それから、翔太郎と雪華綺晶の不思議な共同生活が始まった。
「調査・・・結果・・・UFOの・・・ガイア・・・メモリは・・・。」
『・・・翔太郎?』
タイプライターで報告書を打つ翔太郎を見て、雪華綺晶が声をかける。
『これって・・・ローマ字・・・ですか?』
「ああ、おやっさんみたく英語で報告書を書きたかったんだけどな、いかんせん英語が苦手でな。
・・・で、気分だけでもと思ってローマ字でずっと書いてるんだよ。」
『ならば、私がお手伝いしますわ。』
そう言って、雪華綺晶は翔太郎の体を乗り越え、タイプライターに手をかける。
『Report・・・A・・・User・・・Of・・・UFO・・・is・・・翔太郎、この続きは?』
「・・・あ・・・ああ!UFOのガイアメモリの持ち主は湯追 純二というオカルト研究家で・・・。」
『is・・・Junji・・・Yuoi・・・Who・・・is・・・。』
「待ちやがれ、下着泥棒!」
路地を走る翔太郎。
その前には女性下着を右手に握りながら逃げる泥棒がいた。
「くそっ・・・足の速い奴だ!」
翔太郎が言う。
『翔太郎・・・ここは私に任せてください!』
そう言うと、翔太郎の薔薇の花から大量の花粉が飛び出し、それらは泥棒の周囲を包み込んだ。
「な・・・なんだ?!・・・は・・・は・・・ハックション!ハクション!!」
クシャミが止まらなくなる泥棒。
その隙をついて、翔太郎のジョーカーエクストリームを思わせる両足キックが泥棒の背中に炸裂、
そして泥棒は御用となった。
「さすがだぜ、きらきー!」
そう言って、雪華綺晶と翔太郎はハイタッチするのであった。
「いやはや・・・翔太郎くんと雪華綺晶ちゃんのタッグはすごいわね。」
リボルキャリーのドックで亜希子が言う。
目の前では、フィリップがファングメモリ修復のためにハンダこてを振り回していた。
「ああ、そうだね。」
「・・・あら?意外とそっけないわね。
フィリップくんだって翔太郎くんの相棒なんだから『僕の翔太郎をよくも!』みたいなこと言うかと思ったけど。」
「そんなこと言うわけ無いだろ。」
「ふーん・・・。」
そう言って、亜希子はフィリップを覗きこむ。
「そう言えば、亜希ちゃん。翔太郎は?」
「・・・え?・・・あぁ、雪華綺晶ちゃんとパトロールに出かけたわよ。」
「そうかい。」
「やっぱり、ヤキモチ焼いてるんでしょ?」
「だから、そんなワケないって言ってるじゃないか?」
「・・・じゃあ、さっきからフィリップくんの左手の甲に乗ってるものは何?」
「・・・え?・・・!!」
やはり多少翔太郎のことが気になっていたがために集中力が散漫になっていたのか、
ファングを直しているつもりでフィリップは自分の左手にハンダこてを押しつけていたことに気付かないでいたのであった。
「あ~あ・・・。ちょっと待ってて、救急箱持ってくるから。」
左手を押さえながら、今までのクールな振る舞いからは想像も出来ないような悶絶を起こすフィリップを後目に、
亜希子はドックを出るのであった。
「・・・これで・・・良し!」
ドックの床に座って亜希子がフィリップの火傷の手当てをする。
「ありがとう。」
「ま・・・ヤキモチ焼くのは分かるけどね。翔太郎くんと雪華綺晶ちゃん、えらく仲が良いものね。」
「いや・・・ヤキモチもそうだけど、僕には気になることがあるんだ。」
「・・・気になること?」
「ああ・・・実は、修理の合間に雪華綺晶に関する検索をかけたんだ。」
フィリップは思い返していた。
地球(ほし)の本棚で『雪華綺晶』というワードを検索し、
雪華綺晶に関するあらゆるデータについて調査していたことを。
そして、その調査からは意外な事実が導き出されていた。
「彼女は・・・簡単に言えば、2つの性格を有しているんだ。」
「2つ・・・って、二重人格ってこと?」
亜希子が聞く。
「ああ。ひとつは僕たちとの生活で見せたような清純で優しい乙女の性格。
もうひとつは・・・。」
「もうひとつは・・・?」
「・・・彼女は漫画内では『実体を持たない精神体のドール』として描かれていたという話は以前しただろう?」
「ええ、だから翔太郎くんと合体しちゃったワケだし。」
「それがある意味、彼女の『もうひとつの性格』を作ったと言えるんだ。
他のドールのように人と接したり、現実世界で生活したりという自由を持てず、
nのフィールドという鏡の世界でたった一人で生活しなくてはならない。
そんな彼女が抱くもの・・・さびしさ、実体や自由を欲する欲望、そして他のドールへの妬み・・・。」
「そんな・・・!もしかして、雪華綺晶ちゃんは実体を得るために翔太郎くんに近づいたって言うの?!」
「最初は僕もそう考えたさ。・・・だが、地球(ほし)の本棚がその考えを否定してくれたよ。」
「地球(ほし)の本棚が・・・?」
嵐波埠頭へと向かう一直線の道路。
その道を仮面ライダーWの乗ったハードボイルダーが疾風の如く駆け抜けていった。
「きらきー、準備は良いか?」
『はい!』
翔太郎が雪華綺晶の意識に声をかける。
「よし・・・まずはヒートだ!」
『はい!』
Wの右半身となっている雪華綺晶は、翔太郎の指示を受けてヒートメモリを手に取り、
自身のWドライバーに装着されたサイクロンメモリと交換する。
HEAT!JOKER!!
「よし、次はルナだ!」
『はい!』
今度はヒートメモリを抜き、新たに取りだしたルナメモリと差し替える。
LUNA!JOKER!!
「よし、最後にもう一度サイクロンだ!」
『はい!』
三度メモリを抜く雪華綺晶の意識。
そして、先ほどまで刺していたサイクロンメモリを再び取り出し、Wドライバーに装填する。
CYCLONE!JOKER!!
再び、サイクロン・ジョーカーとなるW。
「きらきー!どうやらWの体にも慣れてきたようだな!」
『はい!翔太郎のおかげですわ!!』
「ああ・・・。でも、本来なら君を戦いに・・・。」
『翔太郎、私のことなら心配しないで。それに・・・今は私があなたの『相棒』なんだから・・・ね?』
「・・・ふっ、言ってくれるぜ!『相棒』!!」
そう言って、翔太郎はハードボイルダーの速度を上げる。
「一気に港まで行くぞ!!」
『はい!!』
その数分後、埠頭の一画にあるベンチの上に翔太郎と、翔太郎の上に浮かび上がる雪華綺晶の姿があった。
「・・・なんか、訓練でテンション上がり過ぎて、風都の端っこまで来ちまったな。」
『ふふっ・・・でも、男の方と2人っきりでドライブ、まるで・・・デ・・・デートみたい・・・ですね。』
雪華綺晶が顔を赤らめながら恥ずかしそうに言う。
「デートって・・・あ・・・えっと・・・きらきーも恥ずかしそうに言うなよ!なんか・・・俺まで照れちまうだろ・・・。」
翔太郎も顔を赤らめる。
ベンチの上では、完全なるカップルが出来上がっていた。
「はいはい、熱いねあついねぇ~っと。」
突然聞こえてくる冷めた声。
声の方向に2人が振り向くと、そこには1人の男が立っていた。
「あぁん?何だ、お前は?」
翔太郎が不機嫌そうに言う。
「俺はな・・・お前みたいな彼女持ちが大っ嫌いなんだよ!それにな・・・そいつが仮面ライダーなら尚更なんだよっ!!」
そう言って、男は一本のガイアメモリを取りだした。
LOBSTER!!
ロブスターのメモリを喉に刺す男。
その体は変貌し、ロブスター・ドーパントへと変わる。
「くたばれ、仮面ライダー!!」
巨大なハサミで襲いかかるロブスター・ドーパントに対し、とっさに回避する翔太郎。
一方、ロブスター・ドーパントのハサミは、2人のいたベンチを粉々に破壊するのであった。
「きらきー!実戦だ、準備はいいか?!」
『はい、いつでもOKですわ!!』
そう言って、2人はそれぞれの手にガイアメモリを掲げる。
「『変身!!』」
CYCLONE!METAL!!
Wドライバーに装填される2本のガイアメモリ。
そしてWドライバーは発光し、翔太郎と雪華綺晶を緑と銀の戦士へと変えるのであった。
ロブスター・ドーパントのハサミに対し、メタルシャフトで対抗するW。
だが、ロブスター・ドーパントの装甲はメタルシャフトと同等の硬度を持っているようで、その戦いは一進一退であった。
「くそっ!らちが明かねぇ!!」
『・・・ならば、翔太郎!一点集中ですわ!!』
雪華綺晶の提案に、翔太郎はメタルのメモリをトリガーのメモリに差し替える。
同時に、雪華綺晶の意識もサイクロンのメモリをヒートのメモリに差し替えるのであった。
HEAT!TRIGGER!!
出現する、赤と青の仮面ライダーW。
「色を変えても、この俺には・・・ぐあっ?!」
Wに襲いかかろうとするロブスター・ドーパントであったが、
突然飛来したバットショットとスタッグフォンの不意打ち攻撃を受けて倒れてしまう。
一方、Wはまずバットショットを手に取ると、トリガーマグナムに取り付けるのであった。
BAT!
「これでどうだ!!」
発砲するW。
ヒートの力で攻撃力の増した弾丸が、バットショットによる精密射撃でロブスター・ドーパントの体の一点に集中する。
脅威の装甲を誇るロブスター・ドーパントも、この攻撃には抵抗できなかったのか、思わず苦悶の声をあげるのであった。
だが、そんな声に耳を貸すこと無く攻撃を続けるW。
そして、ついにロブスター・ドーパントの装甲に大きなヒビを入れ、身の一部をさらけ出させることに成功した。
「くそっ・・・こうなったら、逃げるが勝ちだ!」
そう言って、背を向けて逃亡するロブスター・ドーパント。
「おっと、そうは問屋が卸さないんでね!」
そう言って、トリガーマグナムに装着されていたバットショットを外すと、
Wはバットショットの疑似メモリをルナのメモリに差し替える。
LUNA!MAXIMUM DRIVE!!
Wの手から勢いよく飛び出していくバットショット。
そして、ロブスター・ドーパントの正面に回ると、フラッシュから不思議な光を放つのであった。
突然の出来事に、まともに光を浴びるロブスター・ドーパント。
すると、その光はロブスター・ドーパントの体を包み込むと、まるで氷のように相手の体を止めてしまうのであった。
「とどめは・・・コイツだ!!」
そう言って、今度はトリガーマグナムにスタッグフォンを装着するW。
そして、自身のドライバーに刺さるトリガーのメモリを抜き、トリガーマグナムに充填した。
STAGG!
TRIGGER!!MAXIMUM DRIVE!!
ガイアメモリの音声を確認すると、勢いよくジャンプするW。
続いて空中で体を捻り、先ほどロブスター・ドーパントに空けた傷口を狙って引き金を引くのであった。
「『トリガー・スタッグボマー!!』」
翔太郎、そして雪華綺晶の声とともにトリガーマグナムから発射される、大きな炎の塊。
その炎はスタッグフォン状の形となって一直線にロブスター・ドーパントの傷口へと向かっていく。
あっという間にロブスター・ドーパントの傷に取り込まれる炎。
そして、まるで武士が刀を鞘に納めるかの如く、トリガーマグナムを自身の胸に再装着すると、
それが合図であったかのようにロブスター・ドーパントは内部から大爆発を起こすのであった。
「やったな、きらきー!!」
『これにて一件コンプリート!・・・ですね。』
「随分と懐かしい言葉だな・・・。まあ、いいや。とりあえず、後は警察に・・・。」
そう言いながら、Wがロブスターのメモリの所有者を見ようとしたその時だった。
「だぁれが殺した駒鳥さん・・・。」
突然、翔太郎の耳に入るマザーグースの歌。
しかも、その声は雪華綺晶に似ていた・・・いや、完全なる雪華綺晶の声であった。
「きらきー、どうした?急に歌なんか歌いだして?」
『・・・え?私は何も・・・。』
雪華綺晶の意識が話していると、再び聞こえてくるマザーグースの歌。
しかも、その声は少しずつ彼らのもとへと近づきつつあった。
状況を理解出来ないW。
そして、その声は突然聞こえてきた。
「私の体・・・見ぃつけた!!」
声の方向を振り向くW。
目線の先には、ロブスターのメモリの所有者が、白い花びらのような何かに包まれようとしている光景だった。
目を覚ます男。
「・・・ん・・・ん?な・・・何だ?!う・・・うわぁあああああ!!」
突然、男が苦しみだす。
すると、男の体中を薔薇のツタが覆い始めた。
そう、翔太郎のもとに雪華綺晶が現れた時のように・・・。
「おい・・・これって・・・。」
目の前の出来事に対応出来ないW。
一方、薔薇のツタは完全に男を覆うと、ツタの塊は何かへと形を変えていった。
「そんな・・・馬鹿な・・・。」
「ねえ、フィリップくん。地球(ほし)の本棚が・・・ってどういうこと?」
リボルキャリーのドックで亜希子がフィリップに聞く。
すると、フィリップは無言のまま、亜希子に一冊の本を手渡した。
そこには『KIRAKISHOU』の文字。
「これが・・・雪華綺晶ちゃんに関する本・・・。」
「そして、これさ。」
そう言って、フィリップはもう一冊の本を手に取ると、亜希子に見せた。
「・・・え?それって・・・。」
フィリップの手元の本、そこにも『KIRAKISHOU』の記載。
それは、本来1つの存在に対して1つの記憶しか存在しない地球(ほし)の本棚においてあり得ないことであった。
「おそらく・・・彼女は2人いる。」
続く
<次回予告>
仮面ライダーW!
『お願い・・・もう・・・私の前に現れないで!!』
「?!きらきー、落ち着け!!」
「た・・・大変です!アルバトロス・パークに・・・ドーパント出現!!」
「これは・・・ロブスター・ドーパント?!」
「この戦いが終わったら、またドライブに行こうぜ。」
『ハイ!』
これで決まりだ!!
最終更新:2010年05月19日 00:27