アットウィキロゴ

プロバイダ責任制限法(情報流通プラットフォーム対処法)


掲示板・SNS・ブログのコメント欄など、不特定の人に向けた発信の場を提供する事業者(法律上は「特定電気通信役務提供者」)の責任と、権利を侵害された人が発信者を特定するための手続を定めた法律です。

  • 正式な題名:特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律(平成13年法律第137号)
  • 略称:情報流通プラットフォーム対処法。2025年4月1日施行の改正で、旧題名「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(略称:プロバイダ責任制限法)から改められた

この法律が定める4つのこと

第1条(趣旨)は、次の4つを定めると書いています。
# 内容 主な条文
1 事業者の損害賠償責任の制限 第3条・第4条
2 発信者情報の開示を請求する権利 第5条〜第7条
3 発信者情報開示命令の裁判手続 第8条〜第19条
4 大規模な事業者の義務(削除の手続の迅速化と、実施状況の透明化) 第20条〜第30条

1. 損害賠償責任の制限(第3条)

権利を侵害された人に対して

事業者は、侵害情報の送信を防ぐことが技術的に可能な場合で、かつ次のどちらかに当たるときでなければ、損害を賠償する責任を負いません。
  • 権利が侵害されていることを知っていたとき
  • 情報が流れていることを知っていて、権利の侵害を知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき
ただし、事業者自身が発信者である場合は、この制限を受けられません。

削除された発信者に対して

事業者が送信を防ぐ措置(削除など)をとった場合、その措置が必要な限度で行われ、かつ次のどちらかに当たるときは、発信者に生じた損害を賠償する責任を負いません。
  • 他人の権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由があったとき
  • 権利を侵害されたとする人から、侵害情報や侵害されたとする権利・理由を示して削除の申出があり、発信者に削除に同意するかを照会して、7日たっても同意しない旨の申出がなかったとき
選挙運動の期間中に頒布された文書図画のうち、選挙運動などに使う文書図画(特定文書図画)に関する情報で、公職の候補者等が名誉を侵害されたとするものについては、この照会の期間が2日に短くなる特例があります(第4条)。発信者の電子メールアドレスなどが正しく表示されていない場合の扱いも、同条に定めがあります。

2. 発信者情報の開示請求(第5条)

権利を侵害されたとする人は、事業者に対し、発信者情報(氏名・住所・通信の記録など)の開示を請求できます。要件は次の2つです。
  • 侵害情報の流通によって権利が侵害されたことが明らかであること
  • 損害賠償請求のためなど、開示を受ける正当な理由があること
投稿そのものの記録が無いサービスでも、ログインの通信などから発信者をたどれるよう、こうした通信(侵害関連通信)に関する情報も、追加の要件を満たせば開示の対象になります。投稿を受けた事業者だけでなく、その通信を中継した接続事業者(関連電気通信役務提供者)にも請求できます。

3. 発信者情報開示命令(第8条〜、2022年10月1日施行)

2021年の改正(令和3年法律第27号、2022年10月1日施行)で、裁判所が決定で開示を命じる手続(非訟手続)ができました。それまでは、サイトの事業者から通信の記録を開示させる手続と、接続事業者から氏名・住所を開示させる手続を、別々の裁判で進めるのが一般的でした。
  • 提供命令(第15条):裁判所が、サイトの事業者に、次にたどるべき接続事業者の名称などを申立人へ提供させる。申立人がその接続事業者を相手に開示命令を申し立て、そのことをサイトの事業者に通知すると、サイトの事業者から接続事業者へ発信者情報が提供される。通知は、名称などの提供を受けてから2か月以内にしなければ、提供命令は効力を失う
  • 消去禁止命令(第16条):手続(異議の訴えを含む)が終わるまで、申立ての相手方の事業者(サイトの事業者も接続事業者も含む)に発信者情報を消させない
  • 決定(申立てを不適法として却下する決定を除く)に不服があれば、決定の告知を受けた日から1か月の不変期間内に、異議の訴えを起こせる(第14条)

4. 大規模特定電気通信役務提供者の義務(第20条〜、2025年4月1日施行)

総務大臣は、発信者の数(平均の月間発信者数など)が総務省令の基準を超え、送信を防ぐ措置が技術的に可能であるなどの要件を満たすサービスの事業者を「大規模特定電気通信役務提供者」に指定できます(第20条)。指定された事業者には、次のことが求められます。
  • 削除の申出を受け付ける方法を公表する(第22条)
  • 申出に対して調査を行う(第23条)。侵害情報の調査を担う専門員を置く(第24条)
  • 申出から14日以内の総務省令で定める期間内に、削除したかどうか(しなかったときは理由)を申出者に通知する(第25条)。発信者に意見を聴く場合や専門員に調査させる場合などは、期間内にその旨を通知し、結果は判断の後に遅滞なく通知すればよい
  • 削除などの基準を定めて公表し、自らが発信者である場合・法令上の義務に基づく場合・緊急の必要があって基準で予測できない種類の情報である場合を除いて、その基準に従う場合に限り削除などを行うことができる(第26条)
  • 削除などを行ったときは、遅滞なく、その旨と理由を発信者に通知する(または発信者が容易に知りうる状態に置く)(第27条)
  • 措置の実施状況を公表する(第28条)
総務大臣は、報告の徴収や、勧告・命令ができます(第29条・第30条)。

施行前の改正:2026年7月17日公布の改正(令和8年法律第58号)で、大規模特定電気通信役務提供者に、選挙の公正を害するおそれのある情報の流通への措置を求める規定(第27条の2)が加わります。施行は2027年3月1日です(e-Gov 法令検索の改正履歴による)。
また、e-Gov には別の施行前の改正(令和5年法律第53号、民事手続のIT化に関する整備法。政令で定める日に施行)も登録されていて、その施行後は、第4章に1条が加わって第20条以降の条番号が1つずつ繰り下がる予定です(たとえば大規模事業者の指定は第21条、選挙の措置は第28条の2)。

セキュリティの実務との関わり

  • 自社が「場」を提供している場合:コメント欄・掲示板・投稿機能のあるサービスは、この法律の事業者に当たりえます。削除の申出と開示請求を受ける窓口と判断の手順、通信の記録をどれだけ保存するかを、あらかじめ決めておく
  • 記録の保存:開示の手続は、通信の記録が残っていなければ発信者にたどり着けません。記録の保存期間は、責任追跡性の設計と、個人情報の保護の両面から決める
  • 被害を受けた側:投稿の画面やURLなど、証拠を早めに保全する。手続の詳細は弁護士に相談する
このページは法律の概要の説明で、法的な助言ではありません。

関連するページ


出典

確認日:2026年10月14日(条文は e-Gov の現行版による。2026年10月14日にレビューを受けて第3条・第4条・第14〜16条・第20条・第25〜27条の記述を条文に合わせて修正)
最終更新:2026年10月15日 09:56