## 技術的セキュリティ対策
技術的セキュリティ対策は、ソフトウェア、データ、PC、サーバ、ネットワークなどに対して実施される様々な対策を含みます。これらの対策は、システム開発や運用業務に被害が発生することを防ぐために重要です。
### クラッキング対策
- **侵入防止システム (IPS)**: 不正なアクセスや攻撃を検知し、自動的に防御するシステム。
- **ファイアウォール**: ネットワークトラフィックを監視し、ポリシーに基づいて許可またはブロックする装置。
### 不正アクセス対策
- **二要素認証 (2FA)**: パスワードと物理トークンや生体認証など、二つの異なる要素を使って認証を行う。
- **シングルサインオン (SSO)**: 一度のログインで複数のアプリケーションやサービスにアクセスできる仕組み。
### 情報漏えい対策
- **データ暗号化**: データを暗号化して、許可されたユーザーだけがアクセスできるようにする。
- **データ損失防止 (DLP)**: 機密データが組織外に流出するのを防ぐ技術。
### マルウェア・不正プログラム対策
- **マルウェア対策ソフトの導入**: アンチウイルスソフトを使用して、マルウェアの検出と除去を行う。
- **マルウェア定義ファイルの更新**: 新しいマルウェアに対応するため、定義ファイルを定期的に更新する。
### ランサムウェア対策
- **データのバックアップ**: 定期的にデータをバックアップし、攻撃によるデータ損失を防ぐ。
- **3-2-1ルール**: 3つのコピーを2つの異なるメディアに保存し、1つはオフサイトに保管する。
- **WORM機能**: 一度書き込んだデータを変更できないメディアに保存する。
- **イミュータブルバックアップ**: 変更不可能なバックアップを作成し、ランサムウェアによるデータ改ざんを防ぐ。
### マルウェア検出手法
- **パターンマッチング法**: 既知のマルウェアのシグネチャを基に検出。
- **ビヘイビア法(振る舞い検知)**: マルウェアの振る舞いを基に検出。
- **ヒューリスティック法**: 未知のマルウェアを検出するためのルールベースの方法。
- **動的解析**: サンドボックス環境でマルウェアを実行し、その動作を観察して検出。
- **静的解析**: マルウェアのコードを直接解析し、悪意のある機能を検出。
### 秘匿化、匿名化の手法
- **項目削除/レコード削除/セル削除**: 特定のデータ項目を削除して、個人を特定できないようにする。
- **トップ(ボトム)コーディング**: データの上位や下位の値をグループ化する。
- **k-匿名化**: データセット内の個人識別情報を特定のグループにまとめ、個人を特定できないようにする。
### アクセス制御と特権的アクセス権の管理
- **アクセス制御**: ユーザーやシステムのアクセス権を設定し、必要最低限の権限のみを付与する。
- **特権的アクセス権の管理**: 特権ユーザーのアクセスを監視し、必要な時だけ権限を付与する。
### 脆弱性管理
- **OSアップデート**: オペレーティングシステムを最新の状態に保ち、脆弱性を修正する。
- **脆弱性修正プログラム(セキュリティパッチ)の適用**: ソフトウェアの脆弱性を修正するためのパッチを適用する。
- **ソフトウェア構成分析 (SCA)**: 使用されているオープンソースソフトウェアの脆弱性を特定し、管理する。
- **SBOM (Software Bill of Materials)**: 使用されているソフトウェアのコンポーネントリストを管理し、脆弱性を追跡する。
### ネットワーク監視とアクセス権の設定
- **ネットワーク監視**: ネットワークトラフィックをリアルタイムで監視し、異常を検出。
- **アクセス権の設定**: ネットワークデバイスやシステムのアクセス権を設定し、不正なアクセスを防ぐ。
### 侵入検知と侵入防止
- **侵入検知システム (IDS)**: ネットワークトラフィックを監視し、不正なアクセスを検出するシステム。
- **侵入防止システム (IPS)**: 不正なアクセスを自動的にブロックするシステム。
### DMZ (非武装地帯) と検疫ネットワーク
- **DMZ**: 外部ネットワークと内部ネットワークの間に配置するセグメント。外部からのアクセスを制限し、内部ネットワークを保護する。
- **検疫ネットワーク**: セキュリティが確保されていないデバイスを一時的に隔離し、ネットワークに接続する前に安全性を確認。
### 電子メール・Webのセキュリティ
- **メール無害化**: メールの添付ファイルやリンクを検査し、安全性を確認する。
- **メール誤送信対策**: 誤って送信されたメールを回収し、情報漏えいを防ぐ。
- **URLフィルタリング(Webフィルタリング)**: 有害なWebサイトへのアクセスを制限。
- **コンテンツフィルタリング**: 不適切なコンテンツをフィルタリングし、アクセスを制限。
### 携帯端末のセキュリティ
- **モバイルデバイス管理 (MDM)**: スマートフォンやタブレット端末の管理とセキュリティを一元管理。
- **リモートワイプ**: 紛失や盗難に遭ったデバイスのデータを遠隔で消去。
### ハードウェアのセキュリティ
- **セキュアエレメント**: 重要なデータや処理を安全に行うための専用ハードウェア。
- **TPM (Trusted Platform Module)**: デバイスのハードウェアベースのセキュリティを提供。
- **SED (Self Encrypting Drive)**: 自己暗号化機能を持つドライブ。
- **TNC (Trusted Network Communications)**: 高信頼ネットワークのためのプロトコル。
### セキュアブート
- **UEFI (Unified Extensible Firmware Interface)**: ブートプロセスのセキュリティを強化し、不正なソフトウェアの実行を防ぐ。
### データマスキングと暗号化消去
- **データマスキング**: データを匿名化し、機密情報を隠蔽。
- **暗号化消去 (CE)**: データを暗号化し、暗号キーを削除することでデータを不可読にする。
### クラウドサービスのセキュリティ
- **クラウドセキュリティポリシー**: クラウドサービスの使用に関するセキュリティポリシーを策定し、遵守。
- **クラウドアクセスセキュリティブローカー (CASB)**: クラウドサービスのセキュリティを強化。
### IoTのセキュリティ
- **デバイス認証**: IoTデバイスが正当なものであることを確認。
- **セキュアファームウェアアップデート**: IoTデバイスのファームウェアを安全に更新。
### 制御システムのセキュリティ
- **ネットワーク分離**: 制御システムと他のネットワークを分離し、攻撃の影響を最小限に抑える。
- **脆弱性スキャンとパッチ管理**: 制御システムの脆弱性を定期的にスキャンし、必要なパッチを適用。
- **アクセス制御リスト (ACL)**: 制御システムへのアクセスを厳密に管理。
### 電子透かし
- **デジタルウォーターマーキング**: デジタルコンテンツに目に見えないマークを埋め込み、著作権の保護や追跡を可能にする。
### デジタルフォレンジックス
- **証拠保全**: サイバー犯罪の証拠を適切に収集・保全する手法。
- **フォレンジックツール**: ハードディスクやメモリの内容を解析するための専門ツール。
### AIを使ったセキュリティ技術(AI for Security)
- **機械学習ベースの脅威検出**: 大量のデータから異常を検出するAI技術。
- **行動分析**: ユーザーの行動パターンを学習し、異常行動を検出。
### AIそのものを守るセキュリティ技術(Security for AI)
- **モデル防衛**: AIモデルに対する攻撃を防御する手法。
- **データ保護**: AIモデルが学習するデータのセキュリティを確保。
### 連合学習
- **Federated Learning**: 複数のデバイスで分散して学習を行い、データを中央サーバーに送信せずにモデルを構築する技術。
### 要塞化(ハードニング)
- **システムハードニング**: システムのセキュリティ設定を強化し、攻撃のリスクを最小限に抑える。
- **ベストプラクティスの適用**: 既知のセキュリティガイドラインやフレームワークに基づいてシステムを設定。
### ゼロトラストアーキテクチャ
- **ゼロトラストモデル**: 信頼せず、常に検証するセキュリティモデル。
- **継続的な認証と認可**: ユーザーやデバイスの認証を継続的に行い、アクセス権を適切に管理。
### 脅威ハンティング(Threat Hunting)
- **プロアクティブな脅威検出**: 脅威を待つのではなく、積極的に探し出す手法。
- **脅威インテリジェンスの活用**: 最新の脅威情報を収集し、組織の防御戦略に反映。
以上の技術的セキュリティ対策は、多層的なアプローチを取ることが重要です。各対策は単独でも効果を発揮しますが、複数の対策を組み合わせることで、より強固なセキュリティを実現できます。セキュリティは一度設定すれば終わりではなく、継続的に監視・改善することが求められます。
最終更新:2024年07月30日 18:23