とある一家の秘密 - crowliascreate

カ ッ ！ ！

(エルシャダイのあれ)

｢話をしようかの
唐突であれだが…実は、儂ら黒時の妖狐には儂しか知らぬ秘密がある
怒りや狂気によって暴走した場合…妖力と狐としての力を解放して獣化する力がある
しかし…お主らでいう…ふぇいと？のあたらんてー…とか言う奴と同じ仕様になる
つまりて…狂化と同類じゃ
それほどの危険な力じゃが…実は何度か妖狐達が発動させ、その狂気に飲まれ命を散らした
それを儂は何度も見てきた。
最初は獣化の力を口伝しておったが…途中から儂しか知らぬ秘密として隠してきた
それでもなお、狂気に飲まれ道を外した者は少なくない
その度に儂は…獣化した妖狐達を消してきた
何度も、何度も
…もう、繰り返したくない輪廻じゃが、これも運命か…
しかして、我が封印されたあとは獣化した一族の妖狐は出てきてないという
これで平和になったのか…現世に顕現したあと思った矢先じゃった
あの事件が起きたのは
…あれは、まだ礼司と美柑が小学校に通ってた頃の話じゃ
その日も美柑は両親と一緒に家で宿題をやっておった
父は美柑に勉強を教え、母は台所で料理を作る
そんな微笑ましい夕暮れの家庭の姿がそこにあった
儂と礼司か？儂は丁度近所に買い出しに行き、礼司は学校の生徒会で忙しかったようだ
礼司は昔から秀才での、なんと生徒会の副会長として当選したのじゃ
ふははっ、儂の子孫ながら出来た子よ
ここからの話は後から真隣のリリーシャから聞いた話であとは儂の推測も交えておる
それでも良ければ…いくぞ？
リリーシャ曰く…彼女はちょうど画材を買い戻った途中だったそうじゃ
その時家の前には宅急便のトラックと二名程の業者が居たそうじゃが
妙な違和感に引っかかったと彼女は言っておる
宅急便のトラック…それが噂で聞いた盗難トラックの特徴と一致したそうじゃ
彼女は首を傾げるもそのまま隣の自分の家に向かったそうじゃ
その時じゃった。ドアが開くと同時に父親の叫びと銃声が響いたという
リリーシャはすぐさま家に飛び込んだそうじゃ
そこに居たのは…宅配業者の服装を身にまとい銃を母親に突きつける者と
同じ服装でナイフをこちらに向け威圧的な眼差しを取る者
そしてその奥で震えながら涙目になる美柑がいたそうだ
美柑は犯人に対し必死に母親を殺さないよう説得していたようじゃ
…しかし相手方は畜生で、殺されたくなければ静寂でいろ…じゃったらしい
現場に飛び込んだリリーシャは臆することなく電撃の魔術弾を放った
だが相手が上手だったのか、ナイフの者に避けられそのまま制圧されたそうじゃ
銃の者は魔術弾が当たりしばらく痺れてたらしいが、
リリーシャが魔術を行使すると同時に銃を撃ってたという
…既に、時は遅かったようじゃ
その時じゃった。あまりの惨状を見てしまった美柑は泣き叫びながら溢れる憎しみ、怒りと共に狐の素質を覚醒させたようじゃ
幼いその手と足は黒い毛皮で覆われ爪が伸び、耳と尻尾が生え、
歯は牙に変化し、目を赤く染め瞳孔を縦長に細くし犯人を睨んでいた
あまりの変化に怯んだ犯人のすきをつき抜け出したリリーシャは真っ先に儂に連絡をしてくれた
…もし警察に先に連絡してたら恐らく美柑は普通の生活を送れたとしても…もしかしたら…
なにあれ彼女の一報を聞いた儂は素早く手元の分の会計だけを済ませ急いで家に飛んで戻った
その間、美柑は唸り声をあげながら犯人に飛びつき、切り裂き、引き裂き、喰らいつき、殺したそうじゃ
暫くしたのち…滅多切りに犯人に復讐した美柑は荒い息を吐きながらその場に倒れた
それと同時に儂は家に飛び込んだ
儂が見たのは…ズタズタになった犯人の死体と返り血を浴び真っ赤になった
獣化の解けてない美柑、そしてあまりの光景に唖然となったリリーシャと
殺された両親の死体、そして血が飛び散り真っ赤に染まった部屋じゃった
その後美柑にこびりついた血を洗い流してるうちに獣化は解けていった
…正直あの時は一安心したわ…昔獣化してそのまま戻れなくなったやつもおったからの
その後警察が来て、学校に連絡が行き急遽生徒会を切り上げ帰宅した礼司が家にやってきた
礼司は…事件の顛末を知って唖然としていたわ…
何より美柑だけでも無事で良かったと言っておったがな
因みに美柑の獣化は礼司にも言っておらん…獣化に関しては黒時一家において極秘なんでな
…リリーシャに関しては、固い約束を交わし二人だけの秘密として了承してくれた
事件に関しては儂とリリーシャが疑われたが、二人が殺すにしても血の飛び散り具合が噛み合わないことや儂がスーパーにいたアリバイが立証されたが故に
犯人の死因に関しては迷宮入りとなった
…逆にその方が助かるがの
それ以来…狐の素質を持つ美柑は監視も兼ねて儂の家で育てることにした
高校卒業までは礼司も一緒に世話していたが、卒業と同時に独り立ちしたな
これが…黒時兄妹の過去の話じゃ
因みにこの情報はあの二人には内緒だぞ？特に美柑には言うでない…
彼女にとってはトラウマとなった事件だからの｣