その日、桜田家にはいつも通りの平和な時間が流れていた。
PCに興じるジュン、読書にふける真紅、広告の裏でお絵かきをする雛苺、台所では翠星石がクッキーを焼いていた。
オーブンを開け、中のクッキーの様子を見る翠星石。
クッキーの状態に満足すると、翠星石は雛苺のもとへ行き、ジュンの部屋にいる2人を呼ぶように伝えた。
「ジュン~、真紅ぅ~、おやつなの~。」
「おう、分かった。」
そう言うと、ジュンは真紅とともに部屋を出ようとした。
「・・・あら?ジュン、PCが点けっぱなしなのだわ。」
PCのモニタが明るいままなのに気付いた真紅が言う。
「ああ、どうせすぐ戻ってくるだろうし・・・それに点けとく必要があるからな。」
「あら・・・そう。」
そして、2人は台所に向かっていった。
「ふっふっふ・・・。」
誰もいなくなったジュンの部屋の窓から不敵な笑い声が聞こえてくる。
その声の主は第2ドールである金糸雀であった。
「今日も今日とて桜田家に潜入でゴザルの巻!かしら!!」
そう言って、窓に手をかける。
どうやらジュンが鍵をかけ忘れていたらしく、窓は簡単に開いてしまうのだった。
「ジュンには防犯能力という言葉が無いのかしら?でも、カナにとっては好都合かしら。」
そう言いつつ、部屋の中をキョロキョロする金糸雀。
すると、彼女もジュンのPCが点けっぱなしになっていることに気付いた。
「あら・・・?PCが点けっぱなしかしら。ジュンってば全然エコロジーじゃないかしら!」
そう言うと、金糸雀はPCのモニタ前に行き、電源を落とそうとした。
その時、彼女の目にモニタ内のサイトが映る。
「これは・・・『クロスオーバー小説創作スレ』・・・?」
なんとなく気になってしまった金糸雀は近くにあったマウスで画面を上にスクロールさせる。
すると、そこにはジュンが書き込んだと思わしきレスがあった。
「『仮面ライダー電王 × ローゼンメイデン』・・・?」
金糸雀は何かに取りつかれたかのように読み始める。
「何なに?『その日、デンライナーにはいつもどおりの平和な時間が流れていた』・・・。」
その日、デンライナーにはいつもどおりの平和な時間が流れていた。
ノートPCで過去の戦いを参考にした小説を書く野上 良太郎、将棋に興じるモモタロスとキンタロス、
<金瓶梅>と書かれた小説を涼しげに読むウラタロス、スケッチブックに落書きをするリュウタロス、
そしてカウンターではナオミとコハナが自分たちを含めた人数分のコーヒーを入れていた。
「はい、どうぞ。」
コハナが良太郎にブラックのコーヒーを渡す。
一方、ナオミの方はいつもの色とりどりのクリームがごってり乗ったコーヒーをイマジンたちに配っていた。
「あ・・・ありがとう、ハナさん。」
良太郎はキーボードを叩くのをやめると、コーヒーを口に含んだ。
「・・・平和だ。」
「ん?良太郎、何か言った?」
「あ・・・いや、平和だなぁって思って。」
「・・・そうね、考えてみれば良太郎が電王になってもう3年。
その間に数えきれないくらい大ピンチがあったもんね。牙王、カイ、ネガタロス、
幽汽、それにアリゲーターイマジンとゴルドラ&シルバラ・・・。」
「半年に1回は大ピンチにあってる計算だね・・・。」
苦笑いしながら、良太郎はコーヒーをすする。
「でも・・・まあ、もう大丈夫・・・だよね?」
「私もそう思いたいけどね。」
そう言って、コハナもコーヒーを飲もうとした。
その時、突然デンライナーを謎の衝撃が襲う。
揺れる車体。
その衝撃で将棋の配置はめちゃくちゃになり、ウラタロスは椅子から落ち、完成間近のリュウタロスの絵にコーヒーがこぼれ、
そしてコーヒーを飲んでいたコハナと良太郎は顔に熱々のコーヒーを被るのであった。
「な・・・何なんだいったい?!」
「モモの字!とりあえず後部車両を確認しに行くで!!」
そう言って、モモタロスとキンタロスは部屋を出た。
後部車両の展望台に到着したモモタロスとキンタロス。
そこにはオーナーの姿もあった。
「おっさん!いったい何が・・・って、おい!アレ、幸太郎のデンライナーじゃねえか!!」
モモタロスが指差した先には、良太郎の孫である野上 幸太郎が所有するNEWデンライナーがあり、
車体は後部車両に半ば強制的な形でドッキングしていた。
「あんにゃろう・・・いきなり何してくれたんだ!俺が一発ぶっ飛ばしてくる!!」
「・・・ってモモの字、どうやって幸太郎のところに行くんや?」
「シュワッチ!」
モモタロスは車両が動いているにも関わらず、後部車両からNEWデンライナーの運転席部分へと飛び移った。
「あいつ・・・無茶しおった。」
「それにしても・・・どうして幸太郎くんがこんなことをしたのでしょうか?
それとも・・・何か緊急事態があったのでしょうかねぇ?」
オーナーがつぶやく。
一方、NEWデンライナーに飛び移ったモモタロスはデンバードの発射口に手をかけ、無理やりこじ開けた。
「ぜぇぜぇ・・・おい、幸太郎!いきなり何を・・・ってあれ?」
NEWデンライナーの運転席を見るモモタロス。
だが、そこには幸太郎や相棒のテディの姿も無かった。
「こいつ、無人運転だったのか?・・・ん?」
辺りを見回すモモタロス。
すると、デンバードの上に1人の『小さな少女』が倒れかかっているのに気付いた。
「お・・・おい、お嬢ちゃん!」
とっさにモモタロスが少女を抱えあげる。
そして、その少女は意識がモウロウとした状態でこうつぶやいた。
「幸太郎が・・・やられた・・・かしら・・・。」
「・・・ってこの喋り方って・・・もしかして私かしら?」
モニタに顔を近づける金糸雀。
その拍子に何かに触ったのか、画面に最小化されたブラウザが起動した。
「あら・・・?」
そして、そのブラウザの起動とともにひとつの動画が流れるのであった。
時の列車、デンライナー。
次の駅は過去か?未来か?
オーナーやキンタロスとともに、NEWデンライナーに乗っていた謎の少女を抱えたモモタロスが食堂車に戻ってくる。
食堂車では、先ほどの衝撃で床にひっくり返ったコーヒーの掃除や良太郎の火傷の治療などでドタバタとしていた。
「モモ!いったい何が・・・って、どうしたのよ、その子は?」
「俺にも分かんねぇよ。ただ、このお嬢ちゃんが幸太郎のデンライナーを操縦していたことは確かだ。」
コハナの質問に答えるモモタロス。
その答えに、顔に大きな氷のうを乗せていた良太郎が即座に反応した。
「幸太郎だって?!モモタロス、幸太郎は無事なの?!」
「・・・残念やが、デンライナーに幸太郎は乗っとらんかった。テディも同様や。」
キンタロスが代わりに答える。
「それにこの子が言ってたんだ。『幸太郎がやられた』ってな・・・。」
「そんな・・・。」
「おそらく、テディくんもいなくなったことを考えると、
やられたのは私たちの知っている幸太郎くんではなく、テディくんと契約する前の『過去の幸太郎くん』でしょう。」
オーナーが言う。
「『過去の幸太郎』・・・?どういうことなんだい、おっさん。」
「テディくんは、モモタロスくんなどの『良太郎くんが契約しているイマジン』に対する幸太郎くんのイメージから作られたイマジン。
しかし、そのイメージを持つ者の存在が時の流れから消されたために、イメージ自体も同様に消されてしまった・・・と考えるのが賢明でしょう。」
「いったい誰がそんなことを・・・。」
悔しそうな声をあげる良太郎。
「・・・もしかしたら、その子が知ってるんじゃないかな?」
ウラタロスが言う。
「確かにそうかもしれんが・・・今はこの子が目を覚ますのを待つしか・・・。」
「ねえ、ちょっと待って!」
キンタロスの言葉をさえぎるかのようにリュウタロスが言う。
そして、何を思ったのかモモタロスが抱える少女のドロワーズを掴むと、それをむんずと引っ張ってしまった。
「ちょ・・・な・・・何やってるのよ、アンタ!!」
「コラ!リュウタ、何しとるんや?!」
「こ・・・小僧!大事な時にガキみたいなイタズラをしてるんじゃねぇ!!」
「ちょっと!そういうことは僕の仕事でしょ!!」
「ねえ、見てよ。この子、人間じゃないよ。」
「「「「「・・・え?」」」」」
一同が少女の足を凝視する。
そこには、まるで『人形』のような間接パーツが組み込まれていた。
「これって・・・人形・・・なの?」
良太郎が言う。
「人形・・・。」
黙り込むモモタロス。
そして、彼の頭をフラッシュバックする光景。
手に握られた螺子、大きなカバン、そして・・・。
「ローゼン・・・メイデン・・・。」
「・・・え?モモタロス、何か言った?」
「・・・ん?」
「先輩、今『ローゼンなんとか』とか言わなかった?」
「・・・言ったの?」
「「多分。」」
良太郎とウラタロスが口を揃えて言う。
「しかし、モモの字が言うにはしゃべったんやろ?でも、この子は人形・・・どういうこっちゃ?」
「ロボット・・・とか?」
コハナが言う。
「とりあえず、この子については私が調べておきましょう。」
オーナーが言う。
そして、ひと間隔空けて彼らへ指令を出した。
「良太郎くん、キンタロスくん、リュウタロスくん。君たちは幸太郎くんのデンライナーで私をターミナルまで送ってください。
その後、幸太郎くんの行方を追っていただけますか?」
「あ・・・ハイ!」
「ハナくんとウラタロスくんは念のために侑斗くんと合流し、別方面から幸太郎くんの捜索に向かってください。」
「分かりました!」
「ナオミくんはデンライナーの運行を頼みます。」
「分かりました、オーナー!」
「では、これで・・・。」
「おっさん!俺を忘れるな!!」
「・・・おお、すみませんねぇ。じゃあ、モモタロスくんは留守番をお願いします。」
「・・・へ?なんで俺が?!」
「『君だから』ですよ。その子を看病出来るのは・・・。」
「・・・あ。」
そう言って、モモタロスは自分の腕で眠る少女を見るのであった。
「ついに電王チームの出動かしら・・・。」
モニタを見ながら金糸雀が言う。
「それにしても・・・なんでモモタロスが『ローゼンメイデン』ってつぶやいたのかしら?
この後の展開に理由が載ってるかし・・・あら?」
金糸雀の目線の先にはこう記されていた。
『これでAパートは終了です。
ちょっと休憩をはさんでBパートを投下したいと思います(一応、3時間後を予定)。』
金糸雀はモニタにある時計を見る。
だが、この書き込みの時間から察するに、続きの投下までまだ2時間以上もあることが分かった。
「どうするかしら・・・。
今更『私もティータイムに混ぜてかしら!』なんて言いに行っても、翠星石あたりにフルボッコにされるのが関の山かしら。」
とりあえず考える金糸雀。
だが、考えているうちに金糸雀を眠気が襲う。
「・・・ふ・・・ふあぁ~。あら、ちょっとはしたないかしら・・・。でも・・・眠気には勝てない・・・かしら・・・。」
そう言うと、金糸雀は当たり前のようにジュンのベッドに行き、そして布団の中に入り込んだ。
「おやすみなさい・・・かしら・・・。」
そう言って、金糸雀は眠りにつくのであった。
「・・・待っていたぞ、この時を!」
金糸雀しかいないはずのジュンの部屋に謎の声が響き渡る。
そして、その声に反応したかのように、ジュンのPCから噴き出す砂のようなもの。
それらはひとつの形を作り出し、眠る金糸雀の前に立ち塞がった。
「利用させてもらうぞ、貴様の『世界』を!!」
そう言うと、砂の塊は再び砂となり、それらは全て金糸雀に取り込まれるのであった。
最終更新:2010年03月09日 20:14