文月ひさぎSS ~プロローグ「思惑」~


~「暦」本部 広場~

「ひさぎ、少しいいですか?」

穏やかな笑みを浮かべてひさぎに声をかけてきたのは、現在副部長として「暦」を指揮する卯月言語だ。
椅子に座って思案していたひさぎは、言語に呼び掛けられると慌てて立ち上がった。

「言語さん!?ええ、構わないですよ。それで、どんな用でしょう」
「ええ、実はですね……、」

------
---------------
------------------------


「……、ということになっているんですよ」
「なるほど。そのジャン=マリー・クロワザールが1年前の事件の犯人かもしれないと、言語さんはそう考えているのですね」
「確証はないですが。ただ、“部長”の存在を知っているということが引っかかりますね。調べた限りでは部長はここ数年姿を現していないですから、副部長である私を除いて」
「確かに気になりますね。言語さん、もし彼女が犯人であれば俺は刺し違えてでも殺しますよ。あの事件で、皆は……、」
「落ち着きなさい、ひさぎ。まだ、彼女が犯人と決まったわけではないのだから」
「すいません、少し熱くなってしまいました。でも、犯人を許すことはできません。くッ、俺が魔人の力を意識して使えれれば……」
「焦りは禁物ですよ、ひさぎ。それに、君は無意識にでも犯人の攻撃を防御してくれたからこそ、私や咲夢が生き残れたんですから、君には感謝していますよ」
「しかし、言語さん。俺の力は本当に護りの能力なんでしょうか?」
「……どうして、そう思うのです?」
「時々、夢に出るんです。俺が、皆を殺しているのを。その姿が、聞いた話しにそっくりで。もし、そうだったら俺は、」
「ひさぎ!」
「ッ!」
「夢の出来事と私、君はどちらを信じるのですか?」
「も、勿論、言語さんを信じるに決まってます。それ以外の選択肢は、俺には無いです!」
「ならば、もっと自分に自信を持ちなさい。自分では自覚していないから不安になるのはわかりますが」
「すいません」
「まぁ、気にしないことですね。焦らずとも、その内意識して使えるようになりますよ。とりあえず、当面はジャンさんの監視と引き続き犯人探しに全力を尽くしてください。頼りにしていますよ」
「わかりました。この命を懸けてその任務、全うします」


~「暦」本部 ???の間~

「で、ひさぎは結局どうしたの?」
「しっかりと任務に赴いてくれたぞ。フフ、これで面白くなったな」
「でも、部長を知ってるというジャンという子、気になるわね。“探索”でもかけとく?」
「いや、ここはひさぎの活躍を期待しよう。もし、ひさぎが奴を仕留められれば良し。万が一、ひさぎが死んでも跡は残らない」
「本当、黒いわね。皆に見せてみたいわ」
「咲夢も相変わらず、冷たいな」
「素を出せる相手がいて、良かったでしょ。それより、彼女と接触したあの子は大丈夫なの?」
「問題ない。もし、俺の能力が破られれば、俺はそのことを知ることができるしな。まぁ、心配なら“探索”をかけても良いが」
「うーん、やめとくわ。ただでさえ、涼子が抜けた穴を担ってるんだから、これ以上負担したくないの」
「殺した本人が、よく言う」
「ご命令した人には、指摘されたくないわね」
「減らず口め……」
「付き合ってるだけ、ありがたいと思いなさい」
「フン。それより、計画は順調に来てるのか」
「今のところはね。数も揃ってきたし、もう少しで行動に移せるんじゃない?」
「ククッ、今から楽しみだ。」


To be continue......


<設定補足的な何か>
能力を複数持つと思われる皐月咲夢(さつきさゆ)。使用した能力を公開ー。
  • 疑似生命(エンチャント・ライフ)
無機物に命を与える。ヨハン(ぷちダンゲロス2参照)を作製。
  • 置換(パーミュテーション)
自分の能力を別の者に付与。禁武宣告をヨハンに付与。
  • 禁武宣告
ヨハンに搭載。範囲内にいる対象の力を減少させる。
  • 探索(リサーチャー)
対象の正体、状態を調べる(限度あり)
  • 仮想潜伏(フィクションダイバー)
バーチャル世界に入り込む(睦月涼子エピローグSS参照)。
  • 氣刀流 手突
強化した手刀で突く(睦月涼子エピローグSS参照)。そのまんま。
最終更新:2014年07月14日 05:24