霧の中の少女
「大丈夫?」
「…何が?」
番長小屋で壁にもたれかかり、一人本を読んでいたクラウディア・ニーゼルレーゲンは同じ番長陣営の一一(にのまえ・はじめ)に話しかけられた。
いつものように傘にライダースーツという出で立ちだ。
それに対して、クラウディアは突っ慳貪とした態度で返答する。いかにも面倒だといった様子である。
別にこれは彼女が一を嫌いだからというわけではない。
クラウディアはハルマゲドンには参加しているが、
番長Gのメンバーと必要以上に馴れ合うつもりはない。
それに加え、会話そのものもそれほど得意な方ではないということもあり、自然とこういう態度になってしまうのだ。
「なにか悩んでいるように見えたから心配で」
「…別に悩みなんてないよ」
クラウディアは冷淡に答える。
この回答は嘘である。
日本に来てからというもの、おかしなデジャブを感じるようになった。
日本で活動するのにちょうど良いからと傘部に入部したときもそうだった。
何故か自分はいつかどこかで彼女たちに会った事があるような気がして。
彼女はずっとドイツで過ごしてきたはずなのだからそんなはずはないのだが。
「本当に?」
「しつこ…」
なおも問う一にクラウディアが少しいらだちを見せ始めたその時であった。
突如として番長小屋が揺れた。
おそらくドーラちゃんの80cm列車砲ドーラが発射された衝撃だろう。
そして、そのせいで二人はそのままバランスを崩してしまい――――――。
結果、一がクラウディアの下敷きになってしまった。
すぐに立ち上がろうとするクラウディア。彼女は暗殺者なのだ。不測の事態に冷静に対処する方法は身につけている。
だが、
「ひゃん!?」
クラウディアの臍の辺りに突然未知の刺激が走った。
倒れそうになったときに一にジッパーを掴まれてしまったのか、彼女のライダースーツが完全に開かれている。
一はパニックを起こしているのか舌でクラウディアのお臍の周りをぺろぺろと舐め続けている
「や……やめ……」
抵抗しようとするが、身体に力が入らない。それどころか力がどんどん抜けていく。
もたらされる刺激は彼女には衝撃的すぎた。
「だ、だめっ…」
一が巧み過ぎる技術がもたらす快楽に最早思考すらままならなくなってくる。
最早、抵抗する気力が起こらない。
まるで思考が霧に包まれてしまったようだ。
彼女は霧を操る側だというのに。
そして最後は電気ショックを受けた時のように身体を痙攣させるとそのまま彼女は意識を失った。
なお、このあと、同じ一族の少女たちを訪ねてきた埴井家の後継者候補の少女が現れ、一に仕置がなされたことは日常的な光景であるためここでは割愛する。
最終更新:2014年06月28日 09:08