真倉の連絡を受けて、鳴海探偵事務所を飛び出す照井。
愛車のディアブロッサにまたがって発進しようとしたその時だった。
「待て、照井!」
その声の主は翔太郎であった。
「・・・やめとけ。ケガ人の出る幕じゃない。」
「それが俺のことを『鉄人』認定した男のセリフか?それにな・・・これは俺の『相棒』の問題なんだ。」
「相棒・・・?」
「ああ、今の俺の相棒・・・きらきーのな。お前さんの言葉じゃないが、彼女の呪われた『今』を振りきらせてやりたいんだ。」
「・・・勝手にしろ。俺は先行して行ってる。」
そう言って、照井はアルバトロス・パークへと向かってしまった。
「きらきー、準備は良いか?」
『翔太郎・・・ごめんなさい。』
「ん?」
『本当なら、この戦いは私自身で決着しなければいけない問題・・・なのに、翔太郎だけでなく照井さんたちまで・・・。』
「きらきー!」
突然、翔太郎が大声をあげる。
『え?あ・・・ハイ!』
「この戦いが終わったら、またドライブに行こうぜ。」
『え・・・?』
「・・・なんだよぉ、不満か?俺たち、恋人なんだろ?デートしたって良いだろ?」
『翔太郎・・・。』
「じゃあ・・・食事にも行くか・・・あ、映画を見に行くっていうのも良いかなぁ・・・。」
雪華綺晶は感じていた。
自分の存在が生み出した怪物との戦いに翔太郎たちを巻き込んだことへの後ろめたさに対し、
翔太郎が元気づけようと明るい振る舞いをしてくれていることを・・・。
『・・・じゃあ、ドライブでお願いします!』
雪華綺晶が元気よく言う。
「よし、決まりだな。でも、その前に・・・お仕事といきますか。」
『ハイ!』
そう言って、2人はガイアメモリを構えた。
CYCLONE!JOKER!!
風に包まれる翔太郎の体。
その体は仮面ライダーW サイクロンジョーカーと化した。
一方、先に到着していた照井は苦戦していた。
到着後、すぐさま仮面ライダーアクセルに変身し、ロブスター・ドーパントへエンジンブレードによる攻撃を開始するも、
その強固な装甲に苦戦していた。
JET!
エンジンブレードの引き金を引き、負荷を加えて攻撃するアクセル。
だが、エンジンブレードの刃はロブスター・ドーパントのハサミに捕らえられてしまった。
「何っ?!」
「ふふふ・・・私の力・・・アクセルに負けない力・・・あなたは負ける・・・私のものとなる!!」
そう言って、口から火炎を吐くロブスター・ドーパント。
ヒートメモリの力を持つ炎に包まれたアクセルは、おもわずエンジンブレードを放してしまった。
「ぐっ・・・!しまった!!」
叫ぶアクセル。
だが、時すでに遅く、ロブスター・ドーパントはエンジンメモリを吸収、自身の力をさらに増大させるのであった。
「アクセルの力・・・みぃつけた!あとは・・・あなたの体!!」
そう言って、自分のハサミにエンジンメモリの力のひとつである電撃をまとい、アクセルに襲いかかる。
「おっと、そうはいかねぇぜ!」
突然聞こえてくる声。
そして、その声が合図であったかのように、ロブスター・ドーパントに向けて数発の光弾が発射された。
爆発を起こすロブスター・ドーパントの体。
一方、アクセルは声の方向を見る。
「左!」
そこには、ガンナーAと合体したハードボイルダーに乗る仮面ライダーWの姿があった。
「W・・・力・・・。」
起き上がるロブスター・ドーパント。
対して、Wはハードボイルダーから降り、言い放った。
「『さあ・・・お前の罪を数えろ!!』」
「W・・・もらう・・・その力!!」
Wに襲い掛かるロブスター・ドーパント。
一方のWは相手の攻撃を受け流していく。
「力・・・力・・・力!!」
さらに攻撃を続けるロブスター・ドーパント。
ところが、対するWは攻撃を加えずに受け流しのみ。
しかも合間には相手を挑発するなどしていた。
「おいおい、俺たちの力が欲しいんじゃないのかい?」
『鬼さんコチラですわ!』
「力・・・力・・・力!!」
今度はエンジンメモリの力を使い、ハサミからエースラッシャーを発射するロブスター・ドーパント。
「甘い甘い!」
そう言って、Wはメモリチェンジする。
LUNA!METAL!!
メタルシャフトを手にするW。
そして、飛んでくるエースラッシャーをメタルシャフトで巻き取ると、そのままロブスター・ドーパントに投げ返してしまった。
「欲しい・・・奪う・・・欲しい・・・奪う!!」
まさかのエースラッシャー受け、ついに怒りを爆発させるロブスター・ドーパント。
そして、ヒートメモリの力を使い、その体を燃え上がらせるのであった。
「・・・待っていたぜ、この瞬間を!!」
LUNA!JOKER!!
再びメモリチェンジするW。
そして、ジョーカーメモリを抜き、マキシマムスロットへと装填した。
JOKER!!MAXIMUM DRIVE!!
響き渡るガイアウィスパー。
その音を聞いてWは高く跳びあがり、空中で静止する。
次の瞬間、Wの体が強く発光し、宙に浮かぶその姿は8つに分身するのであった。
「『ジョーカー・タイフーン!!』」
上空に響く、翔太郎と雪華綺晶の声。
そして、その声を合図に全てのWはライダーキックの体勢を取り、次々とロブスター・ドーパントへ落下していった。
「負けない・・・負けな・・・?!」
Wの攻撃に対し、体を燃え上がらせて立ち向かおうとするロブスター・ドーパント。
だが突然、体の炎は消え、それどころか自身のエネルギーを弱らせ始めていた。
「どうやら、ツイン・マキシマムの影響が出たようだな!!」
ツイン・マキシマム・・・。
それは、ガイアメモリの力を極限まで高めるマキシマムドライブを単独で2つ以上行なうことによりメモリの力が暴走し、
最終的には互いの力が相殺されて自我を滅ぼしてしまうという危険行為である。
翔太郎は偶然にもエンジンメモリが吸収されたことを知り、ロブスター・ドーパントをわざと怒らせ、
エンジンメモリとヒートメモリのツイン・マキシマムを起こすことを狙っていたのだった。
「ぅおるぁっ!!」
『たぁっ!!』
襲い掛かる8人のW。
アクセルクリムゾンスマッシュを思わせるそのキックは全員ともロブスター・ドーパントの体を捕らえ、
そして貫くのであった。
ロブスター・ドーパントを囲むように降り立つ8人のW。
うち2人の手には、ロブスター・ドーパントから奪取したヒートメモリとエンジンメモリが握られていた。
「力・・・欲しい・・・。」
大爆発を起こすロブスター・ドーパント。
そして、Wの体も1つに戻るのであった。
「これで・・・終わったな、きらきー。」
『翔太郎・・・。』
「・・・あ、そうだ。照井、受け取れ!」
そう言って、Wがアクセルへエンジンメモリを投げた直後だった。
「だぁれが・・・殺した・・・駒鳥さん・・・。」
聞こえてくるマザーグースの歌。
その声に反応したWは後ろを振り向くと、薔薇のツタがWの首に巻きつき、首を締め上げだした。
「そんな・・・馬鹿な・・・。」
Wが首に巻かれたツタを外そうとしながら正面を見る。
そこには、ドレスをボロボロにしながらも立ち上がる、もう1人の雪華綺晶の姿があった。
「力・・・もういらない・・・だから・・・あなたもいらない・・・。」
「何・・・?」
「左!」
アクセルが助けに入ろうとする。
「あなたも・・・いらない!」
そう言って、薔薇のツタを放つもう1人の雪華綺晶。
そのツタはアクセルのドライバーを弾き飛ばし、照井は変身を解除させられてしまった。
「照井!!」
「あなたにも味わってもらう・・・私の苦しみ・・・。」
そう言って、再び薔薇のツタを伸ばすもう1人の雪華綺晶。
その先にはWが持つヒートメモリの姿があった。
「私の力・・・最後の力・・・。」
ツタに力を込める、もう1人の雪華綺晶。
その力に反応するかのようにヒートメモリは炎をまとい、もう1人の雪華綺晶を、そしてWをも燃え上がらせた。
それはヒートメモリのマキシマムドライブであった。
「まさか・・・自爆するつもりなのか?!」
照井が言う。
「最後の力・・・これで・・・あなたは・・・おしまい・・・。」
「くそっ!最後の最後でこれかよ!!」
叫ぶ翔太郎。
『・・・翔太郎!良い手がありますわ!!』
雪華綺晶の意識が言う。
「なんだって?!きらきー、どうするんだ?」
『・・・翔太郎。』
「ん?どうした?」
『・・・今まで、ありがとう。』
「・・・え?」
突然の言葉に戸惑う翔太郎。
一方、雪華綺晶の意識はWドライバーに刺さっているルナメモリを抜くと、マキシマムスロットに装填した。
「?!きらきー、何をするんだ?!」
LUNA!MAXIMUM DRIVE!!MAXIMUM DRIVE!!MAXIMUM DRIVE!!・・・
ルナメモリのマキシマムドライブを行なう雪華綺晶。
これにより、Wともう1人の雪華綺晶との間にツイン・マキシマムが発生し,その力は暴走を始めようとしていた。
「きらきー!どうしてこんなことを?!」
翔太郎が雪華綺晶に言う。
だが、雪華綺晶は黙ったまま、もう1人の雪華綺晶を押さえつけるように抱え込んだ。
「きらきー!やめるんだ!!」
叫び続ける翔太郎。
だが、次の瞬間、彼の体はWから解放され、雪華綺晶の意識のみがWに残った状態となった。
呆然とする翔太郎。
そして、追い打ちをかけるような事態が発生した。
ツイン・マキシマムによって暴走するガイアメモリの力。
その力はついに極限まで達し、Wとロブスター・ドーパントを巻き込んで大爆発を起こすのであった。
爆風に吹き飛ばされる翔太郎と照井。
そして、彼らは気を失ってしまった。
こうして、ロブスター・ドーパントの事件は終決した。
「その後・・・ロブスターのメモリは・・・完全・・・消滅・・・しかし・・・Wの・・・えっと・・・ねえ、フィリップくん!
破損したのってヒートとなんだっけ?」
鳴海探偵事務所に響き渡るタイプライターの音。
だが、それを打っているのはいつもの翔太郎ではなく、亜希子であった。
「ヒートとルナ。あと、一応修理が終わったから、それについても書いておいて。」
「うん、分かった。それにしても・・・。」
亜希子が隣りのベッドを見る。
そこには、まるで廃人になったかのように空を見つめる翔太郎の姿があった。
「・・・翔太郎くん?」
亜希子が翔太郎の顔の前で手を動かす。
だが、反応は一切無かった。
翔太郎は自責の念に囚われていた。
かつて、自分は師匠である鳴海 壮吉を守れなかった。
そして、今回も雪華綺晶を守れなかった。
自分には、仮面ライダーの資格は無い・・・。
『そんなことないわ、翔太郎。』
突然、耳に飛び込んできた声にハッとする翔太郎。
そして、彼は声のする方向にあった手鏡を手に取り、ジッと見つめる。
そこに現われたのは・・・。
「・・・!きらきー!!」
「翔太郎、元気を出して。」
無数の鏡が並ぶnのフィールド。
その中に翔太郎と雪華綺晶はいた。
「きらきー・・・生きてたのか!!」
「私は『無の世界』の住人。死ぬことも『無』い・・・だから・・・心配しないで。」
「きらきー・・・?!」
突然、翔太郎が驚く。
その目線の先には、ドレスをボロボロにしたもう1人の雪華綺晶がガラス状の球体で寝ている姿があった。
「これはいったい・・・?」
「翔太郎、この子も元は私・・・いえ、この子が本当の私。でも、分かってくれたはず・・・欲望や憎しみは自分を滅ぼすってことを。
だから・・・助けてあげたいの。たとえ、良心を理解してくれるのに何十年・何百年とかかろうとも・・・。」
「きらきーなら出来るさ・・・きっと。」
「ありがとう、翔太郎・・・。」
「また・・・会えるかな?」
「ええ。私はこの世界でいつでも待っています。その時は『無の世界の住人』としてではなく、『あなたの恋人』として・・・ね?」
そう言って、雪華綺晶は翔太郎の頬にキスをするのであった。
「・・・翔太郎くん!!」
亜希子が大声をあげる。
「ぬわぉっ?!何するんだよ、亜希子!」
「それはこっちのセリフだ!」
そう言って、亜希子は翔太郎をスリッパでひっぱたいた。
「いきなり手鏡持って黙っちゃうんだもん。ついに狂ったかと思ったわよ。」
「バーロー、俺は肉体も心も健康優良児だっつうの。・・・そうだ、おい!フィリップ!!」
「何だい、翔太郎?」
「ちょっと、ドライブに付き合えや。」
「乗り気じゃないね。僕はアイスクリームに関する検索を・・・って、ちょっと何するの?!」
グダグダ言うフィリップに対し、翔太郎はサイクロンメモリを胸元から強奪すると、フィリップのWドライバーに刺してしまった。
気絶するフィリップ。
そして、翔太郎はジョーカーメモリを自身のドライバーに刺す。
CYCLONE!JOKER!!
鳴海探偵事務所内で巻き起こるつむじ風、そして吹き飛ばされる報告書。
「だぁあああああ?!ちょ・・・ちょっと、何するのよ?!」
「亜希子、留守番頼むぜ。」
そう言うと。Wは亜希子を無視して外に出てしまった。
風都の直線道路を走るハードボイルダー。
それに乗りながら、翔太郎は思い返していた。
雪華綺晶との出会い、相棒としての生活、仮面ライダーとしての戦い、そして別れ・・・。
そんな気持ちを察してか、フィリップの意識が言う。
『翔太郎。』
「・・・ん?どうした、フィリップ?」
『君は・・・悪魔と相乗りする勇気はあるかい?』
「どうした?急に懐かしいことを聞いてくるなんて。」
『理由など無い。だが・・・聞いておかないと僕の気が済まなくてね。』
「・・・心配するな、フィリップ。俺はこの戦いを受け入れ続けるつもりだ。この風都を守るため、そして誰も悲しませないためにな。」
『なら・・・良かった。』
「・・・なんだよ、相棒。もしかして、俺ときらきーがタッグ組んでたもんだから、ヤキモチ焼いてたな?」
『そんなことは無い。』
「分かってます、分かってますって!・・・じゃあ、そのヤキモチをぶっ飛ばすために、こっちもぶっ飛ばしますか!!」
『だから、違うって・・・。』
反論するフィリップの意識。
だが、翔太郎はそれを無視し、ハードボイルダーのアクセルを強くひねるのであった。
おわり
最終更新:2010年05月19日 00:29