ザ ファスター レッグメン


希望崎学園の中庭、そこは番長グループにも生徒会にも属していない不良学生のたまり場である。
そこに今、眼鏡をかけたひ弱な見た目の男が現れた。
「おう、仕橋じゃあないか」
「今日もパシリに来てくれたんだな、ありがとよ」
不良学生たちが眼鏡の男、仕橋王道に向かって威圧的な言葉を吐く。だが、どこか言わされているような雰囲気もあった。実際、彼らは王道に精神的に支配されている。
「さて、注文を聞こうか」
不良達が次々に注文を言う。そんな中、不良の一人がニヤニヤしながら話を切り出した。
「そういえば仕橋よぉ、俺たち以外に注文があるやつがいるらしいぜぇ?」
不良学生がそう言うと、物陰から一人の男子学生が現れた。外見からして不良学生ではない。むしろ優等生の部類に入るだろう。
「おい、言ってみろよ、お前の注文を」
「は、はあ…あの…」
学生は少し遠慮がちに、口を開いた。
「伝説のたこ焼きを、買ってきてほしいんです」
不良学生たちがざわめく。そして一拍置いて、ニヤニヤし始めた。
伝説のたこ焼き。名前からしてわかるだろうが、入手困難な品物である。
もし王道がそれを買ってこれなければ、王道に一つの負い目ができる。不良学生たちにとってはそれだけで十分である。彼らはただ一度の過ちでさえ大げさに取り上げて貶める、屑達なのだから。
「いいだろう」
だがしかし、王道は特にうろたえることもなく了承した。
「ただ、少し時間がかかるかもしれない」
「あ、ああ。土日のうちに買ってきて、月曜に渡してくれればいい。あれは大阪でしか売ってないからな」
「わかった」
王道は頷いて、その後すぐに購買部へ向かった。パシリは時間との勝負である。
最終更新:2015年05月28日 22:27