仮面ライダーW、今回の依頼は?
「ちょっと待って、翔太郎。・・・なんで、『君だけがWになってる』の?」
「・・・え?」
『私は・・・私は・・・。』
「・・・雪華綺晶?」
『!・・・どうして、あなたが私の名を・・・?』
「俺はな・・・お前みたいな彼女持ちが大っ嫌いなんだよ!それにな・・・そいつが仮面ライダーなら尚更なんだよっ!!」
STAGG!
TRIGGER!!MAXIMUM DRIVE!!
「『トリガー・スタッグボマー!!』」
「だぁれが殺した駒鳥さん・・・。」
仮面ライダーWは唖然としていた。
ロブスター・ドーパントのメモリブレイクを完了し、あとはいつものようにメモリの所有者を警察に引き渡すだけだと彼は考えていた。
だが、その流れは突然聞こえてきたマザーグースの歌をきっかけに遮られてしまった。
突如として発生した、白い薔薇の花吹雪。
それはロブスターのメモリの所有者の体を包み込み、そして彼の体を今度は薔薇のツタで包み込むのであった。
「おい・・・これって・・・。」
この光景を見て、思わずつぶやく左 翔太郎。
彼の頭の中ではある光景が浮かんでいた。
翔太郎自身の右腕が薔薇のツタに包まれ、そしてそのツタに咲いた白い薔薇の花から雪華綺晶が現れた時の光景を・・・。
そして、Wの目の前でツタから芽を出す1つの白い薔薇。
その芽は人間の右目に当たる部分で大輪の花を咲かせると、
それが合図であったかのようにツタだらけだった体を『1人の少女』へと作り変えるのであった。
「私の体・・・私の体・・・ふふふふふ・・・。」
「そんな・・・馬鹿な・・・。」
Wの前に姿を現した存在、それは紛れも無く、仮面ライダーWの右半身として翔太郎と意識を共有しているはずの雪華綺晶であった。
「・・・きらきー!どうして、君が・・・君がもう1人いるんだ?!」
翔太郎が思わず叫ぶ。
『どうして・・・あなたが・・・。』
「?!きらきー、何か知ってるのか?」
もう1人の自分を見て動揺する雪華綺晶に対して、反応する翔太郎。
一方、もう1人の雪華綺晶は2人のやりとりをジィーっと見ていた。
「いいな・・・。」
「・・・あぁ?」
「いいな・・・そっちの私には友達がいる・・・こっちの私には友達がいない・・・。」
「なんだと・・・?」
「友達・・・欲しい・・・私が・・・奪う!!」
そう言って、Wに襲い掛かろうとするもう1人の雪華綺晶。
だが、それよりも先に攻撃を仕掛けた者がいた。
もう1人の雪華綺晶を襲う炎の拳、その炎は彼女の胸部を炎で包み込む。
その攻撃主はW・・・いや、雪華綺晶の意識であった。
「・・・きらきー?」
翔太郎が雪華綺晶の意識に声をかける。
『お願い・・・。』
「?」
『お願い・・・もう・・・私の前に現れないで!!』
絶叫する雪華綺晶。
それと同時に、雪華綺晶の意識が形成するヒート・ボディはまるで雪華綺晶の感情に呼応するかのように燃え上がるのであった。
「?!きらきー、落ち着け!!」
突然の事態に叫ぶ翔太郎。
だが、その声が耳に入らなかったのか、雪華綺晶の意識は拳に炎をまとって、
もう1人の雪華綺晶に襲いかかるのであった。
「やめるんだ、きらきー!」
再び、翔太郎が雪華綺晶に言う。
しかし、雪華綺晶の意識はまるで暴走するかのように、炎の拳でもう1人の雪華綺晶に襲いかかる。
それに対し、腕から薔薇のツタを伸ばしてWの攻撃に対抗するもう1人の雪華綺晶。
ぶつかり合う拳と薔薇のツタ、そしてそこから発せられる火花。
戦いは一進一退であった。
「ふふふ・・・。」
すると突然、もう1人の雪華綺晶が笑いだした。
『何がおかしいのよ!!』
雪華綺晶の意識が、今までに発したことの無いような怒りの声をあげる。
「あなたには・・・力がある・・・。」
『・・・力?』
「あなたには力がある・・・でも・・・私にはない・・・欲しい・・・力が・・・力が・・・力が!!」
叫ぶもう1人の雪華綺晶。
そして、Wの前に狂気に満ちた顔をさらけ出すのであった。
「な・・・何なんだ?!」
突然現れた恐怖の表情に、思わず驚く翔太郎。
すると、もう1人の雪華綺晶は翔太郎の驚きによって出来た隙をついて腕からツタを放つ。
一直線にダブルドライバーへと向かうツタ。
そして、右サイドにあったヒートのメモリに絡めると、そのままメモリを半ば強引に抜くのであった。
ヒートメモリを手に取り、嬉しそうにするもう1人の雪華綺晶。
- と同時に、先ほどまで怒りの炎で燃え上がっていたWのヒート・ボディはメモリの力を失い、もとの姿へと戻るのであった。
「あっ?!おい、危険だからそのメモリを返せ!!」
Wのメモリの恐ろしさを知る翔太郎がもう1人の雪華綺晶に向かって叫ぶ。
だが、もう1人の雪華綺晶はその声を無視する。
「・・・くそっ!こうなったらヤケクソだ!!きらきー、トリガー・フルバーストだ!!」
LUNA!TRIGGER!!
メモリ・チェンジし、ルナ・トリガーとなるW。
そして間髪いれずにメモリブレイクの体勢に入ろうとする・・・が、
トリガーメモリをトリガーマグナムに装填する寸前、Wの右腕が動きを止めてしまう・・・いや、止められてしまった。
「何っ?!」
その原因は地面から伸びた薔薇のツタが右腕に絡みつき、固定されてしまったためであった。
それに気づき、トリガーマグナムで右腕のツタの破壊を試みようとする翔太郎。
だが、それよりも先に、新たに生えたツタによって左腕も固定され、Wは身動きが取れない状況となるのであった。
ツタの発生源である、もう1人の雪華綺晶を見るW。
目線の先には、右手に握られたヒートメモリを舐めるように見て嬉しそうにしている彼女の姿があった。
「ふふふ・・・私の力・・・私の力・・・みぃつけた!」
嬉しそうだった顔から、再び狂気の顔を見せるもう1人の雪華綺晶。
すると、右手のヒートメモリを自分の肉体を形成した時のように薔薇のツタで包み込み、
そしてガイアメモリ自身をそのまま自分の体内に取り込むのであった。
「私の力・・・炎の力・・・燃やしてやる・・・燃やしてやる!!」
叫ぶ、もう1人の雪華綺晶。
- と同時に、彼女の体は先ほどのWのように炎をまとうのであった。
「よせ!そのメモリを解放するんだ!!」
翔太郎が叫ぶ。
だが、もう1人の雪華綺晶はその声に耳を貸さず、
それどころかメモリの力を使って両手に発生させた炎の弾を拘束されたWに向けて放つのであった。
「ぐあっ?!」
『きゃあっ!!』
その体を炎に包まれ、苦しむW。
しかし、もう1人の雪華綺晶は2人の苦しむ姿を楽しむかのように炎の弾を連続発射するのであった。
「もうすぐ・・・あなたは消えてなくなる・・・そして・・・その男は・・・私の仲間になる・・・私の物となる・・・体も・・・力も・・・。」
もう1人の雪華綺晶が言う。
一方のWは、炎の弾による連続攻撃で戦意を喪失し、Wの姿のまま地面に倒れこむ。
「私の体・・・私の力・・・。」
もう1人の雪華綺晶がWの力を乗っ取ろうと、倒れこむ彼のもとへ近づこうとしたその時だった。
ENGINE!!MAXIMUM DRIVE!!
突然聞こえてくるガイアウィスパー。
そして、その声を合図に上空から“A”の形をした光の塊がもう1人の雪華綺晶に襲いかかる。
それに対し、もう1人の雪華綺晶はとっさに円盤状の炎の壁を作り出し、上空から飛んできたエースラッシャーを相殺させるのであった。
「ふん・・・どうやら随分と骨のあるお嬢様のようだな。」
倒れこんだWの前に降り立った男が言う。
その声に、今まで気絶していたWが反応した。
「て・・・照井・・・。」
そこには、エンジンブレードを肩にかけて構える仮面ライダーアクセルの姿があった。
「あなたも・・・仲間・・・。」
「仲間だと・・・?俺はこいつの保護者みたいなもんだ。」
「仲間・・・力・・・あなたも・・・奪う!」
「・・・随分と耳の遠いお嬢様だな。」
再び狂気の表情を現わして、アクセルに襲い掛かるもう1人の雪華綺晶。
だが、その表情に屈することなくアクセルはエンジンブレードの引き金を引いた。
STEAM!
エンジンブレードから多量の水蒸気が発せられ、白い空間と化す周囲。
もう1人の雪華綺晶はその中に飛び込むが、彼女が目星を付けたはずの場所にアクセルたちの姿は無く、
その気配もすでに波止場から消え去っていたのであった。
「力・・・体・・・仲間・・・。」
何かに取りつかれたかのように、再び同じセリフを繰り返すもう1人の雪華綺晶。
そして、Wとアクセルの力を狙い、彼らを追おうと歩き出したその時、彼女の足に何かが触れた。
「・・・力・・・みぃつけた!」
雪華綺晶は目を覚ました。
そこは、鳴海探偵事務所内のドックのベッドの上であった。
『ここは・・・。』
起き上がる雪華綺晶。
しかし、その途端に痛みが右肩に走るのであった。
『くっ・・・!翔太郎!!』
雪華綺晶は突然ハッとし、自分の宿主である翔太郎を見る。
彼の体は重傷にまでは至らなかったものの、もう1人の雪華綺晶の攻撃によって所々に火傷を負っていた。
「・・・あ、雪華綺晶ちゃん!」
雪華綺晶の耳に鳴海 亜希子の声が飛び込んでくる。
声の方向を見る雪華綺晶。
そこには亜希子、その後ろには照井 竜と救急箱を持ったフィリップの姿があった。
『あ・・・亜希子さん、翔太郎の容体は?!』
「ああ、翔太郎なら・・・。」
亜希子に代わって、フィリップが言おうとしたその時だった。
「俺なら心配ねぇよ、きらきー・・・。」
『翔太郎!!』
翔太郎が包帯の巻かれた体を起こして答える。
「大したもんだよ、翔太郎。君のタフさには、僕も毎回驚かされるよ。」
「昔から体力には自信があったしな・・・それに、仮面ライダー稼業をやってると、自然に鍛えられちまうもんさ・・・。」
「まったく・・・鉄人だな、お前は。」
照井があきれたような声で言う。
「それにしても・・・竜くん、ありがとうね。
翔太郎君と雪華綺晶ちゃんを助けてくれて・・・って、竜くんは雪華綺晶ちゃんが怖いんじゃなかったっけ?」
亜希子が聞く。
「出来た弱点をすぐに克服するのが俺だ。そんなくだらないことで俺に質問するな。」
「何よぉ~、その言い方ぁ!」
「・・・そんなことよりだ。」
照井は亜希子を押しのけると、雪華綺晶の前に立った。
「君に聞きたい。あの少女は君と全くそっくりな容姿・声をしていた・・・いや、もう1人の君と言っても欠損は無いだろう。
あれはいったい何者なんだ?」
『あれは・・・私です。』
雪華綺晶が答える。
「どういうことだ?」
「・・・もしかして!」
突然、亜希子が大声を出すと、フィリップの作業机に置いてあった2冊の本を持ってきた。
「フィリップくん、さっき言ってたでしょ?!
『地球(ほし)の本棚には、本来ひとつの存在につきひとつの本しか無いはずなのに、雪華綺晶ちゃんにはふたつ存在してた』って!!」
「ああ。そして、ひとつ目の本には僕たちの知っている清純な乙女としての雪華綺晶の詳細が、
そしてもうひとつには憎しみや怒りといったマイナス感情に支配された雪華綺晶の詳細が記載されていた。」
「マイナス感情・・・。」
翔太郎の頭をよぎる戦いの記憶。
自身の体を求め、我々に対抗するための力を求める欲望・・・。
自分を震え上がらせた、狂気に満ちた顔・・・。
『あれが本当の私・・・そして、私はあの私の亡霊のようなものです。』
突然、雪華綺晶が口を開く。
「雪華綺晶ちゃんが・・・亡霊?」
亜希子が聞き返す。
そして、雪華綺晶はこの事件の真相を語りだした。
内容はこうであった。
かつて、雪華綺晶は自分の運命を呪っていた。
他のローゼンメイデンと違い実体を持たない彼女は、nのフィールドという無の空間でたった1人で、
しかもローザミスティカという不死の存在によって永遠に過ごさねばならなかった。
そんな地獄のような生活に追い打ちをかけるように、彼女に見えてくる外界で暮らすローゼンメイデンたちの光景、
そして本当なら仲良くしたいはずなのにローゼンメイデンと戦わなくてはいけないというアリスゲームという名の運命・・・。
このふたつによって彼女の精神は崩壊し、彼女は欲望のみを求める狂気の化身へと化してしまった。
だが、一部の良心のみは欲望に支配される前に彼女から分離し、
こうして2人の雪華綺晶・・・つまり、<欲望に支配された雪華綺晶>と<雪華綺晶の良心の化身>と化した訳であった。
「なるほど・・・そういうことだったのか。」
フィリップがつぶやいたその時、照井のビートルフォンの呼び出し音が突然鳴る。
「照井だ。」
『課長!こ・・・こちら、真倉!』
その声の主は、照井の部下である真倉 俊であった。
風都の中心部から離れた場所にあるショッピングモール、アルバトロス・パーク。
いつもは観光客や地元の人でにぎわう風都の観光地なのだが、この日は違っていた。
叫び、逃げ惑う客たち。
彼らの視線の先には、暴れる何者かの姿があった。
「た・・・大変です!アルバトロス・パークに・・・ドーパント出現!!」
『何だと?真倉、映像を送れるか?』
「は・・・はいっ!!」
真倉は自身の携帯電話を持ちかえ、ビデオモードを起動させる。
「これは・・・ロブスター・ドーパント?!」
フィリップが叫ぶ。
確かに、ビートルフォンに映し出された映像にはロブスター・ドーパントが映し出されていた。
だが、その体はWが戦った茶色ではなく、真っ白なものとなっていた。
『私の・・・力・・・。』
「ん?」
映像から聞こえてくる声に耳を傾ける照井。
その声は、先ほど戦ったもう1人の雪華綺晶の声であった。
「真倉!お前の近くに白薔薇のような少女はいるか?!」
『しょ・・・少女ですか?!そんなの探せる状況じゃないですよ!
こっちはドーパントが『私の力』がどーしたこーした言いながら暴れてるんですから!!』
「・・・何だと?」
モールのガラスや建物を破壊しながら進むロブスター・ドーパント。
そのロブスター・ドーパントは破壊行動を行ないながら、こうつぶやいていた。
「私の力・・・新しい力・・・アクセルにも・・・Wにも・・・負けない力!!」
アルビノ・ロブスター・ドーパント、正体は破壊されたロブスターのメモリを吸収した<欲望に支配された雪華綺晶>であった。
最終更新:2010年05月21日 09:21