### シフトレフトとは

シフトレフト**(Shift Left)は、ソフトウェア開発プロセスにおいて、従来の後半に行われる活動(特にテストやセキュリティチェック)を開発の初期段階に移行させるアプローチを指します。この考え方は、問題を早期に発見し修正することで、開発サイクル全体の品質を向上させ、コストを削減することを目的としています。


#### シフトレフトの背景

従来のウォーターフォール型開発では、テストやセキュリティチェックは開発プロセスの後半、つまり製品がほぼ完成してから行われることが一般的でした。このアプローチでは、発見される問題が大規模で修正に多大なコストと時間がかかることが多いため、シフトレフトの重要性が強調されるようになりました。

#### シフトレフトの基本原則

1. **早期テスト**
  - **単体テストの強化**: コードが書かれた段階で即座にテストを行い、バグを早期に発見・修正する。
  - **テスト駆動開発(TDD)**: テストケースを先に作成し、それに基づいてコードを書くアプローチ。

2. **継続的インテグレーション(CI)**
  - **頻繁なビルドとテスト**: コードの変更があるたびに自動ビルドとテストを実施し、問題をすぐに検出する。
  - **デプロイメントパイプライン**: 継続的にインテグレーションとデプロイを行うことで、問題の早期発見を促進。

3. **セキュリティの組み込み**
  - **セキュリティテストの自動化**: コードの脆弱性を早期に発見するために、自動化されたセキュリティテストを導入。
  - **DevSecOps**: セキュリティをDevOpsプロセスに統合し、開発サイクル全体でセキュリティを考慮する。

4. **コードレビューの強化**
  - **ピアレビュー**: 開発チーム内でのコードレビューを活性化し、早期に潜在的な問題を発見する。
  - **ペアプログラミング**: 二人のプログラマーが一つのコードを共同で書くことで、リアルタイムでのフィードバックと修正を行う。

#### シフトレフトの利点

1. **早期問題発見と修正**
  - 問題が開発の初期段階で発見されるため、修正が容易でコストが低く抑えられる。
  - バグやセキュリティの脆弱性がリリース前に発見され、リリース後の問題発生を防ぐ。

2. **開発サイクルの短縮**
  - 問題の早期発見により、後半での大規模な修正作業が不要となり、開発サイクルが短縮される。

3. **品質の向上**
  - 継続的なテストとレビューにより、コードの品質が向上し、信頼性が高まる。
  - セキュリティの考慮が早期から行われるため、安全性が向上する。

4. **コスト削減**
  - 早期発見による修正コストの低減が、全体の開発コストを削減する。

#### シフトレフトの実践方法

1. **ツールの導入**
  - **CI/CDツール**: Jenkins、GitLab CI、CircleCIなどの継続的インテグレーション・デプロイツールを導入。
  - **自動化テストツール**: Selenium、JUnit、TestNGなどの自動化テストツールを使用。

2. **プロセスの整備**
  - **アジャイル開発の採用**: スプリントごとにテストとレビューを行うアジャイル開発手法を採用。
  - **テスト駆動開発の推進**: TDDを導入し、テストケースの作成を開発プロセスの一部に組み込む。

3. **文化の醸成**
  - **チームの教育**: シフトレフトの重要性と実践方法について開発チームを教育し、意識を高める。
  - **継続的な改善**: 開発プロセスの中で得られたフィードバックを元に、継続的にプロセスを改善する。

### まとめ

シフトレフトは、ソフトウェア開発プロセスにおいて品質とセキュリティを向上させるための効果的なアプローチです。早期に問題を発見し修正することで、コスト削減や開発サイクルの短縮、製品品質の向上が期待できます。継続的インテグレーションや自動化ツールの導入、チーム全体の意識改革を通じて、シフトレフトを実践することが重要です。
最終更新:2024年06月27日 07:53