量子暗号
量子力学の性質を使って、通信の鍵を配ったり、通信そのものを守ったりする技術です。代表的なものが量子鍵配送(QKD)です。
量子計算機でも解けないと考えられている新しい計算の手順である
耐量子計算機暗号(PQC)とは別物です。量子暗号は専用の装置と通信路を使う物理的な技術で、耐量子計算機暗号は、今のコンピュータで計算できる数学的な手順です(ソフトウェアでもハードウェアでも実装できます)。
量子鍵配送のしくみ
光子の偏光などの量子の状態で鍵の材料を送ります。量子の状態は測定すると変わるため、途中で盗み見る者がいると、受け取った値の誤りの率が上がり、盗聴の存在に気づける、というのが基本の考え方です。
BB84
1984年にベネットとブラサールが提案した、最初の量子鍵配送のプロトコルです。
- 送信者は、ランダムなビットを、ランダムに選んだ2種類の基底のどちらかで光子に載せて送る
- 受信者も、ランダムに選んだ基底で測定する
- 送信者と受信者は、通常の通信路で「どちらの基底を使ったか」だけを伝え合い、基底が一致したビットだけを残す
- 一部のビットを照合して誤りの率を調べ、低ければ残りを鍵の材料に使う
1991年にエカートが提案した、量子もつれを使う方式(E91)もあります。
限界(米国家安全保障局の見解)
理論の上では盗聴に気づけるとされますが、米国家安全保障局(NSA)は、量子鍵配送の安全性は「物理法則で約束されるのではなく、実装に大きく依存する」として、次の限界を挙げています。
- 部分的な解決にすぎない:量子鍵配送は、送ってきた相手を認証できない。認証には、別に公開鍵暗号や事前に配った鍵が要る
- 専用の装置が要る:専用の光ファイバーや送受信の装置が要り、ソフトウェアやネットワークのサービスとしては実装できない。ハードウェアなので、更新や修正もしにくい
- 費用と内部不正の危険が増える:多くの場合、途中に「信頼できる中継点」が要り、その施設の費用と、中継点での内部不正の危険が加わる
- 安全性の検証が難しい:実際の安全性は装置の設計と作り込みで決まり、市販の装置への攻撃も報告されている
- サービス妨害に弱い:盗聴に敏感であることが、そのまま妨害のされやすさになる
NSA は結論として、耐量子計算機暗号の方が費用対効果が高く保守しやすいとし、国家安全保障のシステムの通信を守るために量子鍵配送や量子暗号を使うことを支持していません。
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出典
確認日:2026年10月15日
最終更新:2026年10月15日 14:37