中間者攻撃(Man-In-The-Middle Attack, MITM)** は、通信の二者間に第三者が介入し、データを傍受、改ざん、または偽装する攻撃手法です。攻撃者は、被害者に気づかれることなく通信をコントロールし、様々な悪意ある行為を行うことが可能です。MITM攻撃は、ネットワーク上の通信プロトコルや暗号技術が適切に実装されていない場合に特に効果的です。


### 1. **MITM攻撃の基本的な流れ**
MITM攻撃では、攻撃者が以下のような手順で通信に介入します。

1. **通信の傍受**: 攻撃者は、ネットワーク上で二者間の通信を傍受します。これには、通信のトラフィックをリダイレクトする、DNSスプーフィングを利用する、あるいはネットワーク内で不正なアクセスポイントを設置するなどの手法が使われます。

2. **偽装**: 攻撃者は、被害者に対してあたかも本来の通信相手であるかのように振る舞います。一方で、相手側に対しても被害者であるかのように見せかけます。これにより、攻撃者は通信内容を完全に制御できる状態になります。

3. **通信の改ざんまたは盗聴**: 攻撃者は、二者間の通信を読み取ったり、改ざんしたりします。例えば、ログイン情報の盗難、送信データの内容変更、セッションハイジャックなどが行われる可能性があります。

### 2. **MITM攻撃の種類**
MITM攻撃にはいくつかのバリエーションが存在します。

1. **パッシブ型MITM攻撃**:
  - **盗聴**: 攻撃者は通信を傍受するだけで、通信の内容を変更せずに情報を収集します。これには、盗聴やデータの記録が含まれます。
  
2. **アクティブ型MITM攻撃**:
  - **データ改ざん**: 攻撃者は、通信内容を改ざんし、受信者が意図しない情報を受け取るようにします。例えば、金融取引の金額を変更したり、メッセージの内容を変更したりすることが可能です。
  - **セッションハイジャック**: 攻撃者は、ユーザーのセッションIDを盗み、合法的なユーザーに成り代わってシステムにアクセスします。
  - **SSLストリッピング**: 攻撃者は、HTTPSの暗号化を解除し、被害者のブラウザをHTTP接続にダウングレードさせます。これにより、攻撃者は平文で送信されるデータを傍受・改ざんできます。

### 3. **MITM攻撃の技術とツール**
MITM攻撃を実施するためには、様々な技術とツールが使用されます。

1. **ARPスプーフィング**:
  - 攻撃者は、被害者のARPキャッシュを操作して、偽のMACアドレスを挿入し、通信をリダイレクトします。これにより、攻撃者が通信経路の中間に入り込むことが可能です。

2. **DNSスプーフィング**:
  - 攻撃者は、偽のDNS応答を送信することで、被害者のトラフィックを偽のサイトに誘導します。この方法でフィッシング攻撃や情報の盗聴が行われます。

3. **SSL/TLSダウングレード攻撃**:
  - 攻撃者は、HTTPS接続をHTTPにダウングレードさせることで、通信内容を暗号化されない状態にして盗聴します。

4. **リレー攻撃**:
  - 攻撃者が二つの無関係な当事者の間に入り、双方のメッセージを単に中継することで、通信を操作します。

### 4. **防御策**
MITM攻撃を防ぐためには、以下の対策が重要です。

1. **暗号化の徹底**:
  - SSL/TLSを利用して通信を暗号化し、攻撃者が通信内容を解読できないようにします。特に、証明書の正当性を確認するために、ブラウザが発行するSSL警告を無視しないことが重要です。

2. **強力な認証手段**:
  - パスワードやセッションIDの保護に加えて、多要素認証(MFA)を導入することで、不正なアクセスを防ぎます。

3. **ARP/DNSスプーフィングの防御**:
  - スイッチでのARPインスペクションやDNSSECの導入によって、ARPおよびDNSスプーフィングを防止します。

4. **セキュリティツールの導入**:
  - ネットワーク監視ツールやIDS/IPSを利用して、ネットワーク内での異常な動きを検知します。また、Webアプリケーションに対しては、Webアプリケーションファイアウォール(WAF)を導入することで、攻撃を防ぐことができます。

### 5. **まとめ**
MITM攻撃は、ネットワーク通信において非常に深刻な脅威であり、被害者が通信を信頼している間に攻撃者が情報を傍受したり、改ざんしたりする可能性があります。現代のセキュリティインフラにおいて、暗号化と認証の適切な実装、および最新のセキュリティツールの導入は、MITM攻撃に対する効果的な防御策です。
最終更新:2024年08月06日 09:12