弾指百花(だんしひゃっか)プロローグss
突然だが、超個体はご存知だろうか?超個体とは一つの集団が一つの個体として動くことである。超個体を生かすためなら、例え王だって自分の身を犠牲にしなければならない。
百花はもとは魔人機動隊の一員だった。希望峰に在籍中、自衛隊からの
誘いを受け高校を退学して就職した。それほどまでに魔人の就職は難しいのだ。まして、高校生を自衛隊に誘うなんてありえないことだった。しかし、彼の能力はそこまでしても欲しい能力だった。彼の能力は
「多数決」。あらゆる事象を多数決で決定することができる能力。これを使えば、テロリストのリーダーや
自分達にとって不都合な著名人を仲間内で多数決することで殺すことができる。そう考えた自衛隊のトップ達は魔人 弾指百花を自衛隊に受け入れた。けれど、多数決には制約として顔がわからなければならない。
写真でもあればその場で、殺すことができるのだがマフィアのボスなどの顔は出回ることはない。なので実際にマフィアの幹部達の隠れ家を制圧し百花にボスを会わせることもあった。そのように、仕事をこなしているなか一人の魔術師の殺害を自衛隊のトップ達から命じられた。
そもそも魔術とはなんなのか。
魔術は魔人能力を持たない一般人にしか得られない能力である。
魔術は習うものではなく、魔術を浴びた一般人が魔力によって作用され
魔術を扱うことを理解するのだ。
話を戻そう。
百花には何故こいつを殺さなければならないのかは、わからない。けれど魔人がこの社会で生き残るには殺すしかない。いつも通りの仕事のはずだった。しかし、この魔術師は時を操る能力を持っていた。仲間は全員殺され、かなりの苦戦をしていた。くるはずの援軍も物資も来ない。
百花は途中から気づいていた。
自分はもう見捨てられたのだと。
自分の強すぎる能力はトップ達にとっても危ういし、組織的には一人の魔人が日本を守っているのもイメージダウンに繋がる。ならば組織のために売られるのも当然だと。
しかし、自分は死にたくない。
また、死んでやるつもりもない。
どうにかして相手を殺し、生き残る。その時、魔人としての能力が進化した。魔人能力は普段進化することはない。ただ、余りにも強すぎる生存本能が「多数決」を進化させた。その進化とは、「多数決」を一人で行うという恐ろしい能力だった。つまり、顔さえ見えれば一瞬で屠ることが出来る。この時、魔術師は自分が殺されることを予感していた。ならば、相手に魔術を送りこめば魔人能力は消えるのでは?
そう考えた、魔術師の魔術攻撃が当たるのと百花の多数決が発動したのは、全く同時だった。その結果多数決は失われ、彼は「魔術師」になった。彼の魔術はやはり浴びた魔力源と同じ、時を操る能力だった。自分を加速させることも老いを止めることも出来る。
とりあえず、もう自衛隊にはもどれない。そうして、彼は新たな仕事を
探し始めるのだった。
彼が「烏合」に入るのはもうちょっと後の話。
百花が魔術師になってからの生活は酷いものだった。魔術を用いて姿をくらまし、傭兵として仕事をしながらの暮らし。とても精神にくる生活だった。3年後の21歳の時、彼は「烏合」と呼ばれる組織の男に勧誘を受けた。烏合は情報を扱う秘密組織で、魔人や魔術師を受け入れているらしい。その日暮らしの百花にとっては、願ってもないことだった。
なんだこの男は。
烏合殲滅課の一員、龍崎は弾指と呼ばれる男に会った時思った。
髪は長く目は血のように赤黒く、背は高い。美形ではあるものの若すぎる。年は自分と変わらない筈なのに、まるで高校生ようだ。そんな感じがした。龍崎は魔人ではあるが、
まだ大した経験もしたことはないので進化した魔人の目は赤く濁ることも知らないし、魔術師の存在も知らない。彼は弾指の姿に驚きながらも、烏合に来ないか?とだけ言った。男は快諾した。
最終更新:2014年07月05日 15:35