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第二話「お宝、禁書目録」

仮面ライダーディケイド

     VS

とある魔術の禁書目録


第二話「お宝、禁書目録」

◇


海東は一人第七学区を歩いていた。
二人の少女との戦いの後、この世界で自分たちがおかれている状況を詳しくしるために動こうとしたのだが、士は指名手配されてる上右手に深い傷を負っている。
そこで士と夏海を光写真館に残し、ユウスケと海東の二人が別々に情報収集している最中だ。
最も、海東の意識はすでに学園都市の「お宝」に向いているのだが。

「この世界はすごいね、技術レベルが他の世界の数十年は先に行ってる……どれも他の世界から見ればお宝として申し分ない」

そう言いながらも、海東は幾度とすれ違っているドラム缶のような清掃ロボット等には手を出そうとしない。
彼が狙うのはその世界におけるお宝、こんないくつも走っているような量産品など問題外だ。
しかし、自分の知っている技術レベルを上回っている世界で果たしてそのお宝を見つけることができるのだろうか。
彼にしては珍しく弱り顔で考え込んでいると、近くから何やら言い争う声が聞こえそちらに意識を向けてみる。

「とーまはどうしてそう一人で危ないことに首を突っ込もうとするの!?」
「あのなぁ、これは学園都市に起きてる事件なんだ、魔術師が関係ないならお前が出てくる必要性はないだろ」
「だからってとうまが行く必要もないんだよ! それに魔術師が相手じゃなくたって、私の十万三千冊の魔道書が役に立つかもしれないもん!」

次の瞬間、海東は迷うことなく声のする方へと足を進めていた。


◇


上条と土御門の二人は簡単な状況を確認した後、男子寮の前で話している二人の少女を視認する。
白の修道服に金の刺繍を施した銀髪の少女の名はインデックス、完全記憶能力を持ち、その頭脳に十万三千冊もの魔道書を記憶しているシスターだ、元は魔術サイドの人間ながら複雑な事情から上条と共に暮らしている。
そのインデックスと話しているのはメイド服を着た少女、土御門舞華、土御門元春の義妹でありメイド学校に通い一人前のメイドを目指して日々精進する毎日を過ごしている、何故清掃ロボットの上に正座しているのかは本人にしかわからない。
楽しそうに会話する二人を見て上条の表情が曇る。ディケイドからインデックスを守るには、上条の部屋で隠れているのが一番だ。
だがそうなると舞華との会話を邪魔することになってしまう、正式な手続きの下学園都市に住んでいるわけではないインデックスは上条を介さない友人がほとんどいない、例え緊急事態だろうとその数少ない友人関係はできる限り大切にしたいと思ってしまう。

「ま、その辺はしかたないにゃー、禁書目録や舞華を巻き込むわけにはいかんぜよ」
「……そりゃそうだよな、悪い」

そんな思考を見抜いたのだろう、土御門がワンテンポ歩調を速めて二人の元へ先にと向かう。
一度会話を邪魔された程度で途切れてしまう程度の関係ではない、それをわざわざ守ろうとしてそれ以上の脅威に曝すわけにはいかない。
上条も歩調を速めて土御門と並びインデックス達へと声をかける、こちらに気づき笑顔を浮かべて手を振ってくるのを見ると、世界の破壊などというふざけた目的のためにこの少女を利用するなど許せることではないと怒りの感情が湧いてくる。

(そいじゃかみやん、俺は舞華を寮まで送っていくから、こっちは頼んだぜい)

小声で上条へそう伝えると、どう制御してるのか清掃ロボットの動きを器用に操る義妹を連れて土御門は去っていく。
いつもなら常日頃から学園都市を歩き回って(清掃ロボットを使った移動方法を「歩く」と表現するならばだが)いる舞華に付き添いなど不必要だろう。
しかし今は違う、危険人物がいる中彼女を一人にするという選択肢は土御門に存在しない、彼がこの世のなによりも守りたいもの、それが土御門舞華なのだから。

(そうだ、世界の破壊者だなんてわけのわからない奴に大切なものを壊されてたまるかってんだ)
「とーま? 急に黙ってどうしたの?」

首を傾げながら見上げてくるインデックスを見て、上条は少し考える。
土御門はアンチスキルやジャッジメントの仕事と言っていたが、ディケイドの脅威に対して受身のままでよいのだろうか?
流石にレベル5にも相当する力を持つ相手に上条一人で勝てるとは思わないにしろ、相手がどこにいるかを探す程度はできるはず。
ディケイドがいる限り学園都市の住人も怯え続けることになるのだから、出来る限りのことはして損はないだろう。

「インデックス、先に部屋に戻っててくれないか、俺はちょっと用があるから」

思いっきりジト目で睨まれた。

「……何故そのような目で上条さんを見つめておられるのでしょうか?」
「とーまが何か隠し事をしてるんだよ」
「ははっ、何を言ってるのかなインデックスさんは、そうか、お前また腹が空いてるんだろ? わかったわかった、帰りに何か買ってくるからそれまで――」
「人をいつでも飢えてるみたいに言って欲しくないかも! 後ご飯は今すぐ欲しい!」
「お前それやっぱ飢えてるんじゃ――待て! 上条さんの頭は決して食料では――――!!」


※ただいまお見苦しい映像が流れています。今作で欠片も出番がない姫神さんをご覧になってお待ちください。


「その話ならマイカから聞いたんだよ」

執拗に噛み付いてくるインデックスを何とか引き剥がし、渋々とディケイドに関する話を伝えた。
指名手配されてるだけのこともあり、学園都市全体にその話は伝わっているようだ、インデックスは舞華から受け取ったらしきプリントを見せてくる。

「そっか、それなら話が早いや、上条さんはそいつを探すのに忙しいのでインデックスは部屋にいるように、以上」
「ところどころ話が繋がってないんだよ」

相変わらずジト目のインデックスに対して、上条は面倒くさそうに頭をかきながら口を開く。

「仕方ないだろ、こんな奴いつまでも野放しにするわけにはいかねーよ」
「とーまはどうしてそう一人で危ないことに首を突っ込もうとするの!? せめて私を連れて行ってほしいかも!」
「あのなぁ、これは学園都市に起きてる事件なんだ、魔術師が関係ないならお前が出てくる必要性はないだろ」
「だからってとうまが行く必要もないんだよ! それに魔術師が相手じゃなくたって、私の十万三千冊の魔道書が役に立つかもしれないもん!」

寮の前で言い合いになる、互いに危険な真似をさせたくないという同じ感情からの行動であるがために話は平行線のままだ。
このまま不毛な口論が続くかと思われたが、一人の男が間に割って入り中断される。

「すまない、少し話を聞かせてもらえないかな」
「え、あんたは……?」
「僕は海東大樹、覚えておいてくれたまえ」

些か高圧的な態度に少し眉を顰めるが、大声で言い争っていた自分が言えることではないと気づき肩を落とす。
続けて先ほどの話を聞かれていたのではないかと焦る、インデックスは本来魔術側の人間でありながら科学サイドの学園都市に住んでいるという特別な存在だ、学園都市のIDなど持ってはいないし、そのあたりのことを問われると様々な方向から面倒なことになってしまう。

「えーと、な、なにか……?」
「うん、そっちの子に聞きたいことがあってね」
「私?」

インデックスを指して言う海東に上条は焦りを強くする。
当のインデックス自身は何も理解していないようで首を傾げて一歩近づき、

「……いい反応だね」
「インデックスに何の用だ、てめぇ」


怒気の籠った視線で睨みつけると、インデックスに伸ばし上条に掴まれた手を戻しながら海東は小さく笑みを浮かべる。

「そんなに睨まないでくれたまえ、危害を加える気はない」
「何の用だ、って聞いてるんだ」
「僕の望みはただ一つ、その子の持っているお宝を頂戴したいだけさ」
「――っ!」

その言葉を聞き、上条はインデックスを庇うように前に立つ。
海東はその笑みを崩さぬままディエンドライバーを取り出し上条へと向けた。
突きつけられた銃口にも、上条は怯まず睨みつける。

「邪魔をしないでほしいな、誰かを怪我させると士がうるさそうだ」
「ふざけんな!」
「交渉決裂か……なら、力づくで頂こう、変身!」

『KAMEN RIDE DIEND!』

「とうま!」
「インデックス、下がってろ!」

ディエンドへと変身した海東を見て上条は拳を握る。
相手がどういった力を持つのかわからないが、上条に勝算は充分にあった。
今の「変身」は間違いなく異能の力、ならば彼の右手に宿る、全ての異能の力を打ち消す幻想殺し【イマジンブレイカー】であの鎧を破壊することができるはずだ。
海東が次の行動に移る前に踏み込み、その右手を構え――軽く左手で払われる。

「がっ!?」
「君はさっきの女の子達みたいに変な力を使わないんだね、それじゃあ僕には勝てないよ」
(こいつ、速い……!)

視界が揺れる、軽く叩かれただけだというのに体の芯までダメージが届いていた。
イマジンブレイカーは右手で触れなければ効果はない、純粋な身体能力で負けていてはいいように打たれるだけだ。
それでも上条は立ち上がる、圧倒的な力の差、上条当麻にとって「そんなもの」は退く理由にならない。


◇


土御門元春は一人の青年と対峙していた。
すでに舞華は先に帰らせてある、多少不信感を持たれたかもしれないがそれでもこれから行われることに巻き込むわけにはいかない。
サングラスの下の視線を鋭くさせ、土御門は対峙している青年、ユウスケへと口を開く。

「それで、この手配犯について聞きたいんだったか」
「ああ、何でもいいから知ってることを聞かせてくれないか?」

ユウスケが自分のバイク、トライチェイサーから降りてくるのを見て、土御門は人懐っこい笑みを浮かべる。

「いいぜよ、俺の知ってることなら何でも教えるにゃー……でもその前に一つ聞かせてくれないか」
「え、何だ?」
「お前、どうやってこの街に入った?」
「どうって……ふ、普通にバイクで――!?」

他人に言っても到底信じてもらえない方法で来たユウスケは咄嗟に嘘をつくが、その瞬間土御門は深く踏み込んでくる。
突然の行動に思わず身を引こうとするが、それよりも早く土御門は更にもう一歩、足を強く前に出す。

「が……あ!?」

土御門の着地点は地面ではなく、足。
ユウスケの神経が集中している足の親指を踏み潰すという、格闘技では反則技とされている行為によって激痛が走る。
思わず後ろへ下がろうとするがその足は縫い止められている、動きが止まり、思わず視線を落とした直後死角から土御門の追撃が決まる。
揺れる視界の中、自分のこめかみへと拳が放たれるのをかろうじて確認する、咄嗟にガードするが衝撃は来ない、この距離で外したのかと不思議に思った瞬間、

「―――っ」

ユウスケがその場に崩れ落ちる。
ブレインシェイカー、後頭部に強い衝撃を与えバランス感覚を完全に「壊す」技。
先ほどの踏み潰しと同じように各種格闘技で反則技とされている行為である、後頭部への攻撃はどれだけ体を鍛えようと防げず、脳障害を引き起こしやすい。
土御門の戦い方はまともな勝負では絶対に許されない反則攻撃のオンパレードだ、だが彼はその事に抵抗感は感じない、大切なものを守れるのならば「汚い」だの「卑怯」なんていう罵りはいくらでも受けてやる。

「さて、もう一度質問だ……お前、どうやってこの街に入った?」

サングラス越しでもその視線の冷たさを感じる。
すぐに体勢を整えなければと考えるが、先ほどの攻撃の影響で体はいうことを聞いてくれない。

(くそ……もう俺が士の仲間だって広まってるのか!?)

この世界で最初に出会った二人の少女は自分に対しては無警戒だった、だからまだ大丈夫だろうと考えていたが甘かったようだ。

「答えろ、喋る程度の事はできるはずだ」

土御門の声に思わず背筋が凍りそうになる。
相手を殺すことに恐怖を抱いていた少女とは違い、この殺気は本物だ、この青年は必要ならば迷わず自分を殺す。

「ま、待ってくれ……俺達は、士は世界の破壊者なんかじゃ……」
「聞いたことだけ喋れ」

頭のすぐ横を強く踏み砕く。
思わず言葉を失うユウスケを、土御門は一切の感情を排除した魔術師としての表情で見降ろしていた。


◇


「いい加減諦めてほしいな」
「と、とうま……」

声に疲労の色を混ぜながら海東が呟く。
あれから一方的な蹂躙が続いていた。
インデックスに海東が近づこうとすると上条が立ち塞がり一撃で倒される、この繰り返し。
海東が上条を殺してでもお宝を手に入れようという考えを持っていたらとっくに決着はついていただろう、それほどまでにディエンドの力は上条を上回っていた。

だというのに、

「うる、せぇ……!」

上条は立ち塞がるのを止めない。
必死に振り回す右手がかすりもしなくとも、一度倒されるたびに致命傷には遠くとも無視していいレベルではない傷が増えても、
その身を盾として、海東とインデックスを引き離そうと立ち上がる。

「……やれやれだ」

深く溜息を吐き、ディエンドライバーを振り上げる。
素手で殴られただけで吹き飛ばされていたのだ、これをまともに食らえば無事では済まない。

「とうま!」

インデックスが叫ぶが、上条は一歩も引かずに海東を睨みつける。
海東はその目を見て一瞬動きを止め、そのまま腕を、

「炎よ(Kenaz)―――」

突如聞こえた男の声に動きが止まる。
その声の聞こえた方向に視線を向け――

「――――巨人に苦痛の贈り物を(purlsazNaupizGebo)!」

轟という爆発が生んだ摂氏3000度の炎の剣が海東を吹き飛ばした。

「ぐ……! 何だ!?」
「これは……」
「何をやってる上条当麻、そんなことでその子を守れるのか?」
「ステイル!?」

ステイルと呼ばれた男が懐からパラパラとカードのような物をばらまきながら歩いてくる。
その赤い髪が目を引き、続いて右目の下のバーコード状のタトゥーが見るものの気を引いている。
タバコを上下に燻らせながら吸っていたりと、とてもそうは見えないだろうがネセサリウスの神父である。

「なるほど、仲間が来るのを待っていたってわけだね」

上条にそんな考えはなかったのだが、それに気付くわけもなく海東は一人納得しディエンドライバーをステイルへと構えた。

「なら、君を倒せば大人しくお宝をくれるかな?」
「お宝?」
「……こいつ、魔道書を狙ってるんだ」
「へぇ……」

その言葉を聞いてステイルの目が鋭くなる。
ステイル=マグヌスが戦う理由は一つだ、ある少女を守るため。
その少女を傷つける者がいるなら、例えそれがどんな相手であろうとも焼き殺す。

「なら……遠慮は、しない!」

彼が魔術を使うのに欠かせないルーンの印が刻まれたカードを一帯にばらまき、二本の炎剣を手に海東へと駆け出す。
正面から突撃してくるステイルに対し、海東は冷静に照準を合わせて銃弾を放つ、その狙いは違わずステイルの肩口へと向かい――すり抜けた。

「なに!?」
「灰は灰に(AshToAsh)
 塵は塵に(DustToDust)
 吸血殺しの紅十字(SqueamishBloody Rood)!」

驚愕する海東へと両手に持った炎剣を叩きつけ爆発させる。
ステイルは炎の属性に特化した魔術師だ、故に熱や温度の変化による現象に関してはお手の物。
彼の『蜃気楼』によって視覚を狂わされた海東はまともにステイルの姿を捕えることができず、防戦に回る。

「ふん、この程度か」
「勘違いしないでくれたまえ、僕はまだ全然本気を出していないよ?」

いつの間にか海東の左手に一枚のカードが存在していた。
ステイルが表情を険しくして炎剣を振るうが、それを軽く回避しながらディエンドライバーへセットする。

「実態が見えないなら、こういうのはどうかな」

『ATTACK RIDE BLAST!』

電子音と共に放たれた銃弾は不自然な軌道を描きながら周囲一面へと降り注ぐ。
これでは視覚を誤魔化したところで関係はない、舌打ちをしながらステイルが下がり、その隙に更にカードを取り出す。

「頼んだよ、兵隊さん」

『KAMEN RIDE RIOTROOPER!』

ディエンドライバーから三人の新たな仮面ライダーが出現する。
全員が同じ姿のこのライダーの名前はライオトルーパー、簡易型の量産仮面ライダーだ。

「召喚魔術か!」
「違う、この人の使う力はどれも魔術じゃない!」
「けど、科学の力でこんなこと……!?」

ディエンドの力の正体が掴めず困惑する三人へと、ライオトルーパーと海東が襲いかかる。


◇


「俺が、俺達がこの街に来た方法は」

土御門に見降ろされたままユウスケは口を開く。

「……来た方法は?」

話すのを躊躇うユウスケを急かすように足を踏み鳴らす。
下手に時間を稼ごうとすれば手足を折るぐらいはやりかねない、ユウスケは慌てて言葉を続ける。

だが、それは土御門に屈したわけではない。

「俺達は、士は破壊者なんかじゃない!」
「っ!?」

叫ぶと同時に足首を掴み引き倒そうとする。
ブレインシェイカーの影響で動けるはずがないと考えていた土御門は対応しきれず、倒れこそしないものの大きく体勢を崩してしまう。
その隙にユウスケは距離をとり、自らの力を引き出す"スイッチ"となる動作を始める。

自身の腰元に現れたベルトに左の拳を添え、右手を前方に突き出し水平に動かしてからベルトの左拳へと右拳を移し、叫ぶ。

「変身!」

次の瞬間、ユウスケの体をクウガの力が包み込む。
黒いスーツに赤い装甲、赤い瞳、金色の角と装飾で彩られた、人類の敵グロンギと戦うためのリントの戦士、仮面ライダークウガ。
土御門の予測より遥かに早くブレインシェイカーのダメージから回復したのも、クウガのベルトに埋め込まれた霊石アマダムの力だ。

「頼む、話を聞いてくれ!」
「……」

ユウスケの言葉には答えず、土御門は静かに拳を構える。
話し合うことはできそうにない様子に悔しげに拳を握り、自身も構えを取る。

「どうしても戦うっていうなら、相手になってやる!」

姿を変えたユウスケを警戒するように慎重に間合いを取る土御門へ、一気に駆け出し間合いを詰める。
先程は為す術なくやられてしまったが、この相手は電撃などの能力ではなく打撃がメインらしい、それならばクウガの力で防ぎきれるはずだ。
クウガの速度にわずかに焦りの感情を滲ませながら土御門も前に出て、繰り出された拳に肘を合わせる。
拳破壊を狙ったその行動は完全に裏目に出た、クウガの力によって強化されたユウスケの拳は逆に土御門の肘を打ち砕く。

「がっ……!」
「あ!?」

呻きながら飛び退く土御門にユウスケは慌てて攻撃を中断する。
生身の人間を攻撃するにはクウガの力は強すぎる、怪人でもない人に余計な怪我を負わせたくないが、今のように攻撃的な受け方をされてはこちらが意図しないダメージまで与えてしまう。
せめて今の一撃で戦意を失ってくれればよかったのだが、砕かれた肘を抑えながらも土御門は逃走する気配を見せない。

「もう止めるんだ! どうしてそこまでして戦う!」
「……」

無言のまま土御門は黒い折り紙を取り出す。
瞬間、周囲一帯の空気が冷たく変わりユウスケの本能が危険を告げる。

「黒キ色ハ水ノ象徴(さあおきろクソッたれども)――」
「くっ!?」

土御門の口から紡がれる言葉の意味は理解できない、だがそれが放って置いてよいものではないことだけははっきりと伝わってくる。

「超変身!」

開いた間合いを駆けながら叫び、クウガの更なる力を引き出すスイッチを入れる。
一瞬にしてクウガの装甲と瞳が青く変わり、その手に同じ色の棒状の武器、ドラゴンロッドが生み出される。
青のクウガ・ドラゴンフォーム。
先程までの赤のクウガ・マイティフォームと比べると力で劣るが、その分機動性に優れる形態だ。
その速度を持って一気に間合いを詰め、折り紙を持った腕へとドラゴンロッドを振り――

ごぽり、と。

土御門の口から赤い液体が溢れる。

「え――?」
「其ノ暴力ヲ以テ道ヲ開ケ(ぜんぶこわしてゲラゲラわらうぞ)!!」

次の瞬間、何もない空間から直径一メートルほどの水の球体が生まれ、勢い良くユウスケの体に突き刺さった。


◇


「このおおおおおお!」

上条の放った右拳がライオトルーパーの顔面に突き刺さり、同時にその存在がイマジンブレイカーの力によってかき消される。
その横でステイルが残る二人のライオトルーパーを炎剣で焼殺し、そこで体力が尽きたか二人ともその場に膝をついてしまう。

「思ったよりも頑張ったけど……チェックメイト、かな?」

海東が僅かばかり感心したような声をあげながらディエンドライバーを構えるが、上条とステイルは睨み返すことしかできない。
そのまま引き金にかけられた指に力が込められ――動きが止まる。

「これ以上、二人を傷つけないで!」
「イン、デックス……!?」
「……!」

上条達の前に立ち、睨みつけてくるインデックスに海東は「ふむ」と肩を竦めて構えを解く。

「何度か言ったけど、僕はお宝さえ貰えればそれでいいんだけどな」
「……魔道書は危険な物なんだよ、並の人じゃ読んだだけで心が壊れてしまう」
「それは凄いね、ますます手に入れたくなったよ」

警告にも耳を貸す様子のない海東にインデックスは目を伏せる。
二人を守るには自分が行くしかないだろう、魔道書を悪用させるわけにはいかないが、このままでは上条達が死んでしまう。
相手に殺す気はなさそうだが、それでも大切な者を守るためには絶対に退かないのが上条当麻という男だ。

「……わかった、あなたについてくよ、だからとうま達に手を出さないで」
「うん、賢明な判断だ」

満足そうに頷かれ、それでも少し躊躇しながら足を進める。
最後に一度、上条の方を振り返り、

「え?」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

先程まで動くことすらままならかったはずの男が、叫びながら駆け出していた。
これが上条当麻という男、他人のためなら、例え神が相手だろうと限界を超えて立ち向かう。
一瞬でインデックス側を駆け抜け、そのまま海東へと右手を振りかぶり、



「諦めたまえ」



たった一発の銃弾で打ち倒される。

「とうま!」
「死んではいないさ、さあ、お宝を――」
「まだ……だ……!」
「――なに?」

倒れ伏したままで、それでも拳を握り上条は声を上げる。
その言い得ぬ気迫に海東は僅かにたじろぎ、上条の更に背後から感じる殺気に視線を移す。

「そうだろ……」

「世界を構築する五大元素の一つ、偉大なる始まりの炎よ(MTWOTFFTOIIGOIIOF)
 それは生命を育む恵みの光にして、邪悪を罰する裁きの光なり(IIBOLAIIAOE)
 それは穏やかな幸福を満たすと同時、冷たき闇を滅する凍える不幸なり(IIMHAIIBOD) 」

「なあ、ステイル!」

「その名は炎、その役は剣(IINFIIMS)
 顕現せよ、我が身を喰らいて力と為せ(ICRMMBGP)!」

詠唱と共にステイルの修道服の胸元が大きく膨らむ。
轟! という炎が酸素を吸い込む音と同時に、服の内側から巨大な炎の塊が飛び出した。
それはただの炎などではない。
真紅に燃え盛る炎の中で、重油のような黒くドロドロとしたものが芯をなして人の形を成している。
これこそがステイル=マグヌスの切り札、『必ず殺す』という名の下生み出された炎の巨神。

「やれ、"魔女狩りの王"【イノケンティウス】」

炎の巨神が海東へとその腕を振り下ろす。
慌てて逃げ出すインデックスが目に入るが、流石にこの状況でそちらにかまけているわけにはいかない。

『ATTACK RIDE BARRIER』

素早く取り出したカードによって目の前に青い盾を生み出しイノケンティウスの攻撃を防ぐ。
すぐさま間合いを取ってディエンドライバーによる銃撃を加えるが、一瞬はじけ飛ぶもののすぐに元に戻ってしまう。

「再生能力か、確かにやっかいだけど……」

あくまでも余裕を崩さぬまま、切り札となるカードを差し込みディエンドライバーを構える。

『FAINAL ATTACK RIDE DIDIDIDIEND!』

ディエンドライバーの先に無数のライダーが描かれたカードによる円が現れる。
その先にイノケンティウスを捕らえ、海東は引き金を引く。

「イノケンティウス!」

ステイルの指示を受け、放たれた光弾を叩き潰すように炎の巨神が迎撃しようとする。

「無駄だよ」

海東の言葉通り僅かな拮抗の後イノケンティウスは弾き飛ばされてしまう、ただの銃撃でもダメージを負う以上、それを遥かに上回る攻撃を防げる道理はない。
それでも弾かれる先から再生してはいるのだが、ディエンドの攻撃を防ぎ切るにはいたらない、エネルギーの本流はステイルへと目がけて突き進んでいく。
イノケンティウスの制御に集中しているステイルにそれをかわす術はなく――

「上条当麻!」
「おお!!」

もはや何度目になるのか、またも立ち上がった上条がその右手で光弾を抑え――消滅させた。

「……まさか、ここまでとはね」

ライオトルーパーを消し去った時から、否、執拗に右手での攻撃を繰り返していた時から上条の右手には何らかの力があると考えてはいたが、まさかこちらの切り札さえも一発で消されるとは思っていなかった。
どうするべきか思考する間もなく、イノケンティウスが再度海東へと迫りその腕を振るおうとする。

「仕方ない、今日はこの辺りで退散しよう」

『ATTACK RIDE INVISIBLE!』

電子音が流れると共に海東の姿が消え去り、イノケンティウスの腕が空を切る。
姿を消して攻撃してくるのかと三人は周囲を警戒するが、いつまで経っても何も起こらないことに、本当に撤退したのだとようやく息を吐いた。

「くそ、何だったんだよ、あいつ……!」
「まったく、この街に来ると碌な事がないね」
「ふ、二人とも早く怪我の手当をしないと!」

慌てるインデックスをよそに、上条とステイルは海東の事を思い浮かべる。
魔術でも科学でもない力、それを自在に操り世界を混乱に招こうとしている者。
奴を放っておくのは危険だ、あれだけの力、世界を破壊するとは些か大げさとも思えるが、それでも力の無い者の平穏を脅かすには充分すぎる。

……だが、二人にとってはそんなことどうでもいい。
彼らにとって重要なのはただ一つ、目の前のこの少女を巻き込んだという、それだけのことが何にも勝る戦う理由となるのだ。


◇


「ぐ、あ……!」

ユウスケは地を這いながら呻き、何とか立ち上がろうとするがすぐさま崩れ落ちてしまう。
次の瞬間青い装甲が白くなり、どこか先程と比べると弱々しい印象へと変化する。
白のクウガ・グローイングフォーム。
言わば不完全なクウガの力、ユウスケのダメージが大きくなりクウガの力を扱いきれなくなった時に変化する緊急時の形態だ。

(しまった……紫のクウガだったら、ここまでのダメージは……!)

何とか体勢だけでも立てなおそうと必死にもがきながら先程のミスを悔やむ。
完全にカウンターとして決まってしまいドラゴンフォームの機動力が仇となった、いっそのこと妨害など考えず防御力に富んだ紫のクウガ・タイタンフォームによる防御を選択すべきだったろう。

(けど、さっきの血は……?)

こちらの攻撃が当たる寸前、土御門の口から血が流れ出ていたことを思い出す。
自分の攻撃は一発肘を砕いたのみだ、吐血するような怪我ではないはず。
傍にあったトライチェイサーに掴まって何とか立ち上がり、土御門へと視線を向けると先程と変わらぬ様子で悠然と立っていた。

「今のは効いたんじゃないか? 大人しくしてくれるとこっちとしても助かるんだがな」

口元に血の跡はない、拭い去ったのだろうか。
しかしこの状況はまずい、相手はまだ戦えるようだが、こちらはダメージが大きすぎる。
白のクウガでも常人よりは強い力を持つが、この相手と戦うには心もとないと言わざるを得ない。

一方で土御門も動きが取れないでいた。
学園都市の能力者は魔術を扱うことができない、それは能力開発のために無理矢理変化させられた脳の回路で魔術を使おうとすると強い過負荷がかかり、肉体へのダメージとなって現れるからだ。
土御門元春は元々魔術師としての実力者であったが、ある事情から学園都市へと潜り込み能力開発のカリキュラムを受けることとなった。
その際今まで使ってきた魔術を使おうとすると体の内側を破壊してしまうことになる、つい先ほどのユウスケへの攻撃のように。
能力開発によって得たレベル0の力、肉体再生【オートリバース】によってある程度はそのダメージに耐えられはするが所詮レベル0、すぐにダメージが回復するなんてことはなく、精々が薄い膜を作って破れた血管を覆う程度のものである。
つまりは両者共、相手を追い詰めておきながら手詰まりの状態なのだ。
どうするかただ相手の出方を待ち……先に変化が起きたのは土御門の方だった。

「……仲間か」

苦々しい口調で吐き捨てる。
その言葉にユウスケが隣を見ると、いつの間に現れたのかディエンドの姿をした海東が立っていた。

「助けに来てくれたのか!?」
「うん? まあ、そういうことになるのかな、僕らは仲間、だからね」

上条達から逃げてる途中で偶然この場面に遭遇しただけなのだが、そこは黙っておく。

「だけどこれ以上騒ぎを大きくすると流石に危険だね、ここは一回退却しよう」
「……わかった」

さり気なく自分の戦闘による影響もユウスケに押し付け、トライチェイサーを動かす準備を取らせる。
そうはさせじと土御門が無理に動こうとするが、足元に銃弾を撃ち込まれ接近ができない。

「それじゃ、さよならだ」

『ATTACK RIDE INVISIBLE!』

海東は再度撤退用のカードを発動させ、ユウスケもトライチェイサーを発進してその場から去る。
土御門はしばらく辺りを警戒し――その場に倒れ伏した。

(あーくそ、流石にシンドイぜよ……
 人払いの魔術の気配があったけど、カミやんの方は大丈夫かにゃー?
 左手は……動きそうにないな、とにかく内蔵に集中するか……)

朦朧とする意識の中、冷静に状況を確認していく。
そして考えるのは先程戦った青年のこと。

(破壊者じゃない、か。
 流石にそのまんま本人の言葉を信じるほど土御門さんはお人好しじゃないけどにゃー。
 でも、少しばかり……調べて、みる価値………は、あり……そう、だ、ぜよ……)

第二話 END

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最終更新:2010年02月11日 18:41
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