涼宮ハルヒシリーズと帰ってきたウルトラマン第33話「怪獣使いと少年」のクロス
何時もの様に学校の授業を終え、SOS団の部室にいたキョン・長門・みくる・古泉の四人だったが
そんな時に突然勢い良くドアを開けてハルヒが入って来た。
「今日は川原へ行くわよー!!」
「なっ何だいきなり! 川原で何があるってんだよ!」
いきなり川原に行くと言われて戸惑うキョンだったが、ハルヒの勢いは止まらない。
「何でも近くの川原に宇宙人がいるらしいのよ。今からそれを調べに行くわよ!!」
「はぁ? 宇宙人?」
一体何処から仕入れて来たのかは知らないが、ハルヒのその情報にキョンはやや呆れた。
別に宇宙人の存在自体は身近にそれっぽいのがいるから否定はしない。しかし近く川原にいて、
ハルヒでもその情報を仕入れる事が出来る位にオープンな宇宙人等いるのだろうか…?
「何? キョン、私の言う事が信じられないって言うの!? とにかく行くわよ! 出発!」
「わっこら! 引張るな! 分かったよ! 分かったからそんな強く引張るな!」
と言う事で宇宙人がいるとの噂の川原へ向かったSOS団であったが特にそれらしい物は見当たらない。
至って普通の川原であったし、まあある物を言えばオンボロな掘っ立て小屋程度。
「で、この川原の何処に宇宙人がいるってんだ?」
「だからそれをこれから探して確かめるんじゃない!」
「は~………。」
やはり川原に宇宙人なんてデマなんだろうとキョンは呆れていたし、ハルヒも少々焦り気味だったのだが、
そんな時に川原で中学生と思しき三人の少年が一人の子供の首から下を穴に埋めているのが見えた。
「あっ! 何やってんだ!? 幾らなんでも酷く無いか!?」
三人の少年は、一人の子供の首から下を穴に埋めるのみならず、泥水をぶっかけたりとやりたい放題。
これは流石に見て見ぬ振りは出来ないとキョンが思った時には既にハルヒが飛び出していた。
「ちょっとあんた達何やってんのよ!!」
「何って…コイツが宇宙人だからに決まってるだろ!? だからやっつけてるんだ!」
どうやら今穴に埋められている一人の少年が噂の川原の宇宙人だと言うのだが…
とてもその様には見えない。至って普通の少年だ。
「馬鹿じゃないの!? ただの子供じゃない!」
「そこれがこれから怖い宇宙人に変身すんだよ! コイツを放っとくと今に俺達がやられてしまうんだぞ!」
「だから馬鹿って言ってるの分からないの!? ただも子供を相手に宇宙人なんて…馬鹿馬鹿しい!!」
せっかく川原で宇宙人に会えると楽しみにしていたらただの子供だった。ハルヒのショックは相当だったらしく、
その憂さを晴らすかの様に三人の少年達にぶつけ、あっという間に追い払ってしまった。
「うわーんあの姉ちゃん怖いよー!」
「ちっくしょー! 宇宙人を庇うなんて今に見てろよー!!」
「まったく…こんなただの子供を宇宙人なんて…あんた大丈夫? こらキョン! 何ボサッとしてるの!?
さっさとこの子を掘り出しなさい!!」
結局子供を穴から掘り出すのはキョンがやらされたわけだが、子供は軽く礼を言いつつ
川原にポツンと建つ掘っ立て小屋へ走っていた。
「ありがとう! 僕は宇宙人何かじゃない! 僕が生まれた所は北海道、僕は日本人さ!」
「まったく…あんなただの子供を宇宙人なんて…本当馬鹿馬鹿しい…。とんだデマ情報ね! さっさと帰るわよ!!」
川原へ行くのも強引だったが、そこから帰るのもまた強引だった。恐らく今日の事でまたハルヒは
閉鎖空間を作って古泉達は大騒ぎなんて事もありそうな気もしない事も無かったが………
「……………………。」
「長門、どうしたんだ?」
ただ一人、長門だけは何故か掘っ立て小屋の方をじっと見つめていた。
それから数日、未だ無くならない川原の宇宙人の噂に関して、ハルヒはすっかり興味を無くしてしまっていたが、
長門は何故か気になる所があった様で、再び川原へやって来ていた。その川原には子供が掘ったと思しき
大きな穴がポッカリと開いている事くらいしか変な所は無い。
「あ、いましたいました。ここにいたんですね?」
そこへやって来たのが古泉。そして彼はポケットの中からメモ帳を取り出していた。
「実は機関の方で調べてもらったのですが、彼は間違いなくただの人間です。名前は佐久間良。
母は死亡、父は出稼ぎに行ったまま蒸発。そして彼もまた行方不明と言う事になってますが…。
恐らく父親を追ってここまで来たのでしょうね。」
「そう………。」
「その良君がこの川原の掘っ立て小屋に住んでいると言う事は、その掘っ立て小屋の中で
父親に代わる存在を見付けたのでしょうね。もし仮に彼が宇宙人呼ばわりされる原因に
その父親代わりの何者かが関係しているとしたら……後は長門さんに任せます。」
「………………。」
と、古泉は結局情報を伝えるだけ伝えて帰って行ったが、長門は構わずに川原の掘っ立て小屋へ歩み寄った。
長門が掘っ立て小屋の中へ入り、奥へ進むとそこには良少年の姿があった。
「あっ! どうして勝手に上がったんだ! 出て行け! 出て行け!」
「やめなさい…彼女は良いんだ…。」
長門を突き飛ばそうとする良少年だが、そんな時に一人の老人が現れた。
「貴方は…メイツ星人…。」
「え? おじさんまさか…。」
「そう…私とは違うが…この人も…。」
良少年は古泉が調べて来た通りにただの人間であるが、一緒に共同生活を送っていたこの老人が…
メイツ星と言う所から来て、地球で金山と名乗って暮らしていた宇宙人だった。そしてメイツ星人金山の
言葉から長門も同じく地球の者では無いと悟った良少年は大人しくなる。
「でも一つ分からない事がある…。表の穴は何? 何故穴を掘っている?」
良少年と共に暮らすメイツ星人=金山の存在が分かった以上、次に問題にするのはそこだった。
掘っ立て小屋の外を見れば分かる通り、良少年は川原でひたすら穴を掘り続けていた。
彼を宇宙人と疑惑を持っていた三人の少年に埋められた時もその穴が使われた位。
だが…一体何故…あんな穴を…?
「それは私が話そう…。」
「おじさん止めた方が良い! 他人に知られたら宇宙に帰れなくなるよ!」
長門をまだ完全に信用しきっていなかった良少年は言うが、金山は首を横に振った。
「どうせ…長くは無い命だ…。」
「おじさん…。」
「それは…一年前の雨の強い日だった…。私は地球の風土気候を調べる為に表の川原に着陸した…。」
そう。金山は地球に来た際、地震の超能力を使って宇宙船を川原の地下深くへ埋めていたのである。
「その地球人の少年は…。恐怖と…寒さと…餓えの為に…殆ど死に掛けていた。それ以来…
良とはまるで親子の様に暮らして来た…。私はこのまま地球に住み着いても良いとすら思いました…。
しかし…秋が来て…枯葉が散る様に…私の肉体も…汚れた空気に蝕まれて…朽ち果てて行く……
あの車も…あの煙突も…シロアリの様に…私の肉体を………。」
「早くしないと…おじさんは…死んでしまうんだ…。」
「理解した…。宇宙船をあの一帯に隠したと言うのなら…探すのを手伝いたい…。」
これで謎は解けた。良少年がひたすら川原で穴を掘っていたのは金山の宇宙船を掘り当てる事。
本来ならば最初地球に来た時に金山自身が超能力で宇宙船を川原の地下深くに隠した様に
同じく超能力で地下から出す事も可能だったのだが…地球の環境によって大きく衰弱した今の金山には
それが出来ない。そしてこのまま地球にい続けていては命にも関わる。だからこそ宇宙船を掘り当てて
メイツ星に帰るしか助かる道は無いと言う事なのだろう。
そして、川原で良少年と共にスコップを握って穴を掘る長門の姿があった。
「父親は見付かった?」
「父ちゃんなんかいらないよ! 僕、おじさんと行くんだ! メイツ星へ…。」
「この星を捨てるつもり?」
「地球は今に人間が住めなくなるんだ。その前にさよならをするのさ!」
良少年の言葉…そして金山の身体を蝕んだ元凶、川原の近くに見える工業地帯や高速道路から
発せられる多量の排ガスを見つめ、長門は無表情の中に微妙な面持ちを感じていた…。
目的こそ違えど彼女もまた宇宙の彼方から地球へ派遣された存在。だからこそ…今の金山と
その金山と共に地球を去りたい良少年の考えは他人事とは思えなかった…。
「あの高速道路の向こうに、怪獣が閉じ込められているんだよ。」
「怪獣?」
「おじさんが念動力でやったんだ。凄いだろう!」
まるで自分の事のように自慢をしながら、なおも穴を掘り続けていた良少年であったが…そんな時だった。
多数の人々のざわめきが響き渡ると共に沢山の人々がこちらへ殺到してきていたのである。
「呆れたもんだ! 誰だか知らないが宇宙人と仲良くしてる奴がいるなんてな!」
「お前の為に街が大騒ぎになったんだぞ!!」
それは近所の街に住まう市民。良少年を宇宙人と信じる彼等はその宇宙人を退治する為に
徒党を組んで川原に殺到して来ていたのだ。
「大勢で一体何を…。」
「その子が宇宙人である事が分かった! だから俺達が退治するんだ!」
暴徒と化した市民は長門を押し退け良少年へ寄って集り、一斉に手に持っていた棒で叩き始めた。
「何をするんだ! 僕が何をしたって言うんだ!」
呆れる事に暴徒の中には現職の警官が数人含まれていた。そして必死に抵抗する良少年を拘束し、
何処へ連行しようとしていたのである。長門も何とか良少年を救おうとするが、数人がかりで
押さえ込まれてどうにもならない。流石に一般人の目の前で情報操作を行うわけにも行かないし…
「おじさーん! 助けてくれー!」
「待ってくれー……ま…待ってくれー………。」
「おじさーん!」
そこへ良少年の危機に我慢出来なくなったのか…自身の弱った体に鞭打って金山さんが
掘っ立て小屋の中から現れ、ヨロヨロと近付いて来たのである。
「おじさーん! 助けてー! おじさーん!」
「宇宙人は私だー!」
「あっ! おじさん!」
一度倒れ込む金山だが、手に持っていた杖で必死に身体を支え起き上がり必死に叫んだ。
「良君はただ私を守ってくれていただけだ! 宇宙人じゃない!」
「おじさーん! おじさーん! 助けてー!」
「さぁ…良君を自由にしてやってくれ!」
金山の姿に驚いた暴徒の手が緩み、脱出に成功した良少年が金山に走り寄り抱き付いた。
「どうして出て来ちゃったんだよ~!」
「もう良いんだよ…。」
「みんな! コイツを生かしておくと何を仕出かすか分からないぞ! 何しろ宇宙人だ!!」
暴徒と化した市民は情け容赦無く良少年と金山に石を投げ、罵声を浴びせ、一斉に飛びかかる。
長門も何とか庇おうとするが、暴徒の数は半端では無く守りきれない。
「やめて。この人はただ宇宙に帰りたがっているだけ。」
「おじさんに酷い事をすると大変な事になっちゃうよー!」
多数の暴徒に一斉に揉みくちゃにされる金山と良少年だったが…次の瞬間…一人の警官の
放った銃弾が…金山へ撃ち込まれた。
「うあぁ!!」
「!!」
金山が撃たれ、良少年の口が大きく開いた…。しかし金山は真っ赤な血を吹きながら歩み寄る。
「殺すなら…私を殺せ!」
次の瞬間…二射目の銃弾が撃ち込まれ…金山は倒れた。それに伴い暴徒達は下がって行くが…
金山を守りきれなかったショックなのか…長門はその場で膝を付いていた……。
「おじさーん! おじさーん…。おじさーん…。うああああああああああん!」
良少年の呼びかけも空しく金山は息絶え、真っ赤だった血が忽ち緑色へ変色して行く…。
次の瞬間だった! 金山の死によって、高速道路に封じ込められていた怪獣…巨大魚怪獣ムルチが蘇ったのだ!
「うああああああ!! 助けてぇぇぇぇ!!」
大雨が降り注ぐ中、高速道路を破壊し、本能に身を任せて当たり次第暴れ始めたムルチに暴徒と
化した市民は散り散りになって逃げて行く。
「うあああ!! 助けてくれぇぇぇ!!」
「勝手な事は言わない方が良い…。あの巨大特殊生命体を蘇らせたのは貴方達…。まるで金山の怒りが
乗り移っている様…。」
暴れ続けるムルチと逃げ惑う市民。しかし長門は一人ただ呆然と見送るのみだった。
そしてムルチが川原を越え、街へ向かおうとも…長門は何もする事は無かった。
そんな時である。雨が降りしきる中その場に立ち尽くす長門の所へ一人のお坊さんが歩み寄っていたのである。
「長門…街が大変な事になっているんだぞ。」
それはキョンだった。何故彼がお坊さんの姿をしているのかは不明だが…間違いなくキョン。
そして街ではムルチの暴れによって炎の海と化して行く…。
「長門! 分からないのか!?」
「!」
キョンに諭され、長門は走り始めた。ムルチは金山が封じ込めた怪獣だ。いかに暴徒に非があろうとも
ムルチをこのままにしているのは金山の想いを裏切る事になる。代わりに何とかしなければ………
その長門の姿を見送ったキョンは一種にニヤリと微笑むが…
「で、古泉よ、何故態々俺がこうして坊さんの格好をせにゃならんかったのだ?」
「その方がムードが出るじゃありませんか。」
ムルチの侵攻をこれ以上阻止するべく走った長門は自身の情報操作能力を駆使し、ムルチの周囲を
異空間化させた。こうすれば周囲の破壊を気にする事無くムルチと戦える。大雨が降り注ぎ、
何故かワンダバダワンダバダなBGMが流れる中長門とムルチの戦いが始まったのである。
情報操作によって自身の周囲の物理法則を書き換えながら戦う長門であるが、彼女が巨大特殊生命体と
呼んだ通り、ムルチはただ巨大なだけな生物では無く苦戦を強いられる。
それでも何とかムルチを押さえ込み、吹き上がる炎の中へ投げ落とすと共に自身の情報操作によって
産み出した高エネルギー光線を撃ち当て……ムルチを倒した………。
雨が止んだ後…川原で再び穴を掘り始める良少年の姿があった…。
「おじさんは死んだんじゃないんだ…。メイツ星に帰ったんだよ…。おじさん…僕が付いたら
迎えてくれよ…。きっとだよ…。」
目から涙を流しながらひたすらに穴を掘り続ける良少年の姿は…痛々しかった……。
「一体何時まで掘り続けるつもりなんだろうな…。」
「宇宙船を見付けるまでは止めないと思う。彼はこの星にサヨナラが言いたいらしい…。」
遠くからキョンと長門の二人が見つめる中、良少年は金山の遺した宇宙船を掘り当てる為…延々と穴を掘り続けていた…。
END
最終更新:2009年12月24日 20:14