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とある東方と空の境界 第3話

◇
かちかちかちかち―――
体中が震えている。
寒さからくるものなのか、恐れからくるものなのか。
答えを探すように、指先をうごめかすが効果はない。
―――そんな曖昧な感覚、エピソード記憶など、もう、ない
どうやら寝かせられているようだと、知識は語る。
「何処だ……」
知識は言っている。

―――この部屋は、『和式』だ。
―――『和式』は、日本特有の形式だ。
―――『日本』は極東にある島国だ。
―――島国とは―――

キリがない。
考えれば考えるほど、知識が鎌首を持たれかけてくる。

「脳に直接電気でも流したのかしら?」
がらっ、と襖が開けられる。
「貴様は誰だ……」
「介抱してくれた相手に向かって、貴様とはね?……八意永琳よ?」
「偶然、医者に拾われたという訳か」
よくわかったわね?と八意。
実際、知識がこの雰囲気は医者だ、と語ったまでである。
「当然、私も名乗るべきだろうが、生憎―――」
「そうね、思い出せないでしょう?」
全く、と溜息を吐くように言い放ってから、
「そこまでひどい傷は久しぶりかな?でも、治せないほどじゃないから安心なさい?」
「―――治るのか」
「私を誰だと思っているの?」
「必然、知る由もない」
「そうね」
笑っているのか、この女は。
笑顔は、こういうものか。

―――もう失ってしまった感覚だ。
「楽しい」とか「面白い」とか。
当たり前のように生きて、当たり前のように感じられたら、

―――それは、何て素晴らしいことなんだろう。



「―――ッ!」
突如として、頭の中に知識が奔流する。
絶対に思い出すことのない、『感覚』。
しかし、頭の中で暴れるように記憶を隠しているそいつは、
  ...
『手加減だ』

とでも言うかのように、たった一つの感覚を思い起こさせる―――ッ!
「―――ひィッ!」
恐ろしい―――透明な、竜王の顎【ドラゴンストライク】。
. . . . . . . . . . . . .
自分が思い描いていた以上の、『恐怖』を具現化させたモノ―――!

体中から嫌な汗があふれ出る。

かちかちかちかちかちかちかちかち―――――――ッ!

「安心しなさい」
女が、私を抱く。
赤子を抱くかのように、そっと。
それだけで、竜は消え去る。

私は、そのまま静かに眠りにつく。


◇
ゾッ――――――!
違和感を覚えた。
―――俺は、何を消しきれないと自ら語った?
「聖ジョージの……聖域……?」
そう。
「インデックスの……魔術……?」
無い筈の、

―――記憶。

上条当麻は、一度死んでいる。
それが何の弾みかまでは、もはや思い出すことは叶わぬだろう。
しかし。

今、彼は死の直前の記憶の一片を思い出している―――ッ!

「待てよ……どういうことだよ……?」
―――『警告』
「誰だよ……インデックスじゃないだろッ―――!」
―――『第六章第十三節』
「この記憶は―――何なんだ……ッ!」
―――『現状、最も難易度の高い敵兵、』



――――――『《上条当麻》の破壊を最優先します』





太陽が顔を出す時刻。
ガバッ
「悪夢だ……」
うなされていたらしい。
夢の中身は思い出せないが、全身から溢れる嫌な汗が苦しめられていたことを物語っている。
―――眠ってしまったのか。
残念ながら一人である。布団もない。
ちょっとでも霊夢の介抱を期待した自分がアホらしくなる。
――八雲紫という女性は試練を用意していると言っていた。
「簡単には……返してくれ無ぇーってことか」
一晩明けたのか、大振りだった雨は止んでいて、輝く朝露は『きれい』なもの、だと知識は言う。
「さぁて……」
結局、簡単に帰れないならすることはない。
―――なんか、手伝えることはないか。
そんなことを考えながら部屋を後に廊下に出る。




ガタッ

「おおっと。すいません」
誰かにぶつかってしまったらしい。
「おーう、次は気をつけろよぉ」
―――酔ってんのか?
見た目は子供そのもの。
見下げるくらいの背丈で、特徴といえば頭に角が―――
「ちょッ、つの!?」
普通の人ならまず子供が酒に酔ってる所に目が行くはず(角も十分異形)だが、幸いにも彼の周りにはやれ完全幼女な教師だのニコチンとタールのな

い世界は地獄だと言い切る14歳の不良神父だの、とにかく年齢≠外見が多いせいか、その点は自然と受け入れることができた。
「あのー、失礼ですがそちらはどなたさまですか」
「私は伊吹萃香だ!おぼえておけ」
「は、はいっ……」
用がないならさっさと行け、と言わんばかりに怪訝な表情で上条を見る萃香。
(怖いな……)
突然噛み付いてこないだろうか、などと思う。

「お前は霊夢が言ってた『客』か。なら大事にしなくちゃなっ」

すいっ、と。
ごく自然に酒を差し出してくる。
「ほら、やるよ」
「―――え?」
やばいやばいやばいやばい
と、心理状態が大変なことになる。
(ダメだこの子……見境がない……)
死ぬ前は不良な上条だったが、酒たばこの類には手を出していない。
知識は、『上条当麻は未成年』と真摯に語りかける。
「なんだ、私の酒が飲めないのか?」
(うわぁ……典型的だな……)
仕方がないので、
「すいません、では一口」
後で吐き出せるよう少しだけ口に含もうとして猪子に手を伸ばし―――
キィィン
聞きなれたような音とともに、酒は跡形もなく消える。
(やばッ!これも異能なのかよ!)
変なところで反応してしまうのが右手のサガである。
ぷるぷるわなわなと、何かをこらえるようにうつむく萃香。
(絶対切れてるわコレ……やべぇよ……っ!?)
―――なにか来る―――ッ!





◇

「……見ない力ね」

―――確かに、珍しい力ではある。
異能がなければなにかあるようには見えない。
学園都市の身体検査【システムスキャン】では反応すらしてくれず無能力者【レベル0】判定。
不良の一人も倒せなければ、テストの点も上がらないし、女の子にモテたりもしない。
しかし、今となっては幾多の修羅場をくぐりぬけた、相棒でもある、右手。
確かに、珍しい力だ。

―――気に障ったのか?

どう見ても不機嫌だ。
一体、何が起こるか想像がつかないし、何が起きてもおかしくはない。
一応機嫌でも取ろうと上条は試みる。
「えっと、萃香の力はどんなのなんだ?」
学園都市では、スプーンぐらい曲げられて当たり前。
萃香は、自分の能力【チカラ】が通じなかったからこそ、憤っているのだと上条は確信していた。

一人に一つの能力、という認識は正解だ。
幻想郷でも、特別な力を持っていること自体は珍しいことではない。
ただ、上条の能力は異質【イレギュラー】。

そこに『何か【異能の力】』がなければ発揮されない能力など、まさに『無能の境地【レベル0】』―――!!

―――萃香は疑問に思う。
上条は、外来者。
なのになぜか能力を持っている。
それも何かがなければ反応しないような、半端な能力。
なまじ周りには強力な能力を持つ者が多いだけに、『持っているくせに大したことのない力』というのはどうも腑に落ちない。

―――知る由もないが、それは学園都市でも無能力者【レベル0】の落第生【おちこぼれ】扱いである。








結果訪れるのは、一つの挑戦。







「私は密と疎を操る能力を持っている」







「おい、上条。勝負しろ」

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最終更新:2010年12月24日 02:28
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