ティラノスクリプト内で実際に表記しているテキストです

本シナリオ(仮)ってことでがつんがつん書き換えたい心



今回も商隊はそれなりに満足する商売ができたらしく、商人たちはみんな気持ちのいい顔をしていた。
この国の海を北東へ進んだところに浮かぶ島が、この商隊の帰るところである。
その島のいくつかの村が協力して、定期的に「特産品や交易品の売買など行うための大陸に渡る商隊」を結成し
それに同行して警護をする仕事をしている者もいる。
その一人が"カジュ"だった。

#商人
「カジュ!そろそろ船の時間だぞ。何してる?」

#カジュ
「ちょっと待って。友達に土産を買ったらすぐ行くから!」
#商人
「友達?ああ…数か月前にお前が拾ったあいつの事か」
#カジュ
「あいつ、じゃない。"レーヴ"だよ」
#商人
「おお、そうかい。友達にレーヴ(ねぼすけ)とはひどい名前を付けてやったもんだな」
#カジュ
「だって、自分の事を何も覚えてないって…記憶喪失なんだから」
「いつもずっと眠たそうにしてるしさ。あだ名みたいなもんなんだって」
#商人
「…そういやぁ、今回もいろんな商会をまわったが…妙な病が流行ってるって話をよく聞いたな」
「そのねぼすけみたいに、眠くて眠くて仕方がない人間がふえてるんだとか」
#カジュ
「それって、病気なのか?」
#商人
「酷くなると眠ったまま目を覚まさなくなったり…逆にどんなに眠くても、眠れずにどんどん憔悴して倒れる人も出てるだとか」
#カジュ
「うえぇ…、それはキツいなあ」
#商人
「王城が調査を始めたらしいが、原因は未だ不明なんだと」
「おまえの友達はその病とは関係ないのか?」
#カジュ
「レーヴが…?」
#
そう言われてカジュは考えた。
#カジュ
(確かにレーヴも当てはまるのかもしれない…)
#商人
「実際はどうかしらんけどな」
「そら、待っててやるからさっさと土産を買って来い」
#カジュ
「あっ、そうだった!絶対おいて行かないでよ!」

#
大陸のある特産の果物を袋に詰めてもらい、カジュが商船に乗り込むと程なく船は出航し、島へと向かった。
買ったばかりの新鮮な果物を手に眺めながら、カジュはぼんやりと友達の事を考えていた。

#カジュ
(……さっきの話、もしかしたら本当にレーヴと関係があるのかも)
#
もしレーヴがもともと島の人間だとして、記憶喪失になり数か月も行方不明となれば、家族や知人が捜索願を出すだろう。
カジュもそれを考えて、島の役場にレーヴのことを伝えてあったのだ。
それから暫くしても、彼を探しているという情報は届いてこない。
だとすればレーヴは島の外…大陸からやってきて、そのあと島で記憶を失ったことになる。
何故なら、大陸と島を行き来するための定期便や商船は、乗船リストに名前や出身が記されるからだ。
それ以外の個人の船は許可が必要だし、さらにそれ以外は違法行為にあたる。
島に来るためには、自分の出自をしっかり覚えておく必要があった。

#カジュ
(……眠くなりすぎて記憶をなくす、なんてことあるのかなあ)

#
一人で考えていても埒があかない。
船が島に付いたらすぐさま村へ戻って、友達の所へ行ってみよう。
聞いた話をしてみれば、なにか思い出すことがあるかもしれない。


寄り道もせず村に戻るも、友人の姿は見当たらなかった。
すると、カジュは慣れたように村のはずれにある森の方へと歩き出す。


森の中を進むと程なくして、ひときわ大きな樹の下で居眠りをしている友人を見つけることができた。
(はじめて出会ったときも此処でこんな風に眠っていたっけな)
などと思い出しつつ、カジュはその友人を起こそうと声をかける。


#カジュ
「おい、またこんな所で眠って…起きろよ、レーヴ」
#レーヴ
「ん…」


#レーヴ
「カジュ…おかえり…?」
#カジュ
「ただいま!」
#
声をかける時、少しの心配はあったものの、異変の噂どおりに目を覚まさない…なんてことにもならず、胸をなでおろす。
レーヴはいつも村の家畜や畑の世話をして過ごす。
記憶喪失の影響なのか、ぼーっとしている事が多いものの、元々の性格なのか素直な所があって、村の人ともそれなりに上手くやっている様子だった。
ただ、時折こうして森にきては一人きりで眠ることが多かった。
カジュは目を覚ましたばかりのレーヴの傍へと腰を下ろして、大陸で起きている異変について伝えた。
#カジュ
「まるで、出会ったばかりのころのオマエみたいな話だと思わないか?」
「 ”レーヴ”(ねぼすけ)なんて…俺がつけた名前だけどさ…なんだか気になるんだ」
「もしかしたらだけど…記憶喪失をなおす手がかりとか、あるのかもしれない」
「なあ、一緒に調べてみないか?大陸に渡ろう!」
「ついでに異変を解決できたら、きっと報奨金がもらえるぜ!」
#
自分は何度も渡ってなれているし、モンスターも危険なところへ行かなければ大した危険は無いと知っていた。
いざとなれば鍛えた腕で友人を守ることもできるし。
レーヴは頷いて、そして二人は数日後、村を出て大陸へと渡り…まずは王都を目指すことになった。


出発の日の朝。
商隊の警護で同行するときと同じように、島の内陸にある自分たちが暮らす村から、大陸への船が発着する港がある村まで移動する。


今回は定期船に乗って大陸へ渡るのだが…、レーヴには確かな身元がわかるものが何もない。
カジュは荷物の中から一枚の用紙を取り出して、それをレーヴに差し出した。


#カジュ
「レーヴ、これを使って乗船の手続きをするんだ」
#レーヴ
「これは…昨日、の?」
#カジュ
「そう、昨日一緒に役場に行って作った…おまえの仮の身元証明書」
「おまえは今、レーヴって名前で、俺たちの村で俺と暮らす同居人ってことになってる」
「島の中じゃあそんなに気にすることないけど、大陸に渡るならこういう紙が身を守ってくれたりするんだ」
#レーヴ
「……」
#カジュ
「心配するなって、俺がいるから大丈夫だよ」


#
元気づけるように笑うカジュに、レーヴもこくりと頷いて見せた。
二人は乗船手続きを済ませ、定期船に乗り込んだ。

船は定時に港を離れ、数時間をかけて海を渡る。
甲板で揺られながら、塩気の含んだ風に吹かれる。
そんなこともレーヴにとっては珍しいことのようだ。
大陸から島に渡ってきたなら、船にだって乗ったのだろうし、と考えると、カジュには何だか不思議なことに思えた。


波は穏やかで、ほぼ定刻通りに定期船は大陸のいつもの港町へ着くことができた。

#カジュ
「船はどうだった?疲れたか?」
#レーヴ
「だいじょうぶ」
#カジュ
「そっか!」
「ここは△△っていう港町。島の人間にとちゃ大陸への玄関口さ」
「この町も人は多いし色んな話が聞けるけど…商人が多くて、とにかく忙しないんだ」
「だから、せっかく大陸に来たんだし、足を伸ばして王都まで行ってみるのがいいと思ってるんだけど…」
#レーヴ
「わかった」
#カジュ
「よし、決まり」
「いつも王都に行くときは商隊が馬車を借りて、半日くらいかけて行くんだ」
「今回は、乗合い馬車で停留所乗り継ぎながらだから…だいたい一日くらいかかっちゃうなあ」
#???
「おにいさんたち、王都方面に行きたいヒト?」
#カジュ
「…え?」

#???
「こんにちは~、俺はリツ」
「行商しながら各地を回ってるんやけど、おにいさんたちの王都に行きたい~、て話がきこえてさ」
#カジュ
「あ、うん、そうだよ」
「今から停留所に行こうと思ってたんだ」
#リツ
「それは良かった~」
「ひとつ相談なんやけど~、うちの荷馬車の護衛、してくれる気ないかなあ?」
「俺も王都の方面まで行いたいんやけど、最近噂になってる異変のこともあるし…一人やとちょっと心配でなあ」
「かといって、わざわざギルドで傭兵を雇う程やないし…」
#カジュ
「つまり…、ただで乗せてくれるかわりに、ただで護衛しろって事?」
#リツ
「話が早い~!」
#カジュ
「…レーヴ、どうする?」
#レーヴ
「…カジュが、いいなら」
#リツ
「食事もサービス、これでどう?」
#カジュ
「んー、わかった」
「レーヴが居るから心配だけど、リツはいい奴みたいだから…」
「戦えるのは俺だけだけど、商隊の警護もやってる」
「その辺のモンスターや野盗くらいなら、問題ないよ。それでいい?」
#リツ
「交渉成立!」
「改めまして、俺は行商やってるリツ」
#カジュ
「俺はカジュ、こっちは友達のレーヴ」
「△△島の△△って村から来たんだ。よろしく」
#リツ
「カジュ、と…レーヴ(ねぼすけ)?ふふっ、おもしろやな」
「こちらこそ、よろしくお願いするわ」

#
2人はリツの馬車に便乗して、港町から王都まで向かうことになった。




リツの荷馬車に3人で乗り込む。使い古されていて小さいけれど、よく手入れされていて、乗り心地は見た目よりも快適だった。
街道沿いの村々に立ち寄り、売ったり買ったり、交易をしながら王都を目指していく。
しばらくして、カジュは荷馬車の中でレーヴがうとうとと、瞼を重たげにしているのに気付く。 


#カジュ
「レーヴ、眠たい?」
#レーヴ
「…だい、じょうぶ」
#カジュ
「疲れた?」
#レーヴ
「…ううん」
#リツ
「次の村まで、結構時間かかるから寝ててくれていいよ~」
「二人いっぺんには困るから、片方ずつね!」
#カジュ
「…だってさ!レーヴ、先に休みなよ」
#レーヴ
「…わか、った」

#
返事を返すとそのまま寝息をたてはじめたレーヴ。
少し心配そうに見守るカジュ。
その様子を見ていたリツがそっとカジュに声をかける。


#リツ
「2人は、王都まで観光…ってわけじゃなさそうやけど」
#カジュ
「うん、ちょっと調べたい事があってさ」
#リツ
「そうなんや」
#カジュ
「リツが言ってた、噂になってる妙な異変ってさ…」
「もしかして、眠り過ぎたり眠れなかったりってヤツ?」
#リツ
「そうそう」
「はじめは何ともなかってんけどさ~」
「人数と症状がだんだん深刻になってきてるみたいでなー」
「原因がまだわからんから、まあ…誰でも不安になるわな」
#カジュ
「そうなんだ…うん、そうだよなあ」
「実はさ…」
「レーヴも、その異変に関係があるんじゃないかって思ってて」
#リツ
「島の人にも影響でてるんや?」
#カジュ
「それはどうなんだろう…わからない」
「レーヴは…、…その」

#
カジュは言いかけて口を噤んだ。
勝手に記憶喪失の事までリツに打ち明けてしまうのは気が引けたからだ。


#リツ
「あ~、いいって、いいって」
「人には、いろいろあるもんなあ~」
「でも、王都に行くのはいい案やと思う」
「王城のお偉いさんが調査に乗り出したって話あるからさ」
「もしも異変が関係あるなら、王都が一番情報あるんちゃうかな」
#カジュ
「そっか…」
「リツ、ありがとう」

#
カジュは、リツが自分を励まそうとしてくれているのだと感じた。
空気を少し変えようと、なんとなく気になっていたことを尋ねてみることにした。


#カジュ
「あのさあ、リツ」
「俺も質問していい?」
#リツ
「いいよ~、なに?」
#カジュ
「リツのコトバっておもしろいよね」
「どこらへんの訛りなの?」
#リツ
「えっ!」

#
リツは裏返った声を出して大きく肩を揺らした。
そんなに変なことを訊いたのだろうかと、カジュもつられて驚いた。

#リツ
「俺、コトバおかしかった?!」
#カジュ
「おかしいっていうか、独特だなあって思ってたんだけど」
「大陸だとそんなコトバの人もいるのかなあって…何か変なこと訊いちゃった?」
#リツ
「うわー、マジか…気をつけてたんだけどなあ」
#カジュ
「最初っからだったけど…?」
#リツ
「えーっ!」
#カジュ
「…今度から、訛ってたら教えよっか?」
#リツ
「うーん、そうしてくれたら助かるかなあ」
「ちょっとね、理由は言えないんだけどさ」
#カジュ
「人には、いろいろある…だもんな?」
#リツ
「そうそう!」
#カジュ
「あははは!」

#
たとえ、お互いに言えないことがあっても、相手の気のいい人柄に燻るものは何もなかった。
一日足らずの短い道中だけれども、いい友人に巡り合えたような気がして、すぐ傍にやって来る別れを考えれば今から少し寂しくなった。

(暗転)


……

#カジュ
「…-ヴ、おい…」
「レーヴ、起きろ…」

#
馬車の荷台で眠っていたレーヴの肩をカジュが揺らした。
いつもと様子の違う声色にレーヴが気付いて目を覚ますと、真剣な顔をしてカジュがこちらを覗き込んでいた。
荷馬車の幕から漏れて見える外の光はオレンジがかっていて、随分と太陽が傾いているのだとわかる。
カジュはレーヴに声を潜ませるように、と伝える。

#カジュ
「…野盗に囲まれてる」
「俺が何とかするから、レーヴはここでじっとしてて」
「でも、もしもの時は街道を走って近くの村まで逃げるんだ」
「役場で貰った証明書、持ってるよな?それを見せればなんとかなるから」
「…わかった?」

#
ピンと張りつめた空気を感じる。
その中でもカジュはいつものようにやさしく笑いかけて見せた。

#レーヴ
「…カジュ、は?」
#カジュ
「俺は戦えるから、大丈夫だよ」
「何ならレーヴの後をすぐに追いかけられるし…何も心配いらない」

#
穏やかに語りかけるその直後、外から知らない男とリツの声が聞こえた。

#野盗の声
「大人しく馬車を置いて去れば命は助けてやるって言ってるんだよ!」
#リツの声
「馬車も荷も俺の財産だ、簡単に手放すわけにはいかない…」


#
幕の隙間から外の様子を伺うカジュ。
リツと話すリーダー格らしい男と、手下らしい仲間が2人。
少ない。これなら何とかなりそうだけれど…と、様子を伺い続ける。


#野盗の声
「へえ、自分の命より大事なものがあるってのかい」
#リツの声
「少なくとも、不逞な輩にみすみすと奪われていいものなんか、一つも持ち合わせていないかな!」
#カジュ
「リツのやつ、煽っちゃってどうする…!」

#
だけれど、どうやら相手はリツ一人だけだと思っているようだ。
上手く奇をてらう事が出来れば…と、ハラハラしながらタイミングを見計らう。

#野盗の声
「さあ、悪あがきはよすんだ…でないと痛い目を見るぜ!」
#リツの声
「あれまあ、切れ味悪そうな剣だな~、質にも入れて貰えないんじゃないの」
#野盗の声
「なんだと!」
「それならテメェで切れ味確かめてみな!」
#カジュ
「ば、ばか…リツ…!」

#
リツの挑発に野盗が今にも襲い掛かりそうというその時、カジュも堪らず荷馬車から助けに出ようと身を乗り出した。
それに合わせたかのようなタイミングで突如、すさまじい音量の警笛が辺りに鳴り響いた。

ピィィィ――――――――――――――――――ッ!!!!

#野盗の声
「なっ…!?」
#リツの声
「この時勢に、一人でなんの警戒もなく馬車を走らせてると本気で思ってたのかい」
#野盗の声
「なんだとっ…!」
#手下の声
「お頭!こいつ仲間を呼んだんじゃ?!」
#野盗の声
「ばかやろう、こんなハッタリに狼狽えるな!」
#リツの声
「それはどうかな~、よっと!」
#野盗の声
「うわっ!」
#手下の声
「お、おかしら!前が…!」

#
混乱の怒号が辺りに広がる。
荷馬車から身を乗り出したカジュが見たのは、リツが懐から煙玉を取り出し、それを地面で叩き割って破裂させたシーンだった。
弾けて噴出した煙は荷馬車ごと野盗たちを巻き込み、視界はあっという間に白く霞みがかってしまった。

#リツの声
「カジュ!手下の二人まかせたー!」
#カジュ
「わかった!」

#
リツの声でカジュは荷台から飛び出して、煙の中を敵に向かって突っ切る。
相手は剣を抜き身にしていたが、動揺しきった所を突くのは難しくなかった。
一人を後ろから鞘に収まったままの剣で叩き付けて、踵を返した先に居るもう一人を柄で打ち抜く。


#手下の声
「ぐはっ!」
#手下の声
「うぐっ…!」
#野盗の声
「こ、このやろう!舐めたマネしやがって!!」
#リツの声
「善良な行商人に無体をはたこうとした報い、当然のツケやで!」

#
鈍い衝突音がひとつして、途端にあたりが静かになった。
残煙が残る中、リツは荷馬車へ大きく声を投げた。

#リツ
「レーヴ!もう安全やで!」
「それで、悪いんやけど~荷台の中からロープ、持ってきてくれへんかな~!」

#
呼ばれた声に幕からひょっこり頭だけを出して、煙の中で頷くレーヴを果たして目視できたのだろうか。
ともかく、言われた通りにレーヴは探し出したロープを手にして荷馬車を降りた。
リツの傍まで歩み寄れば、足元には無骨な大男が転がっていた。
どうやらリツが片手に持つ仕込み棒に仕留められたようだった。

#リツ
「ふっふ、俺もやるやろ?大丈夫、気絶してるだけやで」
「さ、そいつでガチガチに縛ってしまお」
#カジュ
「レーヴ、こっちにもロープちょうだい!」
#レーヴ
「うん」

#
野盗グループをロープで頑丈に縛り上げているうちに、あたりの煙は風に流されて、視界はほぼクリアーに戻っていた。
一応、辺りの様子を警戒してみるも、他に仲間の居る様子もなく、リツとカジュは視線を合わせて、やれやれと胸をなでおろす。
野盗たちを街道の端にまとめて転がすと、リツは荷馬車の車輪を注意深く調べ始めた。

#リツ
「あ~…」
「襲撃受けた時にちょっと車輪、やられてしまってるわ~」
「まだ走れそうではあるけど…次の町で修理しないとダメやな~」
#カジュ
「こいつらの事も通報しなくちゃだし、もう日も沈むよ」
「リツ、修理もするなら今日は次の町で夜が明けるのを待とう?」
#リツ
「せやな~、そうしよ」
「それにしても、はらたつー!」
#カジュ
「あのさあ、リツ」
#リツ
「うん?」
#カジュ
「コトバ、訛ってる」
#リツ
「あっ…」
#

(暗転)



#
すっかり日も暮れて、濃紺の空に月が星を纏い出る頃に、3人はようやく次の町へとたどり着くことが出来た。
ひとまず宿をとり、今日の疲れを取ることにして馬車の修理は明日の朝、という事になった。
街道沿いにある町は、さほど大きくはないものの往来が多いために宿場町としては充実していた。
馬を荷台ごと厩舎に預けることができると、次に3人は町の駐屯所へ足を運ぶ。

#リツ
「ごめんくださーい」


#
リツが駐屯所のカウンターで駐在を呼び出す。
その後ろでカジュがレーヴに状況を説明した。

#カジュ
「悪いやつを見つけたり捕まえたら、こうやってギルドか駐屯所に教えに行くんだよ」
「場合によっては、指名手配されてたりしてて報奨金が出ることがあるんだ」
「もし、自分が被害にあったり困ったことがあっても、ここに来れば相談に乗ってくれるから」


#
レーヴは静かに頷いて、駐在とやりとりを交わすリツを見つめる。
何やら話し込んだ後、リツはカジュとレーヴの元まで戻ってきてにっこり笑った。

#リツ
「さっきのあいつら、小物やけど指名手配かかってた~」
「今から街道まで回収に行ってきてくれるらしいから、これでひとまず安心かな」
#カジュ
「おつかれ!」
「報奨金は出そうかな?」
#リツ
「手配書の照合と一致してたらいくらかは出るだろうって感じかな」
「明日また確認しにくるわ~」
#カジュ
「そっか、それならあとは宿で休むだけだね」

#
3人はリツお勧めによる行商人御用達の安宿の一部屋を借りて、ようやく一日の旅仕度を解くことができた。
身軽になってベッドに腰を落ち着かせると、3人ともがそれぞれに緊張から解放された安堵の表情を浮かべた。


#リツ
「カジュもレーヴもお疲れさま」
「二人が居てくれて助かった~」
#カジュ
「ほっとんど、リツが一人で何とかしてた感じだったけどね!」
#リツ
「そんなことないよ~」
「一人やったらさすがに馬車置いて逃げ出してたもん」
「でも…」
「これからの事を考えたら、レーヴも武器扱えるようになった方がいいんやろな…」
#カジュ
「それは…」
#リツ
「あくまで護身としてさ」
「レーヴは、どう思う?」





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最終更新:2015年05月04日 04:18