彼女は4日以上の休みがあると、必ず師匠と修行に行く。
大抵は山籠もりなのだが、食料も持って行かないサバイバルである。
「武士たるもの、人前で寝てはいけない」
師匠がそう言うので、彼女は授業中に寝ないようにしている。
元から真面目な性格であるから、少女は彼が冗談交じりに言ったそれすらも真剣にこなしていた。
夜。
虫と鳥の声しか聞こえない薄闇の中、彼女は目を覚ました。
一般人にとっては完全な暗闇だが、彼女には何てことのない薄暗さだった。
殺気を感じた訳でも、何かの予兆を感じた訳でもない。
寂しくなったのかもしれない、と彼女はぼんやり考えた。
「師匠」
少し離れたところで眠っている師に、小さく呼びかける。
返事がないことに安心するのが不思議だった。
近付いてその顔を覗き込むと、想像よりも幼い印象の寝顔が浮かび上がった。
「師匠」
再度呼びかける。
彼の声を期待したのではなく、ただ呼びたくなったのだ。
「こうやって私の前で寝てるということは、師匠は私の前では武士ではないということですね」
声に出したつもりだが、それは自分でも口にしたのか疑問に思うほどの小さな音だった。
実際は口にしていなかったのかもしれない。
「お休みなさい、師匠」
彼女は囁いて、そっと師の髪をかき上げるとその額に口付けた。
「しからばよし」
夢の中かどこか遠くで、彼女は愛しいひとの声を聞いた。
ちょっとはラブいのも書くぜ!
と思ったら、師匠編が未了だったのでこんな破廉恥なのを書いてみました。
ザウルスなので改行は極めて少ないです。
師匠、起きていたのかどうかが謎ですね。
しかしどちらにせよ寛大です。
起きていたとしても、そして攻略に失敗したとしても
「僕には見えない」
で水に流してくれそうです。
血縁関係のないメンバの中で、破局(?)を迎えても唯一態度も距離も変わらない人。
(……そうなると、攻略失敗後を書きたくなってきたな)