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第三話 闇の戦士のライダーパワー! プリキュア最後の日!? (前編)

「私たちにも、アイツが何者なのかは詳しくは知らない……」

変身を解いたキュアピーチこと桃園ラブは、同じく変身を解いた士を真剣な目で見据えながら言葉を放っていく。
それは士にだけでなく、その当時仲間ではなかったキュアパッション、東せつなにも伝える意味を持っている。

「あの銀色の怪人は、『全てを一つに』って言ってた。
 そして、その言葉の通りプリキュアを吸収しようとしていたの。一度は街を壊して、その街に住む人達も吸収しちゃった……」

その時のことを思い出したのか、ラブは僅かに肩を震わせる。
ラブにとってはあれはある種敗北の記憶、だが同時に成長したと実感出来る戦いだった。
だが、士はそんなラブを気遣うことなどせずに目を鋭くして顎をしゃくり続きを促す。

「前は、他のプリキュアたちと力を合わせて撃退したの。そのプリキュアとは今日会うことになっているんだけど……」
「ちなみに、その時に使ったのがこのレインボーミラクルライトだナツ!」

そう言いながらナッツは肩から下げたポシェットから一つのミラクルライトを取り出す。
一見するとただのペンライトにしか見えない。
だが、これはただのペンライトではないと士にも分かる。

「これはプリキュアの力を引き出す道具だナツ」
「なるほどな、海東の奴が欲しがりそうな分かりやすい『お宝』だな」
「海東……仮面ライダーディエンドのことナツか!?」

ナッツの言葉に士は驚きに顔を染め、直ぐに呆れに染まる。
手の早い奴だと思っていたが、まさかもう『お宝』に手を出しているとは思わなかった。

「もう手を出してたのか、相変わらず手の早い奴だ。で、あの馬鹿は何処だ?」
「……それが、仮面ライダーディエンドはあの怪人に負けて、吸収されてしまったナツ」
「……またか、アイツは」

士は驚いたような、けれども呆れたように呟く。
確かに海東大樹、仮面ライダーディエンドは強いが、どうにも慢心する嫌いがある。
まさかシンケンジャーの世界と同じようなことが起こるとは。

「全く、面倒ばかり運んでくる奴だ」
「多分、ディエンドの力へと手に入れてアイツは強くなってるナツ! 一刻も早くプリキュアたちが合流しないと……!」

ナッツが汗を流しながら力説する。
ディエンドの力とフュージョンの力の両方を知っているのは今のところナッツだけだ。
その唯一の人物だからこそ、現状の恐ろしさがよく分かるのだ。
自分が持つ情報をプリキュアに伝えるために犠牲になったシロップのためにも、一刻も早くプリキュアとの合流しなければならない。

「でも、ナッツ。思ったよりも早く集まりそうだよ」
「ナツ?」

だが、そんなナッツへとラブは落ち着かせるように笑顔で答える。
次に放たれたナッツの疑問の言葉、その言葉に答えるように呑気な声が響きわたった。


「おーい! みーんーなー! やっほーい!」


その呑気な声は士とせつなを除く四人は良く知った声。
声の主はラブたちと同じプリキュアの仲間、プリキュア5のリーダーポジションの夢原のぞみだ。
ナッツは目を輝かしてのぞみの姿を見つめる。

「ナツ! みんなー!」

「ナッツさん!? いつの間に来てたんですか!?」
「シロップは一緒じゃないんですか?」

ナッツの姿にキュアミント、秋元こまちが驚いたように声をあげる。
彼女たちの頭の中ではナッツはまだナッツハウスに居るはずなのだ。
それにナッツが居るのにシロップが居ないのもおかしいとうららも声をあげる。

「夏みかん、何でお前まで居るんだ?」

その横で、何故かのぞみたちと居る夏海に対して士が呆れたように尋ねる。
夏海はそんな士の様子に若干むっと顔をしかめるが、直ぐに慌てたように口を開く

「士くん、大変なんです!」
「仮面ライダーの偽物が出たんだろう、それぐらい分かる」
「……ひょっとして、士くんの所にも出たんですか?」
「ああ、ナイトとゾルダらしいのがな。動きは悪い上に頭まで悪そうだった」
「こっちはキバでした……なんか、銀細工の人形みたいでしたけど、あれはキバでした」

そう答えて、夏海は考えこむように顎に手をやる。
一方で士は軽く息をつき、先程聞いたプリキュアの敵について説明してやる。
その敵には形を変える特質があり、しかも力を収集するのが目的である。
収集の方法は、とてもわかりやすく人間を取り込むようにして吸収すると言うことだ。
それでこの世界にきて早々海東が取り込まれ、仮面ライダーの力を知られてしまった、というのが今の状態。

「つまり、その敵はプリキュアだけじゃなく士くんとユウスケも狙ってる……ということですか?」
「恐らくだが、まあそんなに外れてはいないだろな。多分さっきのは様子見か、それとも別の目的があるのか……
 まあ、とにかく敵は十中八九、プリキュアたちが戦ったとか言うそいつだろうさ」

士が断定するような口調で言い放つ隣では、ナッツが慌てたように口を開く。

「ナ、ナツ……大変なんだナツ!
 ナッツハウスにあの時の銀色の変なのが出て……シロップが助けに来てくれたナツけど追ってきた奴に襲われて……!」
「ナッツ、一先ず落ち着くココ! とにかくシロップが危ないってことココ!?」

ナッツは動揺しているのか、焦るように早口で言葉を口にする。
そのナッツを諌めるようにのぞみの胸に抱かれたココが口を開く。
幼い頃から共にいたココの言葉にようやくはっとしたのかナッツは軽く深呼吸をした後に頷く。

「仮面ライダー……そういう力を新しく手に入れたアイツに襲われたナツ。
 ナッツはシロップのおかげでラブたちと合流出来たけど、シロップは……」

そこで言葉を切るナッツに、ココは顔を真っ青にする。
シロップは仮面ライダーなる怪人の襲撃を受けて……死んだしまったかもしれない。
もちろん助かった可能性もあるが、それはあくまで希望的観測というものでしかない。
どうしても頭に過ぎってしまう嫌な予測に、ココは顔を青ざめたのだ。

「なるほどな、だいたい分かった。
 つまり、とりあえずは他のプリキュアとそのシロップとか言うのを探すわけだな」

その話に聞き耳を立てていたのか、士は割り込むように口を開く。
ナッツの姿に気を取られすぎていたのか、驚いたようにプリキュア5の面々は士に視線を合わせる。
そこでラブが慌てて前に出て説明をする。

「えっと、こっちはさっきのナッツの話でちょこっと出てた味方の『仮面ライダー』さん。
 それで、この子が新しいプリキュアの東せつな!」
「よろしく」
「門矢士だ」
「……どうもよろしくお願いします」

軽くかれんが頭を下げ、それに釣られるように他のメンバーも頭を下げる。
本来ならもっと盛り上がるはずなのだが、とラブは表情を暗くする。

「ちょっと、嫌なタイミングになっちゃったね」

たははー、と笑いながらラブは溜息をつく。
突然現れた敵と仮面ライダーと言う未知の存在によって新しい仲間と言う明るい話題も台無しだ。
出来る事なら、もっと和気あいあいとした場にしたかった。

「そうだね、だから早く、解決して一緒に遊んで仲良くなろっか!」

ラブのそんな気持ちを読み取ったのかのぞみが声を張り上げる。
何も考えていないような、それでも不思議と頼りになる表情を張り付けている。
一瞬ぽかんとしてしまうが、ラブは釣られるように笑顔になる。
やっぱり仲間と言うのは素敵だ、そしてその輪にせつなも入って欲しい。
それがラブの気持ちだった。

「……お前らプリキュアはあのライダーもどきを倒すんろう?」

その空気を断ち切るように、士は口を開く。
のぞみの言葉である程度場の雰囲気が良くなったと見て、次は現実的な話に持ち込もうとしたのだ。
空気を悪くする、と言ってしまえばそれまでだが、そういう役割が必要なのも事実だ。

「うん、またあんなことするだろうから、放っておくわけにはいかないよ」

のぞみはやはり深く考えていないように軽く返事をする。
この迷わない即決する態度は彼女の長所なのだろう。
そして、それを周りのメンバーがかばい合う。
りんはのぞみを自重させ、うららはのぞみに同調しつつも自分の考えを持ち、こまちはそれを見守り、かれんは冷静に問題を対処し、くるみはのぞみと競争しながら成長していく。
無駄のない良いチームとなっているのだ。

「出来るなら、力を持っている貴方にも手伝って……」
「……まあ、いい」

士はひどく鬱陶しそうな顔をしてかれんの言葉を遮る。
仲間になって欲しい、その言葉はあまり聞きたくないと言わんばかりに。

「俺には俺なりの考えがある、お前らと敵対することはないだろうがな。
 今言えるのは、あのライダーもどきが俺の力を奪おうとか言うなら叩き潰す。それだけだ」

否定しているようなキツイ口ぶりで、結局は協力すると肯定の言葉を放つ士。
のぞみとはまた違うベクトルで変人だとプリキュアの面々は判断した。
そして、夏海は『はぁ……』と疲れたように息を吐いて親指を立てる。
光家秘伝の笑いのツボを突く際の構えだ。


「相変わらずめんどくさいな、士は。素直に協力するって言えばいいじゃないか」


だが、夏海が士の首筋に親指を立てるよりも早く、呆れたような言葉とバイクの排気音が響き渡った。
士と夏海にとっては聞き慣れた排気音だ。
二人の予想通りにそこにはスマートな流線を描くバイク、トライチェイサー2000に跨った青年・小野寺ユウスケの姿があった。
なにか続々と集まってきたな、と士は思いながら軽くため息をつく。

「元々、そういうつもりなんだろ? わざわざツンケンとした態度を取る必要なんかないじゃないか」
「別に俺はそんなつもりはない」

まるで出来た兄が駄々をこねる弟を諌めるようなユウスケの口調にカチンと来る。
士は士なりに考えがあり、それをわざわざ言う必要もないからそれなりの態度を取っているだけだ。
ゴマをする必要もない、だから自然と嫌な奴と取れる態度になってしまうというだけ。

「んー、ひょっとしてその感じだとその子たちもプリキュアなのか?」
「……その子たち、『も』?」

ユウスケの発言にその場に居る全員が不思議そうに声を揃える。
当のユウスケは相変わらず好青年という言葉が似合う表情で声を出す。

「俺もプリキュアに会ったんだ、もうそろそろ来ると思う。
 しかしすごいな、まさか変身しなくても空を飛べるとは思わなかったよ」
「変身しないで空を……? でも、そんな人居たっけ?」
「ちょっと、知らないですね……」
「あれ、でも確かに変身して……キュアブルームとキュアイーグレットだったかな……」
「咲と舞は変身したら空を飛ぶけど、変身しないと飛べないわね」

『あれぇー? おかしいな』とユウスケは言いながら首を捻る。
その様子からユウスケが嘘をついているようには思えないが、変身もせずに空を飛べる仲間は居ない。
そんな中で、新入りのせつなが躊躇いがちに口を開く。

「新しい仲間、っていう人じゃないのかしら?」
「ああ! ええっと……満さんと薫さんだっけ?」
「そうそう、そんな名前だった!」
「だったらそいつらは今何をしてるんだ……!」

さすがだ!と言わんばかりにラブがせつなの言葉を受け入れ、ユウスケもうんうんと頷きながら肯定する。
士がいらついた様に非難の、だが確かに親愛のある言葉、いわゆるツッコミというものを入れる。
そして、お約束と言うべきか、それに答えたのはユウスケではなく空から響く甲高い声だった。


「ちょ、満、薫! 速いよ幾らなんでも! 落ちちゃう! 落ちちゃうぅ!」


その声には士と夏海とせつなを除く全員に聞き覚えのある声だった。
ソフトボール部のエースとして活躍している日向咲、腹から出る良く通る大きな声だ。
全員が空を見上げる。
鳥か?飛行機か?いいやプリキュアだ!と言わんばかりにゆったりと飛んでいる二つの影。
同じような速度でゆったりと着地する。
そこには暗い青色のセーターとロングスカートを着た二人の少女が日向咲と美翔舞を背負っていた。

「舞、ここで良いの?」
「え、ええ……ここがタコカフェ、よ……」
「大丈夫、咲」
「ダメかもしんない……」

ぐったりとした様子で、だが自分の足で咲と舞は立つが、直ぐに備え付けの椅子に座り込む。
空の旅は決して快適ではなかったようだ。

「って、皆居るの!?」

ぐったりすること、数分。
そこでようやく気づいたように咲は半ば叫びのような声をあげる。
まるでコントのようなやりとりに苦笑しながら、ココが頷く。

「久しぶりココ! そっちの子たちが咲と舞の仲間の女の子なのかココ?」
「そうムプ!」
「満と薫だフプ!」

ココの声に反応したのはその当事者でなく、肩に乗っかかっていた妖精のムープとフープ。
二匹の妖精が懐いていることから、決して悪い人間ではないようだ。

「えっと、こっちが霧生満で、こっちが霧生薫。その、空を飛んでたのは……」
「良いの、咲」
「プリキュアなんでしょ? だったら、私たちが自分で言うわ」

説明をする咲が何かを含むような言い方しているのに、勘の良い面子が僅かに顔をひねる。
そして、満と薫は顔を俯かせながら声を振り絞る。
まるで神様に懺悔する人間のようだ、と士は他人事のように思った。

「私は……かつて咲と舞、プリキュアに敵対してた、普通の人間じゃない人間」
「滅びの力を持った、生身でプリキュアとも戦えるような人間。
 咲と舞が居なければ、間違いなくこの世界を壊してたような奴よ」
「で、でも、満と薫は私たちの友達だよ!」
「そうよ、満さんと薫さんは、私たちの大事な友達!」

咲と舞が慌てるようにフォローをする。
ここに居る皆がそんなことで満と薫を迫害するような人間ではないと知っている。
だが、それでも心配だった。
場が固まる、どう言えば良いのか分からないのだろう。
その口火を切ったのは、新たな仲間である東せつなだった。

「私と一緒……」
「そうだね、せつなと一緒だね」

せつなが思いつめたように口を開き、対照的に柔らかくラブが笑う。
次に美希と祈里が笑い、ラブが説明するように口を開く。
曰く、せつなは最初はラブたちの敵だったと。
曰く、ラブを騙すために近づいたがやがて友情を覚えたと。
曰く、その暖かいものに耐えきれなくなり攻撃を仕掛けるがそれでもプリキュアは受け入れたと。
その言葉に咲と舞、薫と満は唖然としたように口を開ける。
何故ならせつなのプリキュアになる成り立ちは満と薫と全く一緒だったから。
また、この場に居ないキュアブラックとキュアホワイト、美墨なぎさと雪城ほのかが居れば同じく唖然としていただろう。
そして、ほのかは思わず沈んでしまうかもしれない。
かつて親愛の情を覚えたキリヤという少年も、ひょっとしたらふたりと肩を並べて戦っていたのかもしれない、と。

「のぞみ……?」
「うん、大丈夫だよココ。ちょっと思い出してただけ」

一方で、のぞみはかつて鏡の奥に存在する世界で出会った、生まれたばかりで何も知らなかった友達のことを思い出す。
その友達は今はもう居ないが、満と薫とせつなと同じで敵だが友達になった女の子。
プリキュアのメンバーの空気がしんみりとするが、のぞみは笑顔を見せてそれを振り払う。

「いい話だなぁ……なあ、士」
「俺に振るな」
「そうですね……」

僅かに涙ぐんでいるユウスケに、士は冷たく突き放し、夏海は聞かれても居ないのに頷き返す。
こんなのばかりか、と思いながらも海東のようなのばかりというのよりはマシかと考え直す。
根はいい奴だがひねくれている士が居る分、割合は取れているのかもしれない。


「あかねさん、あかねさん! もう皆来ちゃったりしてますかー?!」


まるで空気読んだような、場の雰囲気が切り替わった瞬間に声が響く。
何度目ともなる、一部の人間以外には聞き覚えのある声。
弾むようなこの声は美墨なぎさだろう、そう思いながら全員がそちらを向く。
やはりそこには美墨なぎさと雪城ほのか、九条ひかりの姿があった。
だが、唯一予想外だったのはひかりが抱えている一匹の妖精の姿。

「シロップナツ!」
「無事だったんココね!」
「……」

ココとナッツが目に涙を浮かべながら喜びを示す。
ブラックとホワイトとルミナスの三人と一緒なら無事だろう、そう素直に思うことが出来るのだ。
この三人はバランスの取れたチームだ。
圧倒的な破壊力を持つブラックとホワイトに、プリキュア一の後方支援役のルミナス。
偏ったバランスではあるが、優れたチームであるのは間違いない。

「大丈夫ですよ、今は眠っているだけです」

返事をしないシロップを心配そうに眺めるココとナッツにひかりは優しく微笑みながら答える。

「あー、皆もう来てたのかー……」
「大変なんです、それが……」

なぎさは肩を落とし、ほのかは顔を引き締めて全員に話を始める。
だが、士はそれを聞かずに屋台へと向かう。

「聞かなくて良いのか、士?」
「いい、多分同じだろう。このことに関しては、だいたい分かったしな」

ユウスケの言葉に簡単に答えて士は腰に手を当てて、空を眺める。

「この空が唐突に曇ったのも、アイツの仕業ってことだ」

およそ数キロ先の、曇り切った空を眺めて、士はポツリと呟く。
余人ではその瞳の奥に眠る真意を探りきれない。
その瞳はこの世界で何を映し、何を思うのか。




 仮面ライダーディケイド×プリキュアオールスターズDX みんなともだち☆奇跡の全員大集合!


         【闇の戦士のライダーパワー! プリキュア最後の日!?】



.


「あれって……!」

なぎさが唇を噛み締めながら呟く。
見覚えのある風景だ、友達が増えた素晴らしい日であったが、同時に許せない敵を目の当たりにした日。
その敵は生きており、また悪事を企んでいる。
友人との変哲もない日々が大好きななぎさとしては見過ごせるものではない。

そして、それはなぎさだけではなく他のプリキュアも同じだったようだ。
全員が顔を見合わせ、頷き合い変身アイテムを手にとる。

「落ち着け」
「そ、そうやでー! 今はとにかく落ち着くんや!」

だが、それを諌めるように士とタルトが口をはさむ。
士はたこ焼きを作りながら、プリキュアたちへと言葉を投げかける。
タルトは止めたは良いものの、言葉が上手く見つからないのかオドオドとしているが。

「あれが敵の攻撃なんだろう? だけど、ここまでは届いてない。
 そして、前も似たようなことがあったけど元に戻ったんだろう?
 なら、今は落ち着いて対策を練るべきだと思うがな」
「せやでぇー。勇み足で飛び出してそのまま落とし穴に落ちたら洒落にもならへん!」
「そうナツ……」

士の言葉にタルト、それにナッツも同調するように頷く。
そして、ミラクルライトを取り出しプリキュアたちに話しかける。

「推論に過ぎないナツけど……多分、アイツはプリキュアの力が天敵なんだと思うナツ。
 ディエンドは簡単に吸収されちゃったけど、ピーチたちの吸収にはちょっと時間がかかったナツ。
 プリキュアたちはそれぞれが持つ特性は違ってもベクトルは同じ光の力……それがアイツの弱点なんだと思うナツ。
 そして、ここまであの曇り空が完全に届いていないのはプリキュアたちが集まってるからナツ」

ナッツの言葉にプリキュアたちは完全に足を止める。
士とタルトとナッツ、一人と二匹の言葉を合わせるなら確かに今は急ぐ必要などないのかもしれない。
だが、フュージョンを野放しにしてはおけない、という気持ちが嫌と言うほど表情に現れている。
士は僅かにため息をつき、たこ焼きをひっくり返す。

「たこ焼きが余っていたんだ。そのついでに新しいのも出来たから、せめてこれを食っていけ」
「……あかねさんがバイトが入るって言ってたけど、ひょっとして士さんなんですか?」

ほのかが目を丸くしながら、人数分のたこ焼きを持って外に出てきた士に尋ねる。
そうだ、と士は短く答えテーブルにたこ焼きを置いていく。

「あの……あかねさんは?」

その言葉に、状況が状況なだけに聞きたかったが聞けなかったひかりがオドオドとした様子で士に尋ねる。

「……さあな、買出しに行ってそのまま敵に飲み込まれたのかもな」
「そんな!」

たこ焼きを並べながら士はタンパクに答える。

「落ち着け、話を聞く限り前は敵を倒したら元に戻ったんだろう?
 吸い込んだものは敵が倒されれば元に戻る、それが分かっている以上今は落ち着いて対策を取る時だ」
「そうは言っても……」

なぎさが僅かに顔をしかめる。
直接の後輩として可愛がっているひかりを煽るようなことをいう士の言葉を簡単に肯定はできない。
言っていることは正しいとは思う、だが言い方というものがあるのではないか、ということだ。

「ほれ、とりあえず食べろ。腹が空いてはなんとやら、だ」

そう言って焼きたての大量なたこ焼きをテーブルの上へ置き終わった。
ほかほかの湯気がたち、上に載せられたかつお節がゆらゆらと風にゆられまるで生きているようだ。
ついでと言わんばかりにジュースをジューサーごとテーブルに置く。

「ああ、金は払えよ」
「え、ええ!?」
「ひどいマッチポンプね……」

祈里が士の言葉に叫びを上げ、美希がたこ焼きを引くついた顔で眺めながら呟く。
確かに勝手に作って金を払えとはひどい話だ。訴えられても何の文句もできない、というか訴えられるべきだ。
元々集まってたこ焼きを食べるつもりだったが、こんなやり方はどうも納得できない。
とは言え、こちらを落ち着かせるための行動だと思うとこういう強引なのも悪くはない。

「おお、えらい美味いなぁ!」
「プリプー!」

沈んだ雰囲気の中、先に声を上げたのはフェレットのような妖精、タルトと赤ん坊型の人形を思わせる妖精、シフォンだった。
元々食い意地の張ってあるタルトと赤ん坊そのものなシフォンには美味しそうに漂ってくる香りは我慢できなかったのだろう。
その二人の言葉に、釣られるように妖精たちが食べていく。

「美味しいメポー!」
「いつものと違って、なんか新しい感じがするポポ!」
「本当……美味しい……」

まずは我侭な妖精の代表格であるメップルとポルンが食べ、次にパン作りが好きな満が興味津々に口へと運ぶ。
それにつられて他の面々もたこ焼きを食べていき、それぞれが感嘆の声をあげる。
自分のたこ焼きをほめる声に鼻高々な士は、一方で一角に座っている一団へと近寄る。
ほのか、かれん、美希、ナッツのこの状況で食い意地を張らずに何かを考えている一団だ。
最も、美希はたこ焼きが苦手なだけなのだが。

「で、そいつはどういう奴なんだ」
「士さん……」

ほのかが驚いたように声を上げるが、直ぐに顔を引き締め直して口を開く。

「一度、私たちの前に現れた敵は攻撃を仕掛けてきました、何の警告も発さずに。
 そして、一度技をくらって飛散せずに空に逃げて行った」
「その後に空が突然暗くなったところがあって……そこに向かっていると敵の襲撃にあった。
 最初みたいに一体だけの化け物じゃなく、徒党を組んだ化け物の集団に」
「私たちは、最初に敵とあって戦ったんですけどその時に敵が力が足りない、みたいに言ってたわね。
 しばらくは何もなかったけど、そんなに間を空けずに街が破壊されて……明らかに力を増したアイツと戦って、一度は押された」

順にほのか、かれん、美希の順番の言葉だ、そしてそれを整理して士は考える。
恐らく敵の最初に襲いかかってきた、というのはナイトとゾルダのポジションだろう。
不完全なコピーで弱かったのではなく、技を受けて力を手にいれるために弱くしていた、と考えるのだ自然か。
聞いた話では、他のプリキュアの対応も士と変わりはなく真正面から撃破したらしい。
つまり見事に士たちは敵の作戦に引っかかったというわけだ。

「……士、聞きたいことがあるナツ」
「ナッツ?」
「仮面ライダーの力は恐ろしいナツ。それはディエンドとディケイドを見たからこそ、ナッツはそう思うナツ」

突然口を開いたナッツにかれんは不思議そうに問いかけるが、真剣な瞳をしたナッツは士を見据えたままに言葉をつなげる。
やがて、その隅の一団に気づいたのかこの場に居る全員の視線が士とナッツに映る。

「ナッツが読んだ文献にはディケイドは世界の破壊者、言うなら憎むべき敵として書かれてたナツ。
 もちろんナッツはこうして味方をしてくるディケイドの印象が悪いわけじゃないナツ。
 でも、あの文献はちゃんとした信用出来るものナツ。その文献に書かれてた、ということは何か理由が……」
「ナッツさん、その、士くんは」
「俺は過去の記憶がない」

夏海が耐えきれずと口を挟むが、それを封殺するように士が言葉を重ねる。
そして、ナッツの真剣な瞳を見返しながら、言葉を続ける。

「俺が何者なのか、俺がどこから来たのか、俺が何をするべきなのか、俺が休める場所はどこなのか。
 ……それは分からない。だが、俺はここに俺として居るし、俺だけの考えで考えることが出来る。
 そう出来る以上、俺は俺のやりたいようにやるだけだ」

ぶっきらぼうに言い切り、ジュースに口を含む。
その言葉は決してナッツの聞きたいことに対する答えではなかったが、不思議な説得力を持った言葉だった。
ナッツはもう何も聞かずに、たこ焼きに口をする。
それだけで良い、という意思表示なのだろう。

「それに、俺の勘が正しければお茶はそろそろ終わりだ」
「えっ? なんでラピ?」

口元をぬぐいながらディケイドライバーを取り出す士に長い耳が特徴的な妖精フラッピが尋ねる。
だが、士は答えずに曇った空を眺める。
士の視線に釣られるように全員が空を眺める。

その瞬間、雷のような閃光が降り立った。

「これって……!?」

ラブは見覚えがある光景に、震えるような声を出す。
そして、降り立った場所には、一つの銀色が、確かに居た。


『プリキュアァ……』

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最終更新:2010年03月06日 21:14
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