アットウィキロゴ

三話 SCENES [暗躍] 

「くそっ!」
 ボサボサの金髪頭の青年が、苛立った様子で薄暗い部屋の壁を叩く。
 凄まじい力でパイプが曲がり、吹き出た水が彼を濡らした。
『クックック……ペンテ、いい様だな』
「うるさい、モデルVA! あのとき力を抜きやがって……鉄屑に変えるぞ!」
『ほう……やってみるか?』
 とても適合者とは思えないほどの態度で、モデルVAにペンテは喧嘩を売る。
 モデルVAもまた、相手が適合者であろうと構わず挑発に乗っていた。
 エールのようなライブメタルと心通わせるロックマンでも、セルパンのように力だけを抽出するロックマンでもない。
 互いに互いの欲求を満たすために組んだだけであった。
「ケッ、キサマらには待機を命じていたはずだがな」
「命令違反……」
 ペンテとモデルVAが振り返ると、苦々しい表情の二人が現れた。
 二人の男女のうち、男のほうは骸骨の上半分を尖らせたようなヘルメットに、紫色のアーマー、死神の鎌のようなものを持っている。
 女のほうは横に大きく広がる帽子のようなヘルメット、白に青いラインのアーマー、魔女が持つような杖を手にしていた。
 二人の名はよく知っている。男はプロメテ、女はパンドラと名乗り、ペンテにモデルVAを渡したのである。
 プロメテが苦々しげにペンテとモデルVAを睨み、大鎌を向けた。
「余計な真似をしやがって。お前から潰してやろうか?」
「モデルVA……これ以上勝手な真似は許さない」
「いいぜ、お前が相手でも。今の俺は乾いているんだ」
『プロメテ、パンドラ、俺に命令するな。俺は“あの男”に従う気はない』
 ペンテとモデルVAの向こう見ずな態度に、もともと気が短いほうであるプロメテは三白眼を大きく見開いて鎌を構えた。
 ペンテとモデルVAは互いに怒りを抱きながら変身準備を整える。
 撤退を命じたのはモデルVAだが、不完全燃焼を抱いているのはこの狂ったライブメタルも一緒であった。
 ロックマンになりたてのペンテではモデルXたちの“鬼”を引き出せないと見て退いたのだ。
 ペンテは自分の思い通りにならないモデルVAという力に。
 モデルVAは自分が思う存分力を振るえないペンテという身体に。
 それぞれ不満を抱いていた。
「ただのゲームの駒風情が粋がりやがって。こいつはお仕置きが必要だなぁ!」
「知るか。ロックオン……」
『今度はしくじるなよ、ペンテ』
 モデルVAの紫色の闇がペンテを包み、即座にロックマンVAVAへと姿を変えさせた。
 プロメテが腰を落としたと同時に、ロックマンVAVAもだらりと下げた両腕をいつでも動かせるように腰の辺りを漂わせる。
 一瞬即発。
 二人の睨みあいにパンドラがプロメテを止めようと肩を掴んだ。
「プロメテ……私たちは忠告に来ただけ。戦うのは……駄目」
「こういう馬鹿は痛めつけないとわからないんだよ。お前はさがっていろ」
 ロックマンVAVAもプロメテと同意見であることを示すため、一歩前に出て敵意をぶつける。
 二人が地面を踏み込んだとき、間を赤い影が割って入った。
「そこまでにしてください」
 いつの間にそこにいたのか、仲裁する影が喋った。


「虫けらか……」
 プロメテが吐き捨てるように言うと、右手に大きなカギ爪をもつ、赤い怪物が僅かに動いた。
 ダニを擬人化したような生命体が、プロメテたちを馬鹿にしたように低く笑う。
「協力者に対して、その態度はないでしょう? “あの男”の奴隷さん」
「アキャリナワーム……その薄汚い口を今すぐ閉じろ。バラバラにしてやる」
「おお~、怖い怖い。ペンテにモデルVA、あなた方も我々に免じて矛を収めてください」
「どうでもいい……そいつが戦わないなら、お前が相手でもいいぜ?」
「ふふふ、我々の目的がハイパーゼクターの発掘。プロメテさんたちがモデルVの発掘。あなたはただ戦いたいだけ、と利害が一致しただけの関係だ。
齟齬がでるのは仕方ありませんが、あなた方に力を与えたあの男の指示ですよ?
従ってもらえないのなら、損するのはあなた方だと思うのですがね」
 そういってアキャリナワームは姿を人のそれへと変えた。
 メガネをかけたサラリーマン風の青年。それが人々の生活圏で人知れず活動を続けるアキャリナワームの仮の姿だった。
『おい、ヴィクトル。マスクド・ライダーシステムを使う奴がいたぞ』
「ほう。この世界に散らばったゼクターはすべて回収し、意思を奪ったはず。どのライダーなのですか?」
「さあな。天道とか名乗っていた。……あいつ、手ごたえがあったのに」
『そう思うなら強くなれ。せめて俺が満足する程度にはな』
 またもペンテとモデルVAの空気が悪くなる。
 ヴィクトルを仮の名前ともつワームは、天道の存在に笑みを浮かべた。
 もっとも、目は少しも笑っていなかったが。
「そうですか……奴もいるのですか」
 目が血走り、紳士の顔をかなぐり捨てた。そっちの顔が本性なのだろう、と彼と組む連中すべてが思っている。
「それで、キサマはなにをしにきた」
「ああ、失礼しました。我々の協力者である“あのお方”から試作型フォルスロイドを四体送ったと連絡がありました。
彼らへの指揮をあなた方に任せた、と伝えるよう申しつけられましてね」
「ケッ」
「それではお伝えしました。……少し用事ができましたので、ここは失礼させてもらいます」
 プロメテが吐き捨てるのを見届け、ヴィクトルは踵を返して歩き出す。
 残り四人の同胞と、どういうわけか力を貸す男へと天道が現れたことを伝えねば。
 この世界の同胞(ワーム)は少ない。慎重に動くようように忠告しよう。
(だが、雪辱の機会でもありますね。天道総司、元の世界の貸しをその身で払ってもらいましょう)
 そう思考するヴィクトルの手に、ドレイクグリップが鈍く輝いた。


 ペンテはヴィクトルが消えた先を興味なさそうに視線を外し、踵を返した。
 背中からのプロメテの声に、鬱陶しげに表情を変えて足を止めない。
「お前、またどこに行くつもりだ?」
「答える必要はない。俺は俺で、好きにやらせてもらう」
「…………一つだけ忠告。私たちの邪魔をするなら……容赦はしない」
『クックック……だとよ。ペンテ』
「そうか……」
 モデルVAの楽しそうに笑い声が響く中、ペンテの口元も緩んでいた。
 ペンテとモデルVA、互いに思考の違い多少はあれど、

『「そいつぁ楽しみだ」』

 同じ言葉に同じ悪意。
 二人が悪趣味なのは同じだった。

□

「あいつ、どこにいったの!」
 避難所でガーディアンの仲間たちが手当て、案内をしている中エールは思わず叫んでしまった。
 ゴルクルたち夫婦を仲間に預けた後、天道のことを報告するために一緒にガーディアンベースへと向かっていたのである。
 途中、トランスサーバー―― 物質転送装置。人と小型の荷物なら、受信側のトランスサーバーへと転送できる機械 ――へとミッションレポートを提出していた。
 それが一時間前。現在エールの傍に天道はなく、エールは怒りを隠さない。
「逃~げ~た~なぁ~!」
『けど、少し前まで逃げそうには見えなかったのに……』
『よほど知られたくないことがあったのだろう。そういうこともある』
 お人好しでのほほんとしているモデルXへ、モデルZがツッコミを入れた。
 見た目はともかく、性格に能力とエールにとっては天道は怪しい奴だ。
 ロックマンでもないのに、ロックマンと似た力を使いはぐらかすような尊大な台詞を使う。
 特に芝居かかった物言いはセルパンを思い出してどうにも好きになれない。
 まあ、キザったらしい仕草で涙を拭われたことに腹を立てているというのもあった。
「プレリーに連れてきて、って言われているのに……」
『正直に言うしかないね』
『まあ、あいつの力も素性も気になるが、他にも考えるべきことがある。……あのライブメタル、いったい誰が作ったんだ?』
 モデルZの言葉に、エールはロックマンVAVAと名乗った存在を思い出して身震いした。
 フィストレオという戦闘狂のフォルスロイドと似た行動原理を持ち、かつモデルXに対する執着心の凄まじさ、武装の豊富さと敵としては間違いなく最強に近い。
 それでも、エールは笑顔でモデルZに返す。
「大丈夫。次は倒す」
 エールの力強い言葉に安堵したのか、モデルZは『ああ』と短く答えた。
 彼の信頼を示す言葉であることは、付き合いの長いエールにはわかっていた。
『それで、エールはどうする?』
「とりあえず、あの天道ってのを見ていないか尋ねてまわる。ガーディアンのみんなにも見かけたら連絡を取るように…………」
 エールがモデルXへの返答を途中で止めて振り返る。
 避難していた人たちが一列に並んでいるが、食料の配給だと思い当たった。
 エールの思考を中断したのは行列でなく、漂ってくる食事のいい匂いである。
 ぐ~、と思わずお腹が鳴り、赤面して抑えるとモデルXが少し笑っていた。
「わ、笑わないでよ!」
『ごめんごめん、そういえば今日は動き回ったからお腹すくよね。エールもなにかもらってきた方がいいんじゃないかな?』
 モデルXが告げるも、エールは「これでも女の子なのに」と内心呟いて匂いの方面へとフラフラ歩いていく。
 三大欲求の食欲には、人間が持ちえる抵抗力は虚しい。まあ、抵抗する理由などないのだが。
 漂うシチューの匂いにフラフラと向かうと、見覚えがある人影を発見して思わずエールは声をあげた。
「て、天道!?」
 エールの視線の先には、ガーディアンの隊員に混じってシチューを作っている天道の姿があった。


 天道がシチューを小皿にとって味を見てみる。
 一時間ほど前、ガーディアンのメンバーが配膳しているのを見て、味を確かめてみたのだが隠し味が足りないと手伝いを申し出たのだ。
 ガーディアンのメンバーは戸惑っていたのだが、天道はお構い無しに調理場へと入っていったのだ。
 天道への対処を戸惑っているガーディアンの面子だったが、治療に追われるガーディアンのミュゲが許可をした。
 彼女いわく、『猫の手も借りたい状況なんだから、ありがたく手伝ってもらいな。しかし、若いのにいい心がけだね』とのことだ。
 丸く太った身体を揺らし、大笑いする中年の女性に対して天道は礼を告げた。
 なにげに目上への礼は尽くす男である。
「人にとってもっとも尊い行為は食事だ。ゆえに料理人は手を抜くことを許されない」
 などといって、調理を担当しているガーディアンのメンバーの目を白黒させている。
 寒空の下、温まるように配慮されたのかメニューはクリームシチューだ。
 天道もメニューに文句はない。不満があるとするなら味か。
 悪くはないのだが、大雑把でせっかくの具の味を殺している。これはいただけない。
 どうせ食べるなら、配給食といえど美味いものがいい。天道はそう思考して手をつけたのだ。
「具を切るならほぼ均等に切ることだ。避難している人たちの中には子供もいる。ちゃんと食べやすい大きさに切らねばならない」
 そういって天道がクリームシチューの具となる野菜と鶏肉を捌いていく。
 手際のよさに調理担当のメンバーが感嘆の声をあげるが、天道は手を休めない。
 先ほども言ったように、子供もいるのだ。この寒空の下、空腹のまま待たせるわけにもいかないだろう。
 量も量のため、どうしても時間がかかるが天道は素早く、丁寧に調理を進めていく。
 料理をする人間としての意地が天道を突き動かしていた。


「あなた、なにをしているのよ!」
「エールか、ちょうどよかった。お前もお腹がすく頃だろう。食べていけ」
「うわっ、おいしそー」
 そういって天道は皿にシチューを入れてスプーンと共に手渡した。
 先ほどお腹を鳴らしたエールにはちょうどいい。
「いただきまー……って、そうじゃなくてー!」
「なんだ? たくさん食べないと成長できないぞ」
 天道の言葉に、エールは頭を金槌で叩かれたような衝撃を受ける。
 自分の胸を見てしばらく沈黙した後、天道をキッと睨みつける。
「うるさいわね! 大きなお世話よ! ま、まだ成長期だもん!」
「なんの話だ? 成長期なのはわかっているから、はやく食べろ」
「くぅ~、ぬぅぅぅぅ……」
『あの、なぜあなたがここで料理を?』
 ヒートアップしたエールをそのままにしては話が進まない、とモデルXが割って入った。
 モデルXの問いかけに対して天道はフッと微笑むと、天を指差して自信満々に胸を張った。
「おばあちゃんがいっていた。食事の時間には天使が降りてくる、そういう神聖な時間だ。
つまり、その食事をよりよくするのも俺に与えられた使命ってわけだ」
『そういう……ものなのか?』
「そういうものだ。料理は……戦場だ」
 ドカーンと効果音でもつけたそうな台詞をモデルZへ返して、天道は満足気に頷いた。
 もっとも、モデルZに理解できるわけがない。
 現在の機械生命体(レプリロイド)は食事も可能だし、味も楽しめるがライブメタルにその習性はない。
 エールと天道が噛みあっているようで、噛みあっていない会話を続けていると、ガーディアンのメンバーが姿を見せる。
「あ、エールさん。今回もありがとうございます」
「気にしないで。それより、彼を借りていくわよ」
「はい、わかりました。天道さん、後は我々が引き受けます」
「そうか。ならシチューが冷めないよう気をつけろ。それと、なるべく子供たちから先に配るようにしてくれ」
 了解です、という一般隊員の声を背に天道がエールに近寄る。
 ガーディアンのメンバーでもないのに、ずいぶんと偉そうだ。
 エールが天道に突っかかる理由の一つである。
 そう考えているエールの腹が空腹を訴えた。匂いに釣られてシチューをスプーンですくい、一口味わってみる。
「…………美味しい」
 思わずエールの頬が緩み、たちまちシチューを完食していった。
 その様子を天道が微笑ましげに見守っていたのに気づかずに。

□

 非政府公認組織・ガーディアン。
 それはヒト ―― 人間とレプリロイドの総称 ―― をイレギュラーから守り、イレギュラーの発生原因を調査する組織である。
 十一年前にエールを庇護したジルウェもまた、ガーディアンの一員であった。
 空に浮かぶ赤い船・ガーディアンベースを拠点にして活動を続ける彼らは、一年前の激闘から再び争いに身をおこうとしていた。
「プレリー様、エールさん、そして報告にあった天道総司という方の転送を確認しました」
「そう。司令室に彼を案内するようにエールに伝えて」
「了解しました」
 プレリーと呼ばれた少女はオペレーターに指示を出して、エールの提出したミッションレポートに目を通す。
 ガーディアンの二代目司令官である彼女は、何度も見返したミッションレポートに難しい表情を向けていた。
 トランジスターグラマーの肢体を、司令官専用の制服で包み、金のブロンドをなびかせ思案する彼女は可憐であった。
 同じく女性であるオペレーターの少女が思わず嫉妬するほどである。
「エールには短い平和になっちゃったわね……」
「仕方ありませんよ。モデルVの反応が複数、この地で見つかったのですから」
「そうね、フルーブ」
 プレリーは小柄の老人へと礼を告げる。
 ガーディアンにおける頭脳担当にして副司令官である彼の意見を仰ぐために司令室に来てもらっていたのだ。
「……お姉ちゃんもまだ見つからないのに」
「プレリーさん、大丈夫ですよ、あの人なら」
 お姉ちゃんとは、先代司令官にしてプレリーが慕う女性である。
 ガーディアンを発足したのは彼女であり、ライブメタルを作り上げたあとは足取りがつかめない。
「そうね、私も信じている。お姉ちゃんは生きているって」
「ええ、ええ。そうです」
 プレリーはフルーブに微笑み、再びミッションレポートを取り出した。
 エールに送られてから、何度も何度も見直している、気になっていた部分をフルーブへと相談をする。
「それにしても……新たなロックマンにマスクド・ライダーシステム……」
「どちらも謎が多い存在ですねぇ」
「けど、このマスクド・ライダーシステムの持ち主の方はこちらに向かっているみたい」
「話してみるしかない、ということでしょうか?」
「協力してくれるといいんだけど……」
 プレリーが不安で顔を曇らせる。プレリーは十代の外見に反して百を超える年月を生きてきた。
 レプリロイドに寿命を設定する法律に、仕事柄免除されているのだ。
 その彼女が見たことのないシステムに不安を募らせるのはしょうがない。
 不安を隠せないまま、司令室のドアが開いた。


「プレリー、ただいま」
「お帰り、エール」
 明るい雰囲気で挨拶をするエールに返して、プレリーは席から立ち上がる。
 エールとの積もる話は後にして、後ろに待機する青年へと自己紹介を始めた。
「始めまして。私がガーディアンの司令官、プレリーです」
「ほう。俺は天の道を往き、総てを…………」
「司る男だー、でしょ? そっちも含めて報告しているわ」
「エール、人の自己紹介を中断させるのは行儀がよくないぞ」
「一日に何度言っているのよ、その台詞! 隣で何度も聞かされる身にもなってよね」
 ハハ、とプレリーが乾いた笑いを浮かべた。
 ガーディアンベースについて声をかけられるたびに、天道は独特の名乗りをしていたらしい。
 エールのうんざりとした顔がその事実を物語っている。
 それにしても、ガーディアンの司令官だと知っても疑いも敬いもしない。
 プレリーが司令官だと知って軽んじるものもいたが、天道からはそういう雰囲気が感じられなかった。
 常に自然体。エールもプレリーに対して対等の口をきいているが、それは彼女と親友だからだ。
 もっとも天道は天道でエールには気安い態度であることを考えると、エールの人懐っこさは一種の才能だとプレリーは思った。
「まあ、そういうことだ。よろしく頼む」
「はい、こちらこそ。それで、あなたにお尋ねしたいことがあるのですが」
「そうだな。俺も知りたいことがある。俺が把握している範囲なら、答えてやらないこともない。だが、一つ条件がある」
 天道の最後の言葉に、プレリーに緊張が走る。
 エールは彼がそう切り出すのが意外だったのか、腑に落ちない表情をしていた。
 いったい彼の望みはなんなのか? 天道自身の人間性も垣間見えるため、一言一句聞き逃さないよう気合を知れた。

「俺にここの食堂を仕切らせて欲しい。そうすれば、エールだけでなくお前たちにも協力をする」
「あなたは結局それ!?」

 エールのツッコミと同時に、プレリーから力が抜ける。
 天道の表情があくまで真剣だったのが、余計にたちが悪いと思った。
 フルーブが代表して、この場にいる全員の疑問をぶつける。
「ガーディアンベースの食事は全自動機械で作っていますので、問題ないと思いますが……なんでまた?」
『食事をよりよくするのが、こいつの使命らしい』
「全自動に機械か。そういうものを否定するつもりはないが、俺ならもっと美味しいものを用意できる」
「は、はぁ……」
 モデルZの説明を天道はさらに引っ掻き回し、フルーブを戸惑わせる。
 プレリーはこのままでははぐらかされそうな気がして、強引に話題を変えることにした。
「それで、本題に入らせてもらいます。あなたの力……マスクド・ライダーシステムとはなにか教えてください」
 プレリーの視線が鋭くなり、周囲の空気が引き締まる。
 エールも沈黙を守り、天道がどう答えるのか待っていた。
 皆が注目する中、天道が薄く微笑む。
「天の道を歩むために与えられた力だ」
「いや、もういいから。それは」
 エールがツッコムのだが、プレリーはめげずに別の質問を告げた。
 もとより、最初から素直に教えてもらえるとは思っていない。
「それなら、なぜあなたがその力を得たのですか?」
「決まっている。俺が選ばれし者からだ」
 やはりはぐらかされたか、とプレリーは帽子のツバを思わずつまむ。天道が真面目にそう答えているとは露知らず。
 真面目すぎるプレリーの性格の質問から、これまたベクトルの違った真面目さを天道に返されているのだ。噛みあうはずがない。
「だ~か~ら~!」
「エール、なにを怒っているんだ?」
「はぐらかしているからでしょう! もっと真面目に答えてよ!」
「俺は真面目だ。特に料理の話はな」
「そっち!?」
 エールのツッコミを耳にしながら、天道は小揺るぎもせずにプレリーへと正面から視線をぶつける。
 意志の強い瞳でありながら、奥に闇を隠しているような雰囲気にプレリーは眉をひそめた。
 一筋縄ではいかない相手だ。だが、天道はそのプレリーにも自然体で対応する。
「話はそれだけか?」
「もっと知りたいことがあるのですが、今のところは話す気はないでしょうね。
しばらく私たちの隊員が監視について窮屈な思いをするかもしれませんが、素性の知れない人を無条件で迎え入れるわけにはいかないのです。申し訳ありません」
「なに、構わない。それに、今は意味を理解できなくても、いずれ理解するときが来る。
天の道がなんなのか、俺がなぜ選ばれたのか、そのすべてをな」
「いずれわかる……?」
「もったいぶらないでちゃんと説明しなさいよ……」
「百聞は一見にしかず、だ。口で説明しても理解できるとは限らない」
 天道はそう答えて踵を返した。怒らせただろうか? とプレリーが思っていると、天道は肩越しに振り向く。
 表情は穏やかのまま、プレリーに優しい口調で告げた。
「安心しろ。俺は敵になるつもりはない。エール、食堂に案内してくれ」
「なんでアタシが……」
 エールが愚痴るが、天道にとってそれは決定事項のようである。テコでも動かないぞ、と雰囲気が滲み出ていた。
 エールはため息をついて、プレリーに「またね」とだけ言い残して出口へと向かった。
 プレリーも了承し、天道の案内を頼もうとしたときに敵の接近を告げるアラームが鳴る。
「どうやら、食堂に行く前にやることがあるようだな」
 けたたましい警報の中、いつの間にかカブトゼクターを掴んだ天道が言った。
 オペレーターがレーダを見て叫ぶ。
「謎の戦闘機が高速で接近してきます!」
「ここまで近づくまで察知できなかったなんて……迎撃して!」
「駄目です、間に合いません!! 突撃してくる!?」
 オペレーターの悲鳴と共に、船体が大きく揺れた。
 皆バランスを失い、倒れるかなにかに掴むかの状態なのに、天道はただ揺らがず立っていた。
 モニターで戦闘機が突き刺さった箇所を映しだす。すると、戦闘機から人影がガーディアンベースへと乗り込んできた。
 プレリーは大きく手を振り、指示を飛ばした。
「船内にいる隊員に命令を伝達! 戦闘要員は迎撃、非戦闘要員は部屋から出ないように伝えて。
エール、またこういうことに巻き込んじゃうけど……」
「大丈夫よ。プレリー、アタシがなんとかする!」
 親友が笑顔で快諾し、ライブメタルを取り出して一人の青年へと振り向いた。
 すでに出口で待機している天道に対し、エールは挑戦するかのような視線を射る。
「天道、あなたはどうするの?」
「言ったはずだ。俺は味方だとな」
 天道の答えに、プレリーを含む司令室の人間は目を丸くした。
 素性の知れない怪しい青年。質問に対しては碌な答えが返ってこない。
 彼にいい感情を抱いている隊員は少ないだろう。
 ゆえにその言葉は意外だったのだ。ただ一人、エールを除いて。
「上等!」
 エールが告げて、ライブメタルが輝く。
 天道もまた、カブトゼクターを持ち上げてドアの向こうを睨みつけた。

「ロックオン!」
「変身」

 ロックマンと仮面ライダーが同時に姿を見せ、迫り来る脅威に立ち向かうため肩を並べる。
 そして、まるでこの世界でも宿敵と相対することを知っているかのように、天の道を往く男は迷わず先を進んだ。


To be continued……

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2009年12月26日 19:03
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。