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長門特攻大作戦

 ある日、日本列島を台風が襲っていた。しかし、その台風は普通のそれとはやや違う所があった。
それは、前触れ無く突然襲い、また突然止む事である。普通の台風なら天気予報等で雲の動き等から
事前に予測・対処する事が出来るが、今連続して起こっている台風は先程まで晴天だったのに
突然台風が吹き荒れて…と言う実に不可解な物だった。

 そしてその日も台風が吹き荒れ、ハルヒ達SOS団の皆は台風が止むまで部室に篭っていた。

「さっきまで晴れてたのに突然台風なんてどうなってるのよ。これじゃあ家に帰れないじゃない!」

 窓の向こうで繰り広げられる暴風雨を見つめながら愚痴るハルヒだが、まさに彼女の言う通りだった。
つい先程まで雲一つ無い晴天だったと言うのに、授業が終わって下校の時間になった途端に
突然台風が発生。この状態で帰宅するのは危険と言う事で、台風が弱まるまで全校生徒は
校舎内で待機と言う事になっていたのだった。

「いい加減台風止めぇぇぇぇ!!」
「あのなハルヒ…自然現象に文句言ってもどうにもならんだろ。」

 落ち着きの無いハルヒにキョンも困り果てていたのだが、そんな時に彼の前に長門が歩み寄った。

「これはただの自然現象では無い。」
「何…?」

 そして、長門とキョンはハルヒに聞こえない様に話し始める。

「もしかして…お前ん所の朝倉みたいな事を考えてる連中の仕業か? と言うかこういう
凄い事はお前等関係しか出来そうに無いぞ。」
「可能性としてはあり得る。涼宮ハルヒに何かしらのアクションを起こさせる事を目的として
人工的に暴風雨を発生させている可能性も捨て切れない。しかし、それもあくまで可能性の話。
本当に急進派の攻撃なのかは未知数…。だが…この台風が作為的な物である事は確か。」
「そ…そうなの…か?」

 長門が言うにはこの一連の台風は何者かの作為的な物との事だが、それが一体何者の手による物なのかは
長門にも分からないと言う。それにはキョンも不思議そうな顔をしていたが、そこで彼女は出入り口の方へ歩き始めた。

「それをこれから調べて来る。」
「え? この台風の中をか? おい長門!」

 キョンが止めようとしているのも聞かず、長門はSOS団の部室から外へ歩み出て行った。
いずれにせよこの台風が続けばハルヒのストレスが溜まり、それによってどんな異常事態が起こるか分からない。
だからこそ長門はその台風の原因を調べるつもりであった。

 階段を上がり屋上へ出る長門。無論台風は依然として続いており、屋上へ出た長門の全身にに暴風雨が
打ち付けられるが彼女は怯まない。そして情報操作によって天高くへ飛び上がった。

 台風の起こす強烈な暴風に逆らい、音速を超えて急上昇して行く長門であったが、そこで彼女は見た。
台風の中心部分に数十メートルはあろうかと思われる巨大な生物が浮遊し、高速回転を起こす事で
台風を発生させていたのである。

「あれが台風の元凶…。排除する…。」

 巨大生物の起こす強風を物ともせずに急接近をかける長門であったが、そこでさらにある事に気付く。
何とその巨大生物の頭に朝倉涼子が立っていたでは無いか。

「長門さんお久し振りです。」
「これは一体どういう事か…これが急進派の新しい作戦?」
「その通り。この台風怪獣バリケーンで台風を立て続けに起こせば涼宮ハルヒはストレスを溜め
何らかのアクションを起こすのでは無いかと…。」

 何と言う事であろうか。これは情報統合思念体の中の急進派が起こした作戦であり、
その急進派に属する朝倉が台風怪獣バリケーンを利用して人工的に台風を発生させ
それによってハルヒに何らかのアクションを起こさせようと言う魂胆であった。

「ついでに台風の強風で彼が吹飛ばされて死ねばますます面白い事になりそうですよね。」
「そんな事は…させない。」

 朝倉の言う彼とはキョン以外に他ならない。つまり台風怪獣バリケーンの起こす台風を利用して
キョンの抹殺さえ企んでいたのだ。それには長門も表面的には表情一つ変えない物の、
どこか凄みを感じさせる雰囲気を放ち、朝倉の陰謀を阻止するつもりであった。

 台風怪獣バリケーンが高速で回転して強烈な暴風雨を発生させる中、長門はそれに怯まず突っ切ると共に
情報操作によって作り出したエネルギーをバリケーンへ向けて投げかけた。
このエネルギーによってバリケーンを一気に爆殺してしまおうと言うつもりだったのだが、
何とバリケーンは口からそのエネルギーを吸収してしまった。

「え…?」
「そんな事をしたって無駄ですよ長門さん。その位のエネルギーはむしろ吸収して自分の物にしてしまうんですよ。」
「ならば口以外の場所を狙うまで…。」

 長門はバリケーンの周囲を飛び回り、情報操作によって発生させたエネルギーを掌から次々に発射して
バリケーンへ撃ち付けて行くが、直撃であるのにも関わらず致命傷になってはいなかった。

「無駄無駄無駄ですよ長門さん。台風怪獣バリケーンはただの巨大生物ではありません。M78星雲の
スペシウム使いの一族も苦しめた事のある程の怪獣ですよ。そんな攻撃が効くはずないじゃないですか。
さあバリケーン、そろそろお遊びは終わりにしましょう。」

 朝倉が長門へ向けて手を振ると、それに合わせてバリケーンの触手状の腕が長門へ向けて伸び
そのまま巻き付いてしまった。しかもそこから長門へ高圧電流が流れて行くでは無いか。

「あ…! か…!」
「貴女の発したエネルギーも加えた高圧電流のお味はいかがでしょうか長門さん?
M78星雲のスペシウム使いの一族も感電した程の電流ですよ。さしもの長門さんも
一溜まりも無いでしょう? このまま長門さんなんて焼け焦げてしまえば良いんですよ。」

 朝倉の言う通りだった。さしもの長門もこれ程の高圧電流には一溜まりも無く…忽ちの内に
真っ黒焦げになると共に動かなくなってしまった。そしてバリケーンは長門を放り投げ、
バリケーンの発生した強風に巻き込まれて飛ばされて行った。

「あ~あ~、あんなに可愛かった長門さんもバリケーンにかかれば見るも無残…これで長門さんもお終いですね。
さあバリケーン、そのまま街もキョン君も何もかも吹飛ばしてしまいましょう。そうすれば涼宮ハルヒも
アクションを起こすはずですよ~。」

 朝倉は冷徹な微笑みを浮かべ、彼女の意思に応じてバリケーンもさらに高速回転を始めた。

 バリケーンの起こした強烈な暴風雨が吹き上げる中、強風に吹飛ばされながら落下して行く長門は
朦朧とする意識の中、ある光景を垣間見た。それはバリケーンが起こした暴風雨によって北高も何もかもが
吹飛ばされ、キョンも亡くなってしまい、涼宮ハルヒもショックの余り絶望し、それに伴って
世界そのものが消滅の危機に立たされてしまう事。長門にとって想像するだけで恐ろしい光景だった。

「そ…そんな事は…させない!」

 長門の閉じられていた瞳が見開き、そこから再び飛び上がり始めた。無論向かう相手は台風怪獣バリケーン。

「おやおや? 長門さんまだ立ち上がって来るんですか? でもそんなボロボロの身体で何が出来ますか?」

 朝倉は長門の奮闘をあざ笑ってすらいたが、確かに彼女の言う通り。長門はダメージの為に情報結合さえ
上手くいかず、依然その全身は黒焦げのままだった。しかし、長門は表面的には普段と同じ無表情に見えても
その目は真剣そのものだった。

「私には…まだ…手が…ある!」

 次の瞬間長門は自分からバリケーンの口の中へ飛び込んだ。一体何をするつもりであろうか?

「おやおや長門さん。気でも狂ったんですか? 自分からバリケーンの口の中に飛び込むなんて…。
それとも観念してバリケーンのエネルギーとして吸収される事を選んだんですか?
さあバリケーン、このまま長門さんを美味しく召し上がって下さいな。」

 朝倉はやはり長門をあざ笑いっていたが、何が起こったのか、バリケーンが突然苦しみ始めた。

「え!? どうしたのバリケーン!?」

 バリケーンが突然苦しみ始めた原因。それはバリケーンの体内に飛び込んだ長門にあった。

「これが私の最後の武器…。全身のエネルギーを解放させ、私自身を爆弾とする…長門ダイナマイト…。」

 バリケーンの体内にしがみ付いた長門は全身から燃え上がる様な高エネルギーを発し始めた。
そこから発する高熱がバリケーンの内臓を焼き焦がして行くのみならず、そこから一気に大爆発が発生。
バリケーン体内と言う名の閉鎖された空間内で爆発した長門はそのままバリケーンを内側から木っ端微塵にしていた。

「あ! ああああ~! バリケーンが~!」

 粉微塵になって消え去ったバリケーンの姿に朝倉が途方に暮れる中、彼女の背後に未知の粒子が収束して行くと共に
長門有希を形成していた。長門ダイナマイトはただの自爆技では無い。その爆発で相手を吹飛ばすと共に
ちゃっかり自分だけ元通りになると言う鬼畜技であった。

「情報結合を…解除…。」
「え!? 長門さん!? それじゃ…一時したらまた来ますね~…。」

 長門の情報結合解除によって朝倉涼子は消え去った。しかし…


 長門がSOS団の部室に戻ると、そこにはキョンの姿があった。

「長門! さっき急に台風が止んでハルヒも帰っちまったけど…お前がやったのか!?」
「そう…。」
「やっぱりか…でもお前大丈夫か? 凄い汗じゃないか!」
「何でも…な…。」

 次の瞬間長門は倒れ、それをキョンが慌てて支えていた。長門ダイナマイトは確かに強力な必殺技であるが、
一度自分自身を爆弾として自爆させた後で再び再構成するという一連の動作は膨大なエネルギーを消耗し、
長門と言えども多用は出来ない諸刃の剣であったのである。

「少し…疲れた…。」
「そうか…。仕方が無い。今日は俺がお前をおぶって帰ってやるよ。」

 こうしてこの危機は一まずの収束を得た。だが情報統合思念体の急進派が滅びたわけでは無い。
一時すれば再び朝倉が復活してまた変な事をしてくるに違いない。しかし…今は…今はしばし眠れ…。

 おわり

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最終更新:2010年03月15日 20:18
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