原発魔術書 8幕~ 書き起こし

アリス「ちょっといいかしら?」

 夢見「いえっ?食い逃げではないですよ」

ちゆり「食い逃げする気だったのか…」

アリス「貴方達、この辺りでは見ない顔ね」

 夢見「うん?随分可愛らしいヤクザねぇ?」

ちゆり「冗談だからな!冗談。コイツ、ちょっと空気読めない所あってさぁ」

 夢見「こいつだとぉ?」

アリス「私、さっき起きた異変について調査しているの

    話を聞かせてもらってもいいかしら?」

 夢見「異変?異変って、ナンジャラホイ?」

アリス「異変が分からないの?貴方達、里の人間じゃないのかしら?」

ちゆり「その人里を探して放浪中なんだ、えへへへへ…」

アリス「放浪?幻想郷で?貴方達、外から来た人間?」

 夢見「そうそう、外から来たばっかりで右も左も分からないのよ」

ちゆり「おいっ!」

アリス「外から来たばかり…。博麗神社には行ったのかしら?

    帰り道を案内してもらえるわよ」

 夢見「あー、あの娘ちょっと苦手で~」

ちゆり「あっ、コラッ!」

アリス「ふーん、異変が起きたタイミングに現れた

    霊夢を知っている外の人間ね…」

 夢見「あは、はははは…。こりゃ、アウトかな?」

ちゆり「教授が話すと語るに落ちるっていつも言ってるだろ、ドアホ」

アリス「表に出なさい」

 夢見「おっおう…。やっぱ、ヤクザだよこの娘」

アリス「変わった事がなかったかと、聞きつもりだったけど、予定変更ね」

 上海「シャンハーイ!」

アリス「貴方達、幻想郷に何をしたのかしら?」

ちゆり「別に何も?」

 夢見「可愛い!何あれ!」

アリス「いつまでとぼけた態度でいられるかしらね…

    返答次第では、痛い目をみてもらうからそのつもりで」

 夢見「ちゆり君、この娘は私を脅しているのかね?」

アリス「脅しじゃないわ、忠告よ

    この娘達は私が命令すればためらいなく貴方達を殺傷するわ

    無事で済みたかったら、知っていることを洗いざらい話しなさい」

ちゆり「ほら見ろ、もうボロが出た。結局短期勝負になるんじゃいか」

 夢見「私悪くないも~ん」

アリス「五秒あげるわ、五つ数え終わるまでに私の質問に答えなさい、人間

    一つ」

 夢見「人のこと人間言うた、変わった言葉遣いが流行ってるのね~」

ちゆり「さっき空飛んでたぜ、妖精妖怪、それに準ずる何かって奴だ」

アリス「二つ」

ちゆり「なぁ、アンタ!私達はあんまし物騒な事は好きじゃないんだ

    ここは一つ、穏便に済まさないかな?」

アリス「三つ」

 夢見「どうしようか~、この娘、やる気満々よ?」

ちゆり「なるべく穏便が好ましいんだがなぁ、この場合」

 夢見「それじゃあ~…」

アリス「四つ」

 夢見「来~い!苺クロース!」

 

アリス「えっ?」

ちゆり「おかしい、私は穏便の意味を間違えて理解していたのか?」

 夢見「フッフッフッ、さぁお嬢さん?私をどうするんだったかな?」

アリス「気脈が狂った?違う!空間が不安定になっているんだ!」

ちゆり「気配だけで、変化を推察しやがった!教授、コイツただもんじゃないぜ」

 夢見「ふぅーん?どうしたのかな?五つ目のカウントが聞こえないよ?お嬢さん?」

アリス「なにこれ…あの十字架のせい?奴らの能力?」

ちゆり「あんたの事情はよく知らないが、私は人との接触を最小限に抑えたいんだ」

 アリス「戦闘になったら…」

ちゆり「悪いけど、何も言わずに帰ってくれないか?」

 アリス「間違えなくなにか知ってる、でも…」

 笑い猫「こんな訳の分からない連中の相手なんてしないほうがいいよ」

 夢見「お願い、聞いてくれる?」

 アリス「こんな訳の分からない連中、相手にしてられない、わね…」

 夢見「私、嫌いなのよ、弱い者いじめは」

アリス「行くよ、上海」

 

 

  九幕

 

 

 霊夢「こりゃ酷いわね~」

  藍「ああ、何をどうすればこういう状態になるのか、見当がつかないよ

    差当り、自然現象ではないことは間違いない」

 霊夢「ドリルか何かで削ったみたいだわ」

  藍「空間を結界ごと掘削したとでも言うのかい?」

 霊夢「うーん…」

  藍「おいおい、冗談だろっ、紫様の境界は言わば概念のような物だ」

 霊夢「そうなんだけどねー…」

  橙「概念のような物ってどういう事ですか、藍様?」

  藍「分からないか?」

  橙「はい」

  藍「では、教えてあげよう。普通、物を落とせば落下するね」

  橙「はい」

  藍「当たり前の事だろ?」

  橙「えっ?はっ、はい」

  藍「当たり前の事、他にはそうだね…。火鉢に触れると熱い

    食事を摂らないとお腹が空く、魚は水の中でしか生きられない、そうだね?」

  橙「はい、当たり前じゃないですか~」

  藍「そうだね、これら当たり前の事は魔術の類で変化させる事はある程度可能だ」

  橙「陸でも生きられる魚に出来るということですか?」

  藍「その通りだ、橙は賢いな」

  橙「えへへっ」

  藍「紫様の境界は、今言った当たり前、そういう類の物だ」

  橙「えっと、なんとなくしかわかりません…」

  藍「なんとなく分かればいい。当たり前である紫様の境界

    今、その境界がどのような状態になっているのかというと

    簡単に言えば、なかった事になっているんだよ」

  橙「なかった事!?当たり前の事がなかった事って言うと…

    魚が陸でも水でも生きられるって事ですか?

    あれっ、どっちでも生きられないのかな?あれぇ?」

  藍「私にも状態が判るだけだ。どう作用するのかは想像しかできないよ」

  橙「藍様にも分からないんですか!?」

  藍「この境界の作用を考えるに、恐らく…」

 霊夢「ちょっと、大丈夫なんでしょうね、これ~」

  藍「ああ、害はないはずだ、元より幻想郷に生まれた物…

    正しく幻想入りした者にわね…」

  橙「正しく幻想入りした人?それ以外の人ってどういう事ですか?」

 霊夢「人とは限らないわよ?たまに外から迷い込んでくる物があるの

    後は、他の世界から来た奴とか…」

  橙「ふ~ん…。そういうのは、どうなっちゃうんですか?」

  藍「それが分からないんだよ」

 霊夢「とりあえず影響はモロ受けするでしょうね」

  橙「それって、大変な事じゃぁないの?

 霊夢「まぁ、そんなレアキャラの心配はしなくていいんじゃない?」

  藍「そういう事だ。もう暫くで春になる。紫様がお目覚めになられるまでなら

    放置しておいても問題ないだろう」

 霊夢「結界の方も見た感じ、急がなくても大丈夫そうよ」

  藍「おいおい、それは困るぞ。ここまで来てサボろうというのか、君は?」

 霊夢「仕事はするわよ!ただ、な~んか

    今ここにいる場合じゃないような気がするのよね~」

  藍「うん?そうか…。具体的に何か判ることはあるかい?」

 霊夢「有るわけないじゃない、そんな気がするだけなんだから」

  藍「結局、出来る事しかやらない訳か…」

 霊夢「思ったより厄介そうな気がするわよ、この異変…」

  藍「どうする?結界は後回しにするかい?」

 霊夢「他ふらふらするのも面倒臭いし、ここはここで終わらせるわ」

  藍「そうか。ならば私は予定通り、異変実行者の拿捕に向かう」

 霊夢「気のせいついでに、気をつけなさい、と言っておくわね」

  藍「ふっ、私の心配をするのかい?珍しいね、博麗霊夢」

 霊夢「するわよ!アンタは貴重な駒なんだから…」

  藍「…分かった、厳重に用心しよう…。さて橙、お前は霊夢についていなさい」

  橙「ええっ、私も藍様と一緒にいます!」

  藍「霊夢はこれから暫く無防備になる。いざという時はお前が霊夢を守るんだ」

 霊夢「えー…。頼りにならないわね~…。そんな猫、居なくてもいいんじゃない?」

  橙「ほらっ、巫女もああ言ってますよ」

  藍「私の式を貸してあげよう、これで何とかするんだ」

  橙「藍様~…」

  藍「聞き分けなさい、お前は私の式だろ」

  橙「…はい、分かりました…」

  藍「いい子だ、霊夢を頼んだよ、橙」

  橙「藍様…」

 霊夢「さて、と…。邪魔すんじゃないわよ!」

  橙「ひっ、虐めないでね…」

 

 

  第十幕

 

 

 夢見「岡崎夢見、職業:大学教授、好きな食べ物は苺です!」

 阿求「はぁ…」

 夢見「パンツも苺なんだよ…」

 阿求「そう、ですか…」

 夢見「見る~?」

 阿求「ちょっ!」

ちゆり「慎め!ドアホ!」

 夢見「つっ、痛った~…」

 阿求「で、それで…」

ちゆり「私は助手の白川ちゆりだぜ」

 夢見「ちゆり君、もっとしっかり自己PRができんのかね!」

ちゆり「それを言うなら、自己紹介」

 阿求「あっ、ああ、いえ、構いませんよ…

    私が当家の主、稗田阿求です。よろしくお願いします」

 夢見「宜しく頼むよ君ぃ!」

 阿求「はぁ…、えっとぉ…。ご用向きを伺ってもよろしいでしょうか?」

 夢見「どこから話したらいいかなぁ?」

ちゆり「回りくどくてもしょうがないだろ、簡潔に用件を」

 阿求「何か、お知りになりたい事があって、いらっしゃったとお見受けしますが…」

 夢見「うん、そう!」

ちゆり「ズバリ、行け」

 夢見「うん!私ね、魔法使いになりたいのよね」

 阿求「魔法使い、ですか?私の知っている限りでも、何人かおられますねぇ…

    失礼ですが、貴方は…」

 夢見「人間ですよ」

 阿求「そうですか…。では…、私の知識では、人間から魔法使いになるためには

    捨食の術、捨虫の術を経る事が一般的のようですね…」

 夢見「捨食の術って、ナンジャラホイ?」

 阿求「簡単に言うと、魔法使いになる為の術で、この術の修業を経て

    完全な魔法使いへの過程を踏むわけですね~」

 夢見「へぇ~、修行とかするの~…。そういうのは、ないの方向で」

 阿求「ない方向で、ですか?」

ちゆり「捨食の術については、調査済みなんだ、効果なし、というかこの先生

    修行とかそういうのは、本当に、全く、完璧に全然向かなくってさ…」

 夢見「そういう事だよ、君ぃ!」

ちゆり「偉そうに言うんじゃない!」

 阿求「そうなんですか~…。言ってもらいませんと分かりませんよそういうことは」

 夢見「そういう事なんで、それっぽいのを一つ…」

 阿求「まあ…。ない事はないんですけど…」

ちゆり「おおっ、すっげぇ!流石、御阿礼の子」

 阿求「ええっとですね…。魔法の森に、アリス・マーガトロイドさんという方が

    住んでいらっしゃいます」

 夢見「聞いた事のない娘ね…」

ちゆり「ビンゴかもだぜ?」

 阿求「続けてもよろしいですか?」

ちゆり「頼む」

 阿求「この方は、魔法使いです。最近知ったのですが、どうもこの方

    不断の術を経ないで、魔法使いになったっぽいんですよ…」

 夢見「詳しく聞ける?」

 阿求「風説に聞き及んだことですので、あまり詳しくは話せませんが

    よろしいですか?」

 夢見「知っていることだけでいいわ」

 阿求「分かりました。とはいえ、普通に考えられる方法ではないらしい

    という事しか分かりません。ただ…」

ちゆり「ただ?」

 阿求「彼女が大事に持っている魔導書

    それが大きく関わっている事は間違いないそうですよ」

 夢見「なんか、本当に聞きかじりっぽい話ね、誰から聞いたの?」

 阿求「魔界に行った事のある方々です。霧雨魔理沙さんといいます」

ちゆり「魔界?」

 夢見「魔理沙、なの?」

 阿求「霧雨さんと、お知り合いなんですね?」

 夢見「知ってると言えば知ってるし、知らないと言えば知らないかも…」

ちゆり「いちいち混ぜっ返すな!

    そのアリスって娘、魔界と何の関係があるか聞いていいか?」

 阿求「この話は、全て霧雨さんから伺ったもので

    マーガトロイドさんは、魔界から幻想郷に来た方で

    この方は、霧雨さん、博麗さんと…

    あっ、博麗霊夢さんはご存知ですか?」

ちゆり「一応。 続けていいぜ」

 阿求「霧雨さん、博麗さんと親好深く、幻想郷に来た理由というのも

    魔界に居た頃に、このお二人と交流があった事がその理由だそうです」

 夢見「交流ねぇ…」

ちゆり「なんとなく、想像ついちゃったな…。それで?」

 阿求「そんな所です」

 夢見「魔梨沙の情報なら間違いないんじゃない?」

ちゆり「いや、魔理沙はハズレが多い…

    ここの魔理沙がハズレとしたら、眉唾だぜ?」

 阿求「なんですか?」

ちゆり「あっ、いやいや、別に!なんでもないぜ」

 阿求「そうですか…。少しはお役に立てたでしょうか…」

 夢見「ええ!素敵なお話ありがとう!」

 阿求「それは何よりです」

ちゆり「最後に、そいつの見た目を教えてくれないか?」

 阿求「見た目、ですか…」

ちゆり「直接会いたいんだ」

 阿求「そうですね~…。女性です!青い瞳に短い金髪で

    人形のように白い肌をしてらっしゃいます」

 夢見「ふむふむ…」

 阿求「他には…。そうですねぇ…。人形を操る魔法を扱われます」

 夢見「金髪で…、人形…。はて、どこかで…」

ちゆり「おいっ、それって…」

 

 

  第十一幕

 

 

 ロリス「お母さん、しっかりしてお母さん!」

  神綺「ごめんね、お母さん負けちゃった…」

 ロリス「大丈夫?痛くない?」

  神綺「大丈夫よ、ありがとう」

 ロリス「ごめんなさい、私が弱いから!…」

  神綺「うふっ、いいの。これはね、魔界にとっては、良かったことなのよ」

 ロリス「私がもっと強かったら、お母さんを守ってあげられたのに…」

  神綺「優しい娘…。お母さんはへっちゃらよ。もう、泣かないで…」

 ロリス「強くなりたい。誰にも負けない位

     強くなってお母さんを虐める奴は、皆私がやっつけてやるんだ!

     …えっ、お母さんの本が?」

  神綺「アリスちゃん?」

 

 

 ロリス「あれ、ここどこ?」

 笑い猫「こんにちは、初めまして」

 ロリス「貴方、誰?」

 笑い猫「僕の名前は、笑い猫。ようこそ、不思議の国へ」

 ロリス「猫さんが、どうして言葉を話しているの!?お母さん、お母さんはどこ?」

 笑い猫「君と会える日を楽しみにしていたよ…」

 ロリス「貴方もあいつらの仲間?お母さんをどこにやったの!」

 笑い猫「落ち着いて。僕は君の味方だよ」

 ロリス「お母さんはどこ!?」

 笑い猫「君のお母さんなら、外に」

 ロリス「外?外ってどういう事!?」

 笑い猫「外は外さ」

 ロリス「ここはどこ?」

 笑い猫「不思議の国さ」

 ロリス「元に戻して!お母さんの所に返してよぉ!」

 笑い猫「それが君の願いかい?違うだろう?君は別の強い思いがあった筈だ

     それを言ってごらん」

 ロリス「何を言っているの?貴方、誰?」

 笑い猫「僕の名前は、笑い猫。君の願いを叶えるために作られた

     絵本の水先案内人さ」

 ロリス「何、それ…。ここはどこなの?」

 笑い猫「不思議の国。君がお母さんからもらった本の中の世界さ」

 ロリス「そんなおかしな話が有るわけないじゃない」

 笑い猫「僕は嘘は言わないよ。君もこのおかしな世界が普通じゃないことぐらい

     なんとなく、判るだろう?」

 ロリス「う、うん…」

 笑い猫「僕は、君の願いを叶えるために作られたんだよ」

 ロリス「お母さんの、本」

 笑い猫「さぁ!君の本当の願いを言ってご覧?その願い、叶えてあげよう」

 ロリス「だってそんなの…」

 笑い猫「物は試しだよ、騙されたとおもってさぁ…」

 ロリス「私の…」

 笑い猫「さぁ…」 

 ロリス「私は…」

 笑い猫「…よく出来ました…。さぁ!願いを叶えてあげよう!

     僕についておいで、アリス」

 

 

  第十二幕

 

 

アリス「うっ、また頭が…。なんなの今日は…

    それにしても、何だったのあいつら…。間違いなく只の人間なのに…」

  夢見「私、嫌いなのよ、弱い者いじめは」

アリス「異変と関係有るのは間違いないと思うんだけど」

  夢見「弱い者いじめは」

アリス「うっ、ダメよ。ああいうヤバそうな奴はパス

    他に出来る事を探せば良いだけよ…。ん、何この魔力?

    家の中に誰か…居る?」

 神綺「アリスちゃん、お帰りなさーい!」

アリス「わーっと、ちょっと何!?はっ、何するの!ぎゃっ、お母さん!?」

 神綺「元気だった?」

アリス「何で、どうしてお母さんが家に居るの?」

 神綺「アリスちゃんに会いたくって、来ちゃった」

アリス「来ちゃったって、そんないきなり…」

 神綺「ねぇ、もっとよく顔を見せて?」

アリス「や、やめてよ…。こんな顔どこにでも有るでしょう?」

 神綺「少し痩せたみたい。こういう髪型も似合うわ」

アリス「いいから、くっつかないでよ…」

 神綺「お友達は増えた?」

アリス「もぅ、離してってば」

 神綺「照れ屋さん」

アリス「別に、照れてなんか…」

 神綺「アリスちゃん」

アリス「うん…」

 神綺「元気だった?」

アリス「うん…。突っ立ってないで、座れば?」

 神綺「うんっ。綺麗なお部屋ね。お母さんびっくり」

アリス「紅茶でいい?」

 神綺「ありがとう。ちゃあんとお掃除してるのね。安心したわ

    あっ!可愛らしいお人形さんいっぱい!」

アリス「あっ、ちょっと勝手に触んないでよ!」

 神綺「こんにちは、おばさんはねぇ、アリスちゃんのお母さんなのよ…

    あらぁ、おかしいわ?ご挨拶しないのね?

    アリスちゃんのお人形はお話してくれるって聞いたのよ?」

アリス「おばさんねぇ…。魔力切ったから今は動かないよ…」

 神綺「あらぁ…。お話してみたいわ?」

アリス「この娘達は自律で動いてる訳じゃないから

    会話って言っても、魔力を使った腹話術みたいなもんよ…」

 神綺「そっか。この娘達は、アリスちゃんの代わりにお話してくれるのね?んふふふふっ」

アリス「何よ?その笑い…」

 神綺「ねぇ、お話させてよぅ、うふっ?」

アリス「嫌よ、絶対に嫌!」

 神綺「うふっ、分かった。今はアリスちゃんと居るんだものね」

アリス「もぅ…」

 神綺「うふふふっ」

アリス「はいっ」

 神綺「ありがとうっ」

アリス「来るなら来るって、一言言ってくれてればいいのに…」

 神綺「アリスちゃんをびっくりさせようと思って…。どう、びっくりした?」

アリス「したよ、不法侵入やめてよねー」

 神綺「うふっ、アリスちゃんがいない内に、色々見ちゃおうと思って」

アリス「はぁ…。そういうのは、もう間に合ってる」

 神綺「あらっ、反応薄いのね…。」

アリス「それで、あっちはどう?」

 神綺「相変わらずよ、なぁんにも起こらないから平和そのもの

    霊夢ちゃん達、たまには遊びに来てくれればいいのにね?」

アリス「魔界が壊滅しても知らないよ~?」

 神綺「あらやだっ!あの娘達はそんな娘じゃないわよ?

    アリスちゃんだって、ちゃんとわかってるんでしょ?」

アリス「お母さん?買い被り過ぎ!あいつら二人共、ド外道の鬼畜人間なんだから…」

 神綺「ダメよ、アリスちゃん!お友達をそんな風に言っちゃ!」

アリス「友達!?あいつらと!?冗談でしょう?」

 神綺「してるんでしょ、霊夢ちゃんのお手伝い?」

アリス「そこよ!異変が起きたらいつも最初に動いてるんだよ!

    そういうのって、巫女の仕事でしょう?

    霊夢がしっかりしてれば、私はもっと研究に集中出来るのに…

    いつも土壇場になるまで、ボケーっとしているだけなんだよ!信じられない

    魔理沙は魔理沙で人の顔を見ると偉そうな事ばっかり言って

    自分の事、棚に上げてばっかりで!」

 神綺「うふっ、良かった…」

アリス「なんでそうなるのよ!」

 神綺「アリスちゃん、あの娘達と、仲良しさんになったのね…」

アリス「お母さん、話聞いてた?」

 神綺「お母さんはね、なぁんでも分かっちゃうのよ!

    夢子ちゃんもきっと、安心するわ…」

アリス「だから、あいつらとは!…嘘っ、夢子さんも来てるの!?」

 神綺「うん!貴方が家を出てからずぅっと心配してたのよ!

    今日もお母さん、一人で来るつもりだったのだけど、どうしてもって」

アリス「そっかぁ…」

 神綺「嬉しい?」

アリス「そりゃぁ嬉しいに決まってるよぉ!」

 神綺「アリスちゃん?」

アリス「何ぃ?」

 神綺「答えは見つかった?」

アリス「分かんない…」

 神綺「探し物をするために、幻想郷に来たんでしょう?」

アリス「自分が何を探してるのかも、分かんなくなってきちゃった…」

 神綺「まだ、続けるの?」

アリス「うん…」

 神綺「そっか…」

アリス「ごめんなさい…」

 神綺「いいのよっ、アリスちゃんがいないのは寂しいけど、こうしてたまに会えるんだもの」

アリス「お母さん…」

 神綺「そうだっ!相談乗ってあげようか?」

アリス「ダメっ、どうしても一人でやらなきゃいけない…

    ような気がするの…」

 神綺「そっ?」

アリス「うん…。ありがとうお母さん…」

 神綺「いいのよ。でも、たまにはお家にも顔出してね?皆寂しいがってるのよ?」

アリス「そうだね、それくらいなら…。あれっ…?」

 神綺「どうかした?」

アリス「お母さん、顔色悪くない?」

 神綺「あっそう?こっちに来るのに、力使いすぎたかな?」

アリス「疲れてるんじゃない?ちょっと休む?」

 神綺「そうね、甘えちゃおうかしら…」

アリス「うん、無理しないで…」

 神綺「その前に、お話だけ済ましちゃうわね…」

アリス「用事があったの?」

 神綺「大事な事、とても大事な事よ。アリスちゃん?あっ…」

アリス「お母さん!」

 神綺「大丈夫、ちょっと眩暈がしただけ…」

アリス「夢子さんが来るまで横になってて…」

 神綺「アリスちゃん…」

アリス「何?」

 神綺「近い内に、貴方の魔導書を狙う人が現れるわ…」

アリス「後で聞くから…」

 神綺「その人から本を守れないようなら、私と夢子ちゃんで封印します」

アリス「そっかぁ…、その為に来たんだ…」

 神綺「ごめんね…、用事でもない限りは、こっちから会いには行けないの…」

アリス「いいよ、気にしないで。あんまし帰れなかったのは、私も一緒だし…」

 神綺「貴方の魔導書は、誰かに渡すわけにはいかないの…。わかるわね?」

アリス「渡さないよ!お母さんがくれた物だもん!

    …うん。分かったよ、要はそいつらをやっつけちゃえばいいんでしょう?」

 笑い猫「やっつけられるような奴ならね」

アリス「はっ…」

 神綺「それは、そうだけど…。アリスちゃん、どうかしたの?」

アリス「なんでもないよ、何でも…」

 

 

  第十三幕

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最終更新:2015年03月24日 23:41