アットウィキロゴ

第三話「混ざりゆく世界」

仮面ライダーディケイド

     VS

とある魔術の禁書目録


第三話「混ざりゆく世界」


◇


「アンチスキルが動けないって、どういうことなんですか?」

風紀委員活動第一七七支部。
そこで御坂美琴はメガネを掛けた高校生のジャッジメント、固法美偉に詰め寄っていた。
士達……ディケイドがこの世界にやって来てからすでに一週間が経っている。
だというのに美琴達との戦闘以降、まともなディケイドの情報は掴めていない(ある学生寮付近で謎の戦闘跡があったが、ジャッジメントに知らされぬまま処理されている)。
その原因の一つとして、アンチスキルの動きがほとんどないというのがあげられる。
同じ治安維持組織と言えどもジャッジメントは学生のみで構成されている、学園都市の踏み込んだ箇所への捜査権限は無く、アンチスキルに任せざる負えない部分もあるというのにこれではどうしようもない。

「落ち着いて御坂さん、こっちでも確認を取ってるんだけど、どうにもアンチスキルの命令系統が何者かにいじられてるらしいのよ」
「そんな、アンチスキルの命令系統に手を出せるなんて……まさかそれもディケイドの仕業なんですか!?」
「そこまでは何とも言えないわ、ただ、そんな状態で下手に動いたら逆にディケイドやスキルアウトの犠牲になるだけ……わかるでしょう?」

犠牲になるとまで言われては美琴は何も返せない。
それでもディケイドを放っておく形になっている現状に納得できない顔をしているのを見て、黒子が横から話に入ってくる。

「スキルアウトと言えば、連中、最近また動きが活発になってるらしいですの」
「ああ……その話なら聞いたことあるわ、何でも能力者が何人か行方不明になってるとか」

黒子の話に固法の表情が若干曇る。
一時期彼女自身も能力者であることを隠してスキルアウトに入っていたことがあり、その時所属していたスキルアウト関連の事件がつい一月前にあったばかりだ。
やっていることも能力者狩りと、前と同じ事もあり彼女にとってはあまり好ましい話題ではないのだろう。

「あ、白井さん白井さん」
「なんですの初春?」

部屋の奥から黒子を呼びつける声が聞こえ、棚で仕切られた奥を覗き込む。
そこで一台のパソコンを操作している少女、初春飾利は画面をじっと見つめながら口を開く。

「丁度今スキルアウトの事件について調べてたんですけど」
「連中のアジトでも見つけたんですの?」

側まで歩み寄り画面を見つめる。
初春が纏めた情報の文書へ目を通し、その内容に表情を厳しく変化させた。

「この情報、信用できますの?」
「ネット上の目撃証言でしかないですけど、スキルアウトによる被害の位置とは合ってます」
「……まだ詳しい位置までは公表してないはず、ということは信頼性は高いですの」
「ちょっと、何の話よ?」

二人の話に焦れて美琴が問いかけ、黒子はしばらく悩みそれに答える。

「能力者狩りの目撃情報ですの……スキルアウトを、ディケイドが率いていたと」
「何ですって!?」


◇


光写真館。
その一室で士は右手の包帯をゆっくりと外していく。

「士君、どうですか?」
「……問題ない、もう治った」

軽く拳を握り感触を確かめてからの言葉に、夏海はほっと息と吐く。

「だけどこれからどうする? もう迂闊に外にも出れないぞ」
「士は言うまでもなく、僕らもその仲間とすでに認識されてしまっているからね、お宝も探せやしない」

この一週間、士たちは何の行動も取れていない。
学園都市の監視は厳しく(何故か光写真館の内部までは監視の目が届いていないのだが)、少し外に出るだけで無人兵器らしき物が睨みを効かせてくる。
恐らくは鳴滝の仕業であろうディケイドの悪評を何とか払拭したいところなのだが、動くことができなければどうしようもない。
……あるいは、彼らを追跡するものが無人兵器のみだという不自然さに気づいていれば、また話は別だったのかもしれないが。

「でも、ライダーの世界を巡っている時もディケイドは敵視されていたけど何とかなりましたし、今回だっていつものようにやれば大丈夫ですよ!」
「いつものように、ね……いつもはその世界のライダーの側で行動してたよな」
「そうですよ、だから今回も」
「で? この世界のライダーに当たる人物とやらは一体誰で、ここから動くことさえままならない状態でどう見つける?」
「……どうしましょう?」

乾いた笑いで返す夏海に大きくため息を吐く。
その時、奥のキッチンから一人の老人、光栄次郎が人数分のホットケーキを持ってやってきた。

「まあまあみんな、難しく悩んでるだけじゃまいっちゃうよ、ほら、これでも食べなさい」
「おっ、遠慮なくいっただきま~す♪」
「ねぇねぇ、困ってるなら私と夏海で調べてきましょうか?」

考えるの事をあっさり放棄してホットケーキへと向かうユウスケの頭上を小さな銀色のコウモリが通りぬけ、士達の前で羽ばたきながら意見を出す。

「キバーラ、協力してもらえるんですか?」
「別にもう鳴滝様に味方する理由もないしね~、今の私は夏海のみ・か・た♪」

夏海の周りを飛び回るキバーラを見ながら士は考える。
ライダーの世界を旅していたころと違い、今の夏海は戦う力がある。
そして恐らくはまだ士の仲間として認識されていない、現状で唯一動ける人物だ。

「けど夏みかんじゃな……」
「何言ってるんですか士君! ここは私に任せてください!」
「そんな心配しなくても大丈夫よぉ、私だってついてるんだしぃ」
「はぁ……仕方ないな、無茶はするんじゃないぞ」

仕方ないといった様子で頷く士に、夏海ははりきってキバーラと共に学園都市へと繰り出して行く。
その様子を見ながら、士は真剣な表情で思考を巡らしていた。


◇


狭い路地。
昼間だというのに周囲の建物に遮られて日も入らず、路地の外からでは何が起こっているのか見ることさえできない。
そんな、助けがやってこないのが当たり前の世界で一人の男が複数の人間に取り囲まれていた。

「スキルアウトか……! だが相手が悪かったな!」

男が不適な笑みを浮かべたままその場で拳を振るうと、明らかに間合いの外にいたはずのスキルアウトの一人が見えない力を受けて吹き飛ばされる。

「能力者を甘くみるなよ!」

彼の能力はレベル3の念動力【テレキネシス】。
拳を動きと同じ軌道を取る『力』を自身の視界内に生み出すことができる能力だ。
この能力なら最小限のモーションで相手を倒すことができ、多数の相手だろうと遅れはとらない。
自分の優勢を確信する男だったが、スキルアウトはまったく怯んだ様子がなく、不気味な笑みを浮かべながら包囲の輪を狭めてくる。

「な、何だこいつら……」

言い得ぬ悪寒を感じながらも能力を発動しようとするが、それより先にスキルアウトが動きを見せた。

「――っ!?」

男が息を飲む。
自分を取り囲んでいた人間が一瞬にして緑色の異形へと姿を変えたのだから無理もない。
能力者の中には自分の姿を変えたり、相手に自分の実体を見せないようにする者もいるがスキルアウトは無能力者の集団、まさか全員がそんな能力を持っているはずもない。

「馬鹿な、スキルアウトが能力を……!?」

思わぬ出来事に後ろへ下がりかけ、いつの間にか真後ろにいたスキルアウトに驚きながら振り向く。

「くそっ、能力者だろうが関係――」

思考を落ち着かせる間もなく拳を構え、能力を発動する寸前、気づく。
周囲のスキルアウトの姿が異形の怪物から再び変わり、人間の姿に……自分と寸分違わぬ姿へと変化したことに。

「な、んだ……何なんだ、お前らの能力は!?」
「俺か? 俺の能力は……」

目の前のスキルアウトが拳を振り上げる。

「レベル3の、テレキネシスだよ!」
「う、うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


◇


「自信満々で出てきたのはいいけど、何も見つからないわねぇ」
「そうですね……スーパーショッカーの怪人もいないみたいですし」

士には大見得を切ったものの、夏海たちとて行くべき宛てなどありはしない。
とはいえ何の収穫もなく戻って士に嫌味を言われるのも面白くない、というわけで無目的に歩き回るだけの時間が続いている。

「あれ? あの人達って……」

ふと視線を上げると、士と戦った二人の少女が話しているのを見つけた。
丁度同じタイミングで向こうもこちらに視線を向け目があってしまう。
咄嗟に身構えるがそのまま視線を外され、自分のことを覚えていないのだと気づく。
あの時二人の目は士に集中していた、隣にいた夏海には気付かなかったのだろう。
ほっとしながら早く立ち去ろうとした時、近くの路地から悲鳴が聞こえてきた。

「お姉さま!」
「わかってる!」

黒子と美琴は即座に反応し路地悲鳴の下へと駆け出していく。

「キバーラ、私たちも!」
「いいの? 下手に関わって士の仲間だってバレたら大変よ?」
「でも、放っておけません!」
「まぁ夏海がそういうならいいけどね~」

二人の後をついていく形で夏海が走り出し、その直後路地から一人の男が飛び出してきた。
全身をボロボロにしたその男は黒子の付けているジャッジメントの腕章を見ると這いずるようにして近づき、怯えた表情で口を開く。

「た、助けてくれ! あいつら、ただのスキルアウトなんかじゃない……!」
「落ち着いて、今救急車を呼びますの」
「黒子、その人お願い!」
「ちょっ、お姉さま!?」

男を黒子に任せ、美琴は単身路地へと飛び込んでいってしまう。
後を追いたいが痛めつけられている男を放っておくわけにはいかない、黒子が悩んでいる間に、夏海はその横を駆け抜ける。

「!? 待って、この先は危険ですの!」
「大丈夫です、あの人は私が守ります!」
「ちょっと……ああもう、何でこう一般人がジャッジメントより危険な場所に行くんですのー!」


◇


路地に入った美琴は目の前の光景に言葉を失っていた。
ついさっき助けを求めてきた男、その男と寸分違わぬ姿をした男が二十人近くいるのだ。

「何こいつら……能力者……?」
「常盤大の制服か、いいねぇ……お前、レベルはいくつだ」

男の一人が美琴へと問いかける。
まるで品定めをするかのような視線に顔を歪め、パリパリと火花を散らしながら答えを返す。

「レベル5、能力はエレクトロマスター」
「なっ!? まさか、常盤大のレールガ――」

言い終わるよりも先に放たれた電撃が男たちをなぎ倒す。
改めて気を失った男を見るが、やはりその姿はどれも同一だ、その奇妙な光景に眉を顰めつつ黒子と連絡を取ろうと踵を返すが、背後で何かが動く気配を感じ再び振り返る。

「……あんたがこいつらの親玉、ってとこかしら?」

路地の奥からムカデを模した怪物、ジオフィリドワームが美琴へと敵意を剥き出しにしながら現れる。
前髪から電撃をパリパリと放って威嚇しながらいつでも動けるように重心を低く――

「キバーラ! 変身!」
「はいは~い、へ~んしんっ♪」
「えっ!?」

美琴の横を駆け抜けながら、夏海はキバーラを前に翳して意識を集中させる。
キバーラから無数のハートが舞い夏海を包み、その中から白い甲冑を纏い赤い瞳をした姿へと夏海は変身する。
仮面ライダーキバーラ、世界の破壊者となった士を止めるため、夏海が手に入れた戦うための力だ。
突然の乱入者に困惑する美琴には構わず、ジオフィリドワームへと組み付きその腕を抱え込む。

「夏海、離れちゃダメよぉ?」
「わかってます!」

密着状態での攻防を繰り広げるワームと夏海に美琴は焦れる。
美琴からは白い甲冑の女性が何者かはわからないが、自分の味方をしてくれているのは確かだ。
ならば共闘するべきなのだろうが、こう密着されては電撃の攻撃で巻き込んでしまい動きがとれない。

「ちょっと、離れてくれないと巻き込むわよ!?」
「離れたらダメなんです! 私じゃクロックアップに対抗する手段が――!?」
「夏海! こいつ、このまま――」

キバーラの言葉が途中で消え去る。
ワームが夏海に掴まれたままクロックアップに入り、美琴の前から去ったためだ。
その場に残された彼女はまったく掴めない状況に頭を抑え、直後起きた現象にうんざりとした表情を作る。

「今度は何よ……」

オーロラのような壁が現れ、そこから一つの人影が出てきた。
その人物は美琴が反応するより早く、自らのベルトに一枚のカードを挿入する。

「ディケイ……!」

『ATTACK RIDE BLAST!』

電子音と同時にライドブッカーから放たれた銃弾に、付近のガラクタを磁力で集め即席の盾を作る。
だが予想していた衝撃はなく、盾の影で様子を伺っていると周囲のスキルアウト達の体が爆発、四散した。

「な……!?」

ようやく先程の攻撃の狙いがスキルアウト達だったことに気づき、盾を解除して目の前に立っている『ディケイド』を睨みつける。

「あんた、なんて事を……! スキルアウトはあんたの仲間じゃなかったの!?」

美琴の怒号には答えず、ただ静かにライドブッカーを向けて引き金を引く。
再び放たれた銃弾を磁力によってビルの壁に張り付くことで回避、反撃として放った電撃はソードモードへと変形させたライドブッカーを前に突き出すことでかわされてしまう。
と、その行動に首を傾げる。以前戦った時は今のとは比べ物にならないレベルの雷撃をまともに受けたというのにダメージはなかった、ならば何故今回はわざわざ回避したのか。

(そういえば前の時は姿が変わってた……あいつの能力は、何か条件があるの?)

思考を巡らせ、その一瞬の隙に『ディケイド』は再びカードをベルトにセットし起動させる。

『KAMEN RIDE KIVA!』
「しまっ……また別のに!?」

黒い体に赤い装甲、黄色い瞳はコウモリの羽を思わせ、右足と体を覆う銀の装甲は何かを拘束するかのように鎖で縛られている。
キバ、運命の鎖に立ち向かう、気弱ながら心優しき青年が変身する仮面ライダーだ。
姿を変えた『キバ』へと電撃を放つがその攻撃が届くよりも早く『キバ』はその場から離れる。
自身の雷撃で『キバ』の姿を見失ってしまうが、美琴は常に発している電磁波の反射波により周囲の物体を感知することができる、すぐさまその位置を確認し、

(……!?)

振り返る暇さえ惜しみ、磁力を解除し二、三クッションを挾みながら地面へと降り立つ。
同時に強い力で砕かれた壁が美琴の周りに降り注ぎ、自分の判断が遅れていたらと背筋を震わせる。
先程まで自分のいた位置を見上げると、わずかに壁面からせり出た換気口に「逆さま」に立つ『キバ』が美琴の方を見上げながら新たなカードをセットしていた。

『FAINAL ATTACK RIDE KIKIKIKIVA!』

激しく鳴る電子音に反応し、右足を拘束していた装甲がはじけ飛ぶ。
内に収められていた血のように赤い翼が広げられ、重力に逆らった体勢のまま右足を高く振り上げ、地上の美琴へと「飛び上がる」。
その右足から感じる圧迫感に、美琴は理性で考えるより早く、自らの最強の技を放とうとコインを構え迎え撃つ体勢を取った。

『ATTACK RIDE BLAST!』

「ぐぁっ!?」
「な!?」

『キバ』と美琴の激突を妨害したのは横からの銃撃。
銃撃が放たれた方向を向いた美琴は、そこにいた人物に思わず一瞬動きを止めてしまう。

「まったく、夏みかんを追ってきたら面倒なことになってやがる」
「ディケイド……!? どうして、だってこいつも……」
「ああ? ……なるほどな、だいたいわかった、こいつが俺になりすましてこの街で悪さを働いてたってとこだろ」
「偽物……?」

美琴と士、二人の視線に晒されながら『キバ』は何も言わず更なるカードを取り出し戦う意思を見せる。

『FORM RIDE KIVA BASSHAA!』

『キバ』の右腕と体に鎖が幾重にも巻きつき、緑の装甲へと変質する。
瞳も同じ色へと変化し、右手には魚のヒレのを模した装飾が施された緑の銃が現れ構えを取った。

「ディケイドの力を使いこなしてるとはな……おい、下がってろ、後は俺がケリをつける」
「冗談! 私たちの街で好き勝手やられてんのよ、放っておけるわけないでしょう!」
「あのな……っておい、電撃はやめろ!」

急に強い口調で静止され、慌てて放とうとしていた電撃を解除する。
一瞬遅れて足元に違和感を感じ見下ろしてみると、一面が膝の辺りまでの深さの水で浸されていた。
士の警告が少しでも遅れていたら『キバ』だけでなく自分達も電撃を浴びることになっていただろう。

「な、何よこれ!?」
「キバの力だ、自分の有利なフィールドを作り出す」
「有利って、これじゃあいつだって動きにくい……」
「来るぞ!」

言葉を途中で遮り士は美琴の前に立つ。
同時に『キバ』が放った水弾をライドブッカーで切り払い、ガンモードで反撃しようとするが水面を滑るように動く『キバ』を捉えることができない。

「あんた、私を守って……?」
「魚人相手に水中戦は不利か、おい、ビリビリ中学生」
「んなっ!? あんたまでビリビリ言うな!」
「掴まってろ」
「え?」

『KAMEN RIDE SKY!』

美琴を抱き寄せながら士もその姿を変化させる。
深い緑のボディを茶色の装甲が包み、赤い瞳と同じ色をしたスカーフが風になびく。
スカイライダー、空を愛し、決して優しさを忘れない青年の変身する仮面ライダーだ。

『ATTACK RIDE SAILINGJUMP!』

「はっ!」
「きゃあああ!?」

セイリングジャンプ、スカイライダーの持つ重力低減装置による飛行能力だ。
水中から飛び出し、叫ぶ美琴には構わず水面の『キバ』を睨みつける。

「おい、その辺の屋上に置いておくから逃げておけ!」
「な……さっきも言ったでしょ! このまま放っておけない……っての!」

士の言葉を跳ね除け、空中から強烈な雷を『キバ』へと放つ。
バッシャーフォームの得意とする水中フィールドを作りだしたのが裏目に出た、持ち前の超感覚で雷撃の直撃こそ回避するが水を伝う電撃からは逃げられない。
たまらずフィールドを解除し膝をつく『キバ』を見て、ようやく美琴は満足な笑みを浮かべた。

「どうよ! 私だって戦えるっつーの!」
「なるほど、確かに少しは頼れそうだ、なら、今度は俺の力を見てもらおうか!」

再びビルの壁面へと張り付いた美琴へと声をかけ、一枚のカードをディケイドライバーで起動する。

『FAINAL ATTACK RIDE SSSSKY!』

「はあああああ!」

よろめいたままの『キバ』へと士は回転を繰り返しながら突き進む。

「ぐ……」

『FORM RIDE KIVA DOGGA!!』

『キバ』が呻きながらカードを起動させると、緑の装甲が剥がれ、両手と胴体を新たに紫の頑強な鎧が包み込む。
更に巨大な拳を模したハンマーが現れるが、それを手にする前に士の大回転スカイキックが炸裂し吹き飛ばされる。
地面を転がりながら、激しいダメージによって元の『ディケイド』に姿が戻るのを見て士と美琴の二人も地面へと降り立った。

「やったの?」
「まだだ、直前で装甲の厚い形態になって直撃を避けやがった」

二人は倒れている『ディケイド』へ慎重に近づいていく。
だがそれよりも早く『ディケイド』は立ち上がり、ライドブッカーを構えカードを起動する。

『FAINAL ATTACK RIDE DEDEDEDECADE!』

士達と『ディケイド』の間に10枚のエネルギーの壁が浮かび上がる。
起死回生の一手としては甘い、それほど広くなり路地といえど、大きなダメージで動きが鈍っている状態での直線にしか飛ばない攻撃を回避できないほどではない。
美琴の腕を引っ張りながら射程外へと飛び、『ディケイド』が続けて起動したカードに仮面の下の目を見開く。

『ATTACK RIDE ILLUSION!』

ファイナルアタックライドの予備段階のまま『ディケイド』が三人へとその数を増やす。
カード名こそ「幻」だが三人の『ディケイド』全てが実体を持っていることを士は知っている、この路地では三発のディメンションブラストを回避しきることは不可能だ。

「くそっ、間に合え!」

『FAINAL ATTACK RIDE DEDEDEDECADE!』

相殺しようと士も動くが、イリュージョンのカードを使うだけの時間はない。
士の放った光弾は一発のディメイションブラストを相殺するが、残る二発は変わらぬ威力のまま二人を飲み込もうと突き進む。

「士!」

せめて美琴だけでも守ろうと、その体を抱き寄せ自分の影に隠そうとする士の耳に聞き覚えのある声が届く。

「ユウスケ!? ダメだ、来るな!」

通りからトライチェイサーを駆って来たユウスケに警告するが、何を思ったか逆にスピードを上げて士達の横を抜けエネルギーの本流の前へと飛び出していく。
ディメイションブラストがユウスケを飲み込もうとした瞬間急停止、トライチェイサーの後部に乗っていた男が前に出てその「右手」を叩きつける。

「っだあああああ!!」
「な、なんであんたがここにいるのよ!?」
「イマジンブレイカーだと……何故貴様がディケイドの味方をしている!?」

ディメイションブラストを打ち消した男、上条当麻の姿を見て初めて『ディケイド』が言葉を発する。
その問いに答えたのは上条ではなく、『ディケイド』の背後、路地の奥からやってきた男。

「あえて理由を挙げるなら、お前は動きすぎたのさ」
「何……!?」

不敵な笑みを浮かべ話す男、土御門の背後には先程ワームと共に消えた夏海とディエンドに変身した海東の二人が立っている。
その様子はどう見ても敵対しているようには見えず、『ディケイド』を共通の敵と認識していることを意味していた。

「ディケイドとして学園都市のあちこちで悪事を働いて、そっちの本物のディケイドに罪を擦り付ける。
 悪くはなかったが、本物が身動き取れない時にまで能力者狩りをしてたら流石に気づかないわけがない。
 まあそれ以前の問題として、ここのトップはあまりお前のことを信用してなかったみたいだがな」
「あ……スキルアウトが動かなかった理由って」
「もうすぐディケイドの手配も解除される、後はお前を捕まえれば万事解決ってわけだぜい」

笑みを深くしながらの土御門の言葉に『ディケイド』は悔しげに拳を強く握り締める。
その様子を見て、今まで黙っていた士が一歩前に出て声をかける。

「種明かしもオシマイのようだ、次は俺の質問に答えてもらうぞ。
 どうしてお前がディケイドの力を使っているんだ……鳴滝」
「僕も疑問だね、士の評判を落とすためとはいえ、あんたがここまで自分で動くなんてらしくない」

士と海東の問いかけに『ディケイド』……鳴滝は小さく、低い声で言葉を吐き出した。

「私には、もう、何も残っていないのだ……」
「なに?」
「ディケイド! 貴様は必ず倒す……貴様も、貴様に味方する者も、全て!」
「なっ……待て、鳴滝!」

憎悪に満ちた言葉をぶつけると同時に、オーロラの壁が鳴滝の体を包み込みその姿を消してしまう。
鳴滝の持つ世界を越える力を知らない土御門達は慌てて周囲を見渡すが、当然見つかるはずもない。

「どういうことだ……鳴滝の狙いはあくまで俺だけだったはず……」
「それ以前に、あの人は士が世界を破壊するからそれを止めようとしてたんだろ? 何でまだ俺たちを狙ってくるんだよ」
「やれやれ、どうにも情報整理が必要なようだにゃー? それならこんなところで立ち話も難だぜよ」

変身を解除し悩む士達へと呼びかける。
鳴滝による誤解が解けたとはいえ一時は敵対していた者同士、互いに話しあう必要はあるだろう。

「……そうだな、一度戻るとするか」


◇


名も無き荒野。

誰にも知られず、誰の記憶にも残っていないその場所に彼は立っていた。

くすんだ色の帽子をかぶり、丈の長いコートを羽織った初老の男、鳴滝はそのどこまでも続く荒野を遠い眼で見つめ続ける。

その右手に持っていた物に視線を落とし、強く握り締める。

それは一本のメモリースティックだった。

「D」の文字が記されたそのメモリーから、鳴滝の意思に呼応するかのように電子音が流れる。

「貴様だけは、絶対に許さん……!」

『DECADE!』


第三話 END

NEXT STORY「その幻想を破壊せよ」

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2010年04月11日 22:43
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。