大学受験ニュース > 2011年08月04日 > 東日本社説:大震災 大学の役割/実践的な態勢づくり進めて

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 震災からの復旧、復興を研究開発や教育面から後押ししようと、東北の各大学が積極的に動き始めた。
 地震に伴う揺れで研究棟、実験機材が大きな被害を受けた東北大は落ち着きを取り戻し、全学的な組織「災害復興新生研究機構」を創設した。
 被災地から求められるさまざまな要望に対し、学部の領域を超えて解決策を提案する。防災と減災システムの確立、地域医療再生、環境エネルギー、情報通信再構築、産学連携による新産業創出など七つのプロジェクトの推進を掲げる。
 福島県立医大は、放射線医療の教育体制を築くため、長崎大と広島大から専門家を副学長として招いた。福島第1原発事故による住民の外部・内部被ばく、作業員らの緊急治療に対応できる受け皿を目指す。
 「地域における知の拠点」として専門の立場から解決を図る姿勢は評価したい。ただ、いずれも理念先行型の印象が否めず、成果が表れるには数年以上かかるとみられる。
 プランの肉付けを急ぐ一方で、宮城、福島両県など自治体の復興計画と食い違わないよう、綿密に擦り合わせをしながら進めてほしい。
 東北大復興機構の中で早期の成果が期待できるのは、「マリンサイエンス」の分野だ。6月中旬、津波被害を受けた宮城県南三陸町などで、ウニとアワビの生態系がどう変化したか海中調査を行った。餌となる海藻群落の復活に向けた処方箋を示すという。漁業者が最も知りたがる情報と思われる。
 失われた市街地の再生を建築学の視点から支援する動きも始まった。東北大大学院工学研究科は石巻市と包括連携協定を結び、移転計画や機能的な街づくりなど復興計画に関わる。
 教授や若手が研究室から現地に飛び出し、一緒に汗をかいている。後に続く研究者がもっと増えることを期待したい。
 福島県立医大の人材育成策は、3月の原発事故発生の際、対応できる専門スタッフや医療体制が整っていなかったことの反省を踏まえている。
 2人の副学長は、それぞれ臨床と基礎研究を担当する。長期に及ぶ原発事故収束までの作業工程をにらみつつ、即戦力の養成を急いでもらいたい。
 宮城教育大は、被災地の学校で学ぶ児童生徒の学習を支援、疲弊した教員をサポートしている。7月から「復興支援センター」を母体に教員と研究者を送り込んでいる。家庭、教育環境の変化によって心の病を抱える子どものケアなど、息の長い取り組みになろう。
 政府の復興構想会議が6月末にまとめた「提言」に、大学の役割が盛り込まれている。東北の製造業が得意とする電子部品と最新技術を融合した世界規模の新規事業創出、キャンパスを活用した職業訓練などをうたっているが、やはり長期間を要するものが目立つ。
 大学は将来的なプラン作成と、すぐに地域に還元できる支援を並行して行える実践的な態勢づくりにまい進してほしい。

(河北新報 2011年08月04日木曜日 http://www.kahoku.co.jp/shasetsu/2011/08/20110804s01.htm


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最終更新:2011年08月04日 09:38