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第3話 学園都市を護る者達

第3話 学園都市を護る者達

「……しかしよく食べるね」
「むぐむぐ……!」

フィリップは当麻からインデックスを預かっているように頼まれ、引き受けて近くのレストランでインデックスと二人で食事を取っていた。
その間に翔太郎と当麻は消えたナワルを捜索しているのだが、フィリップはインデックスの驚異的な食欲に驚いていた。出された食事の
皿が大量に積まれていくのを見てフィリップはインデックスの脅威の胃袋に興味を持っていた

「その小さな体でこれだけの食事量が入る……。興味深い」

しかし食事量の多さよりもフィリップは先程から食事をするインデックスの顔色が悪いことが気になっていた。よく見たら目も血走っている。

「どこか具合が悪いのかい?」

フィリップはインデックスの体調が悪いのではないかと思い、気遣う。

「ぜ、全然平気なんだよ……」

インデックスは青白い顔をしながらも平常を装う。

「その顔はどう見ても大丈夫じゃないよ。カリールの言葉を気にしているのかい?」

フィリップは先程のカリールのインデックスに対する暴言が原因なのではないかと思った。

「……ち、違うんだよ。さっきあたしを襲ったナワルっていうムスリムなんだけど……」
「ナワルに首を絞められた傷が痛むのかい?」
「ううん……、あの人がくれたオムレツで……」
「……オムレツ?」

インデックスはナワルから差し出されたオムレツにはある”術”が施されていたことを話す。
ナワルの首絞めから解放された後、翔太郎とナワルが戦っている隙に当麻アパートに戻ったのだが、急に眩暈がして玄関で
寝てしまったのだ。それから"夢"を見たのだ。だがただの夢ではない。"悪夢"だったのだ。

その"悪夢"とはかつて十字教徒が異教の地で行った布教という名の"虐殺"であった。自分達の教え……すなわち十字教以外の宗教を
信仰する者を片っ端から浄化と証した"虐殺"をまるでその場にいるかのように自分が目の前で見ているのであった。

ひたすら拷問され、陵辱され、虐殺される異教を信仰する者達を見る悪夢だった。常人であれば見ているだけで発狂するレベルの惨状をインデックスは夢の中で最前列で見続けていたのだ。
現実かと錯覚するレベルのリアルさだったとインデックスは言う。自分の目の前で虐殺された者達の中には女、子供、老人も含まれていた。
拷問するのを止めるようにインデックスは目の前にいる十字教徒の拷問官に懇願するが、何も聞き入れてもらえず、拷問官は拷問に苦しむ異教徒達を見て笑いころげているのだ。

「……ひどい」

フィリップはインデックスの話した悪夢の内容を聞いてそう呟いた。悪夢の中の虐殺は過去100年間の間に十字教が世界で行ってきた殺戮が記録されていたのだ。
普段冷静なフィリップでさえも十字教という教えに対し静かにであるが怒りに燃えていた。

「あたしの信じる十字教が過去にしてきたことは本で読んだけど……。でも実際に観て見るとひどいことだなんて……」

インデックスは涙を浮かべている。

「君に上げたオムレツに施されていたのはどういう魔術なんだい?」
「これは西洋で使われている魔術じゃないんだよ。この国じゃなくて隣の中国で使われている術なんだよ。この術を使う人間がいると聞いたことがあるけど……」
「誰なんだい?」
「名前までは知らないんだよ。でも"少林寺の破戒僧"ということだけは知ってる。それと頭が骸骨の黄色い忍者と、両手が刃でできている怪人を僕にしているとも
聞いた……。ステイルが話してたんだよ」
「"少林寺の破戒僧"か……」





◇






「い!痛い痛い!!歯が折れた!!!」

まだ十代前半とおぼしき小柄な白人の少女シスターが地面をのたうち回りながら大量の血が出る口を抑えながら痛みに悲鳴を上げていた。

「だ、大丈夫ですか?」

オルソラ=アクィナスはイギリスからやってきた教え子のリリーナを抱き起こす。

「貴方、なぜ布教をする娘を蹴るなどという行為をするのでございますか?」

オルソラは教え子のリリーナの顔面を蹴り上げた男……、カリール・ラディを睨む。

「なぜ?お前達の教えには"右の頬を打たれたら左の頬を向けろ"という教えがあるんだろう?それを俺が試してやったまでだ」

カリールは布教活動をしているオルソラとリリーナに呼び止められ、十字教の集会にこないかと誘われていた。
しかしカリールはそれに腹を立て、リリーナの顔面に蹴りを入れたのだ。

「確かにその教えはありますが……、だからといってこのようなことをして何になるというのでございましょうか?」

カリールから見れば下らない話だ。昔散々自分達とは違う教えを信仰している者を殺しておいて、いざ自分達が危害を加えられれば
こうして被害者面する。十字教の行う布教活動など吐き気がする偽善に満ちた行為だ。

「お前達が過去にしてきた行いに比べれば優しいことだと思え」

カリールは馬鹿にしたような笑みを浮かべながら、オルソラに侮蔑の眼差しを向ける。

「しかしこのような行いをしていればいつまでも分かり合うようなことはできません。あなた様はこのような暴力をして気持ちが
いいのでしょうか?世界中の人々の幸せを願う私共としては悲しいことでございます」
「寝言は寝てから言え。お前らは十字教信徒"だけ"の幸せを願っているのだろう?それ以外の異端者ならいくら死んでもかまわないという考えがミエミエだ」
「確かに過去にはそのような行き過ぎた考えもありましたが、現在ではそのような考えは許されておりません。昔とは違うのでございます」
「そういう聞こえのいい言葉で何百万人もの人間の命を奪ってきたと思う?十字教徒でもない人間に慈愛だの平和だのという奇麗事を並べ立てて"自分達の色に染め上げる"というのは貴様等の得意技だったな」

言い争いを続けるカリールとオルソラの間にリリーナが割って入る。

「シスターオルソラはそんなことはしません!!十字教徒全員がそのような考えを持っているわけでは……!」

リリーナは血が流れ出る口を抑えながら言う。

「綺麗事を」

カリールが目障りだという風にリリーナの顔面に右ストレートパンチを打ち込む。

「きゃあ!?」

カリールのパンチでリリーナは後ろに吹っ飛ばされる。しかし吹っ飛ぶリリーナを受け止めた者がいた。

翔太郎だ。

「もうやめろカリール!」
「……翔太郎」

翔太郎の鋭い視線を受けて、カリールははたと我にかえった。

「お前……、インデックスっていう娘だけじゃなくこんな女の子にまで手を上げるのか?」

翔太郎の問いにカリールは押し黙る。

「カリール、なんでお前はこうも十字教を憎む?」

翔太郎の真撃な問いかけにカリールはゆっくりと口を開く。

「もうあの事件から四年か……」





◇





「井坂深紅郎だね?ネセサリウス(必要悪の教会)の命により捕縛する」

身長2メートルに達しようかという長身に赤髪右目の下のバーコード状のタトゥーが掘り込まれた魔術師、
ステイル・マグヌスは病院から出てきた医者、井坂深紅郎にそう宣言する。

「ほぅ?噂に聞くネセサリウス(必要悪の教会)の方ですか。この私が何をしたと?」

黒の紳士服に身を包んだ温和そうな紳士、井坂深紅郎はステイルに尋ねる。井坂深紅郎は旧知の仲である木原数多を尋ね、この学園都市に
来ていた。そしてついでにここ学園都市でもガイアメモリを流通させようと、病院内でガイアメモリのセールスを行っていたのだ。

「あなたの実験犠牲になった人の中にイギリス清教の人がいてね。ネセサリウス(必要悪の教会)の教主から捕縛の命令が出されたのさ。
一緒にご同行願おうかな?」

「クク……、魔術師がこの私を捕まえられると思ったのかね?いいだろう力づくできたまえ」

井坂とステイルは人気のない空き地に移動する。

「あまり僕達ネセサリウス(必要悪の教会)を舐めない方がいいよ?」

ステイルは咥えていたタバコを捨てると、魔術の詠唱を始めた。

「あなたもガイアメモリの力というものを軽く見ない方が懸命ですよ?」

井坂はメモリを素早く取り出し、自分の右こめかみに刻まれたコネクトに差し込む。

『ウェザー!』

井坂は白色が主体色のウェザー・ドーパントに変身する。

「炎よ(Kenaz)
巨人に苦痛の贈り物を(purlsazNaupizGebo)!」

ステイルの右手に摂氏3000度もの紅蓮の炎が、地獄の業火の如くごうごうと勢い良く燃えている。その業火を井坂目掛けて放出する。

「ぬぉおお!!」

凄まじい炎が嵐のように井坂に襲い掛かる。

「どうだい?魔術師の力は?」

ステイルは余裕の表情で炎に燃える井坂を見て言う。

「ク、クククク……!」

井坂は笑いながらステイルから放たれた炎を身体から放出された冷気で掻き消した。少しもダメージを与えられていないようだ。

「何!?僕の炎が!?」

ステイルは驚愕した。摂氏3000度もある自分の豪炎が冷気で掻き消されるとは。

「今度は私の番のようだね」

井坂は凄まじい突風をステイル目掛けて放出する。井坂のガイアメモリの能力、ウェザーは気象を自在に操る能力だ。
冷気や風、竜巻、雷をも起こすことができる。

「ぐぁあ!」

ステイルは井坂から放出された突風の威力で数十メートルも後ろに飛ばされる。

(迂闊だった。ドーパントの能力がこれ程のものだとは……!こうなれば……!!)

吹き飛ばされたステイルは起き上がり、態勢を立て直し、魔術を詠唱する。生半可な攻撃では井坂に傷を負わせる
ことすらできない。もっと強力な魔術で対応しなくては。

「灰は灰に(AshToAsh)
 塵は塵に(DustToDust)
 吸血殺しの紅十字(SqueamishBloody Rood)!」

ステイルが魔術の詠唱を終えると、ステイルの両手には巨大な炎の剣が現れた。

「くらえ!」

両手に持った炎剣を井坂目掛けて、振り下ろす。

「小癪な!」

井坂は身体から凄まじい冷気を放出し始めた。
ステイルの持つ炎剣は井坂の放出する冷気にどうにか耐え、井坂の身体を切り裂く。

「がぁ!」

巨大な二本の炎剣の攻撃にはさすがの井坂もたじろぐ。

「一気に終わらせるか」

ステイルはここで一気に井坂を倒すべくとっておきの魔術の詠唱をはじめた。


「世界を構築する五大元素の一つ、偉大なる始まりの炎よ(MTWOTFFTOIIGOIIOF)
 それは生命を育む恵みの光にして、邪悪を罰する裁きの光なり(IIBOLAIIAOE)
 それは穏やかな幸福を満たすと同時、冷たき闇を滅する凍える不幸なり(IIMHAIIBOD)
 その名は炎、その役は剣(IINFIIMS)
 顕現せよ、我が身を喰らいて力と為せ(ICRMMBGP)!」

ステイルの詠唱により現れたのは巨大な煉獄の炎で構成された巨人だ。ドロドロとしたマグマを身体に纏い、
周囲に凄まじい熱を放出している。

「面白い……!これが魔術というものか」

イノケンティウスの姿を見た井坂は舌なめずりをする。

「やれ、"魔女狩りの王"【イノケンティウス】」

イノケンティウスが井坂目掛けて豪腕を振り下ろす。

「ちぃ!!」

井坂はイノケンティウスの振り下ろす豪腕をどうにか受け止める。
イノケンティウスは凄まじいパワーで井坂を押しつぶそうとするが、井坂も劣らず強力な力を持つドーパントだ。身体中から
強力な冷気を放出し、イノケンティウスの攻撃を鈍らせ、その攻撃によりイノケンティウスに隙ができる。その隙を井坂は
見逃さず、イノケンティウスの豪腕を払いのけ、後方に飛び、距離を置いた。

「どうやら私も本気にならなければならないようですね」

井坂は自分の周囲に雷を発生させ、雷をイノケンティウス目掛けて放出する。
無数の雷撃がイノケンティウスを襲う。再生能力を持つイノケンティウスであるが、連続攻撃の
凄まじさに再生が追いつかなくって来た。

「イ、イノケンティウスが……!」

雷撃がイノケンティウスの身体を貫き、ステイルに襲い掛かる。
イノケンティウスを制御しているステイルは身動きが取れない。

(駄目だ……!避けきれない!)

その時、ステイル目掛けて放たれた雷撃が切り裂かれた。

「お前は……!神裂!?」

自分と同じネセサリウス(必要悪の教会)に所属する神裂火織だ。

「おやおや……、新しいお客様ですか。もう少し遊びたい所でしたがもう時間ですね。決着はまたの機会に」

井坂はそう言うと自分の周りに雷撃を落とし、消え去った。

「くそ! 逃がしたか……!」

ステイルは悔しそうに言う。

「ステイル、井坂よりも厄介な人物を捕らえるよう、指令がきました」
「何?あの井坂よりも……?」

ステイルは指令の変更ををしぶしぶ引き受ける。


ステイルは神裂の妙に"生気のない目"を気にしていたが、任務の方を優先させた。




◇



イタリア、ミラノにある移民街の一つである燃え盛るアラブ人街の通りをナワルは必死に走っていた。

「レイラ!サダム!!どこにいる!!」

妻と息子の名前を必死に叫ぶ。過激なローマ正教の信者達がムスリムを信仰するアラブ人街に火を放ち、住民を
残らず血祭りに上げているのだ。

ナワルが通りを走っていると通りに死体が無数に転がっていた。

「だ、誰がこんな……!?」

死体の山はアラブ人街の住民達だ。まだ幼い子供や老婆まで"無惨"という一言でしか言い表せない程の状態であった。
多くの死体は何かに切り裂かれたような死に方だ。そう、"まるでギロチンのような鋭い刃"で切り裂かれたような……。

「ハハハハハ!!!! いやぁ、異教徒の分際でこの国に居据わるとは不届きな奴らですねー」

緑色の十字教徒の服を着た小柄な白人の男が死体を蹴りつけながら笑っている。

「貴様か……?貴様がこんなことを……!?」

ナワルは通りの大勢の死体はこの男がやったのだと直感した。

「そうですよ。この神聖な国にこんな異教のゴミ共が住み着くなんて許せませんからねー」

まるで爬虫類のような顔を歪ませながら死体に唾を吐きつける。

「こういう女子供もしっかりと殺しておかないと駄目なんですよねー」

緑色の男が左手に二つの生首を持っている。





その生首は妻のレイラと息子のサダムだ。




「そ、そんな……!き、貴様ぁぁああああぁああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」




その時ナワルは眠りから醒める。

公園のベンチで休んでいたら眠りこんでしまったのだ。

「は……!?なんだ夢か……」

今でも鮮明に覚えている四年前の事件……。あの緑色の男は必ず自らの手で葬り去る。それまで十字教徒共を一人でも多く地獄に
落とす。そうナワルは心に誓った。



「誰にも邪魔はさせん。この都市を護る者達に妨害されようがな……!!!」


次回 第4話 仮面ライダーVSネセサリウス(必要悪の教会)

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最終更新:2010年03月30日 12:09
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