普段は場所を特定されることが少ない、動く拠点の赤い飛行船の通路で火薬の匂いが充満する。
貨物室より次々現れるイレギュラーに、ガーディアンの大柄な隊員・トンは銃を撃ち続け舌打ちをした。
彼の後ろで、仲間の隊員が弱音を吐く。
「くそ! 援軍はまだか!?」
「逃げ出した人の通路を確保するので精一杯だ!」
「こんなところを襲われたらひとたまりもないぞ、トン」
茶髪のクールな雰囲気の青年がトンに進言するが、唸るしかない。
イレギュラーであるガレオンの新型に、隊員や非戦闘員が倒れていっているのだ。
接近戦用の刃に、高機動用の羽とまるでロックマンZXを相手にしている気分である。
もっとも、性能はかなり劣化しているのだが、一般隊員にとって脅威なのは変わりない。
ずいぶんと戦線を下げてしまった。死者はまだでていないが、艦内にイレギュラーが散ってしまったのは痛い。
「なるほど、ガーディアン相手にここまで優勢とは。“あの男”の技術も馬鹿にしたものではないということですか」
突如現れた男に、トンと仲間たちは銃口を向ける。
男はまったく動じず、悠々と歩み寄って周囲を見和した。
「兄ちゃん、お前さんはイレギュラーじゃないのか!?」
「それとも、そいつらの親玉ってわけか?」
トンとアランが警戒をして尋ねる。それに対し、メガネをかけたサラリーマン風の青年は哀れみに満ちた視線を向けた。
クックック、と低く笑った男が、銃のグリップらしきものを取り出す。
「なにがおかしい!?」
「そんなものでワシらに勝てると思っているのか? おとなしく投降をしろ!」
「投降ですか。どこまでも愚かなものですね。私の名前はヴィクトル。ご存知、このイレギュラー部隊の指揮をしています。そして…………」
ヴィクトルと名乗った男は、左手に持ったトンボ型デバイスをグリップへと装着する。
男が嫌な笑みを浮かべたまま、トンボ型デバイスから『Hen-shin』という電子音が発せられた。
「仮面ライダードレイク。あなた方が束になっても敵わない存在です。下等な生物らしく這いつくばりなさい!」
変身と同時に装甲が散らばってトンの胸に激突する。
息苦しく喘ぐ中、トンボを模した装甲をつけるヴィクトルの姿があった。
アランが発砲するが、銃弾は虚しく装甲を弾いているだけ。
アレはロックマンと同じだ。手を出してはいけない存在である。
トンが必死にアレンを守ろうと手を伸ばすが、届かない。
アランはクールに見えて、情の厚い男である。トンの仇を取ろうと必死で銃を撃っている。
このままでは殺されてしまう。トンがそう思考すると、巨大な光弾がドレイクへと迫った。
「エール!」
アランの声に、トンは安堵する。あの勇敢な少女が間に合ったのだ。
トンは地面に倒れたと同時に、意識を手放した。
「トンさん!?」
「大丈夫だ、エール! 息はある!」
アランの言葉にロックマンZXとなったエールは安堵して、キッとドレイクを睨みつける。
天道の変身した姿、カブトと似た装甲を持つそいつは明らかな敵だ。
エールに反応してガレオン・アサルトが刃を構えた瞬間、ガレオンの首が宙を舞う。
『Clock over』
高らかに鳴り響く電子音と共に、赤いカブト虫の装甲をまとう仮面ライダーカブトが姿を見せる。
アランがドレイクと似た姿に警戒して銃を構えるが、エールが制した。
「大丈夫、アレは味方よ」
「でも、あいつ……」
アランが戸惑うが、ドレイクは構わず両腕を横に広げた。
行為だけ見るなら抱きしめようとしている風にも見えるが、雰囲気が刺々しい。
「…………天道総司! お久しぶりですね」
「キサマなど知らない。俺の知っているドレイクは、風のように自由だった」
「まあ、そうでしょうね。ですが、これならどうですか?」
そういってドレイクは変身を解除、ヴィクトルの姿が怪物へと変化する。
赤いダニを模した宇宙生物。右手のカギ爪をカブトに向けながら、狂ったような咆哮をあげた。
「ば、化け物……」
「天道、あれ……」
初めて遭遇するワームに、エールたちは真実を知るだろう男の背中に視線を動かす。
カブトは静かに、一歩前に踏み出した。どことなく、エールはその背中に怒りを感じた。
「俺の敵だ。だが、どういうことだ? ゼクターは今のお前たちに扱える代物じゃない」
そしてカブトは言外に、資格者をすべて失っていることを示す。
資格者を擬態したのならともかく、その線は薄い。
なぜゼクターの力を引き出したのか。その答えは意外な方向から知った。
『エール、天道さん。あれはカブトゼクターと違って意思を感じない。なんらかの手で意思を封じられていると思う』
『モデルHたちがフォルスロイドに組み込まれたときと同じだな』
「酷い……」
モデルXとモデルZの説明に、エールは敵を睨みつけた。
事情はどうあれ、カブトと同種の力を持つ。カブトが見せた高速移動は厄介だ。
ZXセイバーの柄を握る手に力が入る。そのエールの手を、カブトが抑えた。
「あいつの相手は俺がする。エールは皆の安全を頼む」
「天道!? アタシだって戦え……」
「そういう問題じゃない。あいつのクロックアップに対抗できるのは、同じくクロックアップができるカブトだけだ。
だからこそ、イレギュラーとやらの相手は任せたい。できるな?」
カブトはそう静かに助言して前進し、アキャリナワームと対峙する。
アキャリナワームがドレイク・マスクドフォームになるのと、カブトがカブトクナイガンで斬り込むのは同時だった。
金属と金属のぶつかり合う音が響き、ヤゴをモチーフとした仮面ライダードレイク・マスクドフォームが揺れる。
青いアーマーを纏った身体が泳いだ隙を逃さず、カブトがクナイガンをガンモードにして弾を叩き込んだ。
「チィッ! キャストオフ!!」
ドレイクが告げて、青いパーツが破裂する。ドレイクはカブトの接近を阻むために、銃となったドレイクゼクターの引き金を引いていた。
すると、不思議なことにカブトがドレイクへの攻撃を中断、破裂したドレイクのアーマーと銃弾をカブトクナイガンで弾いていた。
ドレイクゼクターの発する『Change Dragonfly』と共にライダーフォームへと変わったドレイクは、カブトの行動に疑問を持ったがすぐ解消した。
「ガーディアンの隊員を守ろうとするとは殊勝な心がけですね。とても世界を一つ滅ぼしたとは思えない」
「世界を……滅ぼした?」
エールがドレイクの言葉に、カブトの顔を覗き込む。
カブトは動じず、静かにドレイクの世界を拒否した。
なぜなら、天の道を往く者にとって、それだけは認めるわけにはいかないからである。
「キサマたちワームの好きにされる未来など与えはしない。何度でも相手をしてやる」
「ハッ! ならこいつはどうです? クロックアップ……」
ドレイクが宣言と共に、ベルトのスイッチをスライドして青い風となった。
カブトはその狙いを察してクロックアップへとついてくる。ドレイクの狙い通りだろうが、他に手をとりようもないし、とる気もない。
周囲は人も瓦礫もイレギュラーも、ビデオのスロー再生をかけたかのように動きが遅くなる。
高速移動(クロックアップ)とは、タキオン粒子によって周囲の時間の流れを何倍も遅くする技術なのだ。
ドレイクは通路を駆けて、見つけたガーディアンの隊員の頭部へと蹴りを繰り出した。
素早くカブトが間に入り、蹴りを食い止める。ドレイクが思惑通り、と小さく呟いたのをカブトは聞き逃さなかった。
『Clock over』
二人のゼクターが宣言すると同時に、ドレイクは手ごたえを感じたのだろう。カブトと距離をとった。ぞんがい、冷静な奴である。
一方、ガーディアンの女性隊員―― 確か名前はウイエといった ――はいきなり現れた二人に戸惑っていた。
「な、なに!?」
「天道総司、これでわかったでしょう。あなたがどれほど不利なのか」
ニタァ、とドレイクが仮面の下で笑った気がした。
ウイエの戸惑いに気持ちをよくしたのだろうか。ドレイクは、芝居かかった動作でドレイクゼクターを誇示している。
「フフフ……私は天道総司でなく、それ以外の方を狙いましょう。彼らはクロックアップから逃れられない。
クロックアップを持つ私にとって、この艦内すべてのヒトが人質だ。天道総司、あなた一人で……どこまで守りきれるかなぁ!」
ドレイクがけたたましく笑い、カブトを嘲笑った。本来のドレイクゼクターの持ち主が見れば、下品だと罵っただろう。
ウイエも嫌悪をこめて吐き捨てる。
「最低……」
「お褒めに預かり光栄です。さあ、天道総司。私たちの世界を奪ったツケ、今払ってもらいます!」
ドレイクが宣言するが、カブトは微動だにしない。
ウイエを助け起こし、背中に庇うようにカブトが一歩前に出た。
「安心しろ。誰一人……奴の手にかからせはしない」
カブトが背中の女性だけでなく、この戦いを見届けている司令室のプレリーにも語りかけていた。
そしてここにいるワームだけではなく、どこかに存在するワームの連中にも宣言するように、カブトは声に力を込める。
「世界はこの俺、天道総司が守り抜く。もう二度と奴らに奪わせはしない」
カブトは宣言と共に、地面を踏み抜いてドレイクに右ストレートを放った。
ドレイクは右手で受け止めたが、遅い。カブトはドレイクの反撃を手のひらで捌き、ドレイクの胸を蹴りで強打する。
壁に叩きつけられたドレイクを前に、カブトは悠然と仁王立ちをする。
まるで、キサマなど相手にならない、と宣言するように。
「ぐふっ。さすが……一筋縄ではいきませんね……。しかし、世界を守るとは大きく出たものだ」
「大きく? 違うな。世界程度、背負えず天の道は往けない」
カブトのあくまで余裕の態度に、ドレイクの怒気が膨れ上がった。
ゆらり、と幽鬼の如く立ち上がったドレイクに、先ほどまでの余裕などない。
「ならば教えて差し上げましょう。あなたでは世界どころか……ガーディアンの隊員すら守れないとね! クロックアップ!」
「クロック……アップ」
カブトとドレイクが、再び風となりて姿を消す。
残されたウイエは、ゴクリと生唾を飲み込んでいつまでも二人が消えた場所を見つめていた。
□
プレリーは司令室で、戦闘現場をモニタリングしていた。
イレギュラーは数が少ないこともあって、全滅するのも時間の問題だ。
やはり、一番の障害は怪物の正体を持つ、ドレイク。
「世界程度、背負える……か」
プレリーは先ほどの天道の言葉を呟いた。
常に自信に溢れて、言動に出しているのはただ一つ。
彼が有言実行を貫いているからだと、プレリーは気がついた。
天道はガーディアンの隊員たちを狙うドレイクから、守り続けている。
あまりの速度に、ドレイクや天道が次はどの地点に現れるのか大まかにしか予測ができない。
ただ一ついえることは、人影を見つけたドレイクの攻撃を、天道が今のところ完璧に受け続けているということだけ。
このままガーディアンの隊員を危険に晒しておくわけにはいかない。なにか変化が必要だ。
「エール、聞こえる?」
プレリーは焦りを見せず、自分が行える手をとることにした。
彼女には危険な役割を押し付けてしまうことが、プレリーには心苦しかった。
世界を守るのは天道だけではない。プレリーやエールもまた、この世界を守るために戦い続けた戦士であった。
「当れ!!」
エールのチャージショットがガレオンを砕く。ロックマンZXのチャージショットは、モデルX単体と比べて威力は低い。
それでもZXセイバーと組み合わせることによって、幅広い対応ができるのだ。
これで、イレギュラーは掃討した。ガーディアンの非戦闘員の避難も済む頃だろう。
「さて、天道を援護に……」
『エール、その前に通信が入っている』
モデルXの言葉に、エールはなにか問題が起きたのだろうか、と通信機を取り出した。
聞こえてくるプレリーの言葉は冷静であった。さすがは幾多の戦いを乗り越えたガーディアンの司令官だ。
『エール、聞こえている?』
「うん、大丈夫。プレリー、どうしたの?」
『敵が卑劣な手を使ってきたの。彼を援護するために今伝える敵の能力を把握して』
「そう。プレリー、アタシはどこに向かえばいい?」
プレリーの指示をエールは快諾して通路を進む。
やることは決まった。エールに迷いはない。
『ごめんなさい、いつもあなたに危険な真似をさせて……』
「プレリー、アタシが決めたんだよ。みんなを守るために、戦うって!」
エールの足が速まった。敵のとった手は許せるわけがない。
プレリーの指示を頭に、エールはチャージを開始した。
□
ドレイクへと変身したアキャリナワームは、目の前の仇敵を相手にして異常に興奮していた。
彼らの世界は地球に落ちた隕石により、海が干上がって文明レベルが一気に落ちた。
人口は激減し、生物の多くが死滅した中で人類に滅びの道を示したのだ。
それだけではなく、隕石の中には異星生物のワームのタマゴが存在していた。
人類は隕石により、海を奪われ人類の天敵を与えられてしまったのだ。
ワームの能力は主に二つある。知的生命体のコピー能力、擬態。
そしてサナギと呼ばれる形態から成長した成虫状態から付与される能力だが、周囲の時間の流れを遅くする時間操作能力(クロックアップ)。
それに対抗する手段を人類が持ち出したが、ワームが地球を支配するのは時間の問題だった。
「がぁぁぁ!」
ドレイクの銃弾が、ガーディアンの制服に身を包む青年に迫る。
普通なら間に合いはしない。ガーディアンの青年は虚しく地に沈むはずであった。
なのに、ドレイクの銃弾はカブトクナイガンの刃に阻まれる。
「その程度か? ワーム」
「くっ!」
そう、ワームが地球を手に入れるのは時間の問題だった。その瞬間は永遠に訪れることはない。
ワームが支配すべき未来を、目の前の男がひっくり返したのだ。
戦いはガーディアンのメンバーから見れば、異常といってもいい状況であった。
姿が消えては、数ブロック離れた区画に姿を現す仮面ライダー二人に隊員が反応しようがない。
加えてドレイクは射撃タイプの戦士であった。
ゆえにドレイクが他人を狙い、カブトが守るという戦い方ではジリ貧だと予測したのだ。
そう予測したのに、カブトはドレイクに狙われた隊員を全員守りきっていた。
しかもギリギリといった余裕のない状況ではない。
常に先回りしたかのような、余裕諾々とした動きでカブトは守り続けている。
回数を増すたびに、ドレイクが焦っているのがモニター越しでもわかった。
プレリーたちが生唾を飲んで見守る中、カブトがスッと右人差し指を天に向けた。
「どうした? もうお終いか?」
カブトがそうドレイクに確認するが、ドレイクは歯軋りするだけだ。
カブトは悠然と佇み、高みからドレイクを見下ろした。
ワームにとってはたまらないだろう、とカブトはあたりをつける。
彼らにとっては人間など、見下すべき下等生物に過ぎないのだ。
だからこそ、カブトはただ高みにおのれを置く。何一つ、ワームの好きなようにはさせない。
「くっ!」
ドレイクが言葉に詰まらせ、カブトへの攻撃を中断している。
奴の行く先は決まったも同然だ。カブトがクナイガンを構え、ドレイクに仕掛けようとした瞬間、通路にエールが現れた。
「天道!」
「ふふっ! 運命は私に味方した!」
ドレイクがそう宣言して、クロックアップを仕掛けた。同時に、エールがカブトの瞳を見つめる。
「天道、お願い!」
エールはそう告げて、即座に壁に張り付く。
輝くZXセイバーを手に持ち、構えから狙いを察したカブトが宣言する。
「クロックアップ」
電子音と共に赤い風となりて、カブトの周囲の時間の流れが遅くなる。
ドレイクが踏み台にし、瓦礫が飛び散る壁も地面も、静止したかと勘違いするほどゆったりとした動きになる。
「ははっ! あなたが私の攻撃を防ぐより、私があの小娘を殺すほうが……」
ドレイクの勝ち誇った声を耳に、カブトはゼクターのボタンを冷静に押す。
『One・Two・Three』
静かに、死刑執行を告げるかのようなゼクターの電子音が高速空間で響いた。
「なぜ守る必要がある?」
「はっ?」
ゼクターの角、ゼクターホーンを引き倒し、電撃に似たエネルギーが頭部から足へと纏わりつく。
ドレイクゼクターの弾丸をエールへと吐き出すドレイクの背後に立って、カブトは今までと違ってエールを守るそぶりすら見せず呟いた。
「ライダー……キック」
『Rider Kick』
ゼクターの電子音と共に、エネルギーを纏った回し蹴りがドレイクの頭部を捉えた。
首をもぎかねない衝撃を、ドレイクの頭部に集中させて宙を回転させる。
ドレイクが壁に叩き蹴られ、瓦礫が牛歩の速度で飛び散る中、世界が正常に戻った。
『Clock over』
瓦礫が急速に落下し、変身の解けたワームをカブトは見下ろす。
「エールがキサマの攻撃を防ぐなどわけがない。もう一度聞くぞ。なぜ守る必要がある?」
カブトの言葉通り、エールは無傷。カブトは戦士としての信頼も、彼女へ向けていた。
「天道!」
エールが落ちたドレイクグリップを回収し、カブトの傍へ寄る。
彼女の無傷の姿に、ワームの男が顔を歪ませた。
「あんた、狙いがわかりやすいのよ。いくら速くても、壁に背を張りつけてタイミングと狙う方向が限定されれば対処はできるってね」
『あの銃弾程度なら、チャージセイバーで焼き消せる。クロックアップとやらを過信したな』
エールの説明に、モデルZがトドメを刺した。なんてことはない。
元の世界でも、ワームという頑強な肉体とクロックアップに胡坐をかいた連中がほとんどだ。
カブトはワームたちの油断を何度も見届け、隙を突いて幾多も倒してきた。
「エールは戦士だ。クロックアップがなくてもキサマ程度、相手にならない」
「くぅぅ……天道ぉぉぉ!」
ワームの男が歯軋りをし、怨嗟の声をあげて憎悪をカブトに叩きつける。
カブトはあくまで涼しげに憎悪を受け流し、クナイガンの刃を閃かせた。
ワームの男は距離をとり、姿を変えた。
「まだだ……まだ私は負けるわけにはいかない」
ダニを模したアキャリナワームへと姿を変え、クロックアップで離れていく。
カブトが追おうとクロックアップのスイッチに手を向けた瞬間、その腕を引かれた。
「天道、アタシも連れて行って」
静かな怒りを込めたエールに、カブトは沈黙を返した。
カブトはエールに告げていた。ワームのクロックアップに正攻法で対処できるのは、同じくクロックアップのできる自分だけだと。
それを踏まえているのか、カブトは静かに見定める。エールはそのカブトの視線を真正面から受け止めていた。
それから何秒経っただろうか? カブトは大きく息を吐いて、エールの腕を引き寄せる。
「……って、あんたなにを!?」
「これが一番効率よく運べる。エール、喋ると舌を噛むぞ」
そういってカブトは、背と足を抱き上げた、いわゆる『お姫様抱っこ』のまま腰のスイッチを起動させた。
『Clock up』とカブトゼクターの電子音が響くと同時に、エールとカブトが姿を消す。
一陣の風が、決着場へと吹いた。
最終更新:2010年01月16日 19:12