イギリス某所。
『ATTACK RIDE BLAST!』
マゼンダに黒と白のラインが入った奇抜な鎧と仮面をつけた男が、二人のシスターへと銃弾を放つ。
その銃弾は背の低い方のシスターの前に浮かんでいた袋に命中し、中身の金貨が辺りにばらまかれた。
「ひゃあ!?」
「シスター・アンジェレネ、下がりなさい!」
もう一人のシスターが木製の車輪を構えながら叫び、その直後車輪が爆発し破片が男へと襲いかかる。
迫る破片に対し男は動じず、持っていた銃身部分がノートのような形状の銃で一つ残らず打ち落とした。
「この程度か?」
「し、シスター・ルチア……」
「くっ……あなた、何者です!?」
ルチアの言葉に男は一瞬間を置き、勿体ぶるかのように答える。
「俺は世界の破壊者ディケイド……覚えておけ」
◇
仮面ライダーディケイド
VS
とある魔術の禁書目録
第一話「世界を破壊する者」
◇
学園都市。
東京都の三分の一もの面積を誇る巨大都市だ。
総人口は二三◯万、その八割は学生で占められていた。
記憶力、暗記術という名目で超能力研究、つまり脳の開発を行っている。
この都市にいる学生はそれらのカリキュラムによって普通の人は持たない「異能」の力を持っていて、その力の強さによってレベル0~5と区別されている。
学園都市第7学区に存在する地下街。
人々が行き来するその一角に、見慣れぬ写真館が立っていた。
つい昨日まで存在しなかったはずのその建物を誰かが気にする様子はない。
その「光写真館」の扉が開き、三人の男女が学園都市に現れた。
「ここはどんな世界なんだろうなぁ」
「さあな、ライダーの世界ではないと思うが……」
「そういえば士君、今回は服が変わってませんね」
門矢士、光夏海、小野寺ユウスケ。
この三人は消滅しようとする世界を救うため、いくつもの世界を巡っていた。
一つ前にいた世界でその使命を見事果たし、今は気ままな旅を続けている。
「けどどうしようか、もうこの世界で士がやるべきこと! とかって探す必要がないんだよな?」
「言われてみればそうですよね……」
「なら簡単だ、適当に観光でもすればいい」
士の言葉に二人は明るい表情を浮かべ、早速辺りを探索しに駆け出していく。
「……子供かあいつらは」
常盤大中学の制服を着た二人の少女が歩いていた。
一人は風紀委員【ジャッジメント】である白井黒子、もう一人は学園都市に七人しかいないレベル5の電撃使い【エレクトロマスター】"超電磁砲"の御坂美琴。
二人は買ったばかりの服が入った袋を持ち、寮への帰路についていた。
「お姉さま、またそんな子供っぽい服を……」
「う、うっさいわね、そこまであんたに言われる筋合いはないわよ」
談笑しながら歩くその背後、直前まで何の変哲もなかった空間が歪み、オーロラのような壁が現れその中から一つの影が飛び出し美琴達へと迫る。
影は辛うじて人の形をとっているものの不自然に歪み、左腕に至ってはカニのハサミのようになっている。
そのハサミのような左腕を振り上げ、美琴へと狙いをつけ――
「黒子!」
次の瞬間、二人の姿が消えた。
獲物を見失った影……カニの怪人、シオマネキングは慌てた様子で消えた二人の姿を探す。
「どなたかは存じませんけど」
辺りを見渡すシオマネキングの背後、数瞬前までオーロラの壁が存在していたその場所から黒子の声が発せられる。
「私と、よりにもよってお姉様に襲いかかるなんて、命知らずもいいところですわね」
呆れたような声で喋る黒子に、シオマネキングの姿を見ての動揺は感じられない。
学園都市の能力者には自分の姿を隠したり、変えたりできる者もいる、目の前の異形の姿もその手の能力だと判断したのだ。
その横で美琴もパリパリと前髪から火花を散らして臨戦体勢に入っている、この都市の人間だったならば迷わず逃げる状況だろう。
だがシオマネキングはすぐさま美琴へ向けてカニに酷似した口から泡状の溶解液を発射した。それを軽く横へ飛んで回避し、
「危ない!」
「うわっ!?」
更に横から飛び出してきた青年に押し倒される。
側で黒子が恐ろしい形相になっているのに気づかないままその青年、ユウスケはシオマネキングを睨みつけながら美琴へと声をかける。
「大丈夫!?」
「えっと、あー……一応」
「よかった、士、こっちは大丈夫だ!」
完全に余計なお世話だったのだが、完全に善意の行為のようだし責めるのはあんまりだろう。
そのままユウスケが声をかけた方向に目を向けると、玩具のようにも見えるベルトを持った男が疲れたような顔で歩いてきていた。
「どうしてこの世界に怪人がいるんでしょう?」
「シオマネキング……スーパーショッカーの残党ってところか」
そのベルト、ディケイドライバーを見て黒子と美琴が表情を変えるがユウスケは気づかない。
士はディケイドライバーを装着し、一枚のカードを取り出した。
「どうやらこの世界でも、俺のやるべきこととやらは存在するらしい……変身!」
『KAMEN RIDE DECADE!』
カードをバックルに入れながら叫び、それと同時に士の全身を鎧が覆う。
マゼンダに黒と白のラインが入った奇抜なデザイン、緑色の目は昆虫の複眼を模したものか。
更に七枚の黒い板が現れ、仮面へと突き刺さり七本の黒いラインと変化する。
ディケイド、門矢士の変身する仮面ライダーである。
「ユウスケ、その二人を任せた、夏みかん、他に人が来ないよう見張っておけ!」
鍔の部分がノートのような形状の剣、ライドブッカーを取り出しシオマネキングへと斬りかかる。
シオマネキングも左手のハサミと溶解液で対抗するが、どちらが優勢かはすぐにその場の全員が理解できた。
「よし、ここは士に任せて君たちは早く離れて!」
ユウスケが二人の手を掴んでその場を離れようとするが動こうとしない。
「何してるんだ、二人とも早く!」
「黒子、あれって……」
「ええ、間違いないようですわ」
二人の視線はディケイドとなった士に固定されている。
ユウスケは一瞬顔を顰め、もう一度避難を促そうと口を開く。
――直後、ユウスケの体は地面に倒されていた。痛みも衝撃もなく、いつの間に、誰に倒されたのか理解ができない。
「動かないでいたただけます?」
「なに、を――」
状況が分からないままとにかく立ち上がろうとするが、ドカドカドカッ!と電動ミシンのような音と共にその動きが封じられる。
慌てて体の様子を見るが、金属矢が服と地面を縫いつけていて動けそうにない。
「ですから、動くなと申しておりますの」
その言葉で、自分が助けようとした少女が何かをしたのだと理解する。
だがいったい何をしたのかが掴めない、ユウスケも士と同じ仮面ライダーとして戦い続けてきた戦士だ、直接倒されて気づかないわけがない。
黒子達はユウスケの方を振り向こうともしない、黒子の能力、レベル4の空間転移【テレポート】を利用した攻撃についてわざわざ説明する気などなかった。
『FAINAL ATTACK RIDE DEDEDECADE!』
ディケイドが再びバックルにカードを差し込むと同時に電子音が鳴り響く。
直後、ディケイドとシオマネキングの間に10枚のカードのようなエネルギーの壁が現れ空中へと浮かび上がる。
そのカードめがけてディケイドが飛び蹴りを放ち、次々とカードのエネルギーを吸収していきそのままシオマネキングの体へと直撃させた。
シオマネキングの体が吹き飛び、地面に倒れ伏したまましぶとくもがくが、爆発し跡形もなくなってしまう。
戦いが終わり、ディケイドライバーへと手をかけるが地面に縫いつけられているユウスケの姿を見てその手を止める。
「……どういうつもりだ?」
「それはご自身の胸に聞いた方が宜しいのでは?」
士の問いかけに挑発するように黒子は返す。
背後の美琴による「手伝おうかー?」という言葉は「これはジャッジメントの仕事ですの」と一蹴している。
「ジャッジメント? その年で裁判官か?」
「あらあら、ジャッジメントがわからないとは、外からの侵入者にしてももう少し勉強してきたらどうですの? 世界の破壊者さん」
「……またそれか」
◇
「指名手配犯……?」
ツンツン頭の青年、上条当麻は配られたプリントを見て眉を顰めた。
ペラペラなA4サイズの用紙には思わずコメントを避けたくなるセンスの仮面が印刷され、その上には「この顔にピンと来たら警備員【アンチスキル】へ!」などとデカイフォントで書かれている。
更に玩具のようなデザインのベルトやら、大雑把な身体的特徴が小さく書かれているがむしろこちらを大きくすべきなのでは、と上条は思う。
(何やった奴か知らねーけど、こんな目立つ仮面すぐ外してるだろうに)
こんなインパクトのある仮面の写真を出されては、対して興味のない人間はそれ以外の情報などすぐに忘れてしまう、上条自身もその例に漏れずさっさとプリントをしまおうと動く。
「今渡したプリント、よく見てくださーい」
「へ?」
その動きを抑制する声に教壇の方へと目を向ければ、見た目12歳な酒好きヘビースモーカー女教師、月詠子萌がプリントをひらひらと振り回して声をあげている。
仮面以外に何か注目すべきところがあったのか、と上条は渋々しまいかけのプリントを机の上に戻して視線を落とした。
「えっとですねー、実は先生も詳しいことは聞いてないのですけど、アンチスキルの人が言うにはレベル5にも相当する強い力を持っているので、間違っても自分で取り押さえてやろう、等と考えないようにとのことですー」
子萌の言葉に教室がざわつく。
レベル5とと言えば一人で軍隊とも戦える、とまで評される学園都市に七人しかいない能力者だ。
上条もその内二人と出会ったことがあるがどちらも反則のような力を自在に操っていた、レベル0の上条からしてみれば別の世界の住人だ。
と、そこで先程の言い回しに違和感を覚える。
(レベル5『相当』……?)
能力者が相手だとしたらこのような言い回しはしないだろう。
だとすると考えられるのは学園都市の武器で武装した無能力集団【スキルアウト】か大人か……それも不自然に思える、銃器などを指して能力者のレベルで例えることなどないからだ。
(だとすると……魔術師か!?)
上条の背筋を冷たいものが走る。
星覇祭の最中に学園都市を支配下に置こうとした魔術師と激戦を繰り広げたことはまだ記憶に新しい。
無意識に拳を握るが、直後自分の机に丸めたメモ用紙が投げ込まれることで我に返る。
誰だ? と思いながら紙を開くと「後で話がある」という短い文だけが書かれていた。
周囲を見渡すと、金髪サングラスと目立つ格好で話を聞くふりをしている土御門元春がサングラスの下からじっとこちらに視線を送っているの気づき、頷いて答える。
(土御門が関係してるってことはやっぱ魔術師か! くそ、狙いはなんだ……インデックスは大丈夫だろうな!?)
「結論から言うと、相手は魔術師じゃないぜよ」
「…………は?」
放課後、上条は土御門に先導される形でいつもの寮への帰宅ルートからは外れた道を歩いていた。
裏路地のようなすぐに思いつく「人のいない場所」ではない、それなりに店などもあるのだが人通りのない、人気の無いスポットというやつだ。
そこでの土御門の第一声に、上条は思わず間抜けな声をあげてしまう。
「じゃ、じゃあ能力者なのか……」
「いーや、それも違う。どうやらこいつは魔術サイドでも科学サイドでもない、完全な第三勢力らしい」
「第三勢力……?」
その言葉で上条が思い出したのは、以前学園都市の人間になりすまし美琴に近づこうとしていた魔術師から聞いた話だ。
彼は上条を中心とした科学サイドと魔術サイド両方の人間による強固な人間関係を新たな「上条勢力」と呼び、二つの勢力のバランスを崩すのではないかと危惧していた。
この手配犯はそういった今保たれているバランスを崩そうと動いているのだろうか。
「詳しい目的や正体は掴めてない、ただこいつが魔術師に攻撃を加え、今学園都市にも刃を向けていることは事実だ」
「……? でも待ってくれよ、魔術師でも能力者でもない奴がそんなことできるのか?」
「現に行われてるんだからそこはできるもんだと思ってもらうしかないにゃー、問題なのは、こいつが魔術師と敵対しながら学園都市にいるってところだ。こいつは自分たちの敵なんだからこっちも黙っていられない、
なんて理由をつけて好き勝手学園都市をうろつかれちゃたまったもんじゃないぜい」
確かに敵を探す、という名目で学園都市の機密を探り出そうとする者は出てくるだろう、監視の目はあちこちにあるものの、今まで幾度となく学園都市内部に侵入してきた魔術師達を知っている上条としてはほとんど気休め程度なものである。
「一応今は実際に襲撃を受けた必要悪の教会【ネセサリウス】が人材を派遣するってことで抑えがついてるが……時間の問題だ」
「早いとここっちで捕まえないとまずいってことか」
「ま、それは実際アンチスキルやジャッジメントの仕事なんだけどな、カミやんは禁書目録を守ってほしい」
突然出てきた名前に上条の表情が険しくなる。
「インデックスが狙われてるのか!?」
「わからない、だが相手は『世界の破壊者』を名乗っている……禁書目録の十万三千冊の魔道書を利用する可能性もあるってところだ」
「世界の破壊……!?」
「ああ、こいつの名前は世界の破壊者ディケイド、最も自分で名乗ってるだけで本名かどうかはわからないがな」
◇
黒子は士から一定の距離を保ちながら、そっとふとももに巻かれているベルトにセットしている金属矢に触れる。
彼女のテレポートは強力な力だが、その制約も多い。
3次元から11次元への特殊な移動は複雑な式で計算しなくてはならず他の能力より脳への負荷が大きい、そのため痛みや動揺などで集中が切れてしまえば使用不能となる。
更に現状で最も厄介なのは対象物に触れなくてはならないということだ、極端な話テレポートで士を飛ばせれば床や壁に埋め込んでしまうことも可能だが、それにはまず直接触らなくてはならない。
だが先程の戦いを見る限りそれは容易なことではないだろう、一撃でもくらえば致命傷になりかねない。
「おい、誰に吹き込まれたかは知らないが、俺はもう破壊者なんかじゃ」
「犯罪者の言う事を聞く趣味はありませんの、大人しく捕まってくれるのでしたら弁護士がいくらでも聞いてくれますわよ」
「このガキ……ちょっと躾が必要なようだな?」
流石に少女に斬りかかるのは気が引けたか、ライドブッカーをしまい黒子へと駆け出す。
士の間合いに入る直前にテレポートを発動、士の真後ろに現れる。
「なっ……!?」
「相手を見た目で判断する、そういうのは死亡フラグですわよ?」
言いながら士へ手を伸ばそうとし、再びテレポートで間合いを離す。
直後黒子がいた空間を士の拳が通りぬけ、やはり直接触れるのは難しいと判断する。
「なんだ、クロックアップ、じゃないな……」
「降参する気になりました?」
「この、人が手加減してれば調子に乗りやがって……ぐあっ!」
ライドブッカーに手を伸ばした右手に金属矢が突き刺さる。
転移先の物体を押しのけて移動させるテレポートには、ライダーの装甲さえも意味をなさない。
士は右手を抑えながらその場に蹲ってしまう。
「まったく、気は済みましたの?」
「……いいや、これからだ」
「っ!?」
蹲り黒子の視界から隠していた左手に二枚のカードが握られていた。
黒子が再び金属矢に触れるよりも早く、一枚のカードをバックルに入れる。
『KAMEN RIDE KABUTO!』
電子音と共に士の纏っていた装甲が姿を変化させる。
青い複眼、緋色の装甲、そしてカブト虫を模した赤い角が目をひきつける。
カブト、天の道を往き、総てを司る男が変身する仮面ライダーだ。
「姿が変わった……?」
「黒子!」
何か攻撃が来ると思っていた黒子は予想外の出来事に思考を巡らせるが、美琴の声に我に返る。
起死回生の一手を打とうとしている相手に受身になるなど悪手以外のなにものでもない、だが黒子が行動に移る前にすでに士は二枚目のカードをバックルに差し込んでいた。
『ATTACK RIDE CLOCKUP!』
瞬間、世界が止まる。
慌てて金属矢に触れた黒子も、そのフォローをしようと駆け出した美琴も、拘束を外そうともがき続けていたユウスケも、全員が不自然な体勢のまま動きが止まっていた。
全てが静止した世界でただ一人、士だけが平然と動き右手に刺さっていた金属矢を引き抜き放り捨てる。
金属矢は地面へ落ちるが、その穂先から流れ落ちた血は空中で不自然に留まったままだ。
クロックアップ……カブトの持つ周囲の時間の流れを何倍も遅くする力である。
「まったく、厄介な世界に来たな……」
愚痴りながら黒子の背後へと周り、その首に軽く手刀を降ろす。
『Clock over』
再び電子音が鳴り、それと同時に時間の流れが元に戻り黒子は気を失いその場に倒れ伏す。
「なっ!?」
倒れた黒子と士を交互に見ながら美琴は驚愕に満ちた声を上げる。
彼女からしてみれば一瞬で士が黒子の背後に移動したようにしか見えないのだ、士もテレポートの能力を持っているという可能性が頭をかすめるがそれなら今まで使わなかった理由がわからない。
警戒を強める美琴に対して、士は疲れた視線を向けた。
「やめとけ、子供を虐める趣味はない」
その言葉に美琴の目つきが鋭くなる。
七人しかいないレベル5の第三位、そのプライドを逆撫でするには十分すぎる言葉だった。
「世界の破壊者だなんて名乗って、人の後輩傷つけて、それでそんなセリフよく言えたわね」
「お、おい待て! 世界の破壊者を名乗った覚えはないし、先に手を出したのはそっちだろう!」
「今更トボけたこと言ってんじゃないわよ!」
前髪から火花を散らし、叫びながら士へと雷撃を放つ。
側の黒子を巻き込むことを恐れたか狙いは甘い、なんとか回避に成功するが士は仮面の下で表情を歪める。
「今度は雷……なんなんだこの世界は」
ぼやきつつも新たなカードを取り出す。
クロックアップは時間を止めるわけではない、元々の速度が光速に近い雷が相手では回避しきれる保証はない。
雷に対抗するには――
「こっちも雷だ!」
『KAMEN RIDE STRONGER!』
士の姿が再び変化する。
カブト虫を模した角に赤い装甲、それは先程のカブトと似ているともいえる。
そんな中、風になびく白いスカーフと装甲の胸に刻まれたSの文字、更に先程はスマートな印象だったフォルムからは力強さを感じるようにはっきりと変化していた。
ストロンガー、電気の力を扱い友人の仇を討とうと戦う熱き男が変身する仮面ライダーだ。
「また変わった!?」
「少し大人しくしてもらうぞ!」
『ATTACK RIDE ELECTROFIRE!』
電子音と共に地面へと拳を叩きつける。
拳を通じて放出された電流が地面を伝い、美琴へと襲いかかった。
(電気!? こいつの能力は――!)
しかしレベル5のエレクトロマスターは伊達ではない、自分の電撃をぶつけて無理矢理に軌道を曲げる。
「そうか、あんたの能力は模倣【コピー】……!」
「はぁ?」
黒子との戦いでは空間転移、自分との戦いでは電気を操る士の力を美琴の常識で当てはめて思い浮かぶのはそれだけだ。
自分だけの現実【パーソナルリアリティ】による能力は通常一人一つしか持つことはできない、仮に美琴が黒子に空間転移の理屈を説明されたところで空間転移の能力が発現したりすることはない。
だがもしもパーソナルリアリティを読み取り理解する力があったらどうか? 相手の力を理解し真似ることができるのではないだろうか。
「上等、どこまで真似できるか見てやろうじゃない!」
瞬間、美琴の前髪から雷撃の槍が生み出される。
それは自然界で生み出される雷とほぼ同等の紫電で作られた、青白い光の槍。
その迫力に士もたじろぎ、焦りをのぞかせながら更なるカードを引き抜く。
「『あいつ』に撃った時よりは手加減するわ、私の力をコピーしてるってんなら、死にはしないはずよ」
『FORM』
「いけぇ!」
『RIDE――
光の槍が放たれる。空気中の酸素を分解しオゾンへと組み換えながら突き進み、一瞬にして士の目の前へとたどり着き轟音を撒き散らし直撃する。
「……ちょ、ちょっと?」
それは美琴にとって完全に予想外の出来事であった。
彼女の考えていたようにレベル5のエレクトロマスターをコピーしているならば、いや、そうでなくとも先程のように電気を操る力を持っているなら直撃を避けることができたはずだ。
そう、今の一撃はかわされるのを前提で打ち込んだのだ、それだけの威力を持っている……直撃すれば、命の危険があるレベルの攻撃。
美琴の手の平にじっとりと嫌な汗が浮かんでくる、殺してしまったのだろうか? そう考えると自然と体が震えだす。
御坂美琴は人の死を平然と受け入れられる人間ではない、自分のせいで誰かが死ぬのであれば、自分の命を投げ出してでもその相手を守ろうとする人格者だ。
たとえ犯罪者であろうとも殺してしまって「やりすぎちゃった」で済ませられはしない。
「う、そ……」
「そう思うなら、初めっから撃つな」
「――っ!?」
――CHARGEUP!』
雷撃の影響で舞っていた土煙が収まり、その中から平然と士が現れる。
その姿に先程と変化はない、胸の装甲に銀色のラインが入り、額の角も同じ色に染まっているが――ダメージはない。
「なんで……?」
無事だったことに安堵し、それ以上に恐怖を抱く。
先程の攻撃が直撃した、それは間違いない。だというのにダメージがないということは例え自分の力を利用したところでありえないはずだ。
「確かに凄い雷だったが、超電子の力には適わなかったようだな」
「超、電子……」
通常の電気技が通じない敵と戦うため編み出されたストロンガーの力、超電子。
その力はそれまでのストロンガーを遥かに上回り、幾度とないピンチを救ってきた。
未知の力に美琴は数歩後ろへ下がる、エレクトロマスターの彼女でも超電子などという物は聞いたことがない。
士の能力はコピーなどではないのだ、レベル5の自分をも上回る電撃使い……そう考えた瞬間、美琴はポケットから一枚のメダルを取り出し士へと向ける。
「おい、いい加減にしろよ」
「っ……!」
超電磁砲。
彼女の二つ名ともなっているこの技は美琴の切り札と言ってもいい。
直接の雷撃が効かなくとも、超高速の弾丸を受ければ無事では済まないだろう。
……だが、その絶対的な威力こそが美琴を縛る。
直撃させては今度こそ殺してしまうかもしれない、美琴はこの超電磁砲をある一人を除いて人に向けて放ったことがないのだ。
このままでは負ける、だからといって切り札を切ってしまえば殺してしまうかもしれない、美琴の思考が限界に近づき、士も美琴が暴走しかねない状況であることに気づき迂闊な動きを取れない。
と、硬直状態に入りかけた二人の間を青い影が走り、次の瞬間には美琴の手にあったメダルが消えていた。
「え?」
「この場面で出すからには何かお宝かと思ったけど……どうやら大したものじゃなさそうだね」
「海東! お前今までどこに行ってたんだ!」
メダルをしげしげと眺める青い仮面の男、海東へ士が問い詰める。
ディエンド、士と同じように世界を渡る仮面ライダーだ、その姿は基点の色が青であることを除くとディケイドによく似ている。
「なにをする気かはわからないけど、何か切り札を使うつもりだったんだろう? 感謝したまえよ士」
「お前は……いつになっても相変わらずだな」
「仲間? そんな……」
親しいのか険悪なのかわからない会話をする二人を見て、美琴は表情を曇らせる。
士一人に苦労しているというのにもう一人など相手にできない、それに黒子が最初に拘束した青年まで加わってしまえば勝ちの目はほとんど消えるだろう。
思わず後ずさろうとするが、背中に人気配が現れ動きが止まる。
(うそっ、いつの間に後ろに――)
「黒子!?」
「お姉さま、一端退却しますわ!」
いつの間にか意識を取り戻していた黒子が美琴を連れてテレポートでその場から消え去る。
士と海東は辺りを見渡すがどこにも二人の姿は見つからない。
「残念、逃げられてしまったようだね」
「たくっ、いったい何だったんだ」
ディケイドライバーを外し、元の姿へと戻る。隣で海東も変身を解いて青年の姿になっていた。
「そうそう士、こんなものを見つけてきたんだ」
「何だ? ……指名手配、か、どっかの世界で似たようなことがあった気がするな」
「まったくだね、でもここはライダーとは関係ない世界だ……どういうことかわかるかい」
「ああ、嫌ってほどにな」
疲れ果てた表情で天を仰ぐ。
地下街を覆う天井を見ながら、士はその名を呟いた。
「鳴滝……」
第一話 END
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最終更新:2010年01月13日 17:34