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キーン、コーン、カーン、コーン…… 『自由行動の時間でちゅ。みんな、仲良くらーぶらーぶしてくだちゃいでちゅ』 モニターのウサミが仕事の終了を告げる。 今日はコテージの掃除に回っていた俺は、一息つくと同じく掃除班に割り当てられていた少女に声を掛けた。 「七海」 隣で掃除用具の片付けをしていた少女が振り返る。 色素の薄い髪に、抜けるような白い肌。どこか眠たそうにぼんやりした瞳。 あらゆる才能が集う希望ヶ峰に於いて、『超高校級のゲーマー』の肩書きで呼ばれる少女、七海千秋だ。 「まだ昼だし、せっかくだから何処か行かないか?」 手に持った『おでかけチケット』をひらひらさせながら、なるべく軽い調子で言ってみる。 こうして七海に誘いを掛けるのも一度や二度の事ではないが、この瞬間だけはどうしても緊張してしまう。 七海は唇に指を当てると、少し考えてから答える。 「んーと、そうだね……うん、いいよ」 「そっか!それじゃあ、今日は何処に行くかな」 歓喜と共に頭の中でいくつか候補を並べていると、珍しく七海の方が先に口を開いた。 「あのね、今日はちょっと行ってみたい所があるんだけど、いいかな?」 ------------------------------------------------- 七海に連れてこられた先は島の映画館だった。 七海と過ごす時は大抵七海の部屋でゲームでもするか、公園で雑談しながら昼寝というパターンが多かったので、映画を見に来るのはこれが初めてである。 こじんまりとしたミニシアターは、最新映画というよりは、往年の名作を中心とした妙に古臭いラインナップが並んでいる。 特に『ウサミの大冒険』とかいうファンシーなチラシが『イチオシ!』というポップと共にでかでかと飾られていたが、俺たち二人は当然のように見なかったことにした。 「思ったより色々揃ってるねー」 「そうだな。七海は何が観たい?」 「んーと……これ、かな?」 意外にも七海が指差したのは、アクションやらSFなどではなく、俺でも名前を知ってるコテコテの恋愛映画だった。 売店でポップコーン(何故か七海たっての希望でカレー味だ)や飲み物を調達し、俺たち二人しかいないシアターに並んで腰掛ける。 「でも意外だな。七海はあんまりこういうのは観ないと思ってた」 「確かにそうだけど……でも最近は、少し心境の変化があって」 「心境?」 「うん。ちょっと、苦手ジャンルにも挑戦しなきゃ、と……思って……くぅ」 「始まる前から寝るなよ!」 「むにゃ……寝てないよ」 目を擦りながらそんな事を言う。 寝落ちしかけていた人間が言うことはいつも大体同じである。 「でも……」 そこで七海はこちらに向き直ると、ふわりと微笑む。 「もし私が寝ちゃっても、きっと日向くんがホテルまで運んでくれるから平気だよね?」 「……」 その言い方は、少し、その……。 気のせいか七海の頬は微かに赤らんでおり、こちらを見上げる瞳は何かを期待するかのように濡れている。 吸い込まれそうなその瞳から眼を逸らすと、わざとぶっきらぼうに答えた。 「……あんまり問題になりそうなこと言うなよ。ウサミに聞かれたら怒られるぞ」 「……そう、だね」 妙な気恥ずかしさから逃れるように、スクリーンに視線を固定する。 そうこうしている内に上映時間になったのか、シアター内の照明が少しずつ落とされていく。 「おかしいな……選択肢ミスったかな……?」 その呟きは放映を告げるブザーにかき消され、俺の耳に届くことはなかった。 ------------------------------------------------- 映画が始まってから2時間。 モニターの中ではストーリーも佳境に入り、ドラマティックな再開を果たした男女が熱い口付けを交わしていた。 そんなシーンを見せ付けられ、俺は否応無しに、隣に座る女の子のことを意識せずにはいられなくなる。 ――もし俺も、七海とこんな風になれたら。 脳内で抱き合う男女の姿が俺と七海に変換される。 彼女を抱きしめた姿勢のまま、じっとこちらを見つめる七海の顎に手を沿え、そして―― ……と、そんな事を考えている間にシアターの証明が点き始め、意識が現実に戻される。 モニターに目をやると、いつの間にかラストシーンも終わり、流麗な音楽と共にスタッフロールが流れ始めている所だった。 頭に浮かんでいた妙な思考を振り払うように首を振ると、俺は隣に声を掛ける。 「終わったな。七海、そろそろ出――」 「……ぐぅ」 ……やはりと言うべきか、危惧してた通りと言うべきか。 そこにはうつらうつらと船を漕ぎ、鼻ちょうちんを膨らませている七海の姿があった。 いつもの事ながら、美少女が台無しの目を覆わんばかりの姿である。 「ホントに寝てるよ……おーい、七海さんやー」 柔らかそうな頬を突っついたり、耳元で名前を呼んでみたりもしてみたが、一向に起きる気配がない。 「おいおい……マジか」 映画館からホテルまでは相当な距離がある。 小柄な七海とはいえ、ここから連れて帰るのはかなりの労力だ。 しかし、ここに置いて行くというのも……。 ――もし私が寝ちゃっても―― 「ぐっ……」 脳裏にそんな囁きが甦る。 仕方ないじゃないか。 あんな風に信頼しきった眼で見られたら、とてもじゃないが裏切れない。 「こ、今回だけ、だからな……」 誰に言うでもなく、そんな言い訳じみた事を呟きながら、七海の身体を背負う。 背中越しに感じる、服の上からでもわかる彼女の柔らかさに、思わず顔が赤くなった。 誰かに見つかったらどう言い訳したものか。 そんな風に考えることで顔の熱さを誤魔化しながら、俺たちは帰路へついた。 ------------------------------------------------- 結局俺の心配は杞憂に終わり、無事に誰とも出会わないままコテージまで辿りつくことが出来た。 もう時間も夜に差し掛かり、辺りが薄暗くなり始めていたのも幸いしたようだった。 しかし、ここに来てまた新たな問題が発生する。 「おーい、七海ー。着いたぞ。いい加減起きろよ」 「くぅ……」 ゆさゆさと身体を揺らしてみても、返って来るのは穏やかな寝息だけである。 いつものうたたねではなく、完全に熟睡モードに入ってしまったようだ。 「参ったな……」 それぞれのコテージの鍵は本人しか開けられない。 七海もどこかに鍵を持ってはいるのだろうが、まさか勝手に身体や鞄をまさぐる訳にもいかない。 「日向、くん……むにゃ」 「…………」 仕方ない。 七海は俺の部屋に寝かせて、俺は一晩ホテルのロビーでも使うとしよう。 そうだ。それがいい。 七海を背負ったままポケットを探ると、俺のコテージの鍵を取り出す。 周囲を窺い、今度こそ誰にも見られませんようにと祈りながら扉を開けると、滅多にないほど素早い動きでコテージの中に滑り込む。 出来るだけ静かに扉を閉じると、ようやく人心地が付き、大きく息を吐いた。 別にやましい事をしてる訳じゃないんだけどな……。 「やれやれ……よ、っと」 ともあれ、ベッドに背中を向け、背負った七海を降ろそうとしたその時―― 「――――えい」 「え……?」 そんな迫力の無い呟きが聞こえたかと思うと、背後から強い力でぐいと引っ張られ、バランスを崩した俺は背中からベッドに倒れ込んだ。 「なっ……」 何が起こったのかわからないまま天井を見上げていると、ぬっと影が差し、視界一杯に七海の顔が映った。 二人分の体重を受けたスプリングがぎし、と軋む。 ベッドに俺を押し倒した七海が、馬乗りになって俺の身体に跨っているのだ。 「…………」 「七海、おま、たぬき寝入――んんっ!?」 言い切る前に、何か柔らかい物で唇が塞がれた。 「ん……」 今度は目の前どころか、互いの睫毛が触れそうなほどの至近距離に、瞳を閉じた七海の顔がある。 あの七海に。 七海に、キスをされているのだと、頭が遅れて理解した。 「――――!!」 「…………っ、はぁ」 たっぷり10秒は続いたそれが終わると、名残惜しい感触と共に七海の顔が離れていく。 呼吸する事も忘れていたのか、深くついた吐息が熱い。 「な、なな……急に、なにを……!?」 「日向くん」 混乱し続ける俺とは対照的に、七海は静かな声で問いかけてくる。 「あのね、私が前言ったこと、覚えてる?」 「前、に……?」 「『私ね、もっと色々な事が知りたい。色々な事を経験してみたい。そうしたら、もっと色んな事が理解できるようになると思うから――』」 その台詞は、確かに聞いた事がある。 いつもの様に、何気ない会話の中で。 どこか世間知らずな所のある七海のために、色々な事を教えてあげると約束した事も。 そう答えた時の彼女の笑顔を見て、胸に抱いた微かな慕情も、確かに覚えている。 「あの時、日向くんが何でも教えてくれるって言ってくれて、すごく嬉しかった」 俺の上半身に少しずつ体重が掛けられる。 七海の身体がゆっくりとしなだれかかり、俺と七海の距離を縮めていく。 「だからさ……"これ"も、日向くんが教えてくれる……?今まで私に、色々なこと教えてくれたみたいに」 夜の密室に、男女が二人。 七海が最初からこれを計画し、今の状況をお膳立てしたのだとすれば、七海が求めているのは、単にキスだけで終わるものではなく―― 彼女の言う"これ"が意味している所に気付き、急激に頭に血が昇った。 「な、何言ってるんだよ!大体お前、こういう事は本当は好きな人とだな!」 「好きだよ」 絶句する。 余りに簡単に告げられたその言葉に、一瞬だが思考の全てが停止した。 俺の反応に、七海は可愛らしく小首を傾げる。 「……言ってなかったっけ?」 「き、き、聞いてない!」 そうだっけ、と何事でも無いように言うと、七海は胸に手を当て、自分の心の在処を確かめるかのように、穏やかに微笑む。 「正確に言うと……私ね、赤ちゃんの作り方とか、そういうことは知ってても、人を好きになるって事はよくわからなかったの」 七海の話を聞き、俺はかつて彼女と交わした会話を思い出していた。 「恋愛シミュレーションだけはどうしても上手になれなかったし、苦手だったけどそれでもいいやって、ずっと思ってたんだ」 人と触れ合うのが怖いと語ったことを。 人と人が触れ合う事で生まれる感情を、予測できないからと語ったことを。 「でも、日向くんと出会って、一緒に過ごして、泣いて笑って――それが楽しくて、嬉しくて。もっと日向くんと一緒にいたい。もっともっと、日向くんと一緒になれたら、って……」 それでも、いつしかもっと知りたい、もっと色々な事を理解できるようになりたいと、少しずつ変わっていった彼女のことを、俺は。 「これが、人を好きになるって事なのかな?正直なところ、自分でもよくわからないんだ。でも――」 七海はそこで一度言葉を切ると、意を決するかのように息を一つ吸い込む。 唾を飲み込む喉の動きが、やけに艶めかしく映った。 「――今は、日向くんのこと、知りたい」 「――――」 完全な殺し文句だった。 こんな事を言われて、抗える男がどれだけいるのか。 衝動的に七海に手を伸ばしかけ――そして気付く。 彼女の身体が、微かに震えていることに。 怖がっている? 何を――? 決まっている。俺の返事をだ。 彼女は自分の心を、ありのまま告白してくれた。 ならば俺も、その気持ちに応えなくてはならない。 難しく考える必要はない。 ありのままの気持ちを伝えればいいんだ。 きっとそれこそが、唯一つの真実なのだから。 「あ……」 返事の代わりに、七海の頭に手を回すと、今度は俺から口付けを返す。 無骨で下手糞な、けれど真正面からの俺の想いを込めたキスを。 「俺も……俺だって好きだ。七海のこと。だから――」 だから。 「七海のこと、もっと知りたい」 「ほん、とうに……?」 尚もそんな事を言ってくる七海の口を、再度口付けで塞ぐ。 信じてくれるまで、何度でもキスしてやろう。 「んっ……」 たっぷり感触を味わった上で、唇を解放する。 顔を真っ赤に染めた七海が、これ以上ない程愛しく見えた。 「ふ、フラグ、立った……?」 そんな事を言う七海に苦笑しながら、二人並んでベッドに倒れ込んだ。 ------------------------------------------------- 先程と体勢を逆にし、今度は俺が上になりながら、ベッドに横たわる七海を見つめる。 既に制服の上下も、白い肌を覆う下着すらも脱がされ、七海は生まれたままの姿を晒している。 「――――」 思わず唾を飲み込む。 いつか水着姿を見た時も思っていたが、七海は非常にスタイルがいい。 七海のあどけない顔にそぐわない肉感的な身体。 そんなギャップが情欲をこれ以上無いほど駆り立てる。 本音を言えば、すぐにでも七海の身体を思う存分貪りたい。 その豊満な胸を揉みしだき、ペニスを突き刺し、腰を叩きつけて七海の膣内を味わいたい。 しかし―― 「…………」 服を脱がしていく間、そして今こうして押し倒されている間、七海は何も言わず、静かに俺の事を見つめ続けていた。 それが俺を何より信頼してくれている証のように思え、性欲よりも七海への愛情が勝った。 彼女を大事にしたい。 何よりも、誰よりも。 七海は全裸になった自分と俺の姿を交互に見やり、ぽつりと呟く。 「そっかぁ……そういえばこれ、セックスなんだよね」 「せっ――」 改めてこれから行おうとしている事を直球で言われると、例えようのない気恥ずかしさに襲われる。 それは自分で言った七海の方も同じらしい。 「な、なんか急に難易度上がってきたな……え、えっと、出来る限り頑張ってみるからね」 頬を染めたまま、両腕でガッツポーズをする。 見慣れた仕草だが、それが今まで一度も見たことのない裸でだと思うと、なんと言うか――非常に男心を刺激される。 「あっ……」 その感情に任せ、胸に手を伸ばす。 たぷん、と擬音がしそうなほどの柔らかさと共に、七海の豊かな双丘に指が沈む。 寝ていても形を失わない七海の胸は、見事な張りと柔らかさを併せ持っている。 感動的なまでのその感触に、思わず何度も何度も胸を揉みしだく。 「ん……そんな、胸ばっかり……」 七海の抗議を聞かなかったことにし、胸を揉んだままの手で乳首を指で挟み、口で吸い付く。 「んやっ……て、定番だけど……出ない、よ……?」 赤ん坊のように胸を吸う俺を静止したものかどうかと、七海の両腕が中空で彷徨う。 勿論、止められた所でやめるつもりなんかない。 硬くなり始めた突起を舌で転がし、もう片方の乳首を掌で撫で回す。 「やっ……はっ……はっ……んぅ……!」 胸への集中した愛撫に、七海はぴくぴくと身体を震わせている。 快感を覚えてくれている事に安堵した俺は、満を持して七海の秘所へと手を伸ばした。 「あ――!」 くちゅり、と湿った感覚が指先に当たる。 「濡れてる……」 「っ……!」 俺の言葉に、七海は恥じらうように眼を逸らす。 感じやすい体質なのか、七海のそこは既に濡れそぼっていた。 指で淵をなぞるように何度か擦ると、十分に濡れていることを確認し、指を内部に侵入させていく。 「あふっ、ふうぅっ……!」 侵入してきた異物を、七海の膣内が押しつぶさんばかりに締め付ける。 その締め付けに負けじと、指先を使い彼女の中を押し広げていく。 「ひぁ、ああぁ、んんんっ!」 大分ほぐれてきたことを確認し、指を引き抜く。 七海のそこは溢れんばかりの愛液で濡れ、誘うようにひくひくと蠢動していた。 その光景に、鼓動がどくんと大きく脈打つ。 体勢を変え、最大まで勃起したペニスを、愛液でぬるぬるになった秘所に擦り付ける。 「やあっ……」 むずがるように身体をくねらせる七海の腕を押さえ、何度も何度も執拗に性器同士を擦り合わせる。 「あっ、あっ、んっ!」 性交の予行練習にも似たそれを繰り返すうちに、七海の顔がどんどん快楽に蕩けていく。 「気持ち……いい、かも……」 その姿を見ただけで、心臓が痛いほどに高鳴る。 これ以上我慢できない。 一分一秒でも早く、七海と繋がりたくて仕方ない。 ペニスに手を沿え、愛液と先走りが混じり合い、ぐしょぐしょになったそこに狙いをつける。 「痛いぞ、多分」 「痛いのは……嫌かなあ……うん、でも、日向くんと一緒になりたいから、我慢する」 七海が覚悟を決めた眼でこちらを見上げる。 愛しい彼女の事をもう一度見つめ、俺も覚悟を決めた。 「行くぞ、七海」 「む~……」 いざ、という所で、七海が可愛らしく頬を膨らませているのに気付く。 あ、あれ……? 格好良く決めたつもりだったのだが、何かお気に召さなかったらしい。 「あのね、こういう時は名前で呼んでくれるものじゃないかな……って思うよ」 「あ……」 そうか。そうだよな。 これから俺たちは、他人じゃなくなるんだ。 心の底からその事実を噛み締めると、万感の想いを込めて彼女の名を呼んだ。 「千秋」 「……うん」 「千秋っ……!」 「――うん。創、くん」 そして、互いの名前を呼び合うのと同時に、俺は千秋の中へと進入していった。 「いっ……!あっ……!いたっ……!」 「くっ……!」 十分に濡れていると思ったが、それでも初めて進入を許す千秋の膣内は固く、狭い。 ぎゅうぎゅうと痛いほどに締め付けてくる膣内を、少しずつ、少しずつこじあけるように開拓していく。 ペニスが進入していく度、俺との距離が近づく度、千秋はシーツの端を握り締め、必死に痛みに耐える。 そして―― 「ッッ――――!!!」 ぶつ、と何かが千切れる感触と共に、俺と千秋の腰が完全に密着した。 「全部……入ったぞ」 「んっ……想像より、痛いかも……2回転コマンド投げ、くらい……」 わかるようなわからないような例えを出しつつ、眼の端に涙を浮かべながら気丈に微笑んでみせる。 「でも、すっごくすっごく嬉しいよ……」 「千秋……」 もしこの世に女神がいたとしたら、今の千秋と同じ顔をしているんじゃないだろうか。 そんな馬鹿なことを考えてしまうほど、俺は彼女に見蕩れていた。 「ん……もう、だいじょうぶ……動いて、いいよ」 とは言うものの、明らかに無理をしている。 「焦らなくていいよ。千秋の中にいるだけで、凄く気持ちいいから」 「そ、そう……? なら良かった……えへへ……」 事実、千秋の膣内は動かずとも緩やかに収縮し、断続的に快楽を与えてくれる。 こうして繋がり、千秋の顔を見つめているだけで、十分すぎるほど幸せだった。 「…………」 「…………」 そのままの姿勢で、ただお互いを見詰め合う。 時折涙の跡を舐め取ったり、愛らしい唇を小鳥のようについばんだり。 そんな子猫のじゃれ合いじみた愛撫を交わしながら、少しずつ千秋の緊張を取り除いていく。 「ふぅっ……ふっ……」 「んっ……く、ふっ……ちゅ……」 「はぁっ……はぁっ……!」 「はぁっ……はっ……ん……ふぁっ……!」 しかし、そうして穏やかに快感を分け合っていた俺たちの吐息が、次第に熱を持ち始める。 オスとメスとしての本能故か、身体がそれ以上の刺激を求め、ほぼ同時に二人の腰がくねり始めた。 「くうっ……!」 「あっ――あっ、あっ、ああっ」 ただ千秋の膣内にいるだけでも十分すぎると思っていたのだが、動き出してからの快感は圧倒的だった。 気を抜いた瞬間に射精してしまいそうな快楽の嵐を堪え、必死に腰を動かして行く。 「はっ……はっ……!あ、ああっ!」 千秋はシーツを握り締め、全身を可愛らしく震わせる。 十分な愛撫のおかげか、彼女はそれほど痛みを感じてはいないようだった。 「あ、はぁ、くぅ、あぁ……」 腰を撃ちつける度、結合部からいやらしい水音が響き渡る。 眼で。耳で。匂いで。舌で。身体で。 五感の全てが濃厚な性の交わりを伝えてくる。 「ひゃあんっ、はぁ!」 行為を続ける内に、次第に千秋の膣内の感触が変わっていく。 ペニスを締め付けるだけの動きから、射精を促す煽動へ。 「はじ……く……んんっ!」 腰をゆっくりと引き抜く。 ギリギリまで抜けかけたペニスを、同じように今度はゆっくりと挿入させていく。 「んんっ――!」 「大丈夫、か……?」 「う、うん……気持ちい……ひゃっ!……気持ち、いい、よ……?」 大きな動きと、細かい動き。そしてまた素早い動きと、交互に腰を使い、千秋を高みへと昇らせていく。 「あっ、あっ、あっ、あっ!」 連続したピストンに、千秋がセクシーに声をスタッカートさせる。 快楽だけが、加速度的に高まっていく。 「創、くんっ……!」 「ちあ――んっ!!」 千秋の内部に秘められた熱情を示すかのように、頭を強く抱き寄せられる。 そのまま唇を吸われ、腰に絡まった脚に力が込められる。 千秋の全身で抱きつかれ、ほとんど動かせなくなった腰を、それでも素早く小刻みに抽挿する。 「ちゅ……ぷは、あっ!んんっ――!」 最奥だけを執拗に突く形になり、千秋の嬌声が挙がる。 「ああっ!あっ、ああんッ……!んぅ!ちゅぱ……っはぁ!」 汗も、唾液も、愛液も。 愛情も、慕情も、劣情も。 互いの全てを混ぜ合わせながら、快楽の階段を駆け上がっていく。 俺が千秋に全てを与え、千秋は俺の為に全てを受け止めてくれる。 それは確かに、二人の初めての共同作業だった。 そして―― 天に昇るかのような交わりにも、遂に終わりの時が来た。 「はあ、ああぁ、あんっ、ああああぁっ!」 髪を振り乱しながら喘ぐ千秋の高まりと共に、熱く潤んだ極上の肉壁がペニスを締め上げ、吐精を促してくる。 「ぐっ……!」 唇を噛み締め、射精感を堪える。 もっと、もっともっと、このまま交わっていたい。 「しゃ、せい……する、の……?はじめ……くん……」 しかし、千秋にとろんと蕩けた顔でそんなことを言われ、射精感が堪えようもないほど急激に高まる。 「ああっ……!出す!出すぞ!千秋!」 「……して。だしてっ……膣内、にっ……!」 彼女のおねだりに、全ての理性が吹き飛んだ。 もう――堪える必要はない。 「千秋!千秋っ!千秋っ――!!」 「創、くん……!はじ、く……!あっ、あっあっあッ――!!」 「ッッッ――――!!!!」 最後の瞬間、胸に湧いた愛おしさのままに千秋を抱き寄せると、貪るように唇を奪いながら、千秋の最奥で欲望を吐き出した。 「んっ――!?ンンッッ――――!!!!」 内部を熱い精液で満たされ、千秋の腰が跳ね上がる。 射精の勢いは止まることを知らず、次から次へと吐き出される精液が膣内からこぼれて行く。 これまでに体験したことのない、信じられないほどの量だった。 「はっ……はっ……あ――」 やがて全ての精液を受け止めると、跳ね上がっていた腰が力を失い、ベッドにどさりと降ろされる。 俺も体力の限界を迎え、千秋の身体に倒れこむようにどっと突っ伏した。 「あつ……熱い、よ……膣内……いっぱい……」 「ち……あき……」 「はじめ……くん……」 最後の力を振り絞り、千秋へと顔を寄せる。 千秋も震える手を伸ばし、俺を迎えてくれる。 そして行為の締めくくりに、互いへの全ての感情を込めた、深い深いキスを交わした。 ------------------------------------------------- 心地よい疲れの中、俺たちは互いに見つめあいながら、指を絡め、今この時が嘘ではないことを実感していた。 月明かりだけが微かな灯りとして差し込む部屋の中で、千秋の唇が揺れた。 ――ここから出ても、私のこと忘れないでね。 何言ってるんだ。 忘れるわけないだろう。 千秋が知りたい物は、なんでも教えてあげるって約束したじゃないか。 これからも、ずっとだ。 眠りに落ちそうな頭をもう一度起こし、彼女を安心させるように頭を抱き寄せる。 千秋はきょとんと少しだけ眼を丸め、そっと眼を閉じて微笑む。 腕の中にある暖かさと、確かな彼女の存在。 そんな例えようのない幸福を感じながら、俺もまどろみに落ちていった。 願わくば、この幸せが、いつまでも続きますように――

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