### DOMベースXSSとは
DOMベースXSS(Document Object Model Based Cross-Site Scripting)は、ウェブアプリケーションにおけるクロスサイトスクリプティング(XSS)攻撃の一種です。この攻撃は、サーバーからのレスポンスではなく、クライアントサイドのスクリプトが動的に生成するDOM(Document Object Model)に対して行われます。攻撃者は、悪意のあるスクリプトをウェブページのDOMに注入し、ユーザーのブラウザで実行させます。
#### DOMベースXSSの仕組み
DOMベースXSSは、主に以下のようなシナリオで発生します。
1. **ユーザー入力の処理**
- ユーザーの入力がJavaScriptを通じて直接DOMに挿入される。
- 例: URLパラメータ、フォーム入力、ハッシュフラグメント。
2. **不正なスクリプトの挿入**
- 攻撃者が悪意のあるスクリプトをユーザー入力に含め、これがDOMに挿入される。
- 例: `<script>alert('XSS');</script>`が含まれるURL。
3. **DOMの操作**
- ウェブページのスクリプトがユーザー入力をDOMに挿入する際に適切なサニタイズが行われず、スクリプトが実行される。
- 例: `document.write()`、`innerHTML`、`eval()`などの使用。
#### DOMベースXSSの例
以下は、DOMベースXSSの簡単な例です。
1. **脆弱なスクリプト**
```html
<!DOCTYPE html>
<html>
<head>
<title>DOM XSS Example</title>
<script>
function displayMessage() {
var message = window.location.hash.substring(1);
document.getElementById('output').innerHTML = message;
}
window.onload = displayMessage;
</script>
</head>
<body>
<h1>DOM XSS Example</h1>
<div id="output"></div>
</body>
</html>
```
2. **攻撃の実行**
- 攻撃者が以下のようなURLをユーザーに送信する:
```
http://example.com/#<script>alert('XSS');</script>
```
- ユーザーがこのURLにアクセスすると、`<script>alert('XSS');</script>`がDOMに挿入され、スクリプトが実行される。
#### DOMベースXSSの影響
DOMベースXSS攻撃が成功すると、以下のような影響が生じる可能性があります。
1. **セッションハイジャック**
- 攻撃者がユーザーのセッションIDを盗み、ユーザーになりすまして操作を行う。
- 例: クッキーの取得。
2. **個人情報の漏洩**
- 攻撃者がユーザーの個人情報を盗む。
- 例: フォームデータの取得。
3. **サイトの改ざん**
- 攻撃者がウェブページの内容を変更し、ユーザーを欺く。
- 例: 偽のログインフォームの表示。
#### DOMベースXSSの防御方法
DOMベースXSSを防ぐためには、以下のような対策が有効です。
1. **ユーザー入力のサニタイズ**
- DOMに挿入する前に、ユーザー入力を適切にエスケープまたはサニタイズします。
- 例: `innerHTML`の代わりに`textContent`や`innerText`を使用。
2. **JavaScriptのセキュアなコーディング**
- 危険な関数(例: `eval()`, `document.write()`)の使用を避け、セキュアな代替手段を使用します。
- 例: `DOMPurify`などのライブラリを使用して、HTMLをクレンジング。
3. **コンテンツセキュリティポリシー(CSP)の実装**
- CSPを導入し、スクリプトの実行を制限します。
- 例: スクリプトのソースを信頼できるものに限定。
4. **フレームワークのセキュリティ機能の活用**
- 使用しているフレームワークやライブラリが提供するセキュリティ機能を利用します。
- 例: AngularJSの`$sce`サービスを利用した信頼性の管理。
#### まとめ
DOMベースXSSは、クライアントサイドのスクリプトがユーザー入力を適切に処理しない場合に発生するクロスサイトスクリプティング攻撃です。この攻撃により、セッションハイジャック、個人情報の漏洩、サイトの改ざんなどの深刻な影響が生じる可能性があります。防御策としては、ユーザー入力のサニタイズ、セキュアなコーディング、CSPの実装、およびフレームワークのセキュリティ機能の活用が有効です。これらの対策を徹底することで、DOMベースXSSのリスクを大幅に低減することができます。
最終更新:2024年06月27日 08:05