とあるマンションの一室。
<上条>という表札がかかった部屋の一室で禁書(インデックス)は悪夢にうなされていた。
「・・・とうま・・・とうま・・・。」
「とうま!」
混沌とした暗黒の世界。
その中では、禁書を世話している上条 当麻が、ボロボロになりながらも何者かと戦っていた。
自身の右手に潜む能力<幻想殺し(イマジンブレイカ―)>を武器にその何者に攻撃を仕掛けようとする上条であったが、
敵の持つ超高速移動に対応出来ず、そのままサンドバックと化していた。
「とうま、逃げるんだよ!」
叫ぶ禁書。
だが、その言葉は上条に届くことはなく、彼はついに力尽きてしまった。
傷だらけになった状態で倒れこむ上条のもとへ禁書が駆け付ける。
「とうま!お願い・・・しっかりして!!」
禁書は一生懸命に呼びかけるが、上条からの反応は一切無かった。
そんな禁書のもとへ、上条が相手をしていた影がゆっくりと現れた。
相手を見る禁書。
彼女の眼には、大きな刀のような武器を持つ、青い装甲に包まれた何者かが映りこむ。
そして、何者かは言い放った。
「絶望が・・・お前のゴールだ。」
自身の武器を振りかざす何者か。
その武器は禁書へ、そして当麻へと振り下ろされるのであった。
「・・・ぅわぁあああああっ!!」
勢いよく飛び起きる禁書。
彼女が着ていた、カエルの着ぐるみパジャマは尋常じゃない汗でぐっしょりとなっていた。
「・・・!とうま!とうま!!」
突然、彼女はベッドから飛び降りると、床で寝袋を敷いて寝ている上条へ大声で叫ぶ。
「とうま!とうま!!とーおーまーぁっ!!!」
「・・・おい・・・なんだよ・・・禁書・・・。」
「とうま!生きてるんだね?!」
「・・・まだ5時じゃねぇか・・・明日は・・・というか今日は土曜なんだから・・・遅くまで寝かせてくれよ・・・。」
「生きてるよね?生きてるよね?!」
「・・・お前の所業で死にそうだよ・・・。」
そう言って、上条は再び寝てしまった。
「ボディガード?」
「そうだよ。今日一日、私がとうまのボディガードになってあげるんだよ!
だから、感謝するんだよ!!」
上条の言葉に禁書が答える。
一方の上条は大きめのフライパンを振り回しながら、ご飯を炒めていた。
「・・・ったく、3時間前に禁書の夢で叩き起こされるわ、
今度は『ボディガードになりたい』と言いだすわ、
終いには『感謝しろ』と言いだすわ・・・どうしたんだよ、いったい。」
「どうもこうも無いんだよ!」
上条の後ろでプンスカ怒る禁書。
それに対し、上条はその様子に目を向けること無く山盛りのドライカレーを完成させると、
一杯を自分の皿へ、残りのドライカレーをフライパンごと禁書に出すのであった。
「とりあえず、これ食って落ち着・・・って、もう食い始めてるか。」
無言で食べ始めた禁書を後目に、上条は自分の分の朝食をさっさと済ませると、
簡単な身支度をし始めるのであった。
「・・・あれ?とうま、どこかに出かけるの?」
「ああ、ビリビリと映画の約束しちまったからな。」
上条の様子にようやく気付いた禁書が、靴を履こうとしている彼に言う。
「映画?」
「ああ。えぇっと・・・『ジェシカの彷徨と恍惚・傷だらけの乙女は何故西へ向かったのか:漂流編』
・・・って随分とタイトルの長い映画だこと。」
ポケットに突っ込んであった前売り券を見ながら上条が言う。
「・・・あ、ちょっと待って!」
突然、声をあげる禁書。
その数秒後、彼のもとへ不思議な格好をした禁書が現れた。
「・・・おい。なんだよ、鍋なんか頭に被って・・・。」
「だって、今日はとうまのボディガードなんだよ!だから多少は武装しないと!」
そう言って、右手のオタマを振りかざす。
「お前な・・・そんなフザケた格好で連れて行けるワケ無いだろ。」
「心配ご無用なんだよ!だから、安心するんだよ!!」
自信満々に言う禁書。
それに対し、上条は何かを考え付いたのか、禁書の頭をさするのであった。
「・・・じゃあ、俺の提示した条件を守ったら、ボディガードとして連れてってやる。」
「ホント?!その条件って何、ナニ?!」
「・・・服を着ろ。」
「・・・え?」
そう言って、自身の格好を見る禁書。
先ほどまで彼女の体は修道服に包まれていた・・・はずだったが、
先ほど上条が禁書の頭を撫でた際に彼の持つ<幻想殺し>が発動、
それによって彼女の服はバラバラの布の塊と化したのであった。
「な・・・な・・・な・・・とおまぁっ?!?!」
玄関で裸体を晒しながら、大声をあげる禁書。
だが、上条は禁書が取り乱しているうちにさっさと外へ出掛けてしまったのであった。
「・・・それにしてもビリビリの奴、随分と待たせるな。」
学園都市と呼ばれる巨大空間、その中の一画にある映画館の前で上条はひとり立っていた。
「どうせ、またヤンキーかなんかに絡まれて、そいつらをボコって遅刻・・・ってのが関の山だろうな。
別にやっても文句は無いが、さすがに時間は守って欲しいよ・・・ったく。」
愚痴りつつ、映画館のネオンを何の気無しに見る。
「それにしても・・・。」
上条はふと思い返していた。
それは今朝、朝食の製作にかかる前の出来事だった。
「『青の通り魔』が俺を襲っただって?」
今朝見た悪夢の内容を説明する禁書に対し、上条が聞く。
「そうなんだよ、とうま!夢の中に『青の通り魔』が出たんだよ!それに・・・とうまが・・・。」
禁書は悲しそうな顔をしてうつむく。
『青の通り魔』・・・。
それは、数週間前から学園都市に出没するようになったという、
学園都市に住む人々の命を狙って暗躍する謎の犯罪者の通称であった。
その存在はまったくの謎に包まれており、唯一分かっているのは風のごとく被害者の前に現われ、
そして被害者をサンドバックのように何十発も殴って殺害するという残忍かつ奇怪な犯行手段をとるということであった。
これまでに20人もの屈強な男が被害に遭っているのだが、唯一ひとりの男性が奇跡的に生存したことがあった。
のちに、その被害者は搬送先の病院で息を引き取ったのだが、死ぬ前に彼はこう言ったという。
「青い・・・悪魔だ・・・。」
「『青い通り魔』・・・か。それにしても、禁書は随分と物騒な夢を見てくれたもんだよ。」
つぶやく上条。
その時、彼の頭に禁書の言葉がフラッシュバックする。
『それに・・・とうまが・・・。』
禁書の悲しげな言葉、そして寂しげな顔。
今思えば、夢だったとは言え、禁書は精いっぱいに自分のことを心配していた。
なのに、自分はそんな気持ちを理解せず、それどころか邪魔扱いしてしまった。
「・・・禁書に悪いことしっちまったな。」
ポツリと言う上条。
「・・・しょうがない。映画が終わったらアイツにケーキでも・・・。」
上条が言いかけたその時だった。
遠くの方から聞こえてくる爆発のような音。
その直後、映画館のネオンが・・・いや、ネオン以外にも電灯や自動販売機といった機械が次々とストップするのであった。
「・・・まさか!!」
爆発音の聞こえた方向の空を見る上条。
目線の先には、彼の予想通り、地面から雷のような雷撃が無数に発生していた。
「ビリビリの奴、また何かしでかしやがったな!」
そう叫ぶと、上条は雷撃の方向へ全速力で走りだした。
一方、雷撃の中心地にふたりの姿があった。
そのうちのひとり、青い装甲に包まれた男が言う。
「貴様、いつまで抵抗するつもりだ!!」
「そっちこそ・・・女の子だからってなめるんじゃないわよ!」
一方、もうひとりの存在・・・学校の制服を身にまとった少女も負けじと答える。
「こういうセリフは本来、黒子が言うべきだけど・・・『ジャッジメントですの』だ!覚悟しなさい、『青の通り魔』!!」
「『青の通り魔』だと?勘違いも甚だにしろ、『ドーパント』め!!」
そう言うと、青い装甲の男は右手に持つ大きな剣にUSBメモリ状の何かを挿入し、剣の引き金を引いた。
ENGINE!!ELECTRIC!
響き渡る音声。
すると、青い装甲の男は刀をライフルのように構え、彼女に向かって数発の光弾を発射した。
「おっと!」
飛んでくる光弾に対し、回転して避ける女性。
そして立ち上がり、スカートのホコリを払いながら、ポケットから数枚のコインを取り出した。
「それがあなたの能力?」
「ん・・・?」
「教えてあげる、光線技っていうのはね・・・こうするんだよっ!!」
少女の指から弾き飛ばされる数枚のコイン。
彼女の持つ能力<超電磁砲(レールガン)>によって発生した大量の電気エネルギーが指から放出された。
青い装甲の男を襲う光線。
そのうちの一本は男が持つ刀を吹き飛ばすのであった。
「なんてパワーだ!くそっ・・・人間態にやるのは気が引けるが・・・仕方がない!!」
そう言って、男は腰にある『バイクのハンドルを模したベルト』のクラッチレバーに手をかけた。
TRIAL!MAXIMUM DRIVE!!
音声が響き渡ると同時に、体を青白い炎で包み込む男。
そして、ベルトのアクセルを思いっきり引くと、空高く跳び上がり、キックの体勢に入った。
「甘い!」
一方の少女も、上空の男に向かって再び光線を放つ。
男を捕らえる光線・・・だったが、男の足先から発せられる多量のエネルギーによって光線は無効化されてしまうのであった。
「何っ?!」
驚く少女。
しかし、男はお構いなしに少女との距離をどんどん縮め、ついには彼女を捕らえた。
目前まで迫るキックに対し、思わず腕で顔を覆う少女。
そして目をつぶり、無駄な抵抗とは分かっていながらも、彼女は全身に力を込め、キックからのダメージを抑えようとする。
- だが、いつまで経っても、彼女へキックのダメージが来ることは無かった。
この状況を不思議に思ったのか、ゆっくりと目を開ける少女。
その目線の先には、彼女の前に立ち、男の放つキックを右手のみで阻止する者の姿があった。
「・・・上条 当麻!!」
一方の男も叫ぶ。
「・・・!お前、上条じゃないか!!」
着地する男。
その直後、上条は右腕を押さえながら、膝をついてしまった。
少女が上条のもとへ行く。
一方の男もベルトを外し人間の姿に戻ると、彼女同様に上条のもとへ駆けつけた。
「上条!・・・腕が折れているのか?」
「しっかりして!!」
「・・・おい、女!この近くに病院はあるか?!」
「・・・え・・・病院?」
「早く答えろ!」
「・・・え・・・あ・・・ここから5kmほど直進した所です。」
男の表情に対し、思わず敬語で話す少女。
「近くか・・・よし!」
そう言うと、男は再びベルトを腰に付け、赤いUSBメモリ状の物=ガイアメモリを構えた。
「変っ・・・身っ!!」
ACCEL!!
ガイアウィスパーとともに発せられた赤い装甲が男を包み込む。
そして、男は赤き装甲の戦士に変身すると、上条を背負い、なんと自らの体をバイクに変形させるのであった。
エンジンを噴かせ、発進体勢に入る男。
この状況にポカンとする少女であったが、突然ハッとし叫ぶ。
「ちょっと、あんた何者なのよ!私に襲いかかるわ、コイツを助けるわ、青くなるわ、赤くなるわ・・・。」
「俺に質問するな。」
「・・・へっ?」
「だが、答えてやっても構わない。答えが聞きたかったら、俺についてくるんだ。」
そう言って、男は猛スピードでその場を後にした。
「え・・・あ・・・ちょっと・・・。」
呆然とする少女。
その時、何者かが彼女の肩をトントンと叩く。
「・・・ん?うおぅっ?!」
驚く少女。
その先には、戦車のような形をしたロボット=ガンナーAがいた。
「な・・・何なのよ、あんた!!」
叫ぶ少女。
それに対し、ガンナーAはマニピュレーターを動かし、彼女と自身の背中を交互に指していた。
「・・・乗れってこと?」
彼女の答えに対し、嬉しそうに首を縦に振るガンナーA。
「・・・まあ・・・とりあえず。」
そう言って、ガンナーAの背面にある、足の掛けられそうな場所に足を置く少女。
そして、ガンナーAも彼女の搭乗を確認すると、先ほどの男を追うかのように猛スピートで発進するのであった。
最終更新:2010年10月27日 22:14