E115SS:あたらしい制服の話

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d_va

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あたらしい制服の話

これからはじまる物語は、悲劇であり、喜劇でもある。
ことの発端は、土場藩国に交番ができたことにはじまった。

ここに一人の男が登場する。
男の名前は仮にY氏としておこう。見た目こそ平凡であるが、
一応国では有名な人間なので、仮名になっている。
さてY氏の職業はトレーダーである。

この時点でオチが読めたというのは早計だ。
別に矢上だっていってないだろ!とナレーターは声を大にして言いたい。
まあ矢上だけど。

さて、矢上の職業はトレーダーである。ふらっと旅にでることもあるが。
物流関連の仕事をしているとしよう。

当然、交番関連でも資材を用意したりといろいろと行動を行った。
その結果が目の前にある。
「……」
 青色にそめぬかれたまぶしいばかりの布地。ぱりっと糊のきいた折り目。
おそろいの帽子。

まごうことなき 婦警の制服。

もともと世話をした業者が「すいません、物納でいいですか?」と言いだし
さすがに資金をまきあげるのは気が引けて「わかりました」と答えてしまったのが運のつき。
いやむしろラッキーなのか。

「セーラー服もありますけど、こっちのほうがすきでしょ」

と見透かされたように言われた瞬間手を横にすべらせそうになったが、
ここで生首祭りを開催すると大変なことになるのであきらめ、そのまま受け取った。
問題は、これは自分では着れないということだ。

警官ではないし、そもそも自分には入らない。
まあ使用目的など決まっているのだが、あえてそれは一番最後に考えるのだ。

「…た、ただいまー。なんか摂政になっちゃったよー」

おろおろと顔をだすのは、新妻・・とよんでいいのだろうか。矢上にとっての
最愛の人間である。麗華であった。
「あ、ああ、おかえり」
家に戻ってくるというのが久しくないだけに少し驚いたように眉をあげる。
「あれ?どうしたの?」
今麗華の目の前にあるのは、警官の制服…と矢上。

一瞬、時が止まった気がした。

(えーと、なんだろう? 爽一郎さんにまさか・・)

いやな予感というかマニアックな思考が次々に展開される。

(ど、どうしよう。これからどんどんひどいことになって)

麗華の想像(妄想ともいう)は爽一郎がスクール水着を手に土下座をしたあたりで中断される。

「い、いや。これ、これはだな!業者が物納だといって、その…な、難民対策だ!」

焦ったようにそういうと、爽一郎は麗華の手に制服を押しつけてきた。
「…き、着るの?」
「それ以外に何があるんだ?」
 もうここまできたらノンストップ、開き直ったかのように爽一郎はメガネをあげるしぐさをした。
きらりと輝くメガネが無駄にかっこいい。
「お前ならできるさ!」
 この場、この状態で言われなければかっこいいセリフなのだが…。
「大丈夫だ。ちゃんと新品だから安心しろ」
「そ、そうなんだ」
「そうだ」
 若干引き気味ではあるが麗華は爽一郎の勢いに押されつつあった。
「え、えと 今きないとだめかな?」
 なんとか確認を取るが、なにか違うスイッチの入ってしまった爽一郎には通じない。
ずっと爽一郎のターンである。
「俺の前以外できる必要があるのか?」
 ついさっき難民の対策なといったのは忘却の彼方である。
ずっと爽一郎のターンである。
「お、おこるよ。おこっちゃうからね」
「どう怒るんだ」
「え、えーと、そんなことするひとめーです!」
「かわいいな」
 おそらく生活ゲームであれば、この時点で発禁。
公表した時点で何らかの処分が下されそうであるが、そんなことはどうでもよい。
もうずっと爽一郎のターンである。
「うー、ちょっとだけ、だよ」
「その言葉が聞きたかった」
 無駄に爽やかな笑みを浮かべる男。

そうそれはみんなの夢である。
数分後、見事に婦警の格好をした麗華が出現した。
きりっとした眼で爽一郎を見つめる。
生きていてよかった。神様、男に産んでくれてありがとう。
無駄に今まで祈ったことのないすべての神に祈りたい気分になる爽一郎。
そろそろ、運命のダイスの時間がきそうだが、本人はそんなこと、まったくきにしてない。

「じゃあ、矢上爽一郎、あなたをセクハラで逮捕します!」
 びしっ、と指をつきつける麗華。
「え、ちょ」
 ぎゅ、という音がしそうなほど手が握り締められる。うれしいが、とても痛い。
「んーと、社会奉仕10時間の罪になります。私、摂政になったし、政策で難民のお仕事とか紹介するんです!!」
「い、いや。そ、それはいいが。セクハラって」
「こんな格好強制する人はセクハラです!もう、すっごい恥ずかしいんだから」

 こうして、土場藩国の経済政策担当者は無償労働することになったのであった。

(SS:あさぎ)


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