仮面ライダーディケイド
VS
とある魔術の禁書目録
最終話「その幻想を破壊せよ」
◇
「だいたいわかった、夏みかんが出て行った時にはすでにアンチスキルの監視は解けてたってわけか」
「ジャッジメントの方ももう手配が解けてるみたい、黒子は納得しそうにないけど……」
光写真館。
鳴滝との戦闘後、士達は状況の確認のため互いの情報を交換していた。
その際ジャッジメントでさえ掴めていない情報を話す土御門に美琴が不信な目を向けるなど、多少のトラブルはあったが概ね順調に事態の把握は進んだ。
「そうなると、わからないのは鳴滝の目的か……」
「目的って、門矢……ディケイドを倒すために学園都市を騙そうとしてたんだろ?」
実際にはネセサリウス等学園都市外も巻き込まれているのだが、その辺りの事情を知らない美琴に話すことができないので省いておく。
ちなみにインデックスはステイルに任せて上条宅で待機中だ。
海東がインデックスを狙った事に関してステイルが暴走する可能性もあったため、二人とも隔離したわけである。
その件に関してはすでに士と上条の二人から制裁が加えられている、魔道書のありかがインデックスの記憶の中と聞かされた海東は不満気だが同情する人物はいない。
「いや、今まであの人は士を倒させるためにその世界の住人を騙すことはあっても、手を出すことはなかったんだ」
「世界を破壊するディケイドを止めるために動いているんだ、その自分が世界を壊すような真似をしてどうするのかっていう話さ」
「それなのに、今回は住人に手を出し、士君の味方をするなら壊すとはっきり言っていました……」
「スーパーショッカーと組んで、タガが外れたか……?」
思い思いに話す士達の言葉に上条は少し考え、迷いながらも口を開く。
「その、門矢の力ってのはそんなに大きな物なのか? 仮面ライダーがとんでもなく強いっていうのは俺も実感したけど、世界を滅ぼすなんて……」
世界を破壊する、などという常識外のスケールを前提とされると正直話しについていけない。
確かに上条は手を抜いていたディエンドにすら歯が立たなかったが、それでもステイルは渡り合うことができたし、『聖人』である神埼ならばそう引けを取らないだろうとも思えたレベルだ。
相当な力であることはわかるが、世界を破壊する程の物とはとても思えない、それこそ一度だけ対峙したことのある『天使』のような力を持っているのならば別だが。
「……ディケイドの力ならそれが可能だ、俺は、実際に世界を破壊してきた」
士の言葉に上条達の表情が強張る。
世界の破壊、それが本当ならば鳴滝が学園都市にもたらした情報は嘘ばかりというわけではなくなる。
「ご、誤解しないでください、士君は壊された世界を元に戻してます!」
「まあ、夏海と私がいなかったら危なかったけどねぇ~」
「キバーラ!」
上条達の反応に慌てたように夏海がフォローを入れる、余計な事を言うキバーラを睨みつけ、ひたすらに士の無実を説明し続けようと口を開く。
「よせ夏みかん、俺が害かどうかはこの世界が決めることだ」
「でも、士君……」
「俺は自分の信じるままに進んできた、今更表面を取り繕ったところで意味はない」
士自身にそう言われては夏海もそれ以上何も言えない。
重い空気が辺りを支配し、沈黙が続いていい加減つらくなってきた頃。
「正直、世界がどうとか想像がつかないけどさ」
「ビリビリ?」
「ビリビリ言うなっての! ……こほん、まあ、そんなんだからこの話じゃあんたが正しいのか間違ってるのかなんて判断つかないわけよ」
沈黙を破ったのは御坂美琴、士は何も言わずその言葉に耳を傾ける。
「だから私はあんたと直接戦った経験から言わせてもらうけど、あんたは嫌な奴だけど悪い奴じゃない、って思うわ」
「御坂さん……」
「私達と戦った時、できるだけ怪我をさせないようにしてたのが見え見えだったわよ、はっきり言ってその辺はナメられてる感じで気に入らない。
だけど、いきなり襲いかかってきた相手を気遣うような奴を悪人だと思え、って言われてもピンとこないわ」
真っ直ぐな瞳を向けてくる美琴に、士はやはり言葉を返さない。
「だから、私はあんたに協力する。あの鳴滝とかいうオッサンを取っ捕まえて、この街に手を出したことを後悔させてやるわ」
パリパリと火花を散らし、好戦的な笑みを浮かべて美琴は宣言する。
その横に上条が並び、拳を握りしめながら強く頷いた。
「会ってから少ししか話してないけど、門矢が悪人じゃないってのはわかる、俺も手伝うぜ」
「やれやれ、そう言われちゃ俺だけ抜けるわけにもいかないにゃー」
苦笑しながら土御門も答え、三人は士を見る。
「……いいのか? 俺に味方すれば鳴滝は完全にお前たちを敵と認識するぞ」
「それが何よ、もう散々巻き込まれてるのに今更だわ」
「まーそもそも、アンチスキルを動かさなかった一件ですでに攻撃されそうな気配だったしにゃー」
「あいつには門矢も学園都市もやらせない、それだけだ」
意思を変えようとしない三人に士は小さく笑みを浮かべ、
『ならば、遠慮はしない』
「鳴滝!?」
突如響く鳴滝の声に全員が周囲を警戒するがその姿は見つからない。
士がディケイドライバーを構え――――
「あれぇ? みんなどこ行っちゃったんだろうね……せっかくお菓子作ったっていうのに」
誰もいなくなった部屋で、栄次郎は一人立ち尽くす。
◇
「くっ、みんな無事か!?」
草一本生えていない、見渡す限りの荒野で士は声をかける。
各々から無事を告げる声が返ってきてひとまず胸を撫で下ろすが、ここは鳴滝が用意したフィールドだ、どこから攻撃が来るかわからない。
「場所が変わった……どうして俺の右手が効かないんだ!?」
「エンジェルフォールの時、突然夜にされたのと同じだ! 『カミやんを動かす』んじゃなく『世界を動かす』んだったらイマジンブレイカーは働かない!」
「世界をって、本気で天使並の相手かよ!」
「天使ではない」
毒づく上条に答えるかのように、士達の目の前にオーロラの壁が現れその中から鳴滝が現れる。
即座に全員が構えるが、士は鳴滝の手にしたメモリを見て目を見開いた。
「ガイアメモリだと!?」
「そうだ、私は手にした……全てを破壊する、悪魔の力を! ディケイド……私は貴様を破壊する!」
『DECADE!』
鳴滝がメモリを自らの首元に突き立てると同時に、ディケイドへと姿を変える。
「ディケイドのガイアメモリ……そのお宝は危険すぎる、僕が頂くよ、へんし――」
「貴様らの相手は別に用意してある、散れ!」
「何!?」
海東が変身するより早く、鳴滝が手をかざすと共にいくつものオーロラの壁が士達の周りに現れ、一同を飲み込もうと迫り来る。
「カミやん!」
「無理だ! 数が多すぎる!」
それでも幾つかの壁はイマジンブレイカーで破壊するが、上条一人では全方位からの攻撃に対処することはできない。
次々と壁に飲み込まれていき、最終的には士と上条、そして鳴滝の三人のみとなってしまう。
「みんな……!」
「鳴滝、夏みかん達をどこへやった!」
「答えてやる義理はない……覚悟しろディケイド、ここが貴様の最後の世界だ!」
「くそっ! 上条、下がってろ!」
『KAMEN RIDE DECADE!』
士もディケイドへと変身し向かってきた鳴滝と斬り合いにもつれ込む。
上条も加勢しようとするが、すぐにその足を止めてしまう。
(ち、近寄れねぇ……)
ディエンドと戦ってライダーの力は知っていたつもりだった。
だが今目の前で行われている『互いを殺すため』の戦いはあの時とは次元が違う、生身の人間が迂闊に近寄れば余波だけで吹き飛ばされかねない。
それでも上条は持ち前の精神力で引かずにいるが、下手に飛び込んでは返って士の足を引っ張りかねないだろう。
(くそ……チャンスを待つしかないか……!?)
「……!」
『KAMEN RIDE AGITO!』
電子音と共に鳴滝の姿が変化する。
黒い体に金色の装甲、どことなくクウガにも似たその姿の名はアギト。
記憶を失いながらも強大な敵、アンノウンと戦い続けた青年の変身する仮面ライダーだ。
『FORM RIDE AGITO FLAME!』
金色の装甲が赤く染まり、右腕にも同色の装甲が展開される。
その手に長剣、フレイムセイバーが現れその一薙ぎで士を吹き飛ばす。
アギト・フレイムフォーム。
機動性を捨て、力と知覚能力を重視した形態だ。
「ちっ、そっちがドラゴンなら、こっちはドラゴンフライだ!」
『KAMEN RIDE V3!』
深紅のトンボを模したマスク、緑色のライダースーツ、白いプロテクターに白いマフラーを靡かせるその姿。
V3、復讐のために自ら仮面ライダーになろうとし、本当に戦うために必要な物、正義の心を受け継いだ男の変身する仮面ライダーだ。
『ATTACK RIDE CROSSHAND!』
振り下ろされるフレイムセイバーを交差させた腕で受け止める。
V3の26の秘密の内の一つ、細胞強化装置の力だ。
そのままセイバーを弾き、強化された腕力で鳴滝を殴り飛ばす。
「V3……ならば」
『KAMEN RIDE BLADE!』
青いボディに銀色の装甲と仮面、胸にはスペードマークが赤いラインで刻まれている。
ブレイド、誰かを救うためには自分の身さえも犠牲にする、強すぎる意思を持った男の変身する仮面ライダーだ。
再び姿を変えた鳴滝へ士は駆け出すが、その拳が届く直前にカードがセットされる。
『ATTACK RIDE METAL!』
「うわっ!」
メタルのカードの力により鳴滝の体が硬質化し、殴りかかった士の方が弾き飛ばされてしまう。
すぐに体勢を立て直すが、すでに更なるカードがセットされた瞬間だった。
『ATTACK RIDE TIME!』
時が止まる。
クロックアップとは違う、完全に鳴滝以外の時間が止まっているのだ。
タイムのカード、自分以外の時を止める強力な力、最も時を止めた状態では相手を攻撃することができないという弱点もあるが。
とはいえその程度リスクとさえ言えない、静止した士の死角へと周り込み、ライドブッカーを――
「っだあああああああ!!」
「くっ!?」
間に飛び込んできた上条の右手を回避するために飛び退る。
ライダー同士の戦いには入り込めないだろうと考えていたが、改めてイマジンブレイカーに対する警戒を強める。
ラウズカードによる干渉さえも打ち破るその力は充分驚異となりえる、地球の記憶を形としたガイアメモリへの力はどう作用するか判ったものではない。
だが、イマジンブレイカーは右手にしかないという致命的な弱点がある。
「邪魔をするな」
『ATTACK RIDE MACH!』
「なっ……!?」
高速移動のカードを使い、一瞬にして上条の背後へ回り込み蹴り飛ばす。
「上条!?」
「が……くそ……」
タイムが解けた士の呼びかけにもまともに返すことができない。
倒れ伏す上条には構わず、再び鳴滝は士へと斬りかかる。
「鳴滝……! こいつならどうだ!」
『KAMEN RIDE BLACK RX!』
黒いボディに真っ赤な瞳、バッタを模した姿に変化し鳴滝の剣を受け止める。
BLACK RX、自我をなくした親友と戦わなくてはならない運命に苦悩する男が変身する仮面ライダーが、太陽の力を得て進化した姿だ。
二、三剣を交え、同時に下がり続くカードをセットする。
『ATTACK RIDE THUNDER!』
『FORM RIDE BLACK RX BIORIDER!』
サンダーのカードによる電撃を士は自身の体を液状化させて回避する。
バイオライダー、RXの怒りの感情が呼び起こした、液体分子構造を持った形態だ。
液状化した状態で鳴滝の周囲を飛び回りながらダメージを与えていく、苦し紛れにライドブッカーを振り回すが、この状態のバイオライダーには物理攻撃は通用しない。
「はぁ!」
「ぐ!」
鳴滝を吹き飛ばしながら青と銀、赤を基点としたカラーリングへと変化した姿へと実体化する。
よろめきながらカードを取り出す鳴滝へと、そうはさせまいと駆け出しながらこちらも更なるカードをセット。
『FINAL ATTACK RIDE BBBBLACK RX! BIORIDER!』
バイオライダーの剣、バイオブレードが青く発光していく。
数々の強敵を倒してきたバイオライダーの必殺技、スパークカッターだ。
『FORM RIDE FAIZ!』
黒いスーツに大きな黄色い瞳、スーツと銀色の装甲には赤いラインが施されている。
555(ファイズ)、自らもオルフェノクながら人類とオルフェノクの戦いに身を置く、優しき青年の変身する仮面ライダーだ。
姿を変えた鳴滝に構わず、士はバイオブレードを袈裟懸けに振り下ろす。
「それを待っていた!」
「なに!?」
スパークカッターを肩口に受けながらも右足で蹴りを放ち、必殺技に集中していたがため液化できない士へと打撃を決める。
予期せぬ攻撃に後ろへ下がり、スパークカッターも完璧に決まらなかったがこの程度の攻撃では応えはしない、すぐ応戦しようと体勢を……
「っ……しまった!」
士の体を円錐状の赤いエネルギー体が拘束している。
555の右足に装着されているポインターから放たれた相手を拘束・ロックオンするエネルギー体だ、元々液化していたならまだしも、これではいかにバイオライダーとて逃れることはできない。
動くことのできない士へと見せつけるように、再び鳴滝はカードを取り出してセットする。
『FORM RIDE FAIZ ACCEL!』
銀の装甲が開き、肩のアーマーへと変化する。
555の動力源、フォトンブラッドの出力が変わり瞳の色が黄色から赤へと。
赤のラインは銀色へと輝き、機械的な印象が強くなる。
ファイズ・アクセルフォーム。
555の切り札とも言える、超高速形態だ。
鳴滝はそのままリストウォッチ型のデバイスを操作する。
低い起動音が響き、電子音が士の耳に届いた。
『Start Up』
――瞬間、士を拘束していたエネルギー体が数十にも膨れ上がる。
鳴滝の姿は見えない、文字通り目にも留まらぬ速さで動いているのだ、上条はおろか、士でさえも捉えられない。
『FINAL ATTACK RIDE FAFAFAFAIZ!』
「ぐあああああああああ!!」
一瞬の間に数十のロックオンポイントから555の必殺技、クリムゾンスマッシュが炸裂する。
悲鳴を上げながら士は変身が解除され地面を転がる。
「門矢!」
上条が呼びかけるが、わずかに身じろぎするだけで起き上がらない。
ディケイドの姿へと戻った鳴滝が近づいてくるのを見て、ふらつく体を奮い立たせて間へと立ちふさがる。
「邪魔をするな、と言ったはずだぞ」
「うるせぇ! 門矢も俺たちの世界も、お前なんかにやらせない!」
「……貴様に何がわかる!」
『ATTACK RIDE BLAST!』
声を荒げながら放たれた弾丸が上条の左肩を撃ち抜く。
呻き数歩後ずさるが、倒れそうになるのを堪え鳴滝を睨み返す。
その反応に更に怒りを強めライドブッカーを乱射しようとした瞬間、士が目を覚まし静止の声を上げた。
「止めろ鳴滝! お前の狙いは俺だけのはずだ!」
「ディケイド……!」
「鳴滝、もう世界の崩壊現象は収まった、何故まだ俺を狙う?」
「……終わってなど、いない」
鳴滝の言葉に士の表情が固まる。
世界の崩壊がまだ続いているというのならば、それは確かに見過ごせない事態だろう。
「どういうことだ、まだ世界は滅びようとしているのか!?」
「違う、世界の崩壊は確かに収まった、だが! 滅んだ世界は戻ったわけではない!」
「何を言っている……9つの世界は、全て戻ったはずだ……」
動揺を隠しきれ無いまま、鳴滝へと問いかける。
「ああそうだ、9つの世界は、『貴様が記憶を失ってから巡った世界は』全て元通りになった!」
その言葉に士は息を飲む。
士が9つのライダーの世界を旅し始めたのは、一度その記憶を失ってからの話だ。
未だ記憶を失う以前の事は思い出せず、そして世界が9つの世界だけでないことを彼は知っている。
「まさか、鳴滝……お前は」
「そうだ……! 私は、貴様が記憶を失うよりも前に破壊した世界の生き残りだ!」
崩壊した世界を元に戻したのは、士や夏海達を始めとした記憶の繋がりによる再生。
ならば夏海やユウスケが知らず、士が忘れてしまった世界はどうなるのか。
その答えは、まさに今、目の前にあった。
「私は絶対に許さない、私の世界を滅ぼし、全てが解決した気になっている貴様を、貴様に味方する者も全て!」
「っ……俺、は……」
「門矢……」
「見せてやろうディケイド、貴様に味方した者がどうなっているのか」
言いながら右手を掲げると、少し離れた空間にオーロラの壁が現れその向こう側の世界を映し出す。
「「きゃああああああ!」」
「夏海!?」
「御坂!?」
キバーラに変身した夏海と美琴が同時に倒れ伏す。
そこに人影が近づき、そのままの体勢で美琴がその人影へと電撃を放つが手にした大剣で防がれてしまう。
「な、なんなのよあいつ……」
「私たちじゃ、歯が立たない……」
「そりゃそうよ、あーあ、鳴滝様ってば本気みたいね」
恐怖の色を滲ませて呟く二人へと、キバーラはつまらなそうに吐き捨てる。
その間にも人影は近づき、壁越しに見ている上条と士にもその姿が見えてきた。
「ふん、手応えのない……この程度の者が余の相手とはな」
全身が金色の鎧に覆われ、同じく金色の顔の左半分は装甲が剥がれたかのように銀色の輝きが見えている。
頭部に生えた二本の角がその強大さを見るものに伝えてくる。
この怪人の名、それは……
「クライシス最高幹部にして最強怪人、ジャークミドラ……!」
「「うあああああ!!」」
「ユウスケ!?」
「土御門!」
いつの間にか逆方向に現れていたオーロラの壁から聞こえた悲鳴に同時に振り返る。
「くそぉ……! 土御門さん、大丈夫か!?」
「大丈夫と言いたいところだけど……こいつは、流石に厳しいぜい……!」
背中合わせに構えているのはクウガに変身したユウスケと土御門。
それぞれの視線の先には幾つもの影が蠢いている。
「どうした仮面ライダー! 貴様の力はこんなものか!」
「我らスーパー大ショッカーのスーパー幹部、ガラガランダとイカデビルの二人には太刀打ちできまい!」
ユウスケが対峙しているのはそれぞれイカとヘビを模した怪人、ガラガランダとイカデビル。
「能力者達を襲ってたのはこのためか……ワームとか言ってたかにゃー?」
土御門の前にいるのは何人もの学園都市の生徒たち……そのどれもがスキルアウト事件によって行方不明となっている能力者達だ。
「ワームを捕らえた能力者に化けさせ我らの戦力とするこの作戦、どうやら効果は高いようだな」
「覚悟しろ、仮面ライダー!」
「スーパー大ショッカーだと……?」
「そうだ、スーパーショッカーが滅んだあの日から、私は様々な世界を巡り、ライダー達と大ショッカーが戦い続けている世界を見つけ出した。
その世界で私と共にディケイドを倒すことを望む者たちを集め、そしてスーパー大ショッカーとして生まれ変わった!」
「鳴滝、そこまで……」
(どこだ、海東……!?)
鳴滝と言葉を交わしながら、士は海東の居場所を探る。
ディエンドならば並の相手には負けはしない、カメンライドやインビジブルで相手を撒くことも可能だ。
そして世界を越える力を使えば他の場所の助けにも行ける、言わばこの状況での唯一の頼みの綱であろう。
そんな士の思考を読んだからのように鳴滝は再び手をかざし、三つ目のオーロラの壁が現れる。
『KAMEN RIDE IKUSA! GYAREN!』
「行け、仮面ライダーイクサ、ギャレン!」
「海東!」
白い甲冑のライダー、イクサと、赤いクワガタをモチーフとしたライダー、ギャレンが人影へと向けて手にした銃を乱射する。
「その命、神に返しなさい!」
そのままイクサは駆け出しながら銃を変形させ、長剣イクサカリバーを振りかざす。
鋭い斬撃が繰り出されるが、人影は左手に持った短剣で軽く受け止め、右手の長剣の一振りであっさりとイクサを切り捨てた。
「くっ……ギャレン!」
海東の声に応え、ギャレンは自身の武器、ギャレンラウザーの後部に収納されていたカードを三枚引き抜き読み込ませる。
『DROP』
『FIRE』
『GEMINI』
『BURNING DIVIDE』
蹴り技を強化する「DROP」
火炎属性を付加する「FIRE」
自身の分身を発生させる「GEMINI」
この三枚のカードのコンボによる技、バーニングディバイドが発現する。
GEMINIの効果によって二人となったギャレンが同時に飛び上がり、FIREとDROPによって強化された蹴りを影へとはな――
「ぐっ!?」
影の手から放たれた光線がギャレンを捕らえ拘束する。
もがくギャレンをそのまま振り回し、ようやく立ち上がったイクサへと叩きつけより強力な光線を発射する。
「「うわあああああああああ!!」」
ものの数分で二人のライダーが倒され、海東が自ら攻撃をしかけるが銃弾を弾かれ接近されてしまう。
「っ……!」
『ATTACK RID――』
「遅い」
「うわっ!?」
咄嗟にインビジブルのカードを発動させようとするが、その動きを見越していたかのように斬り倒されてしまう。
オーロラの壁の前まで転がり、ふらつきながらもディケイドライバーを構え近づく影へと狙いをつける。
「流石だね、ここまで差があるとは思わなかったけど……世紀王、シャドームーン」
「……」
◇
「みんな……!」
「どうだディケイド、これは全て貴様に味方したせいだ! 貴様は何も守れない、破壊するだけの悪魔なのだ!」
「俺の、せい……全部、俺が……?」
「そうだ! 貴様のせいで私の世界は、貴様の仲間は破壊される!」
「………………いい加減にしろよ、おっさん」
愕然とする士を罵倒する鳴滝へ、上条は怒気の込もった言葉をぶつける。
「上条……?」
「黙れイマジンブレイカー! 貴様に私の苦しみなどわかるまい!」
「ああ、わかんねーよ! 世界を壊された痛みも、自分一人生き残った苦しみも、憎んだ相手と同じ力を手に入れてまで殺そうとするその執念も、何一つわからねぇ!
だけどな、あんたのやり方が間違ってるってことだけは確かだろう! 門矢達から聞いた話じゃ、あんたは今まで門矢以外は傷つけようとしてなかったんだろ!?
自分でわかってるんじゃねぇか、自分の復讐に他人を巻き込むことがどれだけバカな真似かっていうことが!」
上条の言葉は止まらない、自らの思いの全てを吐き出しぶつけようと声をあげ続ける。
「それが、それがどうしたと言うのだ! もはや私は手段を選ばない、ディケイドを殺すためならば!」
「ふざけんな! お前はそれで本当に満足できるのかよ!? 自分の世界を滅ぼした門矢が憎いってのはわかる! けど、その憎しみは全てを忘れてしまった、今の門矢を殺すことで消えるのか!?
俺は少ししか門矢のことを知らない……だけど! 今の門矢 士って奴が無駄な破壊を振りまくような奴じゃないってことは判った! あんたのその憎しみの相手は、この門矢じゃねぇ!
もっと別の、誰も死なずに済むいい方法があったはずじゃねぇのかよ! どうしてそいつを見つけるのを諦めちまうんだ!
それでも、あんたが門矢を殺すことでしか道を見出せないってんなら――――俺が、その幻想をぶち殺す!!」
「黙れと…………言ったぁぁぁぁ!!」
『ATTACK RIDE BLAST!』
「がっ……!」
「上条!」
再び放たれた銃弾に今度こそ上条は倒れ伏す。
だが、傷を負った上条以上に鳴滝の心は乱されている、上条当麻の『言葉』に対して『力』でしか返すことができなかったのだ。
その乱れた心は、皮肉な事に憎む相手へ向けることでかろうじて平静を保たれる。
「何故だディケイド! 何故貴様はいつも守られる! 貴様は破壊者だと、悪魔だというのに!」
「鳴滝……俺は……」
大きく首を振りながら叫ぶ鳴滝へ、士は伏せていた顔を上げ真っ直ぐに見つめ返す。
未だダメージの大きい体を奮い立たせ、ディケイドライバーを構え力に満ちた瞳を向けて、口を開く。
「俺は、確かに破壊者だった。世界を破壊し、それを元に戻すことさえできない……」
士の言葉へ、鳴滝も上条も黙って耳を向けている。
「だが! 今の俺は違う! 俺は二度と世界を破壊せず……世界を壊させもしない! 俺の行くべき道を、こいつが教えてくれた!」
「門矢……!」
「……っ! ならば、ならばディケイド! いったい貴様は何だと言うのだ!」
「俺は――」
ディケイドライバーを腰へあて、手にした一枚のカードを挿入する。
「――通りすがりの仮面ライダーだ、覚えておけ!」
『KAMEN RIDE DECADE!』
最終更新:2010年05月09日 11:27