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(45) - (2011/10/11 (火) 15:31:26) の編集履歴(バックアップ)


「大和田……あんた授業中私のこと見てなかった?」
「おう!見てたぜ。」
「そ、そうなんだ……」
(そんなにハッキリ……もしかして大和田は私のことが……)
「ところで戦刃。お前ネコ派じゃないよな?」
「え!?」
(ネコ派?それってタチかネコかのこと?)
「何赤くなってんだ?戦刃はイヌ派だよな?イヌのタトゥーを彫るくらいだし。」
「あー……そっちか……私は確かにイヌ派。ってこれはイヌじゃなくてフェンリル!オオカミだ!」
「どっちも可愛いし似たようなもんだろ。イヌ派ってことはオレ達気が合うかもな。」
「そうかもね。」
「それにしてもそのタトゥー結構いいセンスしてんな。さっきの授業はずっとそのタトゥーが気になってたんだぜ。」
「え?あんたが見てたのはこのタトゥー?」
「ん?おう。さっき授業中に見てたって言っただろ?」
(大和田が気になっていたのは私そのものじゃなくて、このタトゥーなんだ……)
「ごめん。この後用事があるからもう行くね。」
「おう。またな。」



「うぷぷぷぷぷ……ぶひゃひゃひゃひゃ。」
「あ?何笑ってんだ江ノ島?」
「あー悪い悪い。余りにも残念なカップルがいたからつい笑ってしまったよ。」
「あ?誰のことだ?」
「うぷぷぷぷぷ。何って決まってるじゃない。大和田クンとウチのお姉ちゃんに決まってるじゃない。」
「あ?あの女とオレは何の関係もねーよ。」
「だからこそ残念だと言ったのです。残念なお姉ちゃんと女心がわからない時代錯誤の純情ヤンキーのカップルなんて残念すぎます。」
「女心だあ!?」
「では私様がどうしてむくろが出て行ったのかを説明してやろう!」

大和田は江ノ島から戦刃の心情を一から説明した。
授業中に見られていることに気づいて好意を持たれていると勘違いしたこと。その勘違いに気づいてショックを受けてしまったこと。をわかりやすく説明した。

「マジかよ……オレはあの女にそんな勘違いをさせてしまったのか!」
「ええその通りです。それにしても、好意を持たれていると思った相手にそのまま好意を持ってしまうなんて残念なお姉ちゃんらしいです。」
「クソ!あの女に謝らないといけねえ!」
「今頃お姉ちゃんは絶望しているでしょうね…………誰もいないところで孤独に泣いているかも…………」
「お、おい!?泣いてるってマジかよ!クソ!男が女を泣かすなんてあっちゃならねえことなのに!」
「キャー。大和田クンかっこいいー!そう思うならすぐにお姉ちゃんのところに行った方がいいと思うなー。」
「すまねえ江ノ島。けじめつけてくらあ。」

大和田は教室を出て廊下を全力疾走して戦刃のところに向かおうとした。

「ところでアイツ、お姉ちゃんの居場所知ってたっけ?」


「ゴルァ!戦刃ァ!どこだぁ!」

超高校級の暴走族の大和田が誰かの名前を呼びながら全力疾走している様は他の生徒から見たら喧嘩相手を呼び出そうとしているようにしか見えなかった。
当然、そんな大和田に近づこうとする者はいるはずがなく、余計なトラブルに巻き込まれないように避難する生徒ばかりだった。
だが、その大和田に近づいていく女子が一名いた。

「ちょっと大和田!うるさいよ!」
「お!朝日奈。すまねえな。ちょっと人捜してんだ。」
「そんな怒鳴ってたら戦刃ちゃんだって出辛いと思うよ。」
「何だとぉ!?お前どうしてオレが戦刃捜しているってわかったんだ!?舞園と同じエスパーか!?」
「はいはい。あんた思いっきり声に出してたよ。舞園ちゃんじゃなくてもあんたが誰を捜しているのかわかるよ。」
「なあ、戦刃がどこに行ったのか知らないか?」
「ゴメン、知らないよ。でも、どうして戦刃ちゃんを探してるの?」
「ああ。実はな……」

大和田は朝日奈に事情を説明した。

「さいってー!それ大和田が悪いよ!」
「るせえ!んなこたわかってるんだ!だから謝るために戦刃捜してんじゃねえか!!!」
「ヒィ!!急に怒鳴らないでよ。」
「あー悪かった。」
「そういえば、戦刃ちゃんは落ち込んだ時はトレーニングをして気を紛らわすって言ってたよ。私とさくらちゃんも何度か付き合ったことあるし。」
「トレーニングってことは更衣室か!よし、更衣室の前で張り込みして戦刃が出てくるまで待つぞ!」
「あ…ちょっと!」

止めようとした朝日奈を無視して大和田は2階の更衣室目掛けて暴走していった。

「張り込まなくても私が女子更衣室に入って戦刃ちゃん呼んでくれば早いのに……」

大和田が更衣室の前で張り込んで一時間が経過した。
その間更衣室を利用しようとして来る生徒は不審な目で大和田を見ている。

「やだー。なにあの人。女子更衣室を睨んで気持ちわるーい。」
「やめなよ。聞こえちゃうよ。」

そんなヒソヒソ話が聞こえないほど大和田は考え事をしていた。

(ただ謝るっつってもよぉ。どう謝ればいいのか考えてなかったぜ。)
(よく考えてみりゃあ戦刃も地味だけど結構可愛いし……っつか地味じゃなくて妹の方が目立ちすぎてんのかアレは。)
(今まではタトゥーしか目に入らなかったけど、あの女も胸は小さいけど中々の上玉だしなあ。やべえ!あの女のこと意識してきたら心臓がバクバクしてきたッ!)
(まさか、俺があの女に惚れちまったっていうのか!?)

「大和田……」
「あ?って戦刃!?いつの間に!?」
「今、トレーニングを終えて出てきたところ。大和田はこんなところで何してるの?」
「えっと……アレだ!その……すまん!」
「大和田に謝られるようなことはされた覚えはないけど?」
「授業中にタトゥー見てたって話で俺がお前に勘違いさせたんじゃないかって江ノ島が言いやがったから、勘違いさせたことを謝ろうと思ってな。」
「そのことならもう気にしていない。私こそ勝手に勘違いして悪かった。」
「るせえ!!!勘違いなんかじゃねえ!!!!本当は俺はお前に惚れてんだ!!!」
「えっ?」

校舎中に響き渡るくらいの怒鳴り声で大和田は戦刃に告白していた。
その場の勢いで告白して、女子を怖がらせて断られるいつものパターンだった。
ただ、違うのは大和田が告白した相手は超高校級の軍人であること。大声くらいで一々怖がってたら命がいくつあっても足りない戦場を潜り抜けた相手だった。

「本当に私のことが好きなのか……?」
「ああ。俺も男だ。女に冗談で惚れたなんて言うほどの腐った根性は持ち合わせてねえ。」
「えっと……いきなり付き合うのとかは出来ないけど……友達からだったならいいかな……?」
「本当か!?」

大和田は思わず戦刃の肩を両手で力強く掴んだ。

「痛いよ大和田……」
「あ、わりい。」
「今の普通の女子にやったらダメだからね。私は耐えられるけど。」
「俺としたことが女を思い切り掴むなんて……これじゃあ手を出したのと一緒じゃねえか。」
「私は平気。むしろ今の力強さが頼もしいって思えたくらい。」

戦刃の言葉に嘘はなかった。
告白の返事を聞いた大和田が我を忘れるほど舞い上がってくれて嬉しかったのだ。

「大和田。一緒に大浴場に行こう。」
「はぁ!?お前何言ってんだよ!!一緒に大浴場ってことはこ、こ、混浴じゃねえか!!」
「違う。サウナで対決だ。」
「あ?」
「この前石丸とやってたよね?あの対決を通して二人は仲良くなったって噂だし、私も大和田と仲良くなりたいから……」
「上等じゃねえか!!ハンデとして学ラン着たままやってやんよ!」

大和田は学ラン。戦刃はバスタオル一枚を身にまとった状態でサウナ室に入り、二人の対決が始まった。

「どうだ?俺と兄弟はこの熱さを耐え切ったんだぜ?」
「私ならもっと耐えられる。軍人たるもの機密を保持するためならどんな拷問にも耐えられる。」
「へへ、言うじゃねえか。」

サウナ室に入ってから20分ほど経ったところで戦刃の体調に変化が見え始めた。

「お、大和田……体が熱いよぅ……」
「だ、大丈夫かよ……お前は女だから無理せずやめてもいいぜ……」
「そっちこそ声が震えているクセにぃ……」
(やべーよ。顔が赤くなっている戦刃が可愛すぎるだろ。)
「はうぅ……」

暑さに耐えかねた戦刃が体勢を崩し、その場にだらしなく寝る格好になった。
そのせいで、バスタオルがズレて戦刃の裸体が露わに…………しかし、戦刃はそのことに気づいていない。

「って、おい!!お前!」
「らいじょうぶ……寝ているだけでまだ続けられる……」
「そういう問題じゃねえ!!自分の格好よく見てみろ!」
「え……キャアアアアアアア!!!」

ようやく自分の今の格好に気づいた戦刃は悲鳴をあげて、大和田に背を向け自分の体を隠した。

「中止だ!中止!この決闘はノーカンだ!」

事態が事態だけにこれ以上の続行は不可能と判断され、大和田と戦刃はサウナ室から出た。
その後の二人は会話もなく、ただ気まずい沈黙が流れるだけだった。
時間だけが過ぎていき、サウナで熱しられた体は徐々に冷めていく。

「………………とにかく、お前は脱衣所に行って服着ろ。」
「…………いや。」
「あ?いつまでもその格好だとこっちが気まずいんだよ。」
「……………………見せて……。」
「あ?今なんつった?」
「私の裸見たなら、大和田も私に裸を見せてよ!」
「…………ハァ!?」

戦刃が大和田に詰め寄り、大和田の学ランに手をかける。

「お、おい!待て!」
「待たない。」
「話聞けよ!コラァ!」
「…………」

女に手をあげない主義の大和田に戦刃を止めることは出来なかった。
怒鳴って威嚇しても戦刃に対しては効果がなく、あっという間に学ランを剥がれてしまった。

「結構逞しい体してる……」
「まあ一応鍛えてるしな。」
「じゃあ次は下も……」
「バ、バカ!何で下まで脱ぐんだよ!!俺はお前の裸一瞬しか見てないのに!」
「じゃあもっと見る?」
「んな!お、おい!お前そんな積極的なキャラだったっけ?」
「肉食系ですから。」

大和田は戦刃を押して壁際に追い込んだ。そして、壁に手をつき戦刃の逃げ道を塞ぐ。

「大和田……?」
「オメーがわりーんだ。オメーがオレに火を付けたから。」
「うん。初めてだから優しく……ね?」