朝日が窓から刺し込んで明るく照らし、小鳥が歌うようにさえずりまわる。
朝食を済ました面々はテレビや雑誌を見たり、何気ない会話をしたりと各々にリラックスしている。
いつもと変わらぬマルチアーノ家の休日の朝。
「みんなおはよう」
「おう、マーチおは――!」
メイを筆頭にマーチを見た者が一同に固まった。
マーチが着ていたのは、いつもの黒を基調としたゴスロリ風の服ではなかった。
着ていたのはスク水だった。しかも俗に言う旧スクと呼ばれる型であり、胸元には黒マジックで【マーチ】と書かれた白い布が縫い付けられいる。
そして足には水着を着ているのに、黒いスクールソックスを履いている。
朝日が逆光となって、マーチのシルエットをくっきりと浮かび上がらせる。
その光景は場違いというレベルを突き抜けて、休日のありふれた光景を非日常の世界に引きずり込んでいる。
「マ、マーチ。何やってるの?」
「知りたい? 「」」
「……一応」
マーチは口の端を吊り上げて、フっと笑った。
「いつもの休日にサプライズというスパイスを加えてみた」
「…………」
「タダ見は駄目…」
腰に手を当てて不適に笑みを浮かべたマーチと、コメントに詰まる面々が無言になるという結果からして、マーチの奇妙な目論見は成功したのかもしれない。。
そんなマルチアーノ家の休日の朝。
「で、なんでボクの部屋にいるの?」
メタルギアソリッド3をプレイしつつ、「」はマーチに問いかけた。
ベッドの上で壁に背もたれる格好で、持ち込んだ小説を黙々と読みふけっている。
「なんとなく。「」こそ何やってるの?」
「MGS3だけど」
「それの主人公の声が
ミスターに似てるから、あまり好きじゃない」
「左様ですか」
「他になにかゲームないの?」
「例えば?」
「エロゲ」
ブッと「」は噴出した。そんな反応を楽しむかのようにマーチは小さく笑うと、何か面白いことでも思いついたのかパタンと本を閉じた。
ゆっくりと部屋を見渡してからベッドから降りると、ベッドの下をしげしげと覗き込んだ。
「何してるの?」
「エロゲを探してるの。「」がどんな趣味なのか興味がわいたし」
ベッドの下にはめぼしい物は無いことを確認すると、机へと歩み寄る。
マーチは慌てて止める「」の声を意に介する事無く、次々と引き出しを開け放って中を漁ってみた。
「ち、ちょっとマーチ。人の部屋を無闇にガサ入れしないでくれよ」
「じゃあ、エロゲの隠し場所を教えなさい。ついでにエロ本の隠し場所も」
「普通は教えないって」
「それは残念」
「」はマーチが諦めてくれたとホッと胸をなでおろししかけた瞬間、胸倉をつかまれ強引にベッドへと投げ飛ばされた。
気が動転しているのもつかの間、マーチが「」の上に馬乗りになる形で乗りかかった。
ジャキンと音を立てて、「」の胸に愛用する軽機関銃【MINIMI】が突きつけられる。
弾薬は既に装填され、マーチが人差し指をトリガーにかければすぐに死の大放出が始まるであろうという状態だ。
マーチが「」の至近距離まで顔を突き出し、真っ直ぐ目を見た。
「マーチさん? これは一体……」
「「」、エロいのはどこ?」
悲しいかな「」には拒否権は無いようだ。
冷や汗が盛大に額から噴き出す。泣く泣く秘蔵の隠し場所を言おうと口を開くのと同時に、部屋のドアを
ジューンが開けた。
「「」、少し聞き…………あ」
ベッドの上の二人を見てジューンは目を丸くした。
少し汗をかいて熱っぽい「」の上にマーチが跨り、マーチかが「」に顔を突き出して迫っているように見える。
しかもジューンの視点からは、「」に突きつけられた軽機関銃がよく見えない。
傍から見ると「」とマーチが情事におよびかける寸前に見えないこともない。
ジューンは予想だにしなかった二人の姿に混乱したようであったが、赤面しつつ冷静を装った。
「あの……その、邪魔してすまない。気にしないでどうぞ続けて」
ゆっくりとドアを閉め切ると、ドタドタと足音を立てて去っていった。
突然の来訪者にマーチは興醒めしたのか、服の下に軽機関銃をしまった。
一体どうやってあんな大柄な銃を懐にしまいこんでいるのかと、疑問を持ったが知らないほうが身の為なので聞かないことにしようと「」は思った。
「勘違いされたようね」
「みたい」
「ところで「」。こういうのって興奮するの?」
「はいぃ!?」
「冗談よ。からかっただけ」
「勘弁してください」
そこでふと「」は、手に何か温かくて張りのある何かが触れていることに気が付いた。
何だろうと撫でてみると無表情にしていたマーチが恥ずかしそうに顔を赤く染め、少しだけ身を悶えた。
いやな予感がして、もしやと手元に視線を向ける。その手はマーチの太ももをしっかりと触っていた。
「あ」
「「」……」
「ち、違う! これ不可抗力で!」
「何も聞かない、何も言わせない。とにかく死刑」
マーチは大きく振りかぶり軽機関銃を取り出して、その銃口は慌てふためく「」へと向ける。
その後、部屋の外からも「」の叫び声と激しい銃声が聞こえた。
夕食時になり、次々と家の者たちが食卓を囲み始める。
ジューンは各所に包帯をを巻かれ、げんなりした様子の「」の隣に座った。
「昼間は……激しかった…………のか?」
「……滅茶苦茶にされたよ」
「そう、……頑張ったんだ。」
半分くらいの者が来たところで、マーチもやって来た。
静かな佇まいで「」の横に座り、コップに水を注いで一気に飲み干した。
まるで昼間に大暴れしたのが嘘のように、落ち着いた様子で今晩の夕食を待っているので、なんとか怒りを静めてくれたのかと「」は胸をなでおろした。
「面白いのを見つけたわ」
「?」
「貴方、結構意外な趣味の持ち主だったのね」
突然のマーチの発言に「」は狼狽した。まさか秘蔵の物品がいとも容易くマーチに発見されるとは思わなかったからだ。
「今夜は私の部屋に来るといいわ。朝まで眠らせないから」
「ま、待ってくれ。何を見つけたんだ?」
「エロゲよりも面白いものとだけ言っておく」
「もしやアレを見つけんたんじゃ……!」
いきなり慌てて取り乱す「」の様子にジューンは、いかがわしいことを企んでいるのではと思った。
よくないと知りつつも、隣で怪しい会話をされては気になって仕方が無い。
すぐさま探究心と理性が激しく葛藤して、探究心が勝ってしまった。恐る恐る疑問を口に出してみる。
「ふ、二人とも何を一晩中するんだ?」
「気になるのジューン?」
「ほんの少し」
マーチは目をキラリと光らして、口の端を吊り上げた。
「今は伝説となったスーファミと星のカービィ スーパーデラックスよ」
「え?」
「まさかこんな「」の部屋にこんなお宝があったなんて意外」
「チクショウ、これだけは見つけられたくなかったのに」
「どういうことだ?」
呆気にとられたジューンに、マーチはスーファミの重要性や希少性。星のカービィ スーパーデラックスの奥深さを延々と語りはじめた。
ゲーマーではないジューンには話の全てがチンプンカンプンであったが、嬉々とした様子で語るマーチを見てそれが本日最大のイベントである事は理解できた。
最終更新:2007年03月04日 19:54