サイバーセキュリティにおける「持続(Persistence)」は、攻撃者が標的システムやネットワーク内に長期間にわたり留まり、継続的にアクセスを維持するための手法や技術を指します。持続性を確保することにより、攻撃者は情報の窃取、システムの制御、さらなる攻撃の足がかりなどの目的を達成しやすくなります。以下に、持続に関する詳細な解説を行います。
### 持続の概要
持続は、攻撃者が一度侵入に成功した後、環境内で検出されずに長期間活動を続けることを可能にするプロセスです。持続を確保するために、攻撃者はさまざまな手法や技術を駆使します。持続の主な目的は以下の通りです:
- **長期間にわたるアクセスの維持**:システムやネットワークへの持続的なアクセスを確保し、再侵入の必要性を減らします。
- **情報収集と窃取**:持続的にアクセスすることで、重要な情報を継続的に収集・窃取します。
- **追加攻撃の準備**:持続的なアクセスを利用して、さらなる攻撃や侵害活動を準備・実行します。
### 持続の手法
持続を確保するために、攻撃者は多様な手法を用います。以下は一般的な手法の一部です:
#### 1. **バックドアの設置**
- **概要**:攻撃者が標的システムにバックドアを設置し、認証を回避して後から再度アクセスできるようにします。
- **例**:特定のポートを開けるトロイの木馬や、リバースシェルを利用したリモートアクセスツール。
#### 2. **自動起動の設定**
- **概要**:システム起動時に自動的に実行されるように、悪意あるプログラムを設定します。
- **例**:WindowsのレジストリのRunキー、スタートアップフォルダ、タスクスケジューラなど。
#### 3. **認証情報の窃取と再利用**
- **概要**:有効な認証情報を窃取し、これを用いて標的システムやネットワークに再度アクセスします。
- **例**:キーロガー、パスワードハッシュのキャプチャ、パスザハッシュ攻撃など。
#### 4. **コードインジェクション**
- **概要**:既存の正規のプロセスに悪意のあるコードを注入し、持続的なアクセスを確保します。
- **例**:DLLインジェクション、プロセスハロウィングなど。
#### 5. **ルートキットの使用**
- **概要**:オペレーティングシステムのコア部分に入り込み、存在を隠蔽しつつ持続的なアクセスを維持するためのソフトウェア。
- **例**:カーネルモードルートキット、ユーザーモードルートキット。
### 持続の防御対策
持続を防ぐためには、システムやネットワークの監視と防御を強化することが重要です。以下は持続に対する防御策です:
#### 1. **エンドポイント検出および対応(EDR)**
- **概要**:エンドポイント上の異常な活動を検出し、迅速に対応するためのツール。
- **対策例**:持続的な活動の兆候を監視し、異常を検出した際にアラートを発する。
#### 2. **多要素認証(MFA)**
- **概要**:認証プロセスに複数の要素を導入し、攻撃者による認証情報の不正利用を防ぎます。
- **対策例**:パスワードに加えて、物理トークンやバイオメトリクスを使用した認証。
#### 3. **定期的なシステムおよびソフトウェアの更新**
- **概要**:最新のセキュリティパッチを適用し、既知の脆弱性を修正することで、持続的なアクセスを困難にします。
- **対策例**:運用中のシステムやソフトウェアの脆弱性を継続的に管理し、パッチを適用。
#### 4. **アクセス制御と監査**
- **概要**:システムやネットワークへのアクセスを厳密に制御し、監査ログを定期的にレビューすることで、不正アクセスの兆候を検出します。
- **対策例**:最小権限の原則に基づくアクセス制御、監査ログのリアルタイム分析。
#### 5. **セキュリティ意識向上トレーニング**
- **概要**:従業員に対するセキュリティ意識の向上を図り、フィッシング攻撃やソーシャルエンジニアリングへの対策を強化します。
- **対策例**:定期的なセキュリティトレーニング、疑わしいメールやリンクに対する警戒心の醸成。
### 結論
持続はサイバー攻撃において非常に重要なフェーズであり、攻撃者が長期間にわたり標的システムやネットワークにアクセスを維持するための技術や手法を駆使します。持続的なアクセスを確保するために、攻撃者は多様な手法を用いますが、防御側はこれに対抗するための適切なセキュリティ対策を講じる必要があります。効果的な防御策を実施することで、持続的なアクセスのリスクを低減し、システムとデータの安全性を高めることが可能です。
最終更新:2024年06月25日 18:43