まどか☆前編 書き起こし

  鹿目まどか  みゆ助
  佐倉杏子   カノン
  美樹さやか  おとは

 杏子「おーっす、まどか。数学の宿題見せてくれよ」
まどか「えっ、また?昨日さやかちゃんに、自分でやるようにって注意されたばっかじゃん」
 杏子「ところがどっこい、さやかも今日はやってないんだよなー」
さやか「悪いまどか。その、昨日は…」
まどか「二人で遊んでたんでしょ…」
 杏子「おい、バレてるぞ…。なんでだ?」
さやか「いやアンタ、昨日思いっきり、ウチに来るって宣言してたじゃん
    それよりまどか、朝の用ってなんだったの?大分早く家を出たみたいだけど…」
まどか「お花に水をあげようかなって。園芸部に入ったから」
さやか「そういえば…そんな事言ってたっけ」
 杏子「どうせなら花じゃなくて、トマトとか林檎とか食えるもの作ってくれよな~」


  彼女の為を思って作った世界。
  それを守ることが
    できないのであれば
           まどマギ二次創作 ボイスドラマ

   その日の朝

  CV 暁美ほむら  ぽん子

 ほむら「今日は早く家を出て、まだ生徒の居ない桜道を一人で歩いていた。
     窓際にある私の席はこの場所からでも見上げることができる。
     わたしにとってこの席のメリットは窓から外を眺められることと、
     まどかの後ろ姿をいつでも見渡せること。
     しかし、並木道から私の指定席が不法占拠されていることに気がついた。
     そして、目を疑った。まどかが私の席に座っていたからだ。
     こんなに早く登校して来ただろうか?いや、いつも私より遅れてくるまどかが
     こんな時間に来ているのはどう考えてもおかしい…。何か有る…
     さて、まどかと二人で話をするまたとない機会が訪れた訳であるが
     安易に喜んでここで登場してもいいものか。
     考えた末、いや自然と私の足は教室へと向かっていた。
     無言のまままどかに近寄ると、慌てて私を見上げる。」
まどか「あっ、あー、ほむらちゃん。おはよう。ごめんね勝手に席に座っちゃって」
ほむら「おはよう、まどか。謝られてるところ責立てるようで恐縮だけど
    そこは私の席だからどいてもらっても良いかしら?」
 ほむら「冷たく見下ろすと、まどかの顔が凍りついた。心が傷まないでもなかった。
     まどかが立ち上がった席に腰をおろしたが、彼女はそこから動こうとしない。
     私はまどかを無視したまま、鞄から一冊の小説を取り出し
     挟んであった栞を頼りに続きを読み始める。彼女は動かなかった。 
     それどころか、『何読んでいるの?』と歩み寄ってくる。」
まどか「ファウスト?外国の人の名前かな?」
 ほむら「私は、違うとも答えず、無視を続けた。
     今度はまどかが目の前の席に座り、少し眠そうに欠伸をし、笑いかけて来た。
     それを無視して、文字を追うことに集中するが
     自分が今までに読んでいたはずの行がわからなくなってしまった。
     本の隙間から微笑みが見えては、何が面白いのかとそればかり考えてしまう。
     ニコニコと微笑むまどかの意図がわからない。既に私が悪魔ということにも
     自分が円環の理であるということにも気付いているのか。あるいは何かの罠か。
     急にまどかは立ち上がった。
     そして、『じゃあ、また』と言って自分の席へ戻ってく。何だったんだろう。
     そういえば、久しぶりにまどかと喋った。何日ぶりだろう
     私がしたことを考えれば、友達になって欲しいなどととても言えない。
     遠くから見ているだけで
     さやかと杏子達と笑い合う姿を見て満足していたはずね
     あの子が円環の理としての記憶を取り戻すこと。
     それは、この世界が壊れてしまうこと。私の夢の終わりを意味する
     気を引き締めなければ。」

 ほむら「翌日は更に早い時間に登校した。昨日並木道に斑に居た生徒達の姿もなく
     教室を見上げた。窓際にまどかの姿はなかった。
     当たり前だこんな早く来ているのは私ぐらいのものだ。
     今の状況を理解しているはずなのに。下駄箱から上履きを取り出す。
     その時私ははっとした。転校生であるまどかの出席番号は最後。
     一番左の下段に、一際小さな外靴がある。まどか、もう来てるの?
     まさか、本当に…」
まどか「おはようほむらちゃん。」
 ほむら「なぜ、こんな時間に…」
まどか「早いね…あっ、ちょっと待って、この水やったら全部終わるから一緒に上がろう?」
 ほむら「返事をせず昇降口の支柱に背を向け、
     花壇の方へ向け駆けていくまどかを遠目で見つめていた。花に水をやる
     楽しげな姿を見て思った。あんな風に多くの魔法少女達に希望を注いで来たのか。
     私はそれを踏みにじったんだ。」
まどか「おまたせ」
 ほむら「私はうんともすんとも答えないで、歩き出した」
まどか「ほむらちゃん、速いね。いつもこんな速いの?」
ほむら「今日はたまたまよ。目が覚めてしまって」
まどか「そうなんだ。ほむらちゃんは、早く来るのが好きかなって思ったんだけど」
 ほむら「それはもしかして、早く来れば私に会えると思ったから?
     いや、部活で水をやりに来たと言っている。何を期待しているの?
     それにしても随分と明るくなったものだ。
     転校初日なんてうどうどしていたのに、友だちができたことでできた余裕なのか
     これからも私の手の届かないところで、変わっていくんだろう。覚悟している
     遠くでまどかが幸せな姿を見守るだけで十分だ」
まどか「朝の学校って誰もいなくて少し寂しけど
    でも二人で歩くとなんだか、特別なことをしてるみたい。
    誰もいない場所を一人で歩いて行くのが、当たり前でよく知っている気がするの。
    ひとりきりが寂しいとか、そういう気持ちがわからなくなるぐらい自然で
    だけど、そんな所を誰かと歩くのはなんだか新鮮で
    あっ、でっ、何言ってるんだろうね私、変な子だ…
 ほむら「まどかはまだ、寂しいという感覚を取り戻せないで居るんだ
     私は『確かに変ね』と鼻で笑って、切なくなる心を鎮めた
     教室にはまだ誰も来ていない。つまり、まどかと二人きりだ」
まどか「あのね、ほむらちゃん。数学の問題でわからないところがあったんだけど
    教えてもらえないかな?」
ほむら「前に座りなさい」
まどか「ここね、半角の公式を使うと思ったんだけど…。違うのかな?」
ほむら「大丈夫合ってる。ただ計算が厄介なだけ。ほら、ここが間違ってる」
 ほむら「まどかから頼ってきたことだ。このぐらい良いだろうか
     そんなわけ無い、私は最初からこうなることを期待していた
     こんなのダメだ。まどかから声をかけてくれたとはいえ
     この時間を自分が望んでいたことに問題がある。
     いつかきっと泣くことになるだろう。私のまどか、私は悪魔だというのに
     悪魔なら悪魔らしく、自らもぎとった幸せを素直に喜べばいいものを
     理を犯し、それを潔しとしないで、罪の意識を感じるとは滑稽だ
     消しゴムで間違っている箇所を訂正するまどかを本越しに眺めながら思った
     悪魔にも人間にも、魔法少女にもなれない私は一体何なんだろう
     と、私の読書姿を眺めていて何が楽しいの?貴女は一体どこまで気付いているの
     どこまで思い出したの。何を感じて私なんかのそばに寄り添ってくるの」

 ほむら「それから数日が経った。
     朝のひとときをひっそりと二人で過ごすのが日課になりつつある。
     私が早く来ることをまどかは言及しない。
     代わりにまどかが毎日わからない問題を必ず一題持ってくることについても
     私は言及しなかった。まどかが何かに気付いているとは思えない。
     でも、何も気付いていないとも思えない。たった三十分、朝の三十分のうちに
     話すのは二回だけ。昇降口でまどかが水をやるのを待ち、その足音が聞こえたら
     振り向かずに校舎の中に歩いて行く。まどかは急ぎ足で『おはよう』と
     声をかけてくれ、私は『ええ』とだけ返事をして教室へと向かう。それが一回目。
     そして、私の席に向かって問題の解き方を聞いてくる。それが二回目。
     その二回が私にはたまらなく嬉しくて。まどかは私の読書を眺めていたのに、
     最近では慣れない早朝の登校のせいか、机の上でぐっすり眠っている。
     小説の隙間から見える寝顔を見て、素直に喜んで良いものか。
     本のページは一向に進まない。まどかを見ている間
     私の時間はいつも止まったままだ。
     それでも、私は今この時間こそ私らしいと思った。まどかのことを思い、
     苦悩し、心を疲弊していくこと
     あの時と変わらず彼女を守りたいという気持ちは、何一つ変わっていない。
     苦悩する最中であっても、なお彼女と過ごす時間が愛おしい。
     彼女を思い続ける限り、きっと私は救われない。それがわかっていても、
     手放したくない。まどかを失うのは怖い。だから、手を伸ばしたりしない
     触れたりはしない。無防備なまどかの寝顔がどれだけ魅力的であっても
     決して触れることなんて出来やしない。この三十分をただじっと耐える、
     生きている実感と、込みあげる衝動に打ちひしがれながら。
     朝、いつもの様にまどかが花に水をやる姿を昇降口のあたりで眺めていた
     最後の花に水をやると、まどかは空を仰いで暫く立ち止まっていた」
ほむら「うん?まどか」
 ほむら「どうしたのだろうかと思い、声をかけるかを戸惑っていると
     ゆっくりとまどかはこちらを振り向いた。私はすぐに背を向いて歩き出す
     そして彼女は言うはずだった、『おはよう』と、なのに、
     『ほむらちゃん!』と私を呼び止める声。それはいつにない慌てようで」
ほむら「あっ、まさか…」
まどか「待って…、待ってほむらちゃん!」
ほむら「思い出してしまったの?まどか…」
 ほむら「声から逃げるように私は走り出した、校舎の階段を駆け上がり
     まどかが追って来れないことを確認して、掃除道具入れの中に隠れる。
     ロッカーの中で息を殺していると階下からまどかの声が響いた。」
まどか「ほむらちゃん!お願い、待ってよ。」
 ほむら「どうする、もう一度記憶を引き裂くか。
     でももし円環の理として覚醒しているのであれば、私なんかが本気のまどかに
     太刀打ちできるの?あの時のような不意打ちが何度も通用するとは思えない。
     とにかくまどかの様子を見よう。そして気配を消して、後ろから近寄るしかない
     足早に階段を駆け上がってくる。そのまま私はまどかが通りすぎるのを待とうと
     息を飲む。が、まどかは一直線に私が隠れているロッカーへ歩いてくる。
     どういうこと…」
まどか「ほむらちゃん?そこにいるの?お願い、出てきて?」
ほむら「様子がおかしいと思った私はそこからまどかを見下ろした。」
ほむら「あなた、その顔…」
まどか「良かった…。ほむらちゃん。」
   早乙女和子  雪城あゆむ
早乙女「暁美さん?一体どうしたんですか?」
ほむら「まどかが、鹿目さんが…」
早乙女「どうしたのあなた、具合が悪いの?暁美さん、とにかく保健室に…」
ほむら「いえ、私が鹿目さんを家まで送っていきます」「
早乙女「わぁ!こらっ!待ちなさい!」

 ほむら「早すぎる、また終わりなの?
     たった一言言葉を交わすことさえ許されないと言うの?
     二人きりで過ごすはずの教室が、今日は生徒たちが登校する
     通学路に変わっていた。まどかを抱えたままの移動は目に付くな…
     まどかの側で安易に力を使う事はしたくなかった。
     とならばこのまま背負っていくしかないわね。全然起きないわねまどか
     昨晩は家に帰っていなかったのかしら。
     もしそうだとしたら、きっと詢子さんたちは心配しているに違いない
     通学路を反対に歩いて行くと、まどかの家の側までやってきた
ほむら「えっ!?」
 ほむら「どういうこと?鹿目家の有ったはずの場所に、あるべき家がなくなっていた
     どうなっているの?私は何度もこの家を訪れている。
     まどかがインキュベーターと契約しないように見張っていた頃から
     悪魔になった現在までずっと、その私がまどかの家の場所を間違えるはずがない
     ようやくそこで、まどかが家に帰っていないことに合点がいった
     ああ、帰れなかったんだ。ここは私が作った世界
     だがそれは以前のような結界で作り上げた、見滝原のような理想とは違う
     何もかも上手くいく所ではなくて、それどころか、信じられない程に脆く
     壊れ行く世界だった」


  一章 こわれゆくせかい  完

  Chapter1 The world under the crumbing  END

   声の出演
 暁美ほむら  ぱん子
 鹿目まどか  みゆ助

   声の出演
 佐倉杏子   カノン
 美樹さやか  おとは
 早乙女和子  雪城あゆむ

   イラスト
   ゆきもち
   きんふじ
     繭

   イラスト
   千石千鵆
    yuja
  うちゅうねこ
   幸村かなめ

 動画・演出 カマキリ

  エンディング曲
 「不枯の花を祈りて眠る」
 作詞/作曲 一譲はかる
   歌 maneko

 オープニング制作 Pluvia

 オープニングテーマ
 「Gnostic Children」
 作詞/作曲 まももP
 歌     nayuta

  原作 魔法少女まどか☆マギカ
 叛逆まどほむ合同誌「二人の銀の庭」
               Saturn より

まどか「夢じゃ、なかったんだ…」
ほむら「まどかを泣かせるために悪魔に成り果てたのか、違う、私はただ…」
ほむら「デザートのプリンなどどうかしら?」
まどか「うん、ほむらちゃんって、意外とお菓子とかケーキとか、好きなんだね」

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最終更新:2016年01月16日 15:17