神無月冥呼~プロローグ~「ある男の日記」


○月×日
ついに我が子が生まれた!
生まれたばかりの我が子は元気な産声をあげていたので、私もほっとした。
妻には感謝しなければならないな。

○月×日
初めて娘がパパと呼んでくれた。
天にも昇る気持ちとはこのことかッ!
後で周りから聞いたのだが、今日の私は終始口元が緩んでいたようだ。

○月×日
娘が誘拐された!
誘拐犯は、私の屋敷に長年仕えていた使用人だった。
「どうしても我慢出来なかったんです。」
そんな言い訳が通じると思っているのか。信頼していたというのに。
私は政府の関係者を呼び寄せ、その男を厳罰に処すことを命じておいた。
後悔させてやる。この汚らわしい変態めがッ!!

○月×日
娘は最近忍者に憧れているようだ。
私は家の権力を駆使して、実際に使用されていた武器屋や装束、
忍者について詳しく記されている古書など忍者に関する
ありとあらゆるものを各地からかき集め、娘に与えた。
娘さえ良ければ、他の者がどうなろうと知ったことではないッ!

○月×日
妻と口論となった。
私が娘にべったりなのが、気に障るようだ。
私と娘の間に入ってくるな!そう一喝してやった。
あの女はいったい何様のつもりなんだッ!

○月×日
日に日に娘は美しくなっていく。
あと数年もすれば、娘も嫁いでしまうのか…。
嫁ぐだと。そんなことはこの私が許さん!!

○月×日
誰にも渡さんぞ……。
あの子と釣り合うのは私だけだッ!!

○月×日
もう我慢出来ん。
あの子の全てが欲しい……!!
私のものだ、私の……




ここで日記は止まっていた。

この男がその後どうなったのか。
それは、皆さんの知るとおりです。
最終更新:2014年06月27日 09:56