第三話 殺人鬼ビリー・キンケイド
「錬子ちゃん……、どこにいるんだろ……」
初春は友人である御坂、佐天、御坂の後輩である風紀委員(ジャッジメント)の白井黒子と共にいきつけのカフェで出されたパフェを食欲がなさそうに食べていた。もう三日も錬子が行方不明なのだ。初春は行方不明になってしまったのは自分の責任であると感じ、自責の念からか夜も眠れていないのだ。
「初春さん、そうやって目の下に隈をつけていてもあの子は見つかりませんのよ?」
白井黒子が落ち着いた様子でコーヒーを啜っている。
「あー確かに初春、目の下の隈が凄いよ……?」
佐天が初春を心配そうに気遣う。
「でもさー、これだけ捜してもいないっていうことは何らかの事件に巻き込まれてるよねどう見ても」
「そ、それじゃやっぱり誘拐……!?わ、私があの時一緒にアイスを買いに行ってあげれば……!」
初春は御坂の言葉にかなり動揺したようだ。
「ちょ、ちょっと御坂さん……!」
佐天は無神経な御坂の言葉に
「ですがお姉さま、身代金目当ての誘拐にしても、置き去り(チャイルドエラー)の子供を誘拐した所で一銭の得にもなりませんわよ?それに学園都市にとって置き去り(チャイルドエラー)一人の命なんてどうでもいいのではなくて?」
確かに以前に御坂は幻想御手(レベルアッパー)事件の際に事件の首謀者である木山春生の過去を垣間見た。あの子供の命さえ軽く捨てれるであろう学園都市が今更置き去り(チャイルドエラー)一人の命など気にかけてくれようはずもない。
その時、黒子の携帯の着信音が鳴った。
「あら、固法先輩からですわね」
電話は同じ第177支部に所属している風紀委員(ジャッジメント)である固法美偉からの連絡であった。
「あ、白井さん!三日前に行方不明になっていたあすなろ園の霧原錬子ちゃんが見つかったそうよ!!」
「え!?本当でございますの!?」
「お、落ち着いて聞いてね……!錬子ちゃんは……、遺体で発見されたそうよ……」
◇
固法からの連絡で四人は無我夢中で錬子の遺体のあった現場に駆けつけた。
霧原錬子は第七地区の鉄橋の下の川原で発見されていた。
現場の周りには大勢のアンチスキルが遺体の処理と、野次馬をどかせるのに一苦労していた。
「あ!黄泉川先生!霧原錬子ちゃんの遺体はどこですか!!」
初春はアンチスキルの一人である黄泉川に鬼気迫る勢いで聞いた。
「あ、お前達は……。み、見ないほうがいいと思うじゃん。さっき鉄装が見たんだが……、川の所で吐きまくってるぞ」
黄泉川はきまずい顔で初春を含む四人に言う。
霧原錬子の遺体は無惨という一言であった。
身に着けている服を全て剥ぎ取られ、手足の指を全て切断され、口の中の歯は残らずペンチで引き抜かれ、全身には鞭で叩かれたような傷があり、しかもあろうことか傷口にはタバコが押し当てられていた。しかも強姦された痕跡も残っていた。死因は窒息死である。首に凄まじい怪力で締め上げられた後が残っていた。
「う……、そ……?れ、錬子ちゃん……?」
初春は苦痛に歪んだ表情の霧原錬子の遺体を見て呆然と立ち竦んでいた。
「……るせない」
「お、お姉さま?」
「絶対許せない!!!」
「きゃ!?」
御坂は怒りのあまり全身から電気をスパークさせた。
「黒子、あんたも手伝うよね……?」
「な、なにをですの?」
「決まってんでしょ……、犯人を見つけんのよ。あたし達だけでね……」
黒子は初めて見る御坂の本気の怒りに恐怖を感じていた。
御坂の目は怒りの雷が炎となって燃え上がっていた。
◇
次の日、四人のいきつけのカフェに来たのは御坂、黒子、佐天だけだった。
初春は学校を休んだようだ。立ち直るまでには時間が必要なようだ。
三人は出された紅茶やパフェを黙々と食している。
「あの……」
静寂を打ち破るかのように佐天が口を開いた。
「あの……、もしかしたら昨日のことについて何か関係があるのかもしれないんだけど……」
「お!教えて!!」
佐天の言葉に御坂が勢いよく飛びつく。
「もぅ……、お姉さまったら……」
佐天は二日前にスポーンに助けられたことを御坂と黒子に話した。
「その赤マントの大男が今回の事件と関係あるわけ?」
御坂は勘ぐるように言う。
「ですが、錬子ちゃんが失踪して殺された時期と、赤マントのコスプレ大男さんが現れた時期は一致していますね」
「ってーことは赤マントが錬子ちゃんを殺した!?」
「あの……、御坂さん、白井さん、あの人は悪い人じゃないと思いますよ……。たしかに見た目は少し怖そうだったけど……
そんな殺人なんかする人じゃ……」
佐天が興奮する御坂をなだめるように言う。
「そんなのわかんないよ!とにかくその赤マントの大男に会ってみればわかることじゃん!!」
◇
「で、俺に聞きたいことはそれか?」
スポーンは佐天が連れてきた御坂と黒子を眺めながら言う。
(うわー……、実際見てみるとどこのヒーローコスプレマニアの親父って感じね。ヒーローごっこでもしてんの?)
(お姉さま、聞こえますわよ)
御坂はスポーンの姿を見るとさすがにその派手な衣装と、大きな体躯には驚かされていた。
「知らん。俺もここに飛ばされてきた身だ。大体そんな仕事は警察の仕事じゃないのか?まさかその年で捜査権でも持っているのか?」
「この学園都市に警察機関に該当する組織は風紀委員(ジャッジメント)とアンチスキルよ。黒子は風紀委員(ジャッジメント)だけどあたしは部外者ってとこね。でも友達を悲しませた奴を許せないのよ。まさかああいう仕打ちが出来る人間がこの世にいるなんてね」
御坂の射抜くような視線にスポーンは少し感心した。自分に臆することなく意見を言ってくる子供は久しぶりだからだ
「そうか……、それだけの覚悟があるなら必ず犯人は挙げられるだろう」
「ねえ、あんたはどっから来たの?自分は知らないって言うからにはちゃんとした証拠はあるの?」
その時黒子の携帯が鳴った。風紀委員(ジャッジメント)の固法からだ。
「はい、どうしましたの固法先輩」
「聞いて!監視カメラの映像に錬子ちゃんを乗せるアイスクリーム屋のトラックが映ってたの!」
固法の言葉に黒子は驚いた。
「ほ!本当ですの!?」
「驚くのはこれだけじゃないわよ。錬子ちゃんを乗せたアイスクリーム屋の男、彼は以前アメリカで二十七人の子供を殺した
児童連続殺人鬼のビリー・キンケイドよ! 彼は警察に捕まって裁判を受け、六年間精神病院に入っていたの。それから出所
して、また一人の児童を殺した後、何者かに殺されているの。彼は死んでいるはずなのにこの男の顔は間違いなくキンケイド
だわ!」
「なんですって!?」
黒子は固法の言葉に耳を疑った。しかしそれ以上に携帯電話から聞こえた固法の言葉に驚愕したのはスポーンだった。
(バカな……、奴はラットシティで完全に死んだはずだ……。まさかまた蘇ったのか……?どちらにしろ今度こそ完全に決着を付けてやる……!)
最終更新:2010年02月24日 01:48