「彼」は、常に近い場所にいた。

あるいは学校で。
持っている本の題名が、すれ違ったとき口にしていた話題が「何となく、気になる」。
そんなことが連続する相手だった。ただ足りなかったのは「話すきっかけ」。
それを得られぬまま、時は過ぎる。

あるいは社交界で。
階級(クラス)ごとに「群れ」を作るのが常の世界。
噂とゴシップの行き交う中、時折互いの名前を耳にする。
…話すチャンスを得られぬまま、時は過ぎる。

あるいは手にした新聞で、書籍で、互いの名を目にする。
目にするたび、なんとはなしに安堵する。

そんなことが、何年か続いていたなか、突然舞い込んだ邂逅。

「初めまして…というには、おかしな気分だな」
「確かに、不思議ですね」
「まあ」
「それでも」
「「よろしく」」

ひとつの邂逅は、世界を変える些細なきっかけ。
そしてきっかけのひとつが、確かに生まれた。


「気になるんだけど話すきっかけがなかった、友達になりたかった人」
のスタンス。
  • 寄宿学校でも、寮が違ったりするとなかなか話す機会が
  • 社交界に出ても、階級がちがうと群れも違うよね
という、シャンとの会話で生まれた短篇。

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最終更新:2010年12月04日 00:51