビオトープの保全、整備、水と緑の空間の保全と創造等。施策を総体として示す場合、アカウンタビリティに注意が必要であるが、具体的な施策の提示が住民にとって親切といえるのではないか。
最終更新:2010年11月12日 01:10